〜イヌ(4)  怪物を退治した伝説の犬たち(1)
怪物を退治した伝説の犬たち

 酷似したパターン(内容)の「犬の怪物退治」伝説が山形県などに多く残る。
これらに登場する犬は、いずれも他所から連れてこられ、格闘の末怪物を退治したが、自身も息絶えた。助けられた村人たちによって神社や寺に祀られ、犬像も置かれている。
しかし、これらの犬像は一対で奉納されている場合でも
「伝説の主人公」であって、厳密には「神使」とは言いがたい。

丹波の「めっけ犬」のムジナ退治 
 椙尾神社の裏の高舘山に怪物が棲んで田畑を荒らすので、それをなだめるため、村人は毎年祭の日に若い娘を人身御供に差し出す習いになっていた。
祭の日に通りかかった六部(修験者)がこのことを聞いて訝しく思い、怪物の正体を見極めようと椙尾神社に身を潜めて窺った。
すると二匹の怪物が現れ、「このことを丹波のめっけ犬に聞かせるな」と何度かつぶやきながら、娘の身を二つに分けて持ち去った。
これを聞いた六部は、丹波で怪物の恐れる「めっけ犬」を探し出して翌年の祭の日に連れ帰った。
めっけ犬を娘の替りに神社に納ると、めっけ犬と怪物とは血みどろの格闘になった。翌朝村人が神社に行ってみると、正体を現した二匹の年を経た大狢(オオムジナ)が噛み殺されていて、めっけ犬もその傍らで息絶えていた。
村人はめっけ犬を手厚く葬り、椙尾神社と村の守護神とした。
この故事に因んで「大山犬祭」が行われている。
椙尾(スギオ)神社の「めっけ犬」

 上述の「めっけ犬」の伝説に基づいて、大山犬祭りでは、子供たちが張子の犬や、人身御供を模した籠を引くという。
めっけ犬は丹波(兵庫県北部)から連れて来られたとされるが、この庄内地方は、丹波から逃れてきた崇峻天王の皇子・蜂子皇子が推古天皇元年に羽黒山を開山するなど、丹波とは古くから強い結びつきがあった。
 なお、丹波の大川神社(舞鶴市)では、大川明神の神使の狼を「遣い狼」としていたとされる。
もしかすると、めっけ犬はこの社の狼だったかもしれない。

   
 椙尾神社
 山形県鶴岡市馬町
 JR羽越本線羽前大山駅から北へ25分

  

   

参道石段の踊り場左右に
こんな感じで祭られている
めっけ犬