里山オーナーの話 (10)


2005年9月3日  <畑の被害> 

昔々、<ごんぎつね>を初めて読んだ時の衝撃は忘れられない。
あんなショックな話は、初めてだった。
読み終わった時は、呆然とした。
ショックがデカ過ぎて、涙も出なかった。
ただただ思ったのは

「誰か、この結末、書き換えてー」

そうすれば、なんともいえない、この胸の苦しさから開放されるのに。
これまで、
色々と重い結末の物語も読んできたけれど
こんなことを本気で思ったのは
<ごんぎつね>と<ポーの一族>だけだ。

そんな<ごんぎつね>。
読み終わった時、誰もが思うのは

「ああ、兵十。鉄砲撃つ前に、ちょっとこう、台所とか見に行ってよ。
いきなり撃つんじゃなくて、ごんが何をしてたか、確かめてから撃ってよ。もうーーっ!!」

じゃなかろうか。
そう、兵十が、ズドンと撃つ前に
ごんが出て来た台所を、ちょっとのぞきに行っていれば
ごんが置いた栗やら何やらを、目にしていれば
こんな悲しい結末を、迎えなくてすんだのに。
ああ、ああ・・・。







さて
この春、種まきした、我が畑は、今回も<順調>とは言いがたかった。
昨冬のように
<完全無農薬・完全無肥料>だったから、というのではない。
今回は、
ちゃんと肥料も入れたし、石灰もすき込んだ。
原因は、空梅雨による日照り。
種が発芽した直後から、パッタリ雨が降らなくなり
それでも、
毎日水やりに通えればいいんだけれど
なにせ、山の畑だから、週に一回行けるかどうか。
おかげで、無事に発芽した棉は、次々に倒れ、バジルもアサツキもヨロヨロのクタクタ。
すぐそばに山があるので
しっかり根をはってしまえば、雨が降らなくても、地面の下を流れる水でしのげるのだけれど
発芽したばかりの、ちっこい(小さい)苗ではねぇ・・・。

とはいえ
無事に育ったものも、あるのである。
絶好調だったのは、ゴーヤ。そして、サトイモとショウガ。

特に、サトイモとショウガは
山の、すぐ際に畝を作って植えたため、日照りも全く関係なかった。
山の際の土は、日照りの最中でさえ、常に湿っている状態だったから。
(山の保水力というのは本当にすごい)



サトイモとショウガは、水が足りないとダメ。
逆に、
水さえあれば、放っておいても何とかなる・・・というのが証明された今回。

やれやれ、嬉しや♪

と思っていた、ところが・・・・・・・



出た。
やられた。


7月末のある朝、畑へ行ってみたらば、畑に点々と・・・いや、
ズドンズドンとでっかい足跡が。

そして、サトイモの畝が、掘り返されているではありませんか!!!



もちろん、イノシシだ。
こいつは、サトイモを2株ほど引っくり返し、まだイモが育っていないのを確認してのち

しょーもなー

と、去っていったらしいのだ。

ついでに、イモだけじゃなく、ショウガの畝までほじくり返して行った。
ショウガなんて、育ってたとしても、生でなんか食べないくせにー。
それが証拠に、
結構育っていた新ショウガ。
かじられもせず、土の上に放ったらかされていたのだ。
                            おのれ〜〜〜!私のショウガを!!

そして、ほじくり返された土を見て驚いたのは、土がまだ湿っていたってこと。
つまり
イノシシ野郎(メスかもしれないけど)が来て、まだ1時間もたっていないのでは・・・
ということだ。
ひょっとしたら、
私達が、もう少し早く畑に来ていたら、私と夫はイノシシと鉢合わせしていたかもしれない。
それも、我が畑をほじくり返すイノシシと!


と想像した時、思いましたね。

もし、鉢合わせて
その時、私が猟銃持ってたら、絶対に撃つ!


もう、絶対に、威嚇射撃なんて無し。いきなり「バカモノーー!」と怒鳴りながら撃つ。きっと。


と思った瞬間
わかった。兵十の気持ちが。


そう、確か<ごんぎつね>、兵十は、ごんに、色々と悪さをされていたんでしたっけ。
病気のおっかさんに食べさせるウナギを、ふいにされたり。
ごんは、子供のいたずらのつもりでも
悪さをされる方はねぇ。


とはいえ、銃を持っていない状態で、イノシシと鉢合わせたら
絶対に<回れ右>して逃げるはずの私だから
武器を持つ
というのは、怖いことだとも思った、今回だった。





ともあれ、ほじくり返されたものの、その後、イノシシは現れておらず
(多分、イモがもっと大きくなった頃に、再度やって来るつもりであろう。あのヤロー)
ショウガも、
掘り出されたのを埋めておいたら、無事、復活した。↓(前列がショウガ)



ただ・・・サトイモは・・・・・
セレベスという、かなりでっかいイモになる品種を植えたせいなんだろうけれど



茎と葉が、想像以上にでかくなって(↑身長170センチの夫の、顔の高さまで茎が伸びてる)
なんか怖くなってきた、今日この頃。
だって、よその畑のサトイモの葉、我が畑の半分くらいの大きさだし・・・。



ところで、↑の写真の左半分で育っているのは、他の里山オーナーさんが植えた蕎麦である。
種まき1週間後の姿は↓



近所のスーパーでは、
<そば若芽>という名で、ひとパック100円で売られている、このスプラウト。
間引いて食べたい衝動を抑えるのに、ちと苦労しました。



しかし、この後どうなるのかぁ・・・。サトイモよ、ショウガよ。


2005年9月11日 <けなげな作物達 : 落花生> 


昨秋の失敗を繰り返さないためにも、この秋は、是非とも早く畑の土作りをしたい我が家。

この日、前夜の雨で、畑の土はドロドロ。
泣く泣く、この週末の土作りは、あきらめたのだった。
来週には、
土、乾いてくれると良いんだけれども・・・。





それはともかく、落花生は不思議だ。

落花生、
沖縄ではジーマミ(地豆)と呼ばれるこの野菜、その名のとおり、地面の下に豆が出来る。
って
大根や人参みたいな根菜なら、話はわかるし
芋類でもOK。
納得は出来る。

落花生は<豆>なのですよ?
ソラマメや大豆、インゲンやエンドウマメと同じ、豆。
それが、何で地面の下に??

以前、本で

落花生の花は、受粉すると、めしべがスルスルスルと伸び
それが地面にプスリと突き刺さって、大地の下で豆を実らせる

というのを読み、以来

めしべが地面に突き刺さる???

いったいそれは、どのようにして???

み、見てみたい!

と猛烈に思ってきた私。

だからこの春、
偶然入った苗屋さんで、
ガーデニング用のこじゃれた花々の苗の片隅に
忘れ去られたように置かれた
3株の、虫食いの落花生の苗を見つけた時の嬉しさと言ったらなかったのだ!
                                 (しかも1株50円也!)
即ゲットして、ベランダのプランターに仮植えしたのが、この姿。



ちょっと、観葉植物のカポックに似た姿だけど、これが落花生。

そして、これを畑に2株。観察用にベランダに1株残して、待つこと一ヶ月半。
その間、可憐な花は咲けども



受粉が上手くいっていないのか、例の<伸びるめしべ>というものは現れず
咲いた花は、クッタリとしおれるばかりで
我々をジリジリさせてくれたのだけれども
ある日
ついに、このような物が出現。



ぼやけた私の指の先に、茶色い爪楊枝のようなものがあるの、おわかりでしょうか?
これが、めしべの下端部分の<子房>が伸びた物!

おお、おお、これが!!

と、喜んだのも束の間
・・・どう考えても、これ、土までの距離が遠すぎるのである。
子房の先端から土までの距離、約6センチ。
私にとっては小さな距離だけれど、落花生にとっては・・・・・。

地面に子房が届く前に、この子房、枯れ果てるんじゃあ・・・・・??

なんて考えが、頭をよぎり
かくして、この日から、私の、<落花生の努力をじっと見守る日々>が始まったのだ。
伸びてるんだか伸びてないんだか
ほとんどわからない成長振りながら、しかし、子房は枯れることなく存在し続け
10日後



おおおおお!!地面まで、あと5ミリ!!!
その2日後



あと2ミリじゃないの!!!
もう、見守るしかない私は、完全に星明子の心境である。

頑張れ。頑張るのよ飛雄馬じゃなかった落花生。

ところが

ここまで自力で頑張り、私を感動させてくれた落花生に対し、この直後
夫が盛り土をして、
子房の下の地面の方を伸ばすってなことを
やっちゃってくれちゃったのである!


あーあーあーあーあー!ここまで来てたのにぃぃぃぃぃ!!

・・・這えば立て、立てば歩めの親心
とは言うけれど。
それに、確かに落花生を植える時
他の里山オーナーさんで、落花生栽培の経験のある方が

「子房が土に届きにくい時もあるから、盛り土をしてあげたらええよ」

って教えてくれたことはあったけれど。でも

あと2ミリだったのよぉぉぉぉぉ。(星明子ガックリ)



ともあれ、めしべが伸びて地面に突き刺さるというのは本当で、↓これは別の子房だけれども



こういうことになった後



↑ちょっとわかりにくいかもしれませんが、矢印の所、白い茎が伸びているのが見えるでしょうか。
こうやって、地下茎を伸ばしながら、豆を増やしていくようです。


畑の落花生も、無事、次々と子房を伸ばして
(調べたところによると子房、地上から地面まで最高で30センチくらいまでは伸びるとか。
30センチ!?)
さあ、秋に、どれくらい収穫出来るものなのか?
実を言うと、
生の落花生って見たことが無いので、とにかく一個でも豆が出来
見ることが出来ればと思っております。
けなげに成長し、この春夏、私を励まし慰め続けてくれた落花生達よ、
もうひと踏ん張りしておくれ!


それにしても・・・、落花生って名前を付けた人って、ネーミングの天才だなぁ。
(沖縄のジーマミは、ちと、まんますぎて・・・)



ところで、この落花生、省エネの植物らしく、夜になると



このように万歳して葉を閉じてしまうのが、なんとも可笑しい奴らです。


2005年10月12日  <けなげな作物達 : 棉> 

この6月の香川県は、えらい空梅雨だった。
九州・四国全体がそうだったのだけれど、梅雨入りしました〜と地方気象台が宣言したとたん
ピタッと雨が止み
梅雨前線が、南へ南へと下がって行ってしまった。(おぉ〜〜い、行くなぁ〜〜〜!)
翌日からは、日照り続き。
おかげで、ちょうど発芽直後だった畑の作物達は、・・・ホンマに不憫なことになってしまった・・・。



その代表が、↑この棉。5月の終わりには、無事、可愛らしい双葉をのぞかせてくれたのだけれども
このあと
グングン成長するはずが・・・・・・・カラカラ天気が続いた6月半ばには



↑なんだこれは!??って、棉ですとも。
・・・可愛そうに、双葉が枯れ落ち、
やっと顔を出した本葉も、これ一枚きりが、かろうじて茎にしがみついている状態。
この先、伸びそうな若い芽も、先端には付いておらず、

ああ、こりゃもうあかん・・・

と思った。
なにせ、一緒に発芽した棉3株のうち、すでに2株は日照りで枯れ果て
最後に残った1株が、これだったから。

で、仕方が無いから、我々がどうしたかと言うと、
その後、近所の産直市場で、たまたま棉の苗を見かけ

「普段見かけない棉の苗を、今年ここで見たのは運命かも」

なんてことを考え、
苗を買って帰り、マンションのベランダで鉢植え栽培することにした次第。
それが、何度かトップページに載せてきた
棉のなのだけれども
そう、
ベランダの鉢は、毎日水やりが出来たおかげで、無事にグイグイと背を伸ばし



7月半ばには、↑こんな綺麗な花を咲かせてくれ、続いて、実も付いたのだ。
一方
その頃、畑の棉は言うと、本葉一枚の姿から、ひと月たってもほとんど背が伸びないまま。
本葉自体は2枚に増えたものの
そこからは、全然変化は無し。
枯れて倒れないのが不思議なほど、成長しない状態が、延々と続いていったのだった。

あかんなぁ・・・今年は、ホンマ、ダメやったなぁ・・・

15センチ足らずの株を見ながら
畑へ行くたびに、そう思っていた私達は、だから、その棉の写真も撮らなかった。


それが


ゴーヤがどんどん実を付け出した頃だから、7月も終わりだっただろうか、畑へって行ってみると
なんだか棉が、心なしか大きくなっている気がしたのである。

・・・・・・・・・・まさか

と、思いつつ、2週間後に行ってみると



あっと驚くタメゴロ〜〜

いやもう、そんな超お寒い、懐かしのギャグが口をついて出そうになるほど
激ビックリ!!!
いったい、いつの間にこんなことに。
思わず

誰かが植え替えたんと違うか???

とまで思った私達だけれど、
もちろん、そんなヒマなことをする人は、どこにもおらず、これは棉。私達の、あの棉なのだった!


以来、勢いがついたか、畑の棉はグングン成長し始め、脇芽を伸ばし、ついには





このような大きさに。いや、なんと、まぁ。

・・・この株、上に伸びる力が無いのをじっとじっと耐えて、我慢して
その間、必死で根を張り、根を伸ばしていたんやなぁ・・・


なんて思ったら、ちょっと・・・いや、かなり胸が熱くなってしまった私。

人間だってそうよね。
この棉みたいに生きにゃあ。

なんてことを感じ、励まされたり、慰められたり。
いやもう、この夏、この棉、どれほど私を力づけてくれたことか!
なにせ最初が↓だもの。







さて、季節は秋になったけれども、収穫期はこれかららしく、どんどん実を付けている畑の棉。

ただ

・・・・・どうやらこれ、ベランダの棉とは種類が違うらしく、花の色も違うし、葉の形も違う。
いや、まぁ、それは良いのだけれども

・・・なんだか実が、えらくでっかいのである。

どのくらいでっかいかって、
コットンボールがはじける前の、ベランダの棉の実が↓これなのに対して



↓これでっせ?????

 

もう、どう見ても、映画<リトルショップ・オブ・ホラーズ>に出て来た
人食い植物<オードリー2(オードリーツー)>にしか思えない、私達。

ねぇ、この中から、
ホンマに棉が出てくるんでしょうね???
この棉の種を下さった<日本綿業振興会>の方々!



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

<おまけ>

イノシシにほじくり返された、畑の哀れなサトイモ。
可哀想なので持ってかえって、水につけておいたら



               ↓



モダンアートのオブジェみたいなことに。これもまた、けなげだった、この夏の作物。


          
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