〜サル(2)  庚申信仰の猿 … 庚申塔、庚申塚
60日に一度の庚申(コウシン・カノエサル)の夜、人々は寝ずに「庚申待ち」を行った。
また、庚申塔や庚申堂(塚)などが建てられた。
庚申の「申
(サル)」から、猿が庚申の使いとされた。
庚申信仰と猿

吹上観音(埼玉県和光市)の庚申塔

庚申信仰とは
庚申信仰は中国の道教の伝説に基づくもので、日本には平安時代に入り、室町時代を経て江戸時代に盛んになった民間信仰である。
 
人間の体の中には「三尸(さんし)の虫」という虫がいて、60日に一度くる庚申(コウシン・カノエサル)の日の夜、人が寝ている間に体から抜け出して天帝にその人の罪過を告げに行く。すると、天帝はその罪状に応じて、邪鬼に命じてその人の寿命を縮めるという。
そこで、人が寝なければ三尸(さんし)の虫は体から抜け出して罪過を告げに行けないので、庚申の夜は講中の人々が集まって、飲食や談笑しながら寝ずに夜を明かした。これを
「庚申待ち」という。

庚申の「申(サル)」から「猿」が庚申の神使とされた。これには天台宗の修験者などが庚申に関わったことから、比叡山の地主神、山王(日吉大社)の神使「猿」の影響もあってのことと思われる。なお、神道の庚申の主神は、「申(猿)」から猿田彦神とされたともいわれる。

庚申塔前にある神使の猿像は、寝ないで起きていることを示すためか衣服を着てくつろいだ姿をしていて、「庚申待ち」をしている様子にみえる。また、三猿が神使として対の像とされて奉納されたものもある。
なお、庚申塔に刻まれた「見ざる・聞かざる・言わざる」の
三猿は、「自分たちの罪状を見聞きしたり、天帝に告げないで欲しい」との願望を表現したもので、神使の猿像とは別のものである。
庚申の本尊( A:仏教系 と B:神道系 )
(A):庚申の本尊には、仏教(道教)系の青面金剛(ショウメンコンゴウ)が一番多い。
(B):次いで神道の猿田彦神が祀られている。
(C):他にも帝釈天、
   山王権現、大日・阿弥陀・釈迦・薬師の如来や観世音・地蔵の菩薩、不動明王なども祀られ
   た。
   庚申信仰(特に猿田彦神)は道祖神信仰とも習合し、庚申塔は道標の役も担うようになった。