取扱説明書作成上の留意点 

.実際に取扱説明書を書くときは、以下のような諸点に留意が必要です。例文は、実際に使用されている取扱説明書の中から拾ったものです。いろいろな問題のある事例を集めて、事例集にすると若い人の教育資料となります。

1. 取扱説明書は、心で書く。これが全ての基本。心が十分でなければ、十分な取扱説明書にはならない。本件に付いては「取扱説明書は心で書く」に補足説明しました。

2. 服は、体に合わせる。製品は、取扱説明書に合わせる。製品に取扱説明書を合わすのではない。製品を見て取扱説明書を書いては時遅し。設計が悪ければ、説明をどう変えても使いよくはなりません。設計を直すべきです。取扱説明書に合わせて設計する心がけが必要です。

 仮名,漢字変換ソフト 
 ワードプロセッサ、表計算、E-メールなどで仮名を漢字に変換すると以下のメッセージが出ました。
 「このプログラムは、不正な処理を行ったので強制終了されます。終了しない場合は、プログラム製造元に連絡してください。」
 このエラーのときは、直前に作業したところは、保存されず、白紙になります。これはなんとしてもエラーを出さないように切りぬけるべきところです。止まるのは、ユーザーの処理と関係ありません。「不正があった」とは、穏やかでありません。エラーメッセージなど出さずに、設計を直すべきです。

3. よい取扱説明書を作るには、仕掛けが必要。剣道5級のものは5段のものに勝てない。5級の実力しかないものが作ったものをそのまま世に出せば通用しない。5段のものが見てから出す。
 担当者止まりで印刷では困ります。文のよしあし、説明のよしあし、設計のよしあしがわかる人の審査が必要です。設計の悪いところを見つけたら,設計差し戻しすることです。

 

4. 抽象的な言葉を避ける。「前向きに検討します。」式ではよい取扱説明書にならない。
抽象的な言葉:問題、検討、確認、改善、処理、対策、指導、向上、管理、徹底、点検、調整、編集


 自動車の時計の合わせ方
 ある人に,ある自動車の時計を合わすように頼まれました。取扱説明書を読んでも分からないとのことでした。取扱説明書の説明は、下記です。
 「時は、Hで調整してください。分は、Mで調整してください。」
 調整の仕方を書くのが取扱説明書です。「調整」ではよく分かりません。H,Mのボタンは、すぐ分かりました。時計は動いています。しかし、ボタンをを押しても変化は、ありません。しばらくして気がつきました。エンジンがかかっていないと時計合わせができません。以下のように説明することができます。
 「時計は、エンジンをかけて合わせてください。エンジンが止まっていると時計合わせができません。Hを押すごとに一時間進み、Mを押すごとに一分進みます。」
 
 

5. 難しい言葉を避ける。やさしくても読む人が理解できそうもない言葉は避ける。作るのは研究論文でなくて、取扱説明書である。

 インクジェットプリンタの用紙
 文具店で100枚入りのプリンター用紙を買いました。袋の裏に以下の説明がありました。
 「 インクを受容する極めて微細多孔質構造でかすれやにじみを防ぎます。 ドットの真円性が高く、フルカラー印刷の中でも黒が鮮明です。塗工層の吸収剤が印字後のすばやい乾燥を
促進、シワにならず裏うつりを防ぎます。」
赤字にした用語は、難しく、技術論文に使われるような部類です。このような言葉を使わず分かりやすく説明してほしいものです。
  

6. 言葉の定義を明らかにしてから使う。
 このホームページの作成ソフト
 「テキストを入力する
  編集領域にテキストを入力します。キーボードから入力するテキストは、編集領域中のカーソル(点滅する縦線)の位置に挿入されます。」
 いきなり編集領域といわれても困ります。巻末に索引は、ありますがこの言葉は、入っていません。厚い取扱説明書の中をあちこち捜しましたが分かりません。編集できる状態では、カーソル部分を含んで枠で囲われるので、どうやらそれを指すらしいのですが、編集領域がどのような働きを持っているのか、新しい編集領域にするには、どうすればよいのか今も分かりません。この取扱説明書は、難解な筆頭と思います。

7. 同じようにやれ、同じようにやるな。用語の統一。書式の統一。紙の大きさの統一。規格、基準の整備

 テンでわからない話 

「公文書作成の要領(1952年)」が内閣官房長官から各省庁に通達されているそうです。それによれば
     注2 句読点は、横書きでは「,」および「。」を用いる。
とあって、それ以来、公文書は、これに従っているようです。知人の調査によると教科書は、これに引きずられているそうです。こんなことで子供らにオヤと思わせるようなことは、しなくてもよいのにと思います。家電製品、自動車の取扱説明書をかなり見ましたが、この意味のないことを実行している会社は、ほとんどありません。ある大メーカーの取扱説明書は、横書きで「,」を使ってましたが最近は「、」を使っています。ある新聞社に聞いたら、横書きに「,」を使うのは、公文書の話。使い分ける意味がないし、新聞は、記事を縦にしたり、横にしたりで「、」で通しているとの話でした。同感です。「同じようにやれ」。


  化庁、国語審議会が絡んでいるらしく、文化庁のホームページにご意見を送りました。
 
2,000年2月9日追記 2,000年2月8日文化庁文化部国語課から回答頂きました。「今のところ改定の動きは特にないと承知しています。」ということでした。ここしばらく、句読点について公文書、教科書と民間の文書は、不統一のままです。普段気をつけていないと相違のあることに気づきません。

 This is a kind of red tape! という表現を思い出しました。

8. 必要な説明を落とさない。落とせば電話が増える。

 インクジェットプリンタ 

「印刷範囲が正しくありません。」
 何ページかある文書の一部の頁を印刷しようとしたら上のメッセージが出ました。あれこれやって分かったのは、ここで頁入力は、半角でないとだめなのです。それならば「半角で入力してください。」とあらかじめ断るべきです。入れた数字は、正しいのに「印刷範囲が正しくありません。」というようなトンチンカンな反応は困りものです。この場合は、説明よりも、全角だろうと、半角だろうと受け付けるようにするのが親切です。

 SCSIボード
 スキャナを買ってパソコンにつけました。このような周辺機器をパソコンにつなげるときには、インターフェースとなるSCSIボードをパソコンに組み込みます。取扱説明書と首っ引きで作業しました。SCSIボードの付属品にアクディブターミネータ、3.5インチフロッピーディスク、50ピンフラットケーブルが出てきました。いろいろなパソコンに使えるように、付属品も検討されているものと思います。しかし、素人は、全部セットアップのときに必要なのかよくわかりません。その辺の説明がよくありません。結局、私の機種は、どれも使わないでよいものでした。アクディブターミネータなど見たことないものにはゴロッと出てこられても困りものです。部品にわかるように表示が必要です。

9. 重複している言葉、不要な言葉を避ける。 

 カーナビゲーションの説明
 「運転中の音量は、社外の音が聞こえる程度の音量にしてお使いください」
 音量が重複しています。このような文が混じるのは、文を書いて読み直さないからです。また、文を読む力のある人が読まず、担当者任せの仕事だとこうなります


 デジタルビデオカメラ
 「メニュー画面の表示(撮影系メニュー画面)」
 文章すべからく簡単にする心がけが必要です。上は、取扱説明書の目次の一項目です。言葉を選ぶ努力がありません。
 ( )内のメニュー画面は、なければ説明にならないでしょうか。上の文章を下記にしても伝える意味は、同じような気がします。
 「撮影系メニュー」 これでよければ、字数=7/20=35%になります。

 「9画面の連続画像を撮る時は」
 同じ取扱説明書の目次からです。「画面」というのは、画数の多い字です。たださえ読みにくいのが取扱説明書です。下記程度でどうでしょうか。
 「連続9コマ撮り」
 字数=7/14=50%になりました。「画面」を「コマ」とすると画数=4/17=24%です。
 

10. 頭が獣、尾が魚のような文章にならないように。

 カーナビゲーションの取扱説明書
 「画面表示を変えるとき(オプション機能)
 地図色の変更や、フロントワイド表示、交差点拡大表示の有無がそれぞれ好みに

11. 不自然な日本語を避ける。

 
 ホームページ作成ソフト 

「この他にも、より高度なホームページを簡単に作成することを、可能にする、以下のツールが提供されています。」すんなりした文にしてほしいと思います。
 「現在編集中の文書が変更されている場合は、変更を保存する場合は「はい」、変更を保存しない場合は「いいえ」。変更した文書は、保存できます。
 「文書中の日時を入力する位置にカーソルを移動します。」何をさせようとしたの分かりません。文が整理されていません。
 「移動するイメージをドラッグし、移動する位置でドロップします。」「する」を「したい」と一字足すとすっきりします。 

12. 考えをよく整理して文にする。

 電気冷蔵庫の取扱説明書
 「本冷蔵庫は、「’96特定フロン規制対応冷蔵庫」です。
  冷蔵庫は、冷凍装置および断熱材にフロンを使用しています。フロンは、不燃性で直接的には人体に無害であるとともに、優れた特性があり、有用な化学物質の一つとして、現代文明の発達に大きく貢献しました。しかしながら、洗浄剤、噴射剤や「冷蔵庫」に使用されてきた一部(特定フロン)が、オゾン層の破壊を引き起こすとされ、1995年末までにその生産を全廃し、オゾン層に影響の少ない物質への切り替へを世界的に行うことになりました。」
 「フロンは優れた化学物質。一部有害となった。世界的に害の少ないものに切りかえる。」とありますが、「規制対応冷蔵庫は、こうなっている。」と書いてありません。もっとダイレクトに説明すべきです。

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