テンで分からない

改定2000年12月16日 
 

1. 横書き日本文の句読点について

横書き日本文は、三種類の句読点方式が存在します。最近まで三種類もあるとは、知りませんでした。一種類で十分と思いますが、いかがでしょう。三種類とは、以下の通りです。本件に付いては、朝日新聞にいろいろ教えていただきました。

1) 「、」と「。」
「現代国語表記辞典」(1994年三省堂)に『自治省「左横書き文書の作成要領」に掲げられた書き方。』とあるそうです。取扱説明書は、ほとんどこの方式と思います。一般に広く使われるようになってきました。

2) 「,」と「。」
「公文書作成の要領(1952年)」が内閣官房長官から各省庁に通達されているそうです。それによれば『句読点は,横書きでは「,」および「。」を用いる』とあるそうです。JIS規格は、国家規格のためか、この方式です。JISハンドブックにすると全63冊になります。5年に一度改訂版を出すとかで、今、2000年版を次々に、改定出版中です規格協会に、「今時、一般で使っていない方式をなぜ使うのか。JIS規格は、「同じことは、同じにやる」を基本に規格を整備しているはず。」と意見を送りました。答えにくいのか、なしのつぶてです。教科書もこの方式なので文化庁に意見を送りました。2000年2月8日文化庁文化部国語課から回答頂きました。「今のところ改定の動きは特にないと承知しています。」ということでした。ここしばらく、句読点について公文書、教科書と民間の文書は、不統一のままです。普段気をつけていないと相違のあることに気づきません。近く、国勢調査が始まります。「調査についてのお知らせ」が届きました。この文書は、公文書に属するのでしょう。この方式を使っています。お まけに、「,」の代わりにスペースで代用した部分もありました。その場限りの、適当な思いつきのような気がします。

3)「,」と「.」
「現代国語表記辞典」(1994年三省堂)に『欧文の書き方をそのまま取り入れたもので、科学的な論文などに用いられている。』とあるそうです。一部学会の論文執筆要領などが規定にありますが、その上位のルールがあるのかどうかは、分かりません。この方式を論文規定に入れている学会は、分かったものは、日本心理学会、育種学会です。

最近、取扱説明書を分かりやすいものにしようと活動しているテクニカルコミュニケータ協会が主催した「テクニカルコミュニケーションシンポジウム2000」の論文集を手に入れました。28件の論文のうち方式1)が24件、方式2)が3件、方式3)が1件でした。同じ論文集の中で同じ日本語で書いた文に使う句読点が三種類揃うというのはどんなものでしょう。

国勢調査で配られた文書は、「,」と「。」。.
社会保険庁から来た年金の手引は,「、」と「。」。

このばらばら状態は、「テンでわからない」ことです。大本のルールは、どれなのでしょう。

方式1)の「、」と「。」一本にまとめてはどうでしょうか。この意見を2000年09月07日、国語審議会に書き送ったのですが、2000年10月13日電話があり、「横書き日本文の句読点に3方式あるのは、承知している。今のところ改定の動きはない。国語審議会で句読点が審議されるときには、検討されることもありうる。」とのことでした。

追記2000年12月16日 ひたちなか市の図書館で政府発行の白書で読点がどうなっているのかみたのが下表です。てんでんばらばらです。版の大きさは、四種類。副題に年度が入りますが、西暦になったり、平成になったり。

No. 表題 年度 関係省庁 使用読点
 1   科学技術白書 平成12年版 科学技術庁 「、」
 2 環境白書 平成12年版 環境庁 「、」
 3 観光白書 平成12年版 総理府 「,」
 4 経済白書 平成12年版 経済企画庁 「、」
 5 警察白書 平成9年版 「,」
 6 原子力安全白書 平成11年版 原子力安全委員会 「,」
 7 原子力白書 平成10年版 原子力委員会 「、」
 8 厚生白書 平成7年版 厚生省 「,」
 9 交通安全白書 平成12年版 総務庁 「,」
10 公務員白書 平成12年版 人事院 「、」
11 高齢社会白書 1999 総務庁 「,」
12 国民生活白書 平成12年版 経済企画庁 「、」
13 青少年白書 平成11年版 総務庁 「,」
14 中小企業白書 2000年版 中小企業庁 「,」
15 通商白書 2000 通商産業省 「,」
16 犯罪白書 平成10年版 法務省 「,」
17 防衛白書 平成10年版 防衛庁 「、」
18 防衛白書 平成12年版 防衛庁 「、」
19 防災白書 平成10年版 国土庁 「,」
20 労働白書 平成12年版 労働省 「、」

JIS規格を見ていて思いましたが、パラパラと見たところ用語には、気をつけているようで、常用漢字がよく守られているみたいです。用語を決めるときのよりどころにしては、と思います。ついでにJISを作る規格協会で、用語集を作ってくれたらと思いました。下記は規格票から拾った言葉です。

及び、可とう管、けた、充てん、すべて、すみ肉、その他、など、防せい油、漏れる、ねじ、又は、めっき

2. 同じようにやれ、同じようにやるな。

本件は、句読点の問題だけでなく「同じようにやれ、同じようにやるな。」という事例としても教訓に満ちていると思い、取り上げました。
今の日本で色々問題が起きますが、それは、「心」に欠けるところがあるためです。「心」不足を補う着眼点の一つに「同じようにやれ、同じようにやるな。」があります。

「同じようにやれ。」 同じでよいことは、ルールを決めて「同じようにやる」ことが非常に重要です。好き勝手にやる方が楽ですから、みな、自分流にします。「同じようにやる。」気持ちがないので、句読点は、「,」「。」、「、」「。」、「,」「.」と同じ横書き日本文に対して、三方式もできてしまいます。文部省、自治省、各学会と好き勝手で、同じようにやる気持ちがありません。ルールを決めて同じようにやる大事さが日本には、浸透していないので、臨界が起こるかもしれない大事な作業をルールなしに、バケツでやるのです。「心」が十分でない人が作業をやるわけですから、質のよい仕事をするためには、「心」をもってルールを作り、それを守らせることが重要です。
ルールを作るときに、周りを見まわさないのもよくありません。目の前の非常に狭い範囲だけを見てルールを作ります。その結果、同じ内容を決めたルールがいろいろな形で、いろいろなところに入ってしまいます。これでは、ルールを守ることが難しくなります。サッカーをやるときに、あるときは、ダンボール書いたルールを持ち出し、あるときは紙切れに書いたルールを持ち出したのでは試合になりません。横書き日本文の句読点ルールが、文部省、自治省、各種学会のルールブックに入ってしまっては揃いません。ルールが決まっていない、決まっていても断片的、あっちこっちに入っているなど、たくさんの事例があります。そうならないように整理することは、非常に大事です。

「同じようにやるな。」
 昨日こうやっていたからと、無反省に同じようにやることは、戒めなければなりません。句読点がばらばらなのは、昨日、今日の話ではなく、相当長く数十年続いていることです。その間、反省がありませんでした。変えるべき内容を、面倒だから、当面、痛くないからと、放置しておくのは、よくありません。文化庁に「横書き日本文の句読点が三方式もあることは、必要ない。一般に浸透している「、」「。」方式にしたら。」と提案しましが、前述したように、手をつける様子は、ありません。

「同じようにやれ、同じようにやるな。」は、非常に大事な着眼点で、周りを見ると、いろいろな事例に気がつくはずです。是非見まわしてください。

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