会計報告・予算へ

2022~23年度活動方針

 2022年12月10日総会にて採択

 202212月現在、新型コロナウイルス感染症の第8波を迎え、感染症の流行には依然として警戒が必要だ。しかし私たちの生活には様々な問題があり、その問題性を社会に訴え行かなければならない。パンデミック下においても、自分が自分らしく生活することは何時でも誰からも侵されない権利である。障害連はこの認識を基に、今年度は次の課題に取り組む。なかでも16は力を入れる項目である。

 

1.生命の選別を許さない取り組み

新型コロナのまん延が長期化し日本も、医療のトリアージが行われているようになってしまった。障害や病気等による生命の選別を許さない取り組みを強化する。

 

2.安心できる介助・看護の保障を

新型コロナで陽性者・濃厚接触者になった場合、それ以外の病気になった場合、従来通り介助を受けられるようにするため、万が一入院した際は障害状況に対応した介助が受けられるように、引き続き国や自治体にアプローチしていく。

 

3.総括所見を活かすための取り組み

 202210月、国連の障害者権利委員会は、第1回対日審査の総括所見(確定版)を公表した。残念ながら、日本政府は総括所見を無視した福祉政策をとっている。他団体と連携しながら、障害者権利条約や総括所見の内容に合った福祉施策になるよう訴えていく。

 

4.シームレスな介助システムの確立による地域自立生活の促進

 重度訪問介護を通勤通学など、あらゆる場面でシームレスに使えるような見直しを進め、どのような障害をもっていても施設から地域への移行をはじめとして本人の望む場所で生活できるように求める。

 

5.所得保障

生活保護や親の扶養に頼ることなく、地域で尊厳を持って生活できる年金制度の改善や社会手当の創設等を含む所得保障を求める。他団体との協力を得て、議員等に働きかけながら、自立生活に関する経済的支援について厚生労働省と話し合いをもっていく

 

6.谷間のない障害者福祉法制を

現行の仕組みでは疾病名や診断基準で年金・手当・障害福祉サービスが決定されている。しかし必要なのは、その当事者の生活のニードに基づく公的支援である。障害者の定義を障害者基本法のそれと同じにし、制度に谷間を生まないようにしていく。

 

7.入所型施設における人権

相模原事件のように、施設問題は構造的に根深い。入居者の自己決定権保障等に対して取り組む。

 

865歳問題への取り組み

65歳になると介護保険に移行するが、介護保険のメニューには社会参加や見守りがない。一人の障害者がそれまでの生活水準を落とすことがないような制度を求めていく。

 

9.交通機関や建築のアクセシブル化

交通機関や、店舗などのアクセシブル化は大きな課題である。移動の自由や社会参加が容易になれば、他の市民との平等が実現されていく。

 

10.インクルーシブ教育の実現

障害があってもなくても、同じ場所で学ぶ権利は侵されてはならない。インクルーシブ教育の重要性を広め、学校設備などや教員等の意識の変革など、環境の整備を求める。

 

11.障害者虐待防止法の改正

病院や施設、時には家族からも障害者は虐待を受け易い。通報義務を課すなど法律の規制を強化したり、地域社会との連携を強くすることによって、虐待をなくしていく。

 

12.デジタル化への対応

そのこと自体、障害者にとって生活の質を向上していくことになることは間違いない。しかしそこから取り残されてしまう場合もあり、格差が拡大しないように注視していく。また、障害者手帳のマイナカードへの紐づけがなし崩し的に行われないように注視していく。

 

13.労働について

重度訪問介護を受ける人たちの雇用が大きな課題となっている。障害が重くても働けるようにする。

 

14.災害時などへの対応

最近、台風や地震など大規模災害が多発している。避難所の受け入れ態勢など課題が多い。

 

15.障害者基本法改正

 国連の総括所見を受け、全般的な法律の改正、例えば差別を受けた場合の具体的な対応策が示される法律への改正などを求める。

 

●活動体制

◎本活動方針記載の運動にあたってはDPIやJDなどと幅広く連携する。

◎事務局の強化、世代交代、そして新しい団体の受け入れなど引き続きの課題である。

◎働いている障害者が障害連に参加しやすいように、当事者の意見を聴きながら会議設定等を変えていく

 

 

2021年度 活動報告

2022年12月10日総会にて採択

●障害連の取り組み

〔1型糖尿病障害年金不支給問題〕

 2021年度の一番の朗報は、同問題の東京訴訟の勝訴である。この訴訟は、1型糖尿病により公的支援が必要にもかかわらず、医学的な診断で障害年金が不支給になったのはおかしいとして、障害連メンバーのひとりが国を相手取って2018年から争ってきた。障害連は、裁判の傍聴行動や、制度の谷間問題を取り上げた集会を開くなど、医学モデルに固執する国の姿勢を問題視してきた。裁判には勝ったが、国は医学モデルの基準を変えておらず、国に訴えるべきことは依然多い。

 

〔ハンドル型電動車いす〕

 ハンドル型電動車いすのメンバーが地元のバス会社に乗降を拒否されている。障害連は交渉や乗車検証に参加し、メンバーを支援した。身近な問題を解決していくことは、極めて大切であり、メンバーがバスを自由に乗ることができるようになるまで支援することが重要である。

 

〔所得保障〕

 障害のある人が地域で自立生活を営みやすくなるためには、人の支援とともに経済的な給付が必要だ。自立生活に対する障壁を無くすため、所得保障の運動を再開。12月に国会議員に働きかけ、6月に立憲民主党の勉強会にも障害連のメンバーが参加した。

 

 

●シンポジウム

 910()、障害連はシンポジウム「「自分らしく生きる医療を」とはいうけれど・・・~障害当事者の視点から医療を考える~」をオンラインで開いた。 医療について障害当事者、医師を交えて考えることができた。答えは見いだすことができなかったが、身近な医者を味方につけることの大切さなどの問題を共有することができた。

 

●行政交渉

 昨年11月と今年10月に厚生労働省と、7月に東京都と対面で交渉を行なった。厚労省交渉は福島みずほ議員事務所を通して事前に回答をもらいその上で交渉できたことで、議論の糸口ができた。今後の交渉では、東京都などにおいても事前回答型を提案していきたい。

 

●他団体との連携

 今年度も他団体と連携した運動も行なった。DPI(障害者インターナショナル日本会議)とは白井幹事を中心に、常任委員会、各種イベントに参加、1型糖尿病障害年金不支給問題などで協力した。JD(日本障害者協議会)とは複数のメンバーが各種会議に参加し、全身性障害の当事者の意見を積極的に伝えた。世界や国連の状況を伝える翻訳作業に協力し、JDF(日本障害フォーラム)の障害者差別解消委員会とパラレルポート特別委員会にJDの枠として参加した。骨格提言の完全実現を求める大フォーラムとも複数のメンバーが、様々な役割を持って関わることができた。

 

【活動体制】

 加盟団体が増え、役員会の東京以外に住むメンバーや女性も増え、議論により多くの視点が加わった。役員会のオンライン開催は利点もある一方で、参加できないメンバーがいる。また近年から課題となっている、事務局作業が特定の人に偏っている状態は解消されていない。

 これらの運営課題を取り除きつつ、全身性障害者や難病をもつ人たちの人権と生活の確立に向け、次年度も積極的な活動をしていきたい。

 

2021~22年度活動方針

 

 2021年度は昨年度と同様、新型コロナウイルス感染症流行の状況下のスタートとなる。しかしパンデミック下においても、自分が自分らしく生活することは何時でも誰からも侵されない権利である。障害連はこの認識を基に、今年度は次の障害者運動に取り組む。なかでも16は力を入れる項目である。

 

1.生命の選別を許さない取り組み

新型コロナのまん延が長期化し日本も、医療のトリアージが行われているようになってしまった。障害や病気等による生命の選別を許さない取り組みを強化したい。

 

2.安心できる介助・看護の保障を

新型コロナで陽性者・濃厚接触者になった場合、それ以外の病気になった場合、従来通り介助を受けられるようにするため、万が一入院した際は障害状況に対応した介護が受けられるように、引き続き国や自治体にアプローチしていく。

 

3.所得保障

生活保護や親の扶養に頼ることなく、地域で尊厳を持って生活できる年金制度を含む所得保障を求める。所得保障に関する実態把握(アンケート等)を行いながら、自立生活に関する金銭的支援について厚生労働省と話し合いをもっていく

 

4.谷間のない障害者福祉法制を

疾病名や診断基準で年金・手当・障害福祉サービスが決定されることが圧倒的におおい。しかし必要なのは、その当事者の生活のニードに基づく公的支援である。障害者の定義を障害者基本法のそれと同じにし、制度に谷間を作らせないようにしていきたい。

 

5.シームレスな介助システムの確立による地域移行の促進

 重度訪問介護を通勤通学など、あらゆる場面でシームレスに使えるような見直し進め、どのような障害をもっていても施設から地域への移行をはじめとして本人の望む場所で生活できるように求める。

 

6.入所型施設における人権

相模原事件のように、施設問題は構造的に根深い。入居者の自己決定権保障等に対して取り組む。

 

765歳問題への取り組み

65歳になると介護保険に移行するが、介護保険のメニューには社会参加や見守りがない。一人の障害者がそれまでの生活水準を落とすことがないような制度を求めていく。

8.交通機関や建築のアクセシブル化

交通機関や、店舗などのアクセシブル化は大きな課題である。行動の自由や社会参加が容易になれば、他の市民との平等が実現されていく。

9.インクルーシブ教育の実現

障害があってもなくても、同じ場所で学ぶ権利は侵されてはならない。インクルーシブ教育の重要性を広め、学校設備などや教員の意識の変革など、環境の整備を求める。

10.障害者虐待防止法の改正

病院や施設、時には家族からも障害者は虐待を受け易い。法律の規制を強化したり、地域社会との連携を強くすることによって、虐待をなくしていきたい。

11.デジタル化への対応

そのこと自体、障害者にとって生活の質を向上していくことになることは間違いない。しかしそこから取り残されてしまう場合もあり、格差が拡大しないように注視していきたい。

12.労働について

重度訪問介護を受ける人たちの雇用が大きな課題となっている。障害が重くても働けるようにしたい。

13.災害時などへの対応

最近、台風や地震など大規模災害が多発している。避難所の受け入れ態勢など課題が多い。

14.障害者基本法改正

 差別を受けた場合の具体的な対応策が示される法律への改正を求める。

 

●活動体制

◎本活動方針記載の運動にあたってはDPIやJDなどと幅広く連携する。

◎事務局の強化、世代交代、そして新しい団体の受け入れなど引き続きの課題である。

◎働いている障害者が障害連に参加しやすいように、当事者の意見を聴きながら会議設定等を変えていく

2020年度 活動報告

 

 2020年初めから猛威を振う新型コロナウイルス感染症の大流行は2年目に入ろうしている。新型コロナは、感染拡大ともに私たちの生活や運動に大きく影響をもたらす。こうしたなか障害連では2020年度、感染防止に努めながら、例年以上に障害者のいのちと生活の権利擁護を進める運動をしてきた。まだ不十分な部分も多々あるが、今後周期的に起こるとされる感染症流行の時期(パンデミック)における運動の継続方法を試行錯誤しながら模索できた。

 

2020年度の主な運動

 201017日に障害連シンポジウム「コロナ禍と、私たち」を開催した。違った障害を持つ4名の登壇者から、コロナ禍の生活不安や各自の運動のやり方を話していただき、運動を継続する大切さが共有できた。

 反・優生思想に関しては、同年1127日に「生殖補助医療法案に関する緊急要望書」を出した。生殖補助医療法は、「心身ともに健やかに生まれ、かつ、育つことができるよう」という優生思想につながる文言があり、その削除を強く求めた。新型コロナウイルス感染症が急増する中、厚生労働省や東京都へ要望書や意見交換で「いのちの選別は絶対行わないでほしい」と随時要望した。

 オリンピック・パラリンピック東京大会について、障害者に暴力を振うっていた者を開閉開式の音楽担当者として採用したことに対する抗議(217月)や、感染爆発のもとで開催することへの懸念を声明(85日、813日)として発出した。

 コロナ禍の生活を共有し記録する試みとして、「コロナ禍が及ぼす障害者の社会参加の影響に関するアンケート」を213月~8月に行った。感染予防で生活が揺らいでいるなどの実態が現れた。

 行政との意見交換会の持ち方に苦慮した。意見交換は対面ではやりとりが活発・スムーズになりアプリの設定もいらない。しかし感染懸念がある。東京都の意見交換会(216月)は、オンラインを模索したが、試行錯誤の結果、対面型となった。この意見交換会では、障害者のコロナ入院者の把握意義、コロナ禍において難治性疾患をもつ人の医療を受けやすくすること、空き家も活用した住宅施策を要望した。厚生労働省の意見交換会は対面型またはオンライン型を検討していたが、感染爆発により書面回答となった(21年8月末)。同意見交換会では、新型コロナ入院のデータ蓄積、生活施設での監査指導の強化と、第三者機関の設置などを要望していた。

 

●他団体との連携

 2020年度も他団体の活動に積極的に参加した。骨格提言の完全実現を求める大フォーラムの事務局に寄与し、日本障害者協議会(JD)の政策委員会等に毎回メンバーが複数参加した。DPIへは白井さんが中心的な役割となり、協力関係を深めた。

 

●活動体制

 加盟団体が増え、役員会の女性参加も増えジェンダーバランスが改善されたことは喜ばしい。一方、役員会のオンライン開催で、参加できないメンバーがいる。また近年から課題となっている、事務局作業が特定の人に偏っている状態は解消されていない。

 これらの運営課題を取り除きつつ、全身性障害者や難病をもつ人たちの人権と生活の確立に向け、次年度も積極的な活動をしていきたい。

 

2020~2021年度活動方針

 

2020年冬からコロナ禍に見舞われ、障害者にとってこれまでにない厳しい環境となった。さしあたって、コロナ感染症に対応した取り組みが求められる。

1.安心できる介助・看護の保障を

陽性が認められたり、濃厚接触者になったりして、入院等になった場合、従来通り介助を受けられるようにするため、障害状況に対応した介助・看護が受けられるように、引き続き国や自治体にアプローチしていく。

2.生命の選別を許さない取り組み

最近、ALS殺人やコロナ禍で問題になっている人工呼吸器等の装着という状況の中で、障害者や高齢者からそのような機械が外されていくということを聞く。生命の選別を許さない取り組みを強化したい。

3.谷間のない障害者福祉法制を

疾病名や診断基準があること=障害というような医学モデルによる障害観がいまだに支配的である。障害者の定義を障害者基本法のそれと同じにし、制度に谷間を作らせないようにしていきたい。

4.シームレスな介助システムの確立による地域移行の促進

 重度訪問介護を通勤通学など、あらゆる場面でシームレスに使えるような見直しを進め、どのような障害をもっていても施設から地域への移行をはじめとして本人の望む場所で生活できるように求める。

5.65歳問題への取り組み

65歳になると介護保険に移行するが、介護保険のメニューには社会参加や見守りがない。一人の障害者がそれまでの生活水準を落とすことがないような制度を求めていく。

6.所得保障

生活保護や親の扶養に頼ることなく、地域で尊厳を持って生活できる年金制度を含む所得保障を求める。当面、住宅手当を要求していく。

7.交通機関や建築のアクセシブル化

交通機関や、店舗などのアクセシブル化は大きな課題である。行動の自由や社会参加が容易になれば、他の市民との平等が実現されていく。

8.インクルーシブ教育の実現

障害があってもなくても、同じ場所で学ぶ権利は侵されてはならない。インクルーシブ教育の重要性を広め、学校設備などや教員の意識の変革など、環境の整備を求める。

9.入所型施設における人権

相模原事件のように、施設問題は構造的に根深い。入居者の自己決定権保障等に対して取り組む。

10.障害者虐待防止法の改正

病院や施設、時には家族からも障害者は虐待を受け易い。法律の規制を強化したり、地域社会との連携を強くすることによって、虐待をなくしていきたい。

11.デジタル化への対応

そのこと自体、障害者にとって生活の質を向上していくことになることは間違いない。しかしそこから取り残されてしまう場合もあり、格差が拡大しないように注視していきたい。

12.労働について

重度訪問介護を受ける人たちの雇用が大きな課題となっている。障害が重くても働けるようにしたい。

13.災害時などへの対応

最近、台風や地震など大規模災害が多発している。避難所の受け入れ体制など課題が多い。

14.障害者基本法や障害者差別解消法の改正

 差別を受けた場合の具体的な対応策が示される法律への改正を求める。

◎上記の運動にあたってはDPIやJDなどと幅広く連携する。

◎事務局の強化、世代交代、そして新しい団体の受け入れなど引き続きの課題である。

2019年度 活動報告

 

今年に入り、新型コロナウイルスが世界的に蔓延し、私たちの活動も例年とは異なったものを余儀なくされ、新しい試みだが、役員会はオンライン開催となっている。

20202月に東京都に要望書を提出。交渉を持った。内容は入院時の介助保障、災害時の対応などであったが、都からは具体的な目新しい回答を引き出せなかった。

コロナウイルスの蔓延にともない、4月に国と都に対して要望書を提出、国からは文書回答があり、「入院時において障害特性に対応した介助をする」旨が示されたが、実際はどうかという情報はなく、障害者にとっては厳しい状況が続く。

2019年のシンポジウムは、テーマを「障害者解放運動が問うてきたもの」とし、青い芝の会の運動、考え方を振り返り、今後の課題を明らかにしていった。

昨年10月「骨格提言の完全実現を求める大フォーラム」が開かれ中心的な役割を果たしながら参加した。またDPIJDにも役員を送り込み、障害連の考え方を反映させていった。

昨年は旧優生保護法下での強制不妊手術の裁判が各地で行われたが、優生思想は見えない形で人々の意識にいまだに巣くっている。1型糖尿病の年金不支給の裁判も佳境に入ってきた。

障害連は尾上新代表の下、世代交代が行われ、過渡期にある。役員会も個人史を話し合う時間が設けられたが、オンライン役員会となり休止状態となった。

事務局作業は、特定の人に偏りがちであり、これからの運動の広がりを考えると決していい状況とはいえない。FAXレターやホームページの作業は活動に欠かすことはできない。

全身性障害者や難病をもつ人たちの人権と生活の確立に向け、これからも活動を前進させていきたい。


2019年度重点課題

2019年8月31日総会にて採択

1.       バリアフリーなど、インクルーシブをめざす活動

2020年は東京オリンピック、パラリンピックが予定されており、海外から多くの障害者も来日することが

想定される。交通機関やホテルなどのバリアフリー化は完全なものとはなっていない。一方で名古屋城の復元について、「エレベータをつけない」姿勢を名古屋市長は崩しておらず、地元の障害者団体との対立は解消されていない。障害のあるなしに関わらず、平等に生きられる社会をめざすには、バリアフリーの進展は不可欠で、そういう視点を“場”で考えるならば、教育のインクルーシブを実現させていくことが求められている。

 2.障害者総合支援法に対する取り組み

 障害者総合支援法改正で、重度訪問介護サービスによる入院時のヘルパー利用が認められ、わずかに前進したが、対象者が厳しく限定され、課題も多い。また、重度訪問介護が“通勤”“通学”で使えないというのが、社会参加の視点で深刻な問題を引き起こしている。改善に向けて強く意見提起を行っていく。

いわゆる[65歳問題]は深刻さを増しているが、厚生労働省は本人の意向も尊重するとし、強引な介護保険への移行は行わない方向性も述べている。障害特性やニーズに基づくサービスの提供を強く訴えていきながら、安易な介護保険との統合が行われることがないように注視する

 

 3.優生手術をはじめとする優生思想に対する取り組み

 旧優生保護法下の強制不妊手術については、仙台地裁が違憲判決を出し、なお、全国各地で裁判が続けられているが、国の争う姿勢は変わっていない。一方で、被害者に対する一時金法がつくられたが、国会は正式に謝罪していない。国の政策は、優生思想と向き合ったものにしなければならない。また、尊厳死問題については、反対の姿勢を明確にする。障害者の生きる権利の否定のみならず、生命そのものへの軽視につながりかねない政策に対する総括を求めるとともに、生きる権利がきちんと保障される社会を目指す観点で取り組んでいく。

 4.障害者の地域生活支援に向けた取り組み

「施設から地域へ」というスローガンが聞かれて久しいが、現在も多くの障害をもつ仲間たちが施設で暮らすことを余儀なくされている実態が続いている。骨格提言に基づく地域移行のための政策を行うよう国に対して働きかけていく。また、現在ある施設の居住条件を改善していくことも重要であるし、住宅問題という切り口からの働きかけや政策提言活動も重要である。

一方で、精神保健福祉法改正法案では、措置入院の機能強化や医療保護入院における市町村同意の拡大など、地域移行とは逆行しており、精神障害をもつ当事者と連帯してこの問題に取り組んでいく。

 5.社会的支援の谷間におかれた難病や全身性障害者等の問題

いわゆる「制度の谷間」と呼ばれる問題は、これまでの施策が障害名や病名に着目し、その対象を規定し続けていることによって生じている。障害名や病名ではなく、支援の必要性にもとづく施策への転換を図っていくべく、基金を創設し、社会的支援の谷間におかれた人が必要とする社会的支援を受けられるよう引き続き重点的に取り組む。
 その他、重要性や緊急度の高い課題については、状況に応じて適宜取り組んでいく。

 

2019年度活動方針

2019年8月31日総会にて採択

 

 障害者運動の長年にわたる取り組みによってようやく障害者差別解消法が成立し、障害者権利条約も批准・発効された。

 しかし、権利条約ベースでの政策形成が喫緊の課題とされる中、見直し時期が来ている、あるいは過ぎている障害者差別解消法や、障害者基本法の見直しについて、議論が深まりを見せていない現状にある。

冒頭で述べた障害者差別解消法は、大きな一歩を踏み出したとはいえ、民間事業者に対する合理的配慮が努力義務にとどまっていることや、紛争解決の仕組みが不十分であることなど、次の見直しに向けた課題が多く残されている。

また、障害者差別解消法は自治体における上乗せ・横出しの条例の制定を妨げておらず、各地域における条例策定の取り組みも重要である。

さらに、社会保障全体が切り下げの方向にある中で、改正障害者総合支援法は、権利条約や骨格提言の水準からは程遠い改正にとどまっている。

 このように、一連の障がい者制度改革によって一定程度の成果をあげることはできたとはいえ、積み残した課題も山積している。

以上の情勢の中で、障害連は、DPIJD、ろうあ連盟、そしてJDFなど多くの障害者団体と連携し、特に当事者運動の重要性を認識し、強化する立場で、全国レベルの運動には取り組んでいきたいと考えている。

 

 近年、障害者運動の連帯関係がますます強まってきていることは大いに歓迎すべきである。

 一方で、「若返り」「本人中心」という古くて新しい課題に対していかに解決していくかが問われている。

 また、加盟団体に多い、全身性障害者の人権の確立と地域生活の保障、あるいは生活施設の改革についても引き続き力を注いでいきたいと考えている。

 

1)障害者権利条約のパラレルレポートづくり

 障害者権利条約が発効したものの、障害者権利委員会へ提出された国家レポートは国内の実情を十分に反映した内容とはなっておらず、民間によるパラレルレポート作りに対して、積極的にかかわっていかなくてはならない。

 2020年には国連障害者権利委員会による1回目の審査が行われる予定であり、現在、JDFを中心にパラレルレポートづくりが進められている。障害連として、加盟団体を通じて全身性障害者の生活実態に基づく意見提起をしていきたい。

 

2)差別解消法の見直しと条例策定

 障害者差別解消法が施行されて3年が経過した。この間、車いす利用者が航空会社に搭乗拒否される事案が発生したりするなど、障害者に対する差別的取扱いは起き続けている。こうした事案に対し、断固とした姿勢で臨んでいく。

 

3)障害者総合支援法の見直しについて

 20166月に成立した改正障害者総合支援法は、積み残した課題も多い。重度訪問介護の通勤・通学問題も通学のみ補助金事業で使えることになったものの、根本的な解決には至っていない。入院中のヘルパー利用も区分45の重訪利用者への拡大も今後の課題である。

 政府は地域包括ケアシステムを進めようとしているが、介護保険との統合という考え方を変えたわけではなく、財政問題から出てきている問題と認識すると、注意深く見ていく必要がある。

障害連は、どんなに障害が重くても地域社会の中で誇りを持って生きていけるような政策へと転換すべきだと考えてきた。状況がどうであれ、このスタンスを貫いていく。

 

4)扶養義務の見直しと個人単位を基本とする法制度の整備

 総合支援法の費用負担の考え方は今でも「世帯単位」となっている。家族扶養の問題の本質は基本的に変わっていない。

障害のある人たちの独立と自由を妨げている原因の大きな理由として、日本の家族主義と、それに基づく各種の制度がある。日本の障害者福祉は「親がかり福祉」と呼ばれていたくらいである。特に民法の扶養義務規定はその象徴的存在であり、最大の障壁ともいえる。先進欧米諸国の多くがそうであるように、子に対する親の扶養責任は、原則として成年に達するまでとし、それ以降については社会が共同の責任を負うという考え方に変えていかなければならない。具体的には、民法の改正によって扶養義務範囲の見直しが図られるべきで、日本の社会サービスが世帯単位から個人単位へと切り替わることが今後強く求められる。

 

5)脳死問題と尊厳死をめぐって

 臓器移植法改正により脳死を人の死と法的に規定されてしまったが、議員立法による尊厳死法案(終末期における患者の意思の尊重に関する法律案)を成立させようと動きは依然として続いている。障害者の生きる権利の否定につながりかねない尊厳死法案は、胃ろうや人工呼吸器をつけて生活している人々にとどまらない深刻な問題をはらんでいる。この法案に対しては断固反対の立場で関係団体との連携のもと取り組んでいく。

脳死や尊厳死問題は共に命に優劣をつける点で共通しており、このような優生思想にもとづく政策を許さない姿勢を貫くことが重要である。

 

6)所得保障の確立

 現状における障害者の雇用環境や、個々の障害の状況を見渡したとき、働いて所得を得ることができない障害者が十分生活できる年金制度の確立が急がれてならない。家族に依存することなく、十分に生活できるだけの障害を原因とする年金制度の確立である。また、就労をしていても、労働に費やせる時間の制約から十分生活できるほどの収入を得られない障害者への補足的な所得保障の仕組みも必要である。

 また無年金障害者問題については一定の解決方向への兆しがあった時期もあったが、外国籍の障害者は新しい制度の給付金の対象から外されているなど、まだまだ解決すべき課題は多く残されている。

 障害年金を巡っては、1型糖尿病の当事者を中心に障害の程度等が変わっていないにもかかわらず、更新時に障害年金の支給を打ち切られたという問題が起きている。また、本来障害年金を受給できる状態にあると思われるような人が申請をしても却下されてしまうといった問題が起きており、大阪と東京で提訴されている。関係団体と協力しながらこれらの裁判への支援もしていきたい。

 

7)雇用

 昨年は、中央官庁など行政機関が長期間障害者雇用を水増ししていたという極めて深刻な実態が明らかにされた。今後そうしたことが起きないよう、合理的配慮や、権利擁護システムを強化すべきである。

さて、障害者雇用促進法の重度障害者のダブルカウント方式は、実雇用率の数字上のマジックを生じさせてしまうので、廃止していく必要がある。改正障害者雇用促進法では、精神障害者が法定雇用率に算定されることとなった。さらに、雇用における差別解消として、民間事業者にも合理的配慮の提供が義務付けされたことは一歩前進といえる。

 今後より多くの重度障害者が就労できるように広い視野に立ち検討していく必要がある。パソコンを使った在宅就労の普及と理解、勤務日数や勤務時間の柔軟化、専門性を発揮できるための大学教育と企業との連携なども検討されてよいだろう。経済状況が厳しく労働市場の深刻化が叫ばれ、「ワークシェアリング」という言葉が飛び交っているが、このことをチャンスととらえ、きちんと企業が要請する業務をこなす技能や専門性があれば、毎日長時間仕事をしなくてもすむ社会が到来しつつあることを意味する。そのような観点に立った職業施策、あるいは障害者雇用政策の検討が求められている。

 

8)脱施設化(地域での自立生活を可能とする基盤整備)

 施設収容福祉から地域福祉への転換が大きな課題となっている。好んで施設や病院で暮らしている人はいない。国は、骨格提言にもあるとおり、施設を段階的に減らしていく目標をたて、施設整備に代わる地域移行支援等、様々な支援サービスの基盤整備と、それらの具体的な数値目標の設定を求めていく必要がある。

一方で、現在ある施設の居住条件については、利用者の人権が守られたものにしなければならず、生活の自由や、施設運営への利用者参加権の保障、プライベート空間の保障などを実現させなければならない。また、施設の在り方として常時滞在する場としてだけでなく、体調に応じて地域と施設を自由に行き来できるような形で施設の存在意義を見出していくという考え方もあるだろう。

 

 さて、精神障害者に対する政策をみる時、相模原障害者殺傷事件を契機に社会的入院の解消を阻むかのような精神障害者への監視、具体的には、退院後支援に警察を入れるなど、そうした危険な動きもつくられてきている。引き続きこの動きに対して、精神障害をもつ当事者とともに断固反対していく。

 

9)住宅

 障害者の住宅問題は、日本の住宅政策の遅れとも相まって深刻である。東京都は、経済的・物理的な観点から障害者が民間の住宅に住むことが難しい実態があるにもかかわらず、公営住宅の新設を否定しつづけている。それにもかかわらず、民間住宅の家賃補助を行うことについても消極的な姿勢を示している。

 他方、既存の民間住宅は築年数がかなり経過している建物も多く、住居内のバリアフリー化ができたとしても、マンションの入口から住居までの共有部に関しては大家だけなく管理組合との交渉になり、バリアフリー化が難しいという問題もある。

 空きがでている民間住宅の一部を自治体が借り上げ、安価な賃料で障害者が入居できるような施策を進めるなど、住宅問題の解決に向けた働きかけを強化していくことも重要である。

 

10)制度の谷間におかれた人たちの問題

 ニーズに対応した施策の必要性は、特定の障害者だけのものではない。障害者総合支援法では一部の「難病等」が法の対象に加えられ、疾患数も適宜追加されているが、支援を必要とする難治性疾患や慢性疾患の人たちの多くは依然として包含されていない。難病については、2015年から難病法が施行されているが、研究の必要性から対象を規定する構造自体は変わりなく、難病をもつ人の支援の必要性に基づく法整備が求められる。現行の福祉法でも、なお包含されない「難病」の人たちや、「高次脳機能障害」、「全身性障害者」など従来の枠組みではカバーしきれない人たちの生活問題は深刻なものとなっている。他の障害者と同様に、ニーズに応じた各種の支援サービスが実施されるべきであり、この問題についてはあらたに基金をつくり障害連として取り組んでいきたい。

 

11)教育

 日本が2014年に批准した障害者権利条約では、障害児者が自分の可能性を最大限に発達し、自由な社会に効果的に参加することを目的とした教育が述べられている。これは、自分の住み慣れた地域の学校で、(他の社会資源も使いながら)学校の責任によって、障害のない子どもと一緒に育てられることである。しかし日本の教育は分離教育の思想が根底にあり、上述の教育とはほど遠い。

障害連では、障害児も他の者と同じように、自分の地域の学校に通い、学校が子どもに必要な合理的配慮を行うべきであると考えている。そのことにより、障害がある人ない人が幼いうちに関わりあうことで自然にお互い接することができるようになると思う。この考え方にたち、他団体をサポートするかたちで、以下のことをしていきたい。

 学校教育法施行令では、就学先(通常の学校か特別支援学校か)の決定は、本人・保護者の意見も尊重しつつも、「最終的には市町村教育委員会が決定する」とされているが、原則は、特別支援教育の考え方には、本質的な部分で変わっていないといえる。障害を理由に、本人及び保護者の意に反し、子どもの頃から分離させる、あるいは分離するようにしむけけることは、障害当事者にとって非常に屈辱的である。

どんな障害であろうと地域の学校で学ぶことを原則とする制度にしていく必要がある。その考え方を前提とした上で、本人・保護者の真の意見が教育現場でどの程度尊重されているか、就学手続きに不当性がないか監視していく。

 20176月、「東京インクルーシブ教育プロジェクト」が設立され、東京でさらなる、分けない教育を進んでいこうという気運が高まっている。また東京、全国では、保護者に対して学校が、子どものつきそいを求めることが多くあり、親の学校つきそいの強制をなくす運動を展開されている。障害連はこれらの運動を強く連携・サポートし、インクルーシブ教育の重要性を訴えていく。

 

12)情報・コミュニケーション

 AIやITが進化していく中で、障害の重い人たちがこれらのツールを使い、自由に情報をキャッチしたり、提供していくことがさらに容易になっていくことによって、社会生活や人間関係を豊かになっていくことと考えられる。言語障害を持つ人たちも音声認識の技術の精度が高められていけば、生活状況も変わっていくと考えられる。

 聴覚障害の分野になるが、手話を言語として位置付けさせ、更に普及させる必要があるだろう。選挙における通訳保障の問題など、あらゆる場面で聴覚障害者などに対するコミュニケーション保障を確立していく必要がある。障害連としても意思疎通に困難のある人たちを包括した支援について当事者が主体的に考え、情報・コミュニケーション保障に取り組んでいく必要があるだろう。

 

13)バリアフリー

 「ハートビル法」と「交通バリアフリー法」が一体化されて、新しいバリアフリー法になって以来、12年ぶりにバリアフリー法が改正された。移動権の明記などは実現しなかったものの、評価会議が設けられたことや社会的障壁の除去が入ったことなど評価できる点もあった。とはいえ、小規模店舗や電車とホームの隙間や段差の解消など、個別具体的な課題の解消、という点では極めて不十分な内容にとどまっている。今後は地域のマスタープラン作りなど地方におけるバリアフリーの取り組みを進めていく取り組みが次の法改正に向けて重要である。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、国際パラリンピック委員会(IPC)が世界的なバリアフリー整備の基準として定めている「IPCガイドライン」によるバリアフリー化への取り組みはより一層重要になっている。

 

14)補助機器・支援機器

 車いすや松葉杖、補聴器など、障害者が人的支援ではなく、器具や機械を使い、自立生活を送るうえで、補助機器・支援機器(福祉用具)の果たす役割は大きい。ひとりひとりの障害に対応したこれらの機器が、さらに開発されていくことが求められている。人的支援も重要であるが、これらの機器を障害者が使いこなし生活していくことは、自己実現の達成感という観点から格別の意味を持つ。機器の開発にあたっては、障害者のニードは何かをきちんと把握していく必要があり、当事者の参画が重要となる。

 今後、補装具の単価等についての見直し、支援機器の品目の見直し、利用者へのサービス体制の整備等、障害者本人のための補助機器・支援機器の開発、体制の確立に向けての課題は多く、議論を深めていく必要がある。

 

15)災害対策など

 東日本大震災の復興も途上の中、20164月には熊本地震により甚大な被害が出ている。熊本学園大学の取り組みはインクルーシブ避難所のありようを示してくれた一方で、難病や発達障害など、避難所では生活することが難しく車中泊をせざるを得ない人たちがいたことも忘れてはならない。災害時における合理的配慮はいかに権利として担保されるのか、平時から考えておく必要がある。また、一般の避難所や仮設住宅などを誰もが使えるようにはじめからユニバーサルデザインを標準化していくような視点や取り組みも重要である。

 また、災害時のための要援護者登録制度は対象者の範囲をはじめ制度の運用には自治体間格差が生じている。災害時に援護を要するすべての人が登録できるように自治体間格差を解消する必要がある。また、作成した名簿が災害時にきちんと活用されるようにすることも重要である。

 “温暖化”が進む中、甚大な被害を発生させる大雨や台風などは日常的なものとなりつつある。早急に災害対策を立てなければならない。

 

16)その他

①政策について

 脳性マヒ者など全身性障害者の二次障害問題は深刻なものとなっている。関係団体等と緊密な連絡を取り合いながら、この問題に対する行政的支援や、調査等の重要性について訴えていきたい。

 東京都における差別禁止条例策定に向けた取り組みについては、DPI東京行動委員会やJDF東京の活動に協力して進めていく必要がある。一方で、障害連単独でも東京都に対し、住宅、まちづくり、介護、医療、等々の問題で積極的な行動をとっていく必要性がある。

 障害連は、障害の重い人たちの生活と権利の獲得をめざし、大きな団体が集まってないが忘れてはいけない課題をきちんと押さえていき取り組んでいくことに大きな意味があると言えよう。

 

②組織運営上について

 障害連の世代交代は着実に成果が出てきており、若手のメンバーの活動範囲についても徐々に広がりを見せている。これは喜ばしいことである反面、事務局体制という視点から見れば、若手の活動範囲の広がりに伴い、現行体制の維持も難しくなってきているのが大きな課題となっている。現行メンバーによる役割分担により、事務負担を分散させつつ、新しい人材を集めることも必要である。

また実務面においては、引き続きホームページの更新に努め、障害連事務局FAXレターの発行によって、全身性障害者にとって重要なニュースを発信していきたいと考えている。

 さらに財政上の課題として、毎年約数十万円程度を取り崩している現在の財政状況に歯止めをかけるべく、事務局手当の廃止やカンパ募集などの対策を講じており、一定の成果は表れてきつつある。

 障害連事務局スタッフの育成は、役員の育成とともに引き続き具体的に取り組まなければならない。

 政策提言という観点からは、課題ごとの各種シンポジウムを開催していきたい。

 

2018年度活動報告

2019年8月31日総会にて承認

 

旧優生保護法で行われた強制不妊手術の被害者が、2018年に札幌、仙台、東京、静岡、大阪、兵庫、熊本で国賠訴訟を提起したことを受け、障害連ではDPI日本会議の各都道府県への緊急要請などに加わり、情報の発信に努めた。今年4月に超党派議連による救済法は成立したが、救済にはほど遠い内容で早期の改正が求められている。仙台では国の責任を認めつつ補償はしないという、ねじれた判決が出されて直ちに控訴、その他の訴訟も継続している。引き続き全力で応援していく。 

障害連シンポジウム2018では「自立生活を実現するために――65歳問題・支給量を巡る運動と訴訟から考える」をテーマに、尾上事務局次長からは自立生活をはじめた実体験を、長岡健太郎弁護士より65歳になった途端に支給量や内容が大きく変わったり自己負担が発生したりする実態がそれぞれ報告され、今後の課題や具体的な方策が話し合われた。

『骨格提言』の完全実現を求める10.30大フォーラムは、かねてより実行委員会へ参加し、当事者が中心となり開催された。JDDPIとの連携は課題のままであるが、65歳問題について、骨格提言で「介護保険対象年齢になった後でも、従来から受けていた支援を原則として継続して受けることができるものとする。」と提言されていることもあり、各団体と連携を更に深めて完全な実現を求めていく。

太田参与は、JDJDF関係の活動を行い、JDFの障害者差別解消法改正要望づくりなどに中心的役割を果たした。また白井事務局次長は、DPI日本会議事務局次長としても業務をこなし、差別解消法関係や、JDFの権利条約の履行状況に対するパブリックコメントづくりに貢献した。

障害連でも独自に東京都、厚生労働省との意見交換を行った。障害連からは特に入院時のヘルパー派遣について、自宅で一日24時間だった介助が6時間しか認められなかった実情を伝え、行政が実態を把握すること、自治体へ働きかけることを要求した。全体的に大きな進展は見られなかったが、担当者へ実情を伝えていく道筋ができた。また、当日は千葉県や静岡県など遠方の加盟団体も参加し、団結を強められたことは大きな成果である。実態の詳細を明らかにして交渉するべく、障害連で当事者と自治体へのアンケート調査を行った。

西田事務局長が原告である1型糖尿病障害年金裁判は、3回の口頭弁論で障害連をはじめDPI、10.30大フォーラムからも多くの傍聴支援が行われた。一方、事務局の作業は滞りがちになり事務局会議は1度も開催しなかった。役員会はおおむね月1回開催し、活動方針が話し合われた。FAXレターは15号を配信し、ホームページの更新も重ねて積極的に情報発信を努めた。作業の負担は太田参与へ集中したが、新たに強力な人材が加わり、分担が進められつつある。事務局の安定に向けて引き続き人材を求めていく。

正会員には、12月に滋賀県のCILだんないが加盟した。滋賀県障害者差別解消条例の要綱案に「発達段階に応じ」と記載されていた教育関連の文章削除を求め、条例が修正された。今年6月には東京都のパーソナルアシスタント町田が加盟した。重度の障害者が地域社会で自立生活を送ることができるように、当事者の連帯を広めていく。

2018年度重点課題

2018年8月5日総会にて採択

 1.反バリアフリーの動きに対する抗議活動

障害者権利条約の批准、差別解消法の施行、そしてバリアフリー法の改正がされている中、名古屋城は天守閣の復元にあたり、エレベーターを設置しない決定をしている。この問題は歴史的建造物であればバリアフリー整備をしなくてもよい、という誤った考え方を広めるものであり、全国的な問題としてとらえる必要がある。障害のある人や高齢者、ベビーカーに乗っている子どもなど、移動困難者に対する差別を許さないという姿勢で関係団体とともに取り組んでいく。

 2.障害者総合支援法に対する取り組み

 障害者総合支援法改正では、入院時のヘルパー利用が認められるようになる等、わずかな前進部分があった一方で、対象者が厳しく限定されていることなど、運用レベルでの課題も多く残されている。今後の次なる見直しの中で対象拡大をはじめ、引き続き必要な意見提起を行っていく。

 また、「我が事・丸ごと」政策においては、その具体像は未だみえてきていないものの、実質的な介護保険との統合策になりうる懸念はぬぐいきれない。社会保障全体にかかわる問題でもあり、障害者当事者としての立場を切り口としてこの問題についても中長期的に取り組んでいく。

 3.優生手術をはじめとする優生思想に対する取り組み

 旧優生保護法下で行われた不妊手術の被害実態が次々と明らかになっており、全国各地で裁判が起こされている。国会議員による超党派議連では救済法案の提出も検討されているが、国は裁判で争う姿勢を崩していない。国はこれを機に優生思想としっかり向き合うべきである。障害者の生きる権利の否定のみならず、命そのものへの軽視につながりかねない政策に対する総括を求めるとともに、生きる権利がきちんと保障される社会を目指す観点で取り組んでいく。

 4.障害者の地域移行に向けた取り組み

「施設から地域へ」というスローガンが聞かれて久しいが、現在も多くの障害をもつ仲間たちが施設で暮らすことを余儀なくされている実態が続いている。骨格提言に基づく地域移行のための政策を行うよう国に対して働きかけていく。また、現在ある施設の居住条件を改善していくことも重要であるし、住宅問題という切り口からの働きかけや政策提言活動も重要である。

一方で、精神保健福祉法改正法案では、措置入院の機能強化や医療保護入院における市町村同意の拡大など、地域移行とは逆行しており、精神障害をもつ当事者と連帯してこの問題に取り組んでいく。

 5.社会的支援の谷間におかれた難病や全身性障害者等の問題

いわゆる「制度の谷間」と呼ばれる問題は、これまでの施策が障害名や病名に着目し、その対象を規定し続けていることによって生じている。障害名や病名ではなく、支援の必要性にもとづく施策への転換を図っていくべく、基金を創設し、社会的支援の谷間におかれた人が必要とする社会的支援を受けられるよう引き続き重点的に取り組む。
 その他、重要性や緊急度の高い課題については、状況に応じて適宜取り組んでいく。

2018年度活動方針

2018年8月5日総会にて採択

 

 障害者運動の長年にわたる取り組みによってようやく障害者差別解消法が成立し、障害者権利条約も批准・発効された。今後は権利条約をベースに国内法における既存の法制度を捉え直し、改革に向けた働きかけを行う障害者制度改革第2ラウンドの取り組みが極めて重要なものとなる。

 しかし、権利条約の批准以降、第4次障害者基本計画の策定はされたものの、条約批准前に改正された障害者基本法はいまだ改正がされていない。2019年に見直しの議論が始まる障害者差別解消法など各法律に対して優越的地位をもつとされる基本法を権利条約に即した内容へと改正させることは、個別の法律の改正に向けて極めて重要であり、法律改正させるための働きかけが重要課題となる。

冒頭で述べた障害者差別解消法は、大きな一歩を踏み出したとはいえ、民間事業者に対する合理的配慮が努力義務にとどまっていることや、紛争解決の仕組みが不十分であることなど、次の見直しに向けた課題が多く残されている。

また、障害者差別解消法は自治体における上乗せ・横出しの条例の制定を妨げておらず、各地域における条例策定の取り組みも重要である。東京都においては障害者差別解消条例が制定されたが、今後は紛争解決の仕組みがきちんと機能するようにするなど、条例の実効性を確保するための取り組みを都内の団体と連携して進めていくことが重要である。

さらに、社会保障全体が切り下げの方向にある中で、改正障害者総合支援法は、権利条約や骨格提言の水準からは程遠い改正にとどまっている。この逆境の中でいかに骨格提言に沿った見直しを実現できるのか、運動の力が問われている。

 このように、一連の障がい者制度改革によって一定程度の成果をあげることはできたとはいえ、積み残した課題も山積している。

以上の情勢の中で、障害連は、DPIJD、ろうあ連盟、そしてJDFと連携し、特に当事者運動の重要性を認識し、強化する立場で、全国レベルの運動には取り組んでいきたいと考えている。

 

 近年、障害者運動の連帯関係がますます強まってきていることは大いに歓迎すべきである。

 一方で、「若返り」「本人中心」という古くて新しい課題に対していかに解決していくかが問われている。

 また、加盟団体に多い、全身性障害者の人権の確立と地域生活の保障、あるいは生活施設の改革についても引き続き力を注いでいきたいと考えている。

 

1)障害者権利条約のパラレルレポートづくり

 障害者権利条約が発効したものの、障害者権利委員会へ提出された国家レポートは国内の実情を十分に反映した内容とはなっておらず、民間によるパラレルレポート作りに対して、積極的にかかわっていかなくてはならない。

 2020年には国連障害者権利委員会による1回目の審査が行われる予定であり、現在、JDFを中心にパラレルレポートづくりが進められている。障害連として、加盟団体を通じて全身性障害者の生活実態に基づく意見提起をしていきたい。

 

2)差別解消法の見直しと条例策定

 障害者差別解消法が施行されて2年が経過した。この間、総合支援法の国会審議において、参考人招致されていたALSの当事者の出席が拒否される事案が発生したり、車椅子利用者が航空会社に搭乗拒否される事案が発生したりするなど、障害者に対する差別的取扱いは起き続けている。こうした事案に対し、冷静かつ的確な意見提起をしていくことにより、法の趣旨を守らせていくとともに、次の差別解消法の見直しに向けて政策提言ができるよう準備する必要がある。

 また、地域協議会や条例制定等、それぞれの地域で運動を盛り上げていくことも重要な取り組みだろう。特に東京都が制定し、2018101日施行予定の障害者差別解消条例における紛争解決の仕組みなどに実効性をもたせることは重要課題であり、DPI東京やJDF東京の運動に積極的に参画していきたい。

 

3)障害者総合支援法の見直しについて

 20166月に成立した改正障害者総合支援法は、平成30年度施行に向けた報酬改定も行われ、一定の前進部分はあった半面、積み残した課題も多い。重度訪問介護の通勤・通学問題も通学のみ補助金事業で使えることになったものの、根本的な解決には至っていない。入院中のヘルパー利用も区分45の重訪利用者への拡大も今後の課題である。

 また、中長期的には厚労省が検討を進めている「我が事、丸ごと」政策への対応も求められている。障害・高齢、児童の縦割りの解消に加え、生活困窮者支援など社会保障全体におよぶ大きな改革が構想されており、障害連としては障害当事者の立場にもとづきながら、この大きな構想に対する意見提起・政策提言を行っていきたい。

障害連は、どんなに障害が重くても地域社会の中で誇りを持って生きていけるような政策へと転換すべきだと考えてきた。障害者総合支援法の今後の見直しに向けては権利条約19条や一般的意見5の他、骨格提言の内容に沿った改正を求めていくということを基本的なスタンスとして厚労省に対する提言活動など具体的な働きかけをしていきたい。

 

4)扶養義務の見直しと個人単位を基本とする法制度の整備

 総合支援法の費用負担の考え方は今でも「世帯単位」となっている。家族扶養の問題の本質は基本的に変わっていない。しかも、親族を含む家族間の扶養義務を強化する方向で法改正が進められており、難病法においても「生計中心者」から「世帯単位」へ変更されて運用されている。こうした動きに対し、危機感を持って断固反対していかなければならない。

障害のある人たちの独立と自由を妨げている原因の大きな理由として、日本の家族主義と、それに基づく各種の制度がある。日本の障害者福祉は「親がかり福祉」と呼ばれていたくらいである。特に民法の扶養義務規定はその象徴的存在であり、最大の障壁ともいえる。先進欧米諸国の多くがそうであるように、子に対する親の扶養責任は、原則として成年に達するまでとし、それ以降については社会が共同の責任を負うという考え方に変えていかなければならない。親ばかりではなく、周囲の人と関わることによって、社会性が育まれる。親亡き後も当事者が自分らしく生きていかれるようサポートが必要であると思う。具体的には、民法の改正によって扶養義務範囲の見直しが図られるべきで、日本の社会サービスが世帯単位から個人単位へと切り替わることが今後強く求められる。

 

5)脳死問題と尊厳死をめぐって

 臓器移植法改正により脳死を人の死と法的に規定されてしまったが、議員立法による尊厳死法案(終末期における患者の意思の尊重に関する法律案)を成立させようと動きは依然として続いている。障害者の生きる権利の否定につながりかねない尊厳死法案は、胃ろうや人工呼吸器をつけて生活している人々にとどまらない深刻な問題をはらんでいる。この法案に対しては断固反対の立場で関係団体との連携のもと取り組んでいく。

脳死や尊厳死問題は共に命に優劣をつける点で共通しており、このような優生思想にもとづく政策を許さない姿勢を貫くことが重要である。

 

6)所得保障の確立

 現状における障害者の雇用環境や、個々の障害の状況を見渡したとき、働いて所得を得ることができない障害者が十分生活できる年金制度の確立が急がれてならない。家族に依存することなく、十分に生活できるだけの障害を原因とする年金制度の確立である。また、就労をしていても、労働に費やせる時間の制約から十分生活できるほどの収入を得られない障害者への補足的な所得保障の仕組みも必要である。

 また無年金障害者問題については一定の解決方向への兆しがあった時期もあったが、外国籍の障害者は新しい制度の給付金の対象から外されているなど、まだまだ解決すべき課題は多く残されている。

 障害年金を巡っては、1型糖尿病の当事者を中心に障害の程度等が変わっていないにもかかわらず、更新時に障害年金の支給を打ち切られたという問題が起きている。また、本来障害年金を受給できる状態にあると思われるような人が申請をしても却下されてしまうといった問題が起きており、大阪と東京で提訴されている。関係団体と協力しながらこれらの裁判への支援もしていきたい。

 

7)雇用

 日本においては障害者雇用促進法において、障害者雇用政策がすすめられている。重度障害者のダブルカウント方式は実雇用率の数字上のマジックを生じさせてしまい、改善に向けた検討が課題となる。改正障害者雇用促進法では、精神障害者が法定雇用率に算定されることとなった。さらに、雇用における差別解消として、民間事業者にも合理的配慮の提供が義務付けされたことは一歩前進といえる。

 今後より多くの重度障害者が就労できるように広い視野に立ち検討していく必要がある。パソコンを使った在宅就労の普及と理解、勤務日数や勤務時間の柔軟化、専門性を発揮できるための大学教育と企業との連携なども検討されてよいだろう。経済状況が厳しく労働市場の深刻化が叫ばれ、「ワークシェアリング」という言葉が飛び交っているが、このことをチャンスととらえ、きちんと企業が要請する業務をこなす技能や専門性があれば、毎日長時間仕事をしなくてもすむ社会が到来しつつあることを意味する。そのような観点に立った職業施策、あるいは障害者雇用政策の検討が求められている。

 ただ、“働く”ことが人間の最大の価値であるかのように思われている社会をそのまま受け入れることは極めて危険である。たしかにそういう側面もあるかもしれないが、給料をもらって働くことだけが“働く”ことではない。自分を大切にしながら、社会にいろいろな影響力を与えていくことも“働く”ことなのである。

 

8)脱施設化(地域での自立生活を可能とする基盤整備)

 現在これまでの施設収容福祉から地域福祉への転換が大きな課題となっている。好んで施設や病院で暮らしている人はいないに等しい。国は、骨格提言にもあるとおり、施設を段階的に減らしていく目標をたて、施設整備に代わる地域移行支援等、様々な支援サービスの基盤整備と、それらの具体的な数値目標の設定を求めていく必要がある。

 しかし、とりわけ精神障害者に対する政策では、相模原障害者殺傷事件を理由に精神障害者への監視や社会的入院の解消を阻むかのような精神保健福祉法の改正案の動きがあったが、廃案に追い込むなど一定の成果を上げることができた。しかし、法律事項以外の部分についてはガイドラインで粛々と進められようとしており、引き続きこの問題については精神障害をもつ当事者とともに断固反対していく。

 一方で、現在ある施設の居住条件については、利用者の人権が守られたものにしなければならず、生活の自由や、施設運営への利用者参加権の保障、プライベート空間の保障などを実現させなければならない。また、施設の在り方として常時滞在する場としてだけでなく、体調に応じて地域と施設を自由に行き来できるような形で施設の存在意義を見出していくという考え方もあるだろう。

 

9)住宅

 障害者の住宅問題は、日本の住宅政策の遅れとも相まって深刻である。東京都は、経済的・物理的な観点から障害者が民間の住宅に住むことが難しい実態があるにもかかわらず、公営住宅の新設を否定しつづけている。それにもかかわらず、民間住宅の家賃補助を行うことについても消極的な姿勢を示している。

 他方、既存の民間住宅は築年数がかなり経過している建物も多く、住居内のバリアフリー化ができたとしても、マンションの入口から住居までの共有部に関しては大家だけなく管理組合との交渉になり、バリアフリー化が難しいという問題もある。

 空きがでている民間住宅の一部を自治体が借り上げ、安価な賃料で障害者が入居できるような施策を進めるなど、住宅問題の解決に向けた働きかけを強化していくことも重要である。

 

10)社会的支援の谷間におかれた人たちの問題

 ニーズに対応した施策の必要性は、特定の障害者だけのものではない。障害者総合支援法では一部の「難病等」が法の対象に加えられ、疾患数も適宜追加されているが、支援を必要とする難治性疾患や慢性疾患の人たちの多くは依然として包含されていない。難病については、2015年から難病法が施行されているが、研究の必要性から対象を規定する構造自体は変わりなく、難病をもつ人の支援の必要性に基づく法整備が求められる。現行の福祉法でも、なお包含されない「難病」の人たちや、「高次脳機能障害」、「全身性障害者」など従来の枠組みではカバーしきれない人たちの生活問題は深刻なものとなっている。他の障害者と同様に、ニーズに応じた各種の支援サービスが実施されるべきであり、この問題についてはあらたに基金をつくり障害連として取り組んでいきたい。

 

11)教育

 日本が2014年に批准した障害者権利条約では、障害児者が自分の可能性を最大限に発達し、自由な社会に効果的に参加することを目的とした教育が述べられている。これは、自分の住み慣れた地域の学校で、(他の社会資源も使いながら)学校の責任によって、障害のない子どもと一緒に育てられることである。しかし日本の教育は分離教育の思想が根底にあり、上述の教育とはほど遠い。

障害連では、障害児も他の者と同じように、自分の地域の学校に通い、学校が子どもに必要な合理的配慮を行うべきであると考えている。そのことにより、障害がある人ない人が幼いうちに関わりあうことで自然にお互い接することができるようになると思う。この考え方にたち、他団体をサポートするかたちで、以下のことをしていきたい。

 学校教育法施行令では、就学先(通常の学校か特別支援学校か)の決定は、本人・保護者の意見も尊重しつつも、「最終的には市町村教育委員会が決定する」とされているが、原則は、特別支援教育の考え方には、本質的な部分で変わっていないといえる。障害を理由に、本人及び保護者の意に反し、子どもの頃から分離させる、あるいは分離するようにしむけけることは、障害当事者にとって非常に屈辱的である。

どんな障害であろうと地域の学校で学ぶことを原則とする制度にしていく必要がある。その考え方を前提とした上で、本人・保護者の真の意見が教育現場でどの程度尊重されているか、就学手続きに不当性がないか監視していく。

 20176月、「東京インクルーシブ教育プロジェクト」が設立され、東京でさらなる、分けない教育を進んでいこうという気運が高まっている。また東京、全国では、保護者に対して学校が、子どものつきそいを求めることが多くあり、親の学校つきそいの強制をなくす運動を展開されている。障害連はこれらの運動を強く連携・サポートし、インクルーシブ教育の重要性を訴えていく。

 

12)情報・コミュニケーション

 情報社会で暮らしていくにあたって、他の市民と同様に情報を得ることと、自らの情報を発信できることが重要なことである。障害のある私たちがこの2つの活動を行うためには、①人による支援に加え、②ITによる支援が必要と考える。店、公共機関の従業員に本人の話をゆっくり聴いてもらうこと、介助者による会話支援を進めていく。また②ではパソコン・携帯電話などIT機器がひとりひとりの障害者の道具として活用されることが求められている。ひとりひとりの障害にあったハードやソフトの開発、サポート体制の充実は急がなければならない。

 またコミュニケーション問題としては、手話を言語として位置付けさせ、更に普及させる必要があるだろう。選挙における通訳保障の問題など、あらゆる場面で聴覚障害者などに対するコミュニケーション保障を確立していく必要がある。障害連としても意思疎通に困難のある人たちを包括した支援について当事者が主体的に考え、情報・コミュニケーション保障に取り組んでいく必要があるだろう。

 

13)バリアフリー

 「ハートビル法」と「交通バリアフリー法」が一体化されて、新しいバリアフリー法になって以来、12年ぶりにバリアフリー法が改正された。移動権の明記などは実現しなかったものの、評価会議が設けられたことや社会的障壁の除去が入ったことなど評価できる点もあった。とはいえ、小規模店舗や電車とホームの隙間や段差の解消など、個別具体的な課題の解消、という点では極めて不十分な内容にとどまっている。今後は地域のマスタープラン作りなど地方におけるバリアフリーの取り組みを進めていく取り組みが次の法改正に向けて重要である。

現在国土交通省は交通基本法を策定しようとしているが、障害を持つ当事者が建築設計の段階から、あるいは設備整備の段階から参加し、当事者自身の視点に基づいた整備が求められている。今後、自治体や事業者の責任をさらに明確化させることも重要である。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、国際パラリンピック委員会(IPC)が世界的なバリアフリー整備の基準として定めている「IPCガイドライン」によるバリアフリー化への取り組みはより一層重要になっている。

 今年も「誰もが使える交通機関を求める全国行動」に積極的に参加していく。また、「関東ネットワーク」の枠組みも活かしながら交通問題に取り組んでいく。

 

14)補助機器・支援機器

 車いすや松葉杖、補聴器など、障害者が人的支援ではなく、器具や機械を使い、自立生活を送るうえで、補助機器・支援機器(福祉用具)の果たす役割は大きい。ひとりひとりの障害に対応したこれらの機器が、さらに開発されていくことが求められている。人的支援も重要であるが、これらの機器を障害者が使いこなし生活していくことは、自己実現の達成感という観点から格別の意味を持つ。機器の開発にあたっては、障害者のニードは何かをきちんと把握していく必要があり、当事者の参画が重要となる。

 改正障害者総合支援法では、障害児の利用する補装具について貸与が認められるようになった。本人及び保護者の意向に反した強制的な貸与制度にならないよう、自治体の運用をみていく必要がある。

 自立支援法以来、契約の考え方が全面的に出されていき、市場化の方向へと動いるかにも見える。もちろん市場化は事業者と利用者とのあいだで新しい緊張関係が生み出され、それは悪いことばかりとは言い切れないものの、現状の障害者の経済力を考えると、利用者が自主的に利用制限を図っていく可能性は大きいといえる。そして今後、補装具の単価等についての見直し、支援機器の品目の見直し、利用者へのサービス体制の整備等、障害者本人のための補助機器・支援機器の開発、体制の確立に向けての課題は多く、議論を深めていく必要がある。

 

15)災害対策など

 東日本大震災の復興も途上の中、20164月には熊本地震により甚大な被害が出ている。熊本学園大学の取り組みはインクルーシブ避難所のありようを示してくれた一方で、難病や発達障害など、避難所では生活することが難しく車中泊をせざるを得ない人たちがいたことも忘れてはならない。災害時における合理的配慮はいかに権利として担保されるのか、平時から考えておく必要がある。また、一般の避難所や仮設住宅などを誰もが使えるようにはじめからユニバーサルデザインを標準化していくような視点や取り組みも重要である。

 また、災害時のための要援護者登録制度は対象者の範囲をはじめ制度の運用には自治体間格差が生じている。災害時に援護を要するすべての人が登録できるように自治体間格差を解消する必要がある。また、作成した名簿が災害時にきちんと活用されるようにすることも重要である。

 

16)その他の政策課題

 脳性マヒ者など全身性障害者の二次障害問題は深刻なものとなっている。関係団体等と緊密な連絡を取り合いながら、この問題に対する行政的支援や、調査等の重要性について訴えていきたい。

 東京都における差別禁止条例策定に向けた取り組みについては、DPI東京行動委員会やJDF東京の活動に協力して進めていく必要がある。一方で、障害連単独でも東京都に対し、住宅、まちづくり、介護、医療、等々の問題で積極的な行動をとっていく必要性がある。

 障害連は、障害の重い人たちの生活と権利の獲得をめざし、大きな団体が集まってないが忘れてはいけない課題をきちんと押さえていき取り組んでいくことに大きな意味があると言えよう。

 

その他組織運営上の課題

 障害連の世代交代は着実に成果が出てきており、若手のメンバーの活動範囲についても徐々に広がりを見せている。これは喜ばしいことである反面、事務局体制という視点から見れば、若手の活動範囲の広がりに伴い、現行体制の維持も難しくなってきているのが大きな課題となっている。現行メンバーによる役割分担により、事務負担を分散させつつ、新しい人材を集めることも必要である。

また実務面においては、引き続きホームページの更新に努め、障害連事務局FAXレターの発行によって、全身性障害者にとって重要なニュースを発信していきたいと考えている。

 さらに財政上の課題として、毎年約数十万円程度を取り崩している現在の財政状況に歯止めをかけるべく、事務局手当の廃止やカンパ募集などの対策を講じており、一定の成果は表れてきつつある。

 障害連事務局スタッフの育成は、役員の育成とともに引き続き具体的に取り組まなければならない。

 政策提言という観点からは、課題ごとの各種シンポジウムを開催していきたい。

2017年度活動報告

2018年8月5日総会にて承認 

衝撃的なことが続いている。一昨年にあった相模原の施設で元職員が、大量の障害者を殺傷する事件、そして今年に入り、旧優生保護法による強制不妊手術の実態が明るみにされ、その被害者の数は、少なく見積もっても16,000人とされ、私たちの想像を上回るもので、障害当事者や関係者の中で大きな動揺を与えるものとなった。

 障害連は昨年8月総会の後のシンポジウムを「私たちにとって、くらしの場とは何か? パート2」とし、施設や地域という生活の場の垣根を取り払い、暮らしやすくしていくにはどういう方策があるかなどについて、話し合っていった。相模原の事件もあり、障害者と介助者の関係性のあり方についても話が及んでいった。

 政府が地域包括ケア体制を進める中、障害連はDPI日本会議やJD、骨格提言の実現を求める10月フォーラムなど、他団体との連携を強めていった。DPI日本会議でも事務局次長に、白井障害連事務局長が就任、難病を持つ人の課題や、障害の重い人たちの生活課題をDPIの運動に反映させるべく、今後の活躍が期待される。JDでは太田参与が引き続き理事として政策提言し、自立支援法違憲訴訟団の中でその役割を果たしていった。

 10月のフォーラムは、西田事務局長や尾上事務局次長が関わり、10月の集会を当事者中心に開催することができた。DPIJD・大フォーラムがもう少し相互協力関係を強めることが望ましい。

 障害連としても、意見交換会を、厚生労働省や東京都と行っている。厚生労働省とは今年5月、介護問題、とりわけ65歳を過ぎた時の場合や、入院時の問題、そして今年は難病を持つ人の問題に時間をさいた。介護問題については、65歳を過ぎてもサービスや費用負担についてはいろいろな措置によって変わることがないようにする、という曖昧な回答が返ってきたが、全体としては具体的な進展はみられなかった。東京都については、障害者差別解消条例について、民間事業者の合理的配慮の義務化をしていきたい、との回答を得た。条例は私たちの運動が実り、今年10月施行される予定である。

 さて、ファックスレターでの配信、ホームページでのニュース更新など、情報を多くの人々に流すことに努めた。世代交代はある程度順調に進んでいるが、もう少し事務的なことについても広く若い人材を求めることが必要だ。

 役員会はほぼ月に1回開催し、方針などを確認し合いながら行ってきた。運動方針の中では、難病や全身性障害者の問題について、研究作業をしていくとしていたが、そこまでは手が回らなかった。障害連は障害の重い人たちの立場に立つという原則を守っていき、それをDPIJD、大フォーラムへと反映させ、これからも接着剤的な役割がさらに求められることだろう。

2017年度重点課題

2017年8月5日総会にて採択

 

1.東京都における障害者差別禁止条例策定に向けた取り組み

DPI東京実行委員会やJDF東京などを通じた働きかけにより、東京都における差別禁止条例策定に向けた議論が開始されている。障害者差別解消法では不十分な紛争解決の仕組みや差別の定義など、先行して条例を策定している自治体と同等以上の上乗せ・横出しを盛り込んだ条例となるよう、引き続き関係団体と連携して取り組んでいく。

 

2.障害者総合支援法の見直しに向けた取り組み

 障害者総合支援法改正では、入院時のヘルパー利用が認められるようになる等、わずかな前進部分があった一方で、対象者が厳しく限定されていることなど、運用レベルでの課題も多く残されており、報酬改定の議論の中で動向を注視し、必要な意見提起を行っていく。

 また、「我が事・丸ごと」政策においては、その具体像は未だみえてきていないものの、実質的な介護保険との統合策になりうる懸念はぬぐいきれない。社会保障全体にかかわる問題でもあり、障害者当事者としての立場を切り口としてこの問題についても中長期的に取り組んでいく。

 

3.尊厳死の法制化と優生思想に対する取り組み

 尊厳死法案提出は見送られたままであるが、なお法制化に向けた動きは続いている。また、津久井やまゆり園事件を通じて、まだなお優生思想が社会に根強く残っていることも明らかとなっている。これら障害者の生きる権利の否定のみならず、命そのものへの軽視につながりかねない政策に対して反対し、生きる権利がきちんと保障される社会を目指す観点で取り組んでいく。

 

4.障害者の地域移行に向けた取り組み

「施設から地域へ」というスローガンが聞かれて久しいが、現在も多くの障害をもつ仲間たちが施設で暮らすことを余儀なくされている実態が続いている。骨格提言に基づく地域移行のための政策を行うよう国に対して働きかけていく。また、現在ある施設の居住条件を改善していくことも重要であるし、住宅問題という切り口からの働きかけや政策提言活動も重要である。

一方で、精神保健福祉法改正法案では、措置入院の機能強化や医療保護入院における市町村同意の拡大など、地域移行とは逆行しており、精神障害をもつ当事者と連帯してこの問題に取り組んでいく。

 

5.社会的支援の谷間におかれた難病や全身性障害者等の問題

いわゆる「制度の谷間」と呼ばれる問題は、これまでの施策が障害名や病名に着目し、その対象を規定し続けていることによって生じている。障害名や病名ではなく、支援の必要性にもとづく施策への転換を図っていくべく、基金を創設し、社会的支援の谷間におかれた人が必要とする社会的支援を受けられるよう引き続き重点的に取り組む。

 

 その他、重要性や緊急度の高い課題については、状況に応じて適宜取り組んでいく。

2017年度活動方針

2017年8月5日総会にて採択

 

 障害者運動の長年にわたる取り組みによってようやく障害者差別解消法が成立した。不十分な点を残しつつも、障がい者制度改革による一連の国内法の整備が行われたことにより、障害者権利条約が批准・発効された。

 今後は権利条約をベースに国内法における既存の法制度を捉え直し、改革に向けた働きかけを行う障害者制度改革第2ラウンドの取り組みが極めて重要なものとなる。

また、冒頭で述べたように、障害者差別解消法は、大きな一歩を踏み出したとはいえ、民間事業者に対する合理的配慮が努力義務にとどまっていることや、紛争解決の仕組みが不十分であることなど、次の見直しに向けた課題が多く残されている。

また、障害者差別解消法は自治体における上乗せ・横出しの条例の制定を妨げておらず、各地域における条例策定の取り組みも重要である。東京都においても障害者差別解消条例作りの議論が始まっているが、よりよい条例を制定させるために都内の団体と連携して条例づくりに取り組んでいくことが重要である。

さらに、社会保障全体が切り下げの方向にある中で、成立した改正障害者総合支援法は、権利条約や骨格提言の水準からは程遠い改正にとどまっている。この逆境の中でいかに骨格提言に沿った見直しを実現できるのか、運動の力が問われている。

 このように、一連の障がい者制度改革によって一定程度の成果をあげることはできたとはいえ、積み残した課題も山積している。

以上の情勢の中で、障害連は、DPIJD、ろうあ連盟、そしてJDFと連携し、特に当事者運動の重要性を認識し、強化する立場で、全国レベルの運動には取り組んでいきたいと考えている。

 

 近年、障害者運動の連帯関係がますます強まってきていることは大いに歓迎すべきである。

 一方で、「若返り」「本人中心」という古くて新しい課題に対していかに解決していくかが問われている。

 また、加盟団体に多い、全身性障害者の人権の確立と地域生活の保障、あるいは生活施設の改革についても引き続き力を注いでいきたいと考えている。

 

1)障害者権利条約の国内モニタリング

 障害者権利条約が発効したものの、障害者権利委員会へ提出された国家レポートは国内の実情を十分に反映した内容とはなっておらず、民間によるパラレルレポート作りに対して、積極的にかかわっていかなくてはならない。

 また現在、障害者政策委員会で策定に向けた議論が開始されている第4次障害者基本計画は、権利条約批准後初の計画策定となることから、権利条約が求める水準の計画にしていくことが極めて重要となる。政策委員会の議論を注視し、必要に応じて意見提起を行っていく。

 

2)差別解消法の施行と条例策定

 障害者差別解消法が施行されて1年が経過した。この間、総合支援法の国会審議において、参考人招致されていたALSの当事者の出席が拒否される事案が発生したり、最近でも車椅子利用者が航空会社に搭乗拒否される事案が発生したりするなど、障害者に対する差別的取扱いは起き続けている。こうした事案に対し、冷静かつ的確な意見提起をしていくことにより、法の趣旨を守らせていくとともに、次の差別解消法の見直しに向けて政策提言ができるよう準備する必要がある。

 また、地域協議会や条例制定等、それぞれの地域で運動を盛り上げていくことも重要な取り組みだろう。特に東京都における差別禁止条例作りは差別解消法では不十分な紛争解決の仕組みを以下に実行力のあるものにしていくかという点で最重要課題でありDPI東京やJDF東京の運動に積極的に参画していきたい。

 

3)障害者総合支援法の見直しについて

 20166月に成立した改正障害者総合支援法は、平成30年度施行に向けた報酬改定の検討やサービスの内容や運用についての検討がはじまっている。こうした直近の課題について、障害当事者の立場から実状に即した意見提起を行っていく必要がある。

 また、中長期的には厚労省が検討を進めている「我が事、丸ごと」政策への対応も求められている。障害・高齢、児童の縦割りの解消に加え、生活困窮者支援など社会保障全体におよぶ大きな改革が構想されており、障害連としては障害当事者の立場にもとづきながら、この大きな構想に対する意見提起・政策提言を行っていきたい。

障害連は、どんなに障害が重くても地域社会の中で誇りを持って生きていけるような政策へと転換すべきだと考えてきた。骨格提言は賛同できるものである。厚労省の動きも見据えつつ、その実現に向けた提言活動など具体的な働きかけをしていきたい。

 

4)扶養義務の見直しと個人単位を基本とする法制度の整備

 総合支援法の費用負担の考え方は今でも「世帯単位」となっている。家族扶養の問題の本質は基本的に変わっていない。しかも、親族を含む家族間の扶養義務を強化する方向で法改正が進められており、難病法においても「生計中心者」から「世帯単位」へ変更されて運用されている。こうした動きに対し、危機感を持って断固反対していかなければならない。

障害のある人たちの独立と自由を妨げている原因の大きな理由として、日本の家族主義と、それに基づく各種の制度がある。日本の障害者福祉は「親がかり福祉」と呼ばれていたくらいである。特に民法の扶養義務規定はその象徴的存在であり、最大の障壁ともいえる。先進欧米諸国の多くがそうであるように、子に対する親の扶養責任は、原則として成年に達するまでとし、それ以降については社会が共同の責任を負うという考え方に変えていかなければならない。親ばかりではなく、周囲の人と関わることによって、社会性が育まれる。親亡き後も当事者が自分らしく生きていかれるようサポートが必要であると思う。具体的には、民法の改正によって扶養義務範囲の見直しが図られるべきで、日本の社会サービスが世帯単位から個人単位へと切り替わることが今後強く求められる。

 

5)脳死問題と尊厳死をめぐって

 臓器移植法改正により脳死を人の死と法的に規定されてしまったが、議員立法による尊厳死法案(終末期における患者の意思の尊重に関する法律案)を成立させようと動きは依然として続いている。障害者の生きる権利の否定につながりかねない尊厳死法案は、胃ろうや人工呼吸器をつけて生活している人々にとどまらない深刻な問題をはらんでいる。この法案に対しては断固反対の立場で関係団体との連携のもと取り組んでいく。

脳死や尊厳死問題は共に命に優劣をつける点で共通しており、このような優生思想にもとづく政策を許さない姿勢を貫くことが重要である。

 

6)所得保障の確立

 現状における障害者の雇用環境や、個々の障害の状況を見渡したとき、働いて所得を得ることができない障害者が十分生活できる年金制度の確立が急がれてならない。家族に依存することなく、十分に生活できるだけの障害を原因とする年金制度の確立である。また、就労をしていても、労働に費やせる時間の制約から十分生活できるほどの収入を得られない障害者への補足的な所得保障の仕組みも必要である。

 また無年金障害者問題については一定の解決方向への兆しがあった時期もあったが、外国籍の障害者は新しい制度の給付金の対象から外されているなど、まだまだ解決すべき課題は多く残されている。

 その他、障害年金の認定基準も見直されているが、その見直しが医学モデルをより強化する方向になっている点についても反対の姿勢で取り組む必要がある。

 

7)雇用

 日本においては障害者雇用促進法において、障害者雇用政策がすすめられている。重度障害者のダブルカウント方式は実雇用率の数字上のマジックを生じさせてしまい、改善に向けた検討が課題となる。改正障害者雇用促進法では、精神障害者が法定雇用率に算定されることとなった。さらに、雇用における差別解消として、民間事業者にも合理的配慮の提供が義務付けされたことは一歩前進といえる。

 今後より多くの重度障害者が就労できるように広い視野に立ち検討していく必要がある。パソコンを使った在宅就労の普及と理解、勤務日数や勤務時間の柔軟化、専門性を発揮できるための大学教育と企業との連携なども検討されてよいだろう。経済状況が厳しく労働市場の深刻化が叫ばれ、「ワークシェアリング」という言葉が飛び交っているが、このことをチャンスととらえ、きちんと企業が要請する業務をこなす技能や専門性があれば、毎日長時間仕事をしなくてもすむ社会が到来しつつあることを意味する。そのような観点に立った職業施策、あるいは障害者雇用政策の検討が求められている。

 ただ、“働く”ことが人間の最大の価値であるかのように思われている社会をそのまま受け入れることは極めて危険である。たしかにそういう側面もあるかもしれないが、給料をもらって働くことだけが“働く”ことではない。自分を大切にしながら、社会にいろいろな影響力を与えていくことも“働く”ことなのである。

 

8)脱施設化(地域での自立生活を可能とする基盤整備)

 現在これまでの施設収容福祉から地域福祉への転換が大きな課題となっている。好んで施設や病院で暮らしている人はいないに等しい。国は、骨格提言にもあるとおり、施設を段階的に減らしていく目標をたて、施設整備に代わる地域移行支援等、様々な支援サービスの基盤整備と、それらの具体的な数値目標の設定を求めていく必要がある。

 しかし、とりわけ精神障害者に対する政策では、相模原障害者殺傷事件を理由に精神障害者への監視や社会的入院の解消を阻むかのような精神保健福祉法の改正案が提出されるなど、地域移行と逆行するような政策提案がされている。この問題については精神障害をもつ当事者とともに断固反対していく。

 一方で、現在ある施設の居住条件については、利用者の人権が守られたものにしなければならず、生活の自由や、施設運営への利用者参加権の保障、プライベート空間の保障などを実現させなければならない。また、施設の在り方として常時滞在する場としてだけでなく、体調に応じて地域と施設を自由に行き来できるような形で施設の存在意義を見出していくという考え方もあるだろう。

 

9)住宅

 障害者の住宅問題は、日本の住宅政策の遅れとも相まって深刻である。東京都は、経済的・物理的な観点から障害者が民間の住宅に住むことが難しい実態があるにもかかわらず、公営住宅の新設を否定しつづけている。それにもかかわらず、民間住宅の家賃補助を行うことについても消極的な姿勢を示している。

 他方、既存の民間住宅は築年数がかなり経過している建物も多く、住居内のバリアフリー化ができたとしても、マンションの入口から住居までの共有部に関しては大家だけなく管理組合との交渉になり、バリアフリー化が難しいという問題もある。

 空きがでている民間住宅の一部を自治体が借り上げ、安価な賃料で障害者が入居できるような施策を進めるなど、住宅問題の解決に向けた働きかけを強化していくことも重要である。

 

10)社会的支援の谷間におかれた人たちの問題

 ニーズに対応した施策の必要性は、特定の障害者だけのものではない。障害者総合支援法では一部の「難病等」が法の対象に加えられ、疾患数も適宜追加されているが、支援を必要とする難治性疾患や慢性疾患の人たちの多くは依然として包含されていない。難病については、2015年から難病法が施行されているが、研究の必要性から対象を規定する構造自体は変わりなく、難病をもつ人の支援の必要性に基づく法整備が求められる。現行の福祉法でも、なお包含されない「難病」の人たちや、「高次脳機能障害」、「全身性障害者」など従来の枠組みではカバーしきれない人たちの生活問題は深刻なものとなっている。他の障害者と同様に、ニーズに応じた各種の支援サービスが実施されるべきであり、この問題についてはあらたに基金をつくり障害連として取り組んでいきたい。

 

11)教育

 日本が2014年に批准した障害者権利条約では、障害児者が自分の可能性を最大限に発達し、自由な社会に効果的に参加することを目的とした教育が述べられている。これは、自分の住み慣れた地域の学校で、(他の社会資源も使いながら)学校の責任によって、障害のない子どもと一緒に育てられることである。しかし日本の教育は分離教育の思想が根底にあり、上述の教育とはほど遠い。

障害連では、障害児も他の者と同じように、自分の地域の学校に通い、学校が子どもに必要な合理的配慮を行うべきであると考えている。そのことにより、障害がある人ない人が幼いうちに関わりあうことで自然にお互い接することができるようになると思う。この考え方にたち、他団体をサポートするかたちで、以下のことをしていきたい。

 学校教育法施行令では、就学先(通常の学校か特別支援学校か)の決定は、本人・保護者の意見も尊重しつつも、「最終的には市町村教育委員会が決定する」とされているが、原則は、特別支援教育の考え方には、本質的な部分で変わっていないといえる。障害を理由に、本人及び保護者の意に反し、子どもの頃から分離させる、あるいは分離するようにしむけけることは、障害当事者にとって非常に屈辱的である。

どんな障害であろうと地域の学校で学ぶことを原則とする制度にしていく必要がある。その考え方を前提とした上で、本人・保護者の真の意見が教育現場でどの程度尊重されているか、就学手続きに不当性がないか監視していく。

 20176月、「東京インクルーシブ教育プロジェクト」が設立され、東京でさらなる、分けない教育を進んでいこうという気運が高まっている。また東京、全国では、保護者に対して学校が、子どものつきそいを求めることが多くあり、親の学校つきそいの強制をなくす運動を展開されている。障害連はこれらの運動を強く連携・サポートし、原則統合を訴えていく。

 

12)情報・コミュニケーション

 情報社会で暮らしていくにあたって、他の市民と同様に情報を得ることと、自らの情報を発信できることが重要なことである。障害のある私たちがこの2活動を行うためには、①人による支援に加え、②ITによる支援が必要と考える。店、公共機関の従業員にで本人の話をゆっくり聴いてもらうこと、介助者による会話支援を進めていく。また②ではパソコン・携帯電話などIT機器がひとりひとりの障害者の道具として活用されることが求められている。ひとりひとりの障害にあったハードやソフトの開発、サポート体制の充実は急がなければならない。

 またコミュニケーション問題としては、手話を言語として位置付けさせ、更に普及させる必要があるだろう。選挙における通訳保障の問題など、あらゆる場面で聴覚障害者などに対するコミュニケーション保障を確立していく必要がある。一方、厚労省内で意思疎通支援について検討を行っている動きもある。障害連としても意思疎通に困難のある人たちを包括した支援について当事者が主体的に考え、情報・コミュニケーション保障に取り組んでいく必要があるだろう。

 

13)バリアフリー

 「ハートビル法」と「交通バリアフリー法」が一体化されて、新しいバリアフリー法になって久しいが、建築物や交通機関のバリアフリーは以前よりかは進んでいるし、新しいバリアフリー法によって面的整備が今後ますます進んでいくものと考えられる。しかし、障害者の移動や利用の権利や自由といった基本的な課題はいまだに法の中に明記されずにいる。特にハンドル型車イスなど、形状によって交通機関の利用を拒否している状況が続いている。

また格安航空機においては、電動車いすの搭乗を拒否したり、制限や条件を加えたりしている。さらに飲食店の入店拒否問題も物理的なバリアに留まらない問題を投げかけている。

現在国土交通省は交通基本法を策定しようとしているが、障害を持つ当事者が建築設計の段階から、あるいは設備整備の段階から参加し、当事者自身の視点に基づいた整備が求められている。今後、自治体や事業者の責任をさらに明確化させることも重要である。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、国際パラリンピック委員会(IPC)が世界的なバリアフリー整備の基準として定めている「IPCガイドライン」によるバリアフリー化への取り組みはより一層重要になっている。

 今年も「誰もが使える交通機関を求める全国行動」に積極的に参加していく。また、「関東ネットワーク」の枠組みも活かしながら交通問題に取り組んでいく。

 

14)補助機器・支援機器

 車いすや松葉杖、補聴器など、障害者が人的支援ではなく、器具や機械を使い、自立生活を送るうえで、補助機器・支援機器(福祉用具)の果たす役割は大きい。ひとりひとりの障害に対応したこれらの機器が、さらに開発されていくことが求められている。人的支援も重要であるが、これらの機器を障害者が使いこなし生活していくことは、自己実現の達成感という観点から格別の意味を持つ。機器の開発にあたっては、障害者のニードは何かをきちんと把握していく必要があり、当事者の参画が重要となる。

 改正障害者総合支援法では、障害児の利用する補装具について貸与が認められるようになった。本人及び保護者の意向に反した強制的な貸与制度にならないよう、自治体の運用をみていく必要がある。

 自立支援法以来、契約の考え方が全面的に出されていき、市場化の方向へと動いるかにも見える。もちろん市場化は事業者と利用者とのあいだで新しい緊張関係が生み出され、それは悪いことばかりとは言い切れないものの、現状の障害者の経済力を考えると、利用者が自主的に利用制限を図っていく可能性は大きいといえる。そして今後、補装具の単価等についての見直し、支援機器の品目の見直し、利用者へのサービス体制の整備等、障害者本人のための補助機器・支援機器の開発、体制の確立に向けての課題は多く、議論を深めていく必要がある。

 

15)災害対策など

 東日本大震災の復興も途上の中、20164月には熊本地震により甚大な被害が出ている。熊本学園大学の取り組みはインクルーシブ避難所のありようを示してくれた一方で、難病や発達障害など、避難所では生活することが難しく車中泊をせざるを得ない人たちがいたことも忘れてはならない。災害時における合理的配慮はいかに権利として担保されるのか、平時から考えておく必要がある。

 また、災害時のための要援護者登録制度は対象者の範囲をはじめ制度の運用には自治体間格差が生じている。災害時に援護を要するすべての人が登録できるように自治体間格差を解消する必要がある。また、作成した名簿が災害時にきちんと活用されるようにすることも重要である。

 

16)その他の政策課題

 脳性マヒ者など全身性障害者の二次障害問題は深刻なものとなっている。関係団体等と緊密な連絡を取り合いながら、この問題に対する行政的支援や、調査等の重要性について訴えていきたい。

 東京都における差別禁止条例策定に向けた取り組みについては、DPI東京行動委員会やJDF東京の活動に協力して進めていく必要がある。一方で、障害連単独でも東京都に対し、住宅、まちづくり、介護、医療、等々の問題で積極的な行動をとっていく必要性がある。

 障害連は、障害の重い人たちの生活と権利の獲得をめざし、大きな団体が集まってないが忘れてはいけない課題をきちんと押さえていき取り組んでいくことに大きな意味があると言えよう。

 

その他組織運営上の課題

 障害連の世代交代は着実に成果が出てきており、若手のメンバーの活動範囲についても徐々に広がりを見せている。これは喜ばしいことである反面、事務局体制という視点から見れば、若手の活動範囲の広がりに伴い、現行体制の維持も難しくなってきているのが大きな課題となっている。現行メンバーによる役割分担により、事務負担を分散させつつ、新しい人材を集めることも必要である。

また実務面においては、引き続きホームページの更新に努め、障害連事務局FAXレターの発行によって、全身性障害者にとって重要なニュースを発信していきたいと考えている。

 さらに財政上の課題として、毎年約数十万円程度を取り崩している現在の財政状況に歯止めをかけるべく、事務局手当の廃止やカンパ募集などの対策を講じており、一定の成果は表れてきつつある。

 障害連事務局スタッフの育成は、役員の育成とともに引き続き具体的に取り組まなければならない。

 政策提言という観点からは、課題ごとの各種シンポジウムを開催していきたい。


2016年度活動報告

2017年8月5日総会にて承認

 

 2016年度は障害者差別解消法施行1年目であったが、国会審議の場に参考人として呼ばれていたALSの当事者が当日になって出席拒否される事態が起きたり、726日には相模原障害者殺傷事件という痛ましい事件が起きたりするなど、法律が施行されてもなお多くの課題が山積していることを突き付けられた1年であった。とりわけ相模原障害者殺傷事件は、犯人の「障害者なんていなくなればいい」という発言からも明らかなように、依然として障害者に対する優生思想がこの社会に根強く残っていることを明らかにした。この事実を直視し、あらためて多様性が尊重され、障害のある人もない人もともに暮らせるインクルーシブ社会の実現に向けて、より一層取り組んでいかなければならない。

 さて、障害連についてはここ数年続いている財政の健全化が引き続きの課題となっているが、昨年度から事務局手当を廃止し、FAXレターを通じてのカンパの呼びかけなどを行った結果、一定の効果がみられた。とはいえ、根本的な問題解決にまでは至っておらず、引き続き財政状況の改善に向けた検討が必要である。

 事務局体制については、若手のメンバーがそれぞれのフィールドで活躍の機会が増えてきており、そのこと自体は喜ばしい事である一方、障害連の事務局機能の維持という視点からは悩ましい問題にもなっている。障害連の運動を担う新たな人材探しも視野に入れた解決策を模索していきたい。

2017年度は、引き続き積極的に運動に取り組みながら、活動資金をあらたな人材を確保するための方策についても大きな課題として検討していきたい。

 

障害者運動全体については、冒頭でもふれたとおり、障害者権利条約が批准された中、津久井やまゆり園で起きてしまった相模原障害者殺傷事件が優生思想の問題や施設に住むか、地域に住むかという地域生活の問題、福祉従事者の問題など、多様な課題を私たちに突き付けた。

一方で、厚労省は「我が事・丸ごと」政策を打ち出してきているが、そこで示されているビジョンと相模原事件であらためて可視化された現実とは大きな隔たりがある。障害当事者の立場からこの乖離をどう埋めていけるのか、ということを考えて必要な意見提起をしていく必要がある。

 改正障害者総合支援法については、平成30年度施行に向けた報酬改定の議論がはじまっている。入院中のヘルパー利用やあらたに創設される自立生活援助など政策動向を把握して、必要なタイミングで意見提起や厚労省との話し合いをしていきたい。

 また、障害者差別解消法の関係では、小池都知事が東京都における差別解消条例の制定を表明したことで、条例づくりは大きく前進することとなった。当初から各地の条例を意識した条例づくりの方針が示されていた一方で条例の策定委員会では様々な意見があり、楽観視できない情勢となっている。都内の当事者団体同士で議論を深め、意見提起をしていく必要がある。

 

 さて2016年度の始まりは、障害連シンポジウム2016「『私たちだって自由に乗りたいんだ!』―移動は“権利”そのもの…」からだった。DPI日本会議の尾上浩二氏の講演のほか、STEPえどがわの土屋峰和氏、エコモ財団の松原淳氏、東急労働組合執行委員長の平森悟氏と私鉄総連中央執行委員の衣幡義男氏をお招きし、それぞれの立場から交通機関のバリアフリー化、アクセシビリティの向上に向けた議論が交わされ、有意義なシンポジウムとなった。

 

 11月には、障害連の独自の取り組みとして、東京都と話し合いをもった。差別禁止条例について期待の持てる回答を得ることができ、その後、小池知事による条例策定の表明に至ったことは、繰り返し何度も要望し続けることの重要性を再確認させるものだった。一方で、その他の回答については、今年も毎回同じような東京都からの回答が目立った。しっかり議論する時間をもてるよう、都にはわかりやすく簡潔な回答を求めたい。

また、3月には厚労省とも意見交換の場をもった。「我が事・丸ごと」政策については、「縦割りをなくし、柔軟にサービスが提供されるようにするもので、現サービスを縮小・廃止するものではない」旨の回答を得られた。入院中のヘルパー利用についても制度施行時は区分6に限定されるものの、その後の見直しについて言及されるなど、率直な意見交換を行うことができた。

こうした話し合い以外の場面でも、法律や制度の見直しに合わせて適宜必要タイミングで各種政策提言や要望活動についても積極的に行った。

 

 この他、JD政策委員会では太田参与が政策委員長を務め、何人かの障害連の仲間が当事者の立場で発言していった。この他、JDFの院内集会などに参加した。また交通行動へも参加した。教育分野では親の付き添いなくそうキャンペーンへも参加した。

 

 また、DPIでは難病当事者が事務局次長として積極的に運動に参加し、難病の問題について提起している。その他、防災のプロジェクトをはじめ、DPIの活動にも積極的に関わっている。

 全国大行動にも障害連として参加し、厚労省交渉にも参加をした。

 

 その他、メーデーなど労働組合の活動や市民団体の活動にも参加した。

 

 FAXレターは、必要に応じて発行し、障害者部会や障害者政策委員会等の審議会メモを中心に流していった。早くて分かりやすい内容を心がけて、障害連と多くの障害者をつなぐツールとなっている。今年度発行したFAXレターの見出しは、下記に列記した。

 2016年度はおからクッキーを中心したおから事業の取り組みを継続しつつ、事務局手当を廃止するなど、赤字の解消に向けた取り組みを行った。大幅な赤字はなくなったとはいえ、障害連の財政難の根本的解決には至っておらず、他の方策についても引き続き検討が必要である。

 2017年度は、障害連独自の取り組みを充実させつつ、一層の連帯を求め、障害者運動全体の要の役割を果たし、さらには若い人たちが中心となるための原動力となっていきたい。一方で、活動を継続するための財源と人材の確保にも力を入れていく必要がある。


2016年度重点課題

2016年7月23日総会にて採択

 

1.東京都における障害者差別禁止条例策定に向けた取り組み

DPI東京実行委員会やJDF東京、TIL等と東京都差別禁止条例の必要性や具体的な取り組みなど、今後の展望・戦略を共有し、連携強化を図る。このことを通じて、東京都の差別禁止条例づくりへの働きかけを進めていく体制を作る。

 

2.障害者総合支援法の見直しに向けた取り組み

 改正障害者総合支援法は、入院時のヘルパー利用が認められるようになる等、わずかな前進部分があった一方で、対象者が厳しく限定されていることなど、運用レベルでの課題も多く残されている。

 他方、介護保険との関係では、厚労省内で分野横断的に新たな福祉サービスシステムの構築に向けた検討も行われており、介護保険のみならず児童分野も含めた制度の統合化について、障害当事者の視点から注視していく必要がある。

 いずれも次の3年後見直しの中で大きな動きがあることが予想されるが、目指すべき骨格提言の完全実施に向けた見直しをしていかなければならない。

 

3.尊厳死の法制化を阻止するための取り組み

 尊厳死法案提出は見送られたままであるが、なお法制化に向けた動きは続いている。尊厳死に反対している関係団体とも連携し、障害者の生きる権利の否定のみならず、命そのものへの軽視につながりかねない政策に対して反対し、生きる権利がきちんと保障される社会を目指す観点で取り組んでいく。

 

4.障害者の地域移行に向けた取り組み

「施設から地域へ」というスローガンが聞かれて久しいが、現在も多くの障害をもつ仲間たちが施設で暮らすことを余儀なくされている実態が続いている。骨格提言に基づく地域移行のための政策を行うよう国に対して働きかけていく。また、現在ある施設の居住条件を改善していくことも重要であるし、住宅問題という切り口からの働きかけや政策提言活動も重要である。

一方で、精神科病棟転換型居住系施設問題については、病院は地域ではないという当たり前の主張を広く社会と共有しながら訴えていく。

 

5.社会的支援の谷間におかれた人たちの問題

いわゆる「制度の谷間」と呼ばれる問題は、これまでの施策が障害名や病名に着目し、その対象を規定し続けていることによって生じている。障害名や病名ではなく、支援の必要性にもとづく施策への転換を図っていくことを通じて、必要な人が必要とする社会的支援を受けられるよう引き続き取り組む。

 

 その他、重要性や緊急度の高い課題については、状況に応じて適宜取り組んでいく。



2016年度活動方針

2016年7月23日総会にて採択

 

 障害者運動の長年にわたる取り組みによってようやく障害者差別解消法が成立した。不十分な点を残しつつも、障がい者制度改革による一連の国内法の整備が行われたことにより、障害者権利条約が批准・発効された。

 今後は権利条約をベースに国内法における既存の法制度を捉え直し、改革に向けた働きかけを行う障害者制度改革第2ラウンドの取り組みが極めて重要なものとなる。

また、冒頭で述べたように、障害者差別解消法は、大きな一歩を踏み出したとはいえ、差別禁止部会意見書の内容からは程遠い内容にとどまっている。自民党中心の政権運営となっている状況下において、策定された基本方針に基づく対応要領・対応指針の中でどれだけ実効性を担保することができるのか、今後の運動の大きな課題であろう。また、障害者差別解消法は自治体における上乗せ・横出しの条例の制定を妨げておらず、各地域における条例策定の取り組みも重要である。東京都における障害者差別解消条例作りも重要な運動課題として取り組んでいきたい。

さらに、社会保障全体が切り下げの方向にある中で、成立した改正障害者総合支援法は、権利条約や骨格提言の水準からは程遠い改正にとどまっている。この逆境の中でいかに骨格提言に沿った見直しを実現できるのか、運動の力が問われている。

 このように、一連の障がい者制度改革によって一定程度の成果をあげることはできたとはいえ、積み残した課題も山積している。

以上の情勢の中で、障害連は、DPIJD、ろうあ連盟、そしてJDFと連携し、特に当事者運動の重要性を認識し、強化する立場で、全国レベルの運動には取り組んでいきたいと考えている。

 

 近年、障害者運動の連帯関係がますます強まってきていることは大いに歓迎すべきである。

 一方で、「若返り」「本人中心」という古くて新しい課題に対していかに解決していくかが問われている。

 また、加盟団体に多い、全身性障害者の人権の確立と地域生活の保障、あるいは生活施設の改革についても引き続き力を注いでいきたいと考えている。

 

1)障害者権利条約の国内モニタリング

 障害者権利条約が発効したものの、障害者権利委員会へ提出予定の政府レポートは国内の実情を十分に反映した内容とはなっておらず、民間によるパラレルレポート作りに対して、積極的にかかわっていかなくてはならない。

 また、既存の国内法についても、改正障害者総合支援法など障害者権利条約と逆行しているかのような見直しが行われており、障害当事者自身がしっかりと監視していく必要がある。

 

2)差別解消法の施行と条例策定

 201641日にいよいよ障害者差別解消法が施行された。昨年度、各省庁等が策定した対応要領・対応指針は障害者団体の運動により、当初の想定よりは評価できる内容となっている。これからはこの対応要領・対応指針にもとづいた法の運用が徹底されるよう、個別の差別事案や合理的配慮の好事例など引き続き事例を集め実態を把握する必要がある。

 実際、総合支援法の国会審議において、参考人招致されていたALSの当事者の出席が拒否される事案も発生している。立法府においては対応要領が策定されてはいないものの、法の趣旨に反していることには変わりなく、障害を理由とした差別であることは明確である。こうした個別の事案に対し、タイムリーな問題提起を行うことも重要な取り組みである。

 こうした取り組みを通じて、次の差別解消法の見直しに向けて政策提言ができるよう準備する必要がある。

 また、地域協議会や条例制定等、それぞれの地域で運動を盛り上げていくことも重要な取り組みだろう。特に東京都における差別禁止条例作りは最重要課題として、DPI東京やJDF東京の運動に積極的に参画していきたい。

 

3)障害者総合支援法の見直しについて

 20166月に成立した改正障害者総合支援法は、この間、障害連や多くの当事者団体の運動により、入院中のヘルパー利用が一部認められるようになるなど、前進部分として一定評価できる点もある一方で、障害者権利条約や骨格提言の水準からはとても十分とはいえない改正にとどまった。

 厚労省内では新しい福祉サービスシステムとして障害、高齢、児童の縦割りを越えたユニバーサルな仕組みの検討も進められているが、権利条約の視点からこの動きに対しても提言していく必要がある。

障害連は、どんなに障害が重くても地域社会の中で誇りを持って生きていけるような政策へと転換すべきだと考えてきた。骨格提言は賛同できるものである。その実現に向けた提言活動など具体的な働きかけをしていきたい。

 

4)扶養義務の見直しと個人単位を基本とする法制度の整備

 総合支援法の費用負担の考え方は今でも「世帯単位」となっている。家族扶養の問題の本質は基本的に変わっていない。しかも、親族を含む家族間の扶養義務を強化する方向で法改正が進められており、難病法においても「生計中心者」から「世帯単位」へ変更されて運用されている。こうした動きに対し、危機感を持って断固反対していかなければならない。

障害のある人たちの独立と自由を妨げている原因の大きな理由として、日本の家族主義と、それに基づく各種の制度がある。日本の障害者福祉は「親がかり福祉」と呼ばれていたくらいである。特に民法の扶養義務規定はその象徴的存在であり、最大の障壁ともいえる。先進欧米諸国の多くがそうであるように、子に対する親の扶養責任は、原則として成年に達するまでとし、それ以降については社会が共同の責任を負うという考え方に変えていかなければならない。具体的には、民法の改正によって扶養義務範囲の見直しが図られるべきで、日本の社会サービスが世帯単位から個人単位へと切り替わることが今後強く求められる。

 

5)脳死問題と尊厳死をめぐって

 臓器移植法改正により脳死を人の死と法的に規定されてしまったが、議員立法による尊厳死法案(終末期における患者の意思の尊重に関する法律案)を成立させようと動きは依然として続いている。障害者の生きる権利の否定につながりかねない尊厳死法案は、胃ろうや人工呼吸器をつけて生活している人々にとどまらない深刻な問題をはらんでいる。この法案に対しては断固反対の立場で関係団体との連携のもと取り組んでいく。

脳死や尊厳死問題は共に命に優劣をつける点で共通しており、このような優生思想にもとづく政策を許さない姿勢を貫くことが重要である。

 

6)所得保障の確立

 現状における障害者の雇用環境や、個々の障害の状況を見渡したとき、働いて所得を得ることができない障害者が十分生活できる年金制度の確立が急がれてならない。家族に依存することなく、十分に生活できるだけの障害を原因とする年金制度の確立である。また、就労をしていても、労働に費やせる時間の制約から十分生活できるほどの収入を得られない障害者への補足的な所得保障の仕組みも必要である。

 また無年金障害者問題については一定の解決方向への兆しがあった時期もあったが、外国籍の障害者は新しい制度の給付金の対象から外されているなど、まだまだ解決すべき課題は多く残されている。

 その他、障害年金の認定基準も見直されているが、その見直しが医学モデルをより強化する方向になっている点についても反対の姿勢で取り組む必要がある。

 

7)雇用

 日本においては障害者雇用促進法において、障害者雇用政策がすすめられている。重度障害者のダブルカウント方式は実雇用率の数字上のマジックを生じさせてしまい、改善に向けた検討が課題となる。改正障害者雇用促進法では、精神障害者が法定雇用率に算定されることとなった。さらに、雇用における差別解消として、民間事業者にも合理的配慮の提供が義務付けされたことは一歩前進といえる。

 今後より多くの重度障害者が就労できるように広い視野に立ち検討していく必要がある。パソコンを使った在宅就労の普及と理解、勤務日数や勤務時間の柔軟化、専門性を発揮できるための大学教育と企業との連携なども検討されてよいだろう。経済状況が厳しく労働市場の深刻化が叫ばれ、「ワークシェアリング」という言葉が飛び交っているが、このことをチャンスととらえ、きちんと企業が要請する業務をこなす技能や専門性があれば、毎日長時間仕事をしなくてもすむ社会が到来しつつあることを意味する。そのような観点に立った職業施策、あるいは障害者雇用政策の検討が求められている。

 ただ、“働く”ことが人間の最大の価値であるかのように思われている社会をそのまま受け入れることは極めて危険である。たしかにそういう側面もあるかもしれないが、給料をもらって働くことだけが“働く”ことではない。自分を大切にしながら、社会にいろいろな影響力を与えていくことも“働く”ことなのである。

 

8)脱施設化(地域での自立生活を可能とする基盤整備)

 現在これまでの施設収容福祉から地域福祉への転換が大きな課題となっている。好んで施設や病院で暮らしている人はいないに等しい。国は、骨格提言にもあるとおり、施設を段階的に減らしていく目標をたて、施設整備に代わる地域移行支援等、様々な支援サービスの基盤整備と、それらの具体的な数値目標の設定を求めていく必要がある。

 しかし、こうした議論を反故にするかのように、精神科病棟転換型居住系施設に関する検討会では、条件付きで容認という結論が出された。病院は地域ではない、という当たり前の主張を広く社会と共有しながら粘り強く訴えていく必要がある。

 一方で、現在ある施設の居住条件については、利用者の人権が守られたものにしなければならず、生活の自由や、施設運営への利用者参加権の保障、プライベート空間の保障などを実現させなければならない。また、施設の在り方として常時滞在する場としてだけでなく、体調に応じて地域と施設を自由に行き来できるような形で施設の存在意義を見出していくという考え方もあるだろう。

 

9)住宅

 障害者の住宅問題は、日本の住宅政策の遅れとも相まって深刻である。東京都は、経済的・物理的な観点から障害者が民間の住宅に住むことが難しい実態があるにもかかわらず、公営住宅の新設を否定しつづけている。それにもかかわらず、民間住宅の家賃補助を行うことについても消極的な姿勢を示している。

 他方、既存の民間住宅は築年数がかなり経過している建物も多く、住居内のバリアフリー化ができたとしても、マンションの入口から住居までの共有部に関しては大家だけなく管理組合との交渉になり、バリアフリー化が難しいという問題もある。

 空きがでている民間住宅の一部を自治体が借り上げ、安価な賃料で障害者が入居できるような施策を進めるなど、住宅問題の解決に向けた働きかけを強化していくことも重要である。

 

10)社会的支援の谷間におかれた人たちの問題

 ニーズに対応した施策の必要性は、特定の障害者だけのものではない。障害者総合支援法では一部の「難病等」が法の対象に加えられ、疾患数も適宜追加されているが、支援を必要とする難治性疾患や慢性疾患の人たちの多くは依然として包含されていない。難病については、2015年から難病法が施行されているが、研究の必要性から対象を規定する構造自体は変わりなく、難病をもつ人の支援の必要性に基づく法整備が求められる。現行の福祉法でも、なお包含されない「難病」の人たちや、「高次脳機能障害」などの枠組みからはみ出した人たちの生活問題は深刻なものとなっている。他の障害者と同様に、ニーズに応じた各種の支援サービスが実施されるべきであり、この問題についても議論を深め、積極的な提言をしていく必要がある。

 

11)教育

 日本が2014年に批准した障害者権利条約では、障害児者が自分の可能性を最大限に発達し、自由な社会に効果的に参加することを目的とした教育が述べられている。これは、自分の住み慣れた地域の学校で、(他の社会資源も使いながら)学校の責任によって、障害のない子どもと一緒に育てられることである。しかし日本の教育は分離教育の思想が根底にあり、上述の教育とはほど遠い。

障害連では、障害児も他の者と同じように、自分の地域の学校に通うべきであり、学校が子どもに必要な合理的配慮を行うべきであると考えている。この考え方にたち、他団体をサポートするかたちで、以下のことをしていきたい。

 学校教育法施行令では公立の小中学校に行く場合、就学先(通常の学校か特別支援学校か)の決定は、本人・保護者の意見も尊重しつつも、「最終的には市町村教育委員会が決定する」とされているが、原則は、特別支援教育の考え方には、本質的な部分で変わっていないといえる。どんな障害であろうと地域の学校で学ぶことを原則とする制度にしていく必要がある。その考え方を前提とした上で、本人・保護者の真の意見が教育現場でどの程度尊重されているか、就学手続きに不当性がないか監視していく。

 いま全国では、保護者に対して学校が、子どものつきそいを求めることが多くある。理由は、介助、医療的ケアのためだ。保護者に対して強制的につきそいを求めることは、通常なら獲得できる親からの自立の機会のみならず、親の就労の機会を、学校が奪うことと他ならない。「障害児を産むと働けなくなる」という誤った情報が広がれば、出生前診断を助長しそこでの中絶も増える懸念すら秘めている。親の学校つきそいの強制をなくす運動をサポートしていく。

 

12)情報・コミュニケーション

 情報社会で暮らしていくにあたって、他の市民と同様に情報を得ることと、自らの情報を発信できることが重要なことである。障害のある私たちがこの2活動を行うためには、①人による支援に加え、②ITによる支援が必要と考える。店、公共機関の従業員にで本人の話をゆっくり聴いてもらうこと、介助者による会話支援を進めていく。また②ではパソコン・携帯電話などIT機器がひとりひとりの障害者の道具として活用されることが求められている。ひとりひとりの障害にあったハードやソフトの開発、サポート体制の充実は急がなければならない。

 またコミュニケーション問題としては、手話を言語として位置付けさせ、更に普及させる必要があるだろう。選挙における通訳保障の問題など、あらゆる場面で聴覚障害者などに対するコミュニケーション保障を確立していく必要がある。一方、厚労省内で意思疎通支援について検討を行っている動きもある。障害連としても意思疎通に困難のある人たちを包括した支援について当事者が主体的に考え、情報・コミュニケーション保障に取り組んでいく必要があるだろう。

 

13)バリアフリー

 「ハートビル法」と「交通バリアフリー法」が一体化されて、新しいバリアフリー法になって久しいが、建築物や交通機関のバリアフリーは以前よりかは進んでいるし、新しいバリアフリー法によって面的整備が今後ますます進んでいくものと考えられる。しかし、障害者の移動や利用の権利や自由といった基本的な課題はいまだに法の中に明記されずにいる。特にハンドル型車イスなど、形状によって交通機関の利用を拒否している状況が続いている。

また格安航空機においては、電動車いすの搭乗を拒否したり、制限や条件を加えたりしている。さらに飲食店の入店拒否問題も物理的なバリアに留まらない問題を投げかけている。

現在国土交通省は交通基本法を策定しようとしているが、障害を持つ当事者が建築設計の段階から、あるいは設備整備の段階から参加し、当事者自身の視点に基づいた整備が求められている。今後、自治体や事業者の責任をさらに明確化させることも重要である。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、国際パラリンピック委員会(IPC)が世界的なバリアフリー整備の基準として定めている「IPCガイドライン」によるバリアフリー化への取り組みはより一層重要になっている。

 今年も「誰もが使える交通機関を求める全国行動」に積極的に参加していく。また、「関東ネットワーク」の枠組みも活かしながら交通問題に取り組んでいく。

 

14)補助機器・支援機器

 車いすや松葉杖、補聴器など、障害者が人的支援ではなく、器具や機械を使い、自立生活を送るうえで、補助機器・支援機器(福祉用具)の果たす役割は大きい。ひとりひとりの障害に対応したこれらの機器が、さらに開発されていくことが求められている。人的支援も重要であるが、これらの機器を障害者が使いこなし生活していくことは、自己実現の達成感という観点から格別の意味を持つ。機器の開発にあたっては、障害者のニードは何かをきちんと把握していく必要があり、当事者の参画が重要となる。

 改正障害者総合支援法では、障害児の利用する補装具について貸与が認められるようになった。本人及び保護者の意向に反した強制的な貸与制度にならないよう、自治体の運用をみていく必要がある。

 自立支援法以来、契約の考え方が全面的に出されていき、市場化の方向へと動いるかにも見える。もちろん市場化は事業者と利用者とのあいだで新しい緊張関係が生み出され、それは悪いことばかりとは言い切れないものの、現状の障害者の経済力を考えると、利用者が自主的に利用制限を図っていく可能性は大きいといえる。そして今後、補装具の単価等についての見直し、支援機器の品目の見直し、利用者へのサービス体制の整備等、障害者本人のための補助機器・支援機器の開発、体制の確立に向けての課題は多く、議論を深めていく必要がある。

 

15)災害対策など

 東日本大震災の復興も途上の中、20164月には熊本地震により甚大な被害が出ている。熊本学園大学の取り組みはインクルーシブ避難所のありようを示してくれた一方で、難病や発達障害など、避難所では生活することが難しく車中泊をせざるを得ない人たちがいたことも忘れてはならない。災害時における合理的配慮はいかに権利として担保されるのか、平時から考えておく必要がある。

 また、災害時のための要援護者登録制度は対象者の範囲をはじめ制度の運用には自治体間格差が生じている。災害時に援護を要するすべての人が登録できるようにして自治体間格差を解消する必要がある。

 

16)その他の政策課題

 脳性マヒ者など全身性障害者の二次障害問題は深刻なものとなっている。関係団体等と緊密な連絡を取り合いながら、この問題に対する行政的支援や、調査等の重要性について訴えていきたい。

 東京都における差別禁止条例策定に向けた取り組みについては、DPI東京行動委員会やJDF東京の活動に協力して進めていく必要がある。一方で、障害連単独でも東京都に対し、住宅、まちづくり、介護、医療、等々の問題で積極的な行動をとっていく必要性がある。

 障害連は、障害の重い人たちの生活と権利の獲得をめざし、大きな団体が集まってないが忘れてはいけない課題をきちんと押さえていき取り組んでいくことに大きな意味があると言えよう。

 

その他組織運営上の課題

 障害連の世代交代は着実に成果が出てきており、若手のメンバーの活動範囲についても徐々に広がりを見せている。これは喜ばしいことである反面、事務局体制という視点から見れば、これ以上現行の体制のまま強化・拡充することが難しいという課題も生じている。現行メンバーによる役割分担により、事務負担を分散させつつ、新しい人材を集めることも必要である。

また実務面においては、引き続きホームページの更新に努め、障害連事務局FAXレターの発行によって、全身性障害者にとって重要なニュースを発信していきたいと考えている。

 さらに財政上の課題として、毎年約数十万円程度を取り崩している現在の財政状況に歯止めをかけるための方策についても、おから事業を整備しつつ、他の具体策の検討を進める必要がある。

 障害連事務局スタッフの育成は、役員の育成とともに引き続き具体的に取り組まなければならない。

 政策提言という観点からは、課題ごとの各種シンポジウムを開催していきたい。



2015年度活動報告

2016年7月23日総会にて承認

  2015年度は障害者差別解消法の施行に向け、各省庁等の対応指針作りへの対応や障害者総合支援法の3年目の見直しへの対応など、取り組むべき重要な課題の多い1年となった。障害者権利条約を批准した以上は、言うまでもなく権利条約が求める水準に向けた各制度の改善が必須となるが、一方で国は財政難を口実に社会保障費全体の切り下げを進めており、より一層危機感が高まった1年でもあった。

 まず障害連に関しては、なにはさておき財政問題である。これまでのおからケーキ販売の取組を再編し、おから事業として新体制を組んだものの、事業収入として障害連の活動を支えるような収益は上げられておらず、引き続き深刻な課題として財政問題については取り組む必要がある。

 一方、新たな仲間も加わり、事務局メンバーを中心に若い仲間が積極的に障害連の運動に参画していることは、長らく障害連の課題であった世代交代について一定の光明となっている。DPIJDなど障害連の中だけにとどまることなく、様々な場面で重要な役割を担ってきており、さらなる活動の広がりも期待される。

2016年度は、引き続き積極的な運動に取り組みながら、活動資金を確保するための方策についても大きな課題として検討していきたい。

 

障害者運動全体については、冒頭でもふれたとおり、障害者権利条約が批准された一方で、財政難を理由に社会保障費を削減しようとする国全体の動きがあり、障害者施策についても少なからずその影響が出てきている。

 特に、3年目の見直し議論を経て成立した改正障害者総合支援法は、障害連や他の障害当事者団体の取り組みにより、入院中のヘルパー利用が認められるようになるなどわずかな前進部分として評価できる点もあるが、障害者権利条約や骨格提言とはかけ離れた中身となってしまっている。今後、平成30年施行の改正事項への働きかけと同時に、ユニバーサルな制度への改革と称して、介護保険への統合をねらう厚労省の動きについても危機感を持って注視し、必要な取り組みをしていかなければならない。

 他方、障害者差別解消法における各省庁が出した対応要領や対応指針では、パブリックコメントなどへの多くの当事者の実態を伴った意見提起が盛り込まれ、4月から差別解消法が施行されている。とはいえ、法律の施行後も国会においてALS当事者の参考人招致が取り消されるなど、法の趣旨に反する事件も起きており、引き続き当事者による監視と実態把握など、3年後の法改正に向けて取り組んでいきたい。

 

 さて2015年度の始まりは、障害連シンポジウム2015「わたしたちにとって、くらしの場とは何か?」からだった。自立生活センター日野の秋山浩子氏や湘南希望の郷の五十嵐紀子氏、清瀬療護園自治会の大島由子氏を招いて、生活施設の課題やあり方、地域生活を支える資源の不足に対して障害者権利条約の視点からどう向き合っていくのかについて議論した。それぞれの立場を超えて地域生活を目指していく方向性が確認された有意義なシンポジウムとなった。

 

 11月には、障害連の独自の取り組みとして、東京都と話し合いをもった。この数年来、毎回同じような東京都からの回答が目立っており、ありきたりな回答や議論にさせないような方策についても考えていく必要性を感じた話し合いとなった。

また、2月には厚労省とも意見交換の場をもった。改正法案が出る直前というタイミングであったため、法案の内容以上の回答は得られなかったが、率直な意見交換の機会となり、今後も話し合いを継続していく必要性が確認された。

 こうした話し合い以外の場面でも、法律や制度の見直しに合わせて適宜必要タイミングで各種政策提言や要望活動についても積極的に行った。

 

 この他、JD政策委員会では太田参与が政策委員長を務め、何人かの障害連の仲間が当事者の立場で発言していった。この他、JDFの院内集会などに参加した。また交通行動へも参加した。教育分野では親の付き添いなくそうキャンペーンへも参加した。

 

 また、DPIでは難病当事者が常任委員として積極的に参加し、難病の問題について提起している。また、7月にはDPIの立場から日弁連主催の難病シンポジウムに登壇した他、12月に行われた政策討論集会では地域生活分科会の司会を務めるなど、DPIの活動にも積極的に関わっている。

 全国大行動にも障害連として参加し、厚労省交渉にも参加をした。

 

 その他、メーデーなど労働組合の活動や市民団体の活動にも参加した。

 

 FAXレターは、必要に応じて発行し、障害者部会や障害者政策委員会、難病関係の審議会メモを中心に流していった。早くて分かりやすい内容を心がけて、障害連と多くの障害者をつなぐツールとなっている。今年度発行したFAXレターの見出しは、下記に列記した。

 2015年度は担当者を決めておから事業に取り組むなど、活動資金の確保に向けた取り組みも行った。日野療護園のお祭に出店するなど新しい試みもしたが、障害連の財政難の根本的解決には程遠く、他の方策についても引き続き検討が必要である。

 2016年度は、障害連独自の取り組みを充実させつつ、一層の連帯を求め、障害者運動全体の要の役割を果たし、さらには若い人たちが中心となるための原動力となっていきたい。一方で、活動を継続するための財源確保にも力を入れていく必要がある。





2015年度重点課題

2015年7月25日総会にて採択

 

1.東京都における障害者差別禁止条例策定に向けた取り組み

DPI東京実行委員会やJDF東京等と連携し、東京都の差別禁止条例づくりへの働きかけを行う。昨年度のシンポジウム報告書の配布を通じて、東京都における条例の必要性を広く社会に訴えていく。

 

2.障害者総合支援法3年後見直しに向けた取り組み

 社保審障害者部会で現在検討されている障害者総合支援法3年後見直しの動向を踏まえつつ、障害者権利条約および骨格提言の完全実施に向けた政策提言活動等を行う。特に、重度訪問介護の対象・利用範囲の拡大や介護保険優先原則の廃止など、地域生活において重要かつ喫緊の課題解決に注力していく。

 

3.尊厳死の法制化を阻止するための取り組み

 尊厳死法案提出は見送られたままであるが、なお法制化に向けた動きは続いている。尊厳死に反対している関係団体とも連携し、障害者の生きる権利の否定のみならず、命そのものへの軽視につながりかねない政策に対して反対し、生きる権利がきちんと保障される社会を目指す観点で取り組んでいく。

 

4.障害者の地域移行に向けた取り組み

「施設から地域へ」というスローガンが聞かれて久しいが、現在も多くの障害をもつ仲間たちが施設で暮らすことを余儀なくされている実態が続いている。骨格提言に基づく地域移行のための政策を行うよう国に対して働きかけていく。また、現在ある施設の居住条件を改善していくことも重要であるし、住宅問題という切り口からの働きかけや政策提言活動も重要である。

一方で、精神科病棟転換型居住系施設問題については、病院は地域ではないという当たり前の主張を広く社会と共有しながら訴えていく。

 

5.社会的支援の谷間におかれた人たちの問題

いわゆる「制度の谷間」と呼ばれる問題は、これまでの施策が障害名や病名に着目し、その対象を規定し続けていることによって生じている。障害名や病名ではなく、支援の必要性にもとづく施策への転換を図っていくことを通じて、必要な人が必要とする社会的支援を受けられるよう取り組む。

 

 その他、重要性や緊急度の高い課題については、状況に応じて適宜取り組んでいく。



2015年度活動方針

 

 障害者運動の長年にわたる取り組みによってようやく障害者差別解消法が成立した。不十分な点を残しつつも、障がい者制度改革による一連の国内法の整備が行われたことにより、障害者権利条約が批准・発効された。

 今後は権利条約をベースに国内法における既存の法制度を捉え直し、改革に向けた働きかけを行う障害者制度改革第2ラウンドの取り組みが極めて重要なものとなる。

また、冒頭で述べたように、障害者差別解消法は、大きな一歩を踏み出したとはいえ、差別禁止部会意見書の内容からは程遠い内容にとどまっている。自民党中心の政権運営となっている状況下において、策定された基本方針に基づく対応要領・対応指針の中でどれだけ実効性を担保することができるのか、今後の運動の大きな課題であろう。また、障害者差別解消法は自治体における上乗せ・横出しの条例の制定を妨げておらず、各地域における条例策定の取り組みも重要である。東京都における障害者差別解消条例作りも重要な運動課題として取り組んでいきたい。

さらに、年内を目途にとりまとめが行われる予定の障害者総合支援法3年後見直しについても、社会保障全体が切り下げの方向にある中で、いかに骨格提言に沿った見直しを実現できるのか、運動の力が問われている。

 このように、一連の障がい者制度改革によって一定程度の成果をあげることはできたとはいえ、積み残した課題も山積している。

以上の情勢の中で、障害連は、DPIJD、ろうあ連盟、そしてJDFと連携し、特に当事者運動の重要性を認識し、強化する立場で、全国レベルの運動には取り組んでいきたいと考えている。

 

 近年、障害者運動の連帯関係がますます強まってきていることは大いに歓迎すべきである。

 一方で、「若返り」「本人中心」という古くて新しい課題に対していかに解決していくかが問われている。

 また、加盟団体に多い、全身性障害者の人権の確立と地域生活の保障、あるいは生活施設の改革についても引き続き力を注いでいきたいと考えている。

 

1)障害者権利条約の国内モニタリング

 障害者権利条約が発効したとはいえ、既存の障害者にかかわる法制度を見てみるとまだまだ不十分な点が多い。そのため、モニタリングの仕組みがきちんと機能するかどうかが重要になってくる。また、民間によるカウンターレポート作成も極めて重要な取り組みとなることから、政策動向の把握に努める必要がある。

 

2)差別解消法の施行と条例策定

 国連で権利条約が策定された今、障害に基づく差別の禁止の法制化は急務とされた中、ようやく障害者差別解消法が成立した。現在、国が定めた基本方針にもとづく対応要領・対応指針作りが進められているが、来年の施行や施行後の見直しの3年の今後4年間の取り組みは重要である。労働、教育、住居、交通、等などあらゆる場面で、常態化している障害に基づく差別をなくすためには、何が差別に当たるのか、差別を受けている当事者が積極的に働きかけをおこない、社会的な合意を当事者参画のもとに作っていく必要があるだろう。障害者運動の闘いの歴史は、差別との闘いの歴史とも言え、反差別問題は重要な柱である。しかし差別禁止法は法律の中での差別を定義していくにすぎないのであることをしっかり認識し、法制化はワンステップにすぎないことを忘れてはならない。

 また、地域協議会や条例制定等、それぞれの地域で運動を盛り上げていくことも重要な取り組みだろう。特に東京都における差別禁止条例作りは最重要課題として、DPI東京やJDF東京の運動に積極的に参画していきたい。

 

3)障害者総合支援法の見直しについて

 訴訟団の基本合意や、権利条約に基づいて総合福祉部会では、画期的な骨格提言を出したが、民主、自民、公明の3党合意によって、多くの提言が今後の課題とされ、総合支援法が自立支援法の延長線上のものとして、成立した。

骨格提言では、地域社会への移行の具体化に向けた社会資源の整備や、介助サービスについては障害者本人と市町村の協議調整によって決めていくこと、障害当事者が主体となって相談活動に関わり、エンパワメントしていく体制などが盛り込まれている。

現在、社保審障害者部会で総合支援法3年後見直しのための検討が進められている。上記の経緯が尊重された見直しとなるよう障害当事者による働きかけが極めて重要であるが、見直しの方向性のみならず当事者運動も心許なく、危機的状況にあるように思われる。

障害連は、どんなに障害が重くても地域社会の中で誇りを持って生きていけるような政策へと転換すべきだと考えてきた。骨格提言は賛同できるものである。その実現に向け具体的な働きかけをしていきたい。

 

4)扶養義務の見直しと個人単位を基本とする法制度の整備

 総合支援法の費用負担の考え方は今でも「世帯単位」となっている。家族扶養の問題の本質は基本的に変わっていない。しかも、親族を含む家族間の扶養義務を強化する方向で法改正が進められており、成立した難病法案においても「生計中心者」から「世帯単位」へ変更された。こうした動きに対し、危機感を持って断固反対していかなければならない。

障害のある人たちの独立と自由を妨げている原因の大きな理由として、日本の家族主義と、それに基づく各種の制度がある。日本の障害者福祉は「親がかり福祉」と呼ばれていたくらいである。特に民法の扶養義務規定はその象徴的存在であり、最大の障壁ともいえる。先進欧米諸国の多くがそうであるように、子に対する親の扶養責任は、原則として成年に達するまでとし、それ以降については社会が共同の責任を負うという考え方に変えていかなければならない。具体的には、民法の改正によって扶養義務範囲の見直しが図られるべきで、日本の社会サービスが世帯単位から個人単位へと切り替わることが今後強く求められる。

 

5)脳死問題と尊厳死をめぐって

 臓器移植法改正により脳死を人の死と法的に規定されてしまったが、議員立法による尊厳死法案(終末期における患者の意思の尊重に関する法律案)を成立させようと動きは依然として続いている。障害者の生きる権利の否定につながりかねない尊厳死法案は、胃ろうや人工呼吸器をつけて生活している人々にとどまらない深刻な問題をはらんでいる。この法案に対しては断固反対の立場で関係団体との連携のもと取り組んでいく。

脳死や尊厳死問題は共に命に優劣をつける点で共通しており、このような優生思想にもとづく政策を許さない姿勢を貫くことが重要である。

 

6)所得保障の確立

 現状における障害者の雇用環境や、個々の障害の状況を見渡したとき、働いて所得を得ることができない障害者が十分生活できる年金制度の確立が急がれてならない。家族に依存することなく、十分に生活できるだけの障害を原因とする年金制度の確立である。また、就労をしていても、労働に費やせる時間の制約から十分生活できるほどの収入を得られない障害者への補足的な所得保障の仕組みも必要である。

 また無年金障害者問題については一定の解決方向への兆しがあった時期もあったが、外国籍の障害者は新しい制度の給付金の対象から外されているなど、まだまだ解決すべき課題は多く残されている。

 

7)雇用

 日本においては障害者雇用促進法において、障害者雇用政策がすすめられている。重度障害者のダブルカウント方式は実雇用率の数字上のマジックを生じさせてしまい、改善に向けた検討が課題となる。改正障害者雇用促進法では、精神障害者が法定雇用率に算定されることとなった。さらに、雇用における差別解消として、民間事業者にも合理的配慮の提供が義務付けされたことは一歩前進といえる。

 今後より多くの重度障害者が就労できるように広い視野に立ち検討していく必要がある。パソコンを使った在宅就労の普及と理解、勤務日数や勤務時間の柔軟化、専門性を発揮できるための大学教育と企業との連携なども検討されてよいだろう。経済状況が厳しく労働市場の深刻化が叫ばれ、「ワークシェアリング」という言葉が飛び交っているが、このことをチャンスととらえ、きちんと企業が要請する業務をこなす技能や専門性があれば、毎日長時間仕事をしなくてもすむ社会が到来しつつあることを意味する。そのような観点に立った職業施策、あるいは障害者雇用政策の検討が求められている。

 ただ、“働く”ことが人間の最大の価値であるかのように思われている社会をそのまま受け入れることは極めて危険である。たしかにそういう側面もあるかもしれないが、給料をもらって働くことだけが“働く”ことではない。自分を大切にしながら、社会にいろいろな影響力を与えていくことも“働く”ことなのである。

 

8)脱施設化(地域での自立生活を可能とする基盤整備)

 現在これまでの施設収容福祉から地域福祉への転換が大きな課題となっている。好んで施設や病院で暮らしている人はいないに等しい。国は、骨格提言にもあるとおり、施設を段階的に減らしていく目標をたて、施設整備に代わる地域移行支援等、様々な支援サービスの基盤整備と、それらの具体的な数値目標の設定を求めていく必要がある。

 しかし、こうした議論を反故にするかのように、精神科病棟転換型居住系施設に関する検討会では、条件付きで容認という結論が出された。病院は地域ではない、という当たり前の主張を広く社会と共有しながら粘り強く訴えていく必要がある。

 一方で、現在ある施設の居住条件については、利用者の人権が守られたものにしなければならず、生活の自由や、施設運営への利用者参加権の保障、プライベート空間の保障などを実現させなければならない。

 

9)住宅

 障害者の住宅問題は、日本の住宅政策の遅れとも相まって深刻である。東京都は、経済的・物理的な観点から障害者が民間の住宅に住むことが難しい実態があるにもかかわらず、公営住宅の新設を否定しつづけている。それにもかかわらず、民間住宅の家賃補助を行うことについても消極的な姿勢を示している。

 他方、既存の民間住宅は築年数がかなり経過している建物も多く、住居内のバリアフリー化ができたとしても、マンションの入口から住居までの共有部に関しては大家だけなく管理組合との交渉になり、バリアフリー化が難しいという問題もある。

 空きがでている民間住宅の一部を自治体が借り上げ、安価な賃料で障害者が入居できるような施策を進めるなど、住宅問題の解決に向けた働きかけを強化していくことも重要である。

 

10)社会的支援の谷間におかれた人たちの問題

 ニーズに対応した施策の必要性は、精神障害者だけのものではない。障害者総合支援法では一部の「難病等」が法の対象に加えられたが、支援を必要とする難治性疾患や慢性疾患の人たちの多くは依然として包含されていない。難病については、20145月に難病法が成立したが、研究の必要性から対象を規定する構造自体は変わりなく、難病をもつ人の支援の必要性に基づく法整備が求められる。現行の福祉法でも、なお包含されない「難病」の人たちや、「高次脳機能障害」などの枠組みからはみ出した人たちの生活問題は深刻なものとなっている。他の障害者と同様に、ニーズに応じた各種の支援サービスが実施されるべきであり、この問題についても議論を深め、積極的な提言をしていく必要がある。

 

11)教育

 日本が2014年に批准した障害者権利条約では、障害児者が自分の可能性を最大限に発達し、自由な社会に効果的に参加することを目的とした教育が述べられている。これは、自分の住み慣れた地域の学校で、(他の社会資源も使いながら)学校の責任によって、障害のない子どもと一緒に育てられることである。しかし日本の教育は分離教育の思想が根底にあり、上述の教育とはほど遠い。

 障害連では、障害児も他の者と同じように、自分の地域の学校に通うべきであり、学校が子どもに必要な合理的配慮を行うべきであると考えている。この考え方にたち
、他団体をサポートするかたちで、以下のことをしていきたい。

 学校教育法施行令では公立の小中学校に行く場合、就学先(通常の学校か特別支援学校か)の決定は、本人・保護者の意見も尊重しつつも、「最終的には市町村教育委員会が決定する」とされているが、原則は、特別支援教育の考え方には、本質的な部分で変わっていないといえる。どんな障害であろうと地域の学校で学ぶことを原則とする制度にしていく必要がある。その考え方を前提とした上で、本人・保護者の真の意見が教育現場でどの程度尊重されているか、就学手続きに不当性がないか監視していく。

 いま全国では、保護者に対して学校が、子どものつきそいを求めることが多くある。理由は、介助、医療的ケアのためだ。保護者に対して強制的につきそいを求めることは、通常なら獲得できる親からの自立の機会のみならず、親の就労の機会を、学校が奪うことと他ならない。「障害児を産むと働けなくなる」という誤った情報が広がれば、出生前診断を助長しそこでの中絶も増える懸念すら秘めている。親の学校つきそいの強制をなくす運動をサポートしていく。

 

12)情報・コミュニケーション

 情報社会で暮らしていくにあたって、他の市民と同様の情報を得ることと、自らの情報を発信できることが重要なことである。パソコン・携帯電話などIT機器がひとりひとりの障害者の道具として活用されることが求められている。ひとりひとりの障害にあったハードやソフトの開発、人的サポート体制の充実は急がなければならない。

 またコミュニケーション問題としては、手話を言語として位置付けさせ、更に普及させる必要があるだろう。選挙における通訳保障の問題など、あらゆる場面で聴覚障害者などに対するコミュニケーション保障を確立していく必要がある。一方、厚労省内で意思疎通支援について検討を行っている動きもある。障害連としても意思疎通に困難のある人たちを包括した支援について当事者が主体的に考え、情報・コミュニケーション保障に取り組んでいく必要があるだろう。

 

13)バリアフリー

 「ハートビル法」と「交通バリアフリー法」が一体化されて、新しいバリアフリー法になって久しいが、建築物や交通機関のバリアフリーは以前よりかは進んでいるし、新しいバリアフリー法によって面的整備が今後ますます進んでいくものと考えられる。しかし、障害者の移動や利用の権利や自由といった基本的な課題はいまだに法の中に明記されずにいる。特にハンドル型車イスなど、形状によって交通機関の利用を拒否している状況が続いている。

また格安航空機においては、電動車いすの搭乗を拒否したり、制限や条件を加えたりしている。さらに飲食店の入店拒否問題も物理的なバリアに留まらない問題を投げかけている。

現在国土交通省は交通基本法を策定しようとしているが、障害を持つ当事者が建築設計の段階から、あるいは設備整備の段階から参加し、当事者自身の視点に基づいた整備が求められている。今後、自治体や事業者の責任をさらに明確化させることも重要である。

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、国際パラリンピック委員会(IPC)が世界的なバリアフリー整備の基準として定めている
IPCガイドライン」によるバリアフリー化への取り組みはより一層重要になっている。

 今年も「誰もが使える交通機関を求める全国行動」に積極的に参加していく。また、「関東ネットワーク」の枠組みも活かしながら交通問題に取り組んでいく。

 

14)補助機器・支援機器

 車いすや松葉杖、補聴器など、障害者が人的支援ではなく、器具や機械を使い、自立生活を送るうえで、補助機器・支援機器(福祉用具)の果たす役割は大きい。ひとりひとりの障害に対応したこれらの機器が、さらに開発されていくことが求められている。人的支援も重要であるが、これらの機器を障害者が使いこなし生活していくことは、自己実現の達成感という観点から格別の意味を持つ。機器の開発にあたっては、障害者のニードは何かをきちんと把握していく必要があり、当事者の参画が重要となる。

 自立支援法以来、契約の考え方が全面的に出されていき、市場化の方向へと動いるかにも見える。もちろん市場化は事業者と利用者とのあいだで新しい緊張関係が生み出され、それは悪いことばかりとは言い切れないものの、現状の障害者の経済力を考えると、利用者が自主的に利用制限を図っていく可能性は大きいといえる。そして今後、補装具の単価等についての見直し、支援機器の品目の見直し、利用者へのサービス体制の整備等、障害者本人のための補助機器・支援機器の開発、体制の確立に向けての課題は多く、議論を深めていく必要がある。

 

15)災害対策など

 東日本大震災では、障害者がより多くの被害を受け、十分な支援体制も受けられない状況にある。障害者の生命と人権を守る観点で大地震や津波に備えた支援体制、街づくりの整備、緊急時の介助保障や情報保障を進めていくことが急がれている。

 また、災害時のための要援護者登録制度は対象者の範囲に自治体間格差が生じている。災害時に援護を要するすべての人が登録できるようにした上で、自治体間格差の解消が必要である。

 

16)その他の政策課題

 脳性マヒ者など全身性障害者の二次障害問題は深刻なものとなっている。関係団体等と緊密な連絡を取り合いながら、この問題に対する行政的支援や、調査等の重要性について訴えていきたい。

 東京都における差別禁止条例策定に向けた取り組みについては、DPI東京行動委員会やJDF東京の活動に協力して進めていく必要がある。一方で、障害連単独でも東京都に対し、住宅、まちづくり、介護、医療、等々の問題で積極的な行動をとっていく必要性がある。

 障害連は、障害の重い人たちの生活と権利の獲得をめざし、大きな団体が集まってないが忘れてはいけない課題をきちんと押さえていき取り組んでいくことに大きな意味があると言えよう。

 

その他組織運営上の課題

 一昨年に新体制へ移行してから一期目が終了した。昨年度はまた新しい若手のメンバーが積極的に会の運営にも参加をし、世代交代に向けた取り組みは一定の成果を上げつつある。今年度も役員および事務局体制のさらなる強化と拡充をより一層進めていきたい。事務局員に賃金を支払えるだけの、新しい財源の確立は急務である。

また実務面においては、引き続きホームページの更新に努め、障害連事務局FAXレターの発行によって、全身性障害者にとって重要なニュースを発信していきたいと考えている。

 さらに財政上の課題として、毎年約数十万円程度を取り崩している現在の財政状況に歯止めをかけるため、おから事業をはじめとする具体策の検討を進める必要がある。

 障害連事務局スタッフの育成は、役員の育成とともに引き続き具体的に取り組まなければならない。

 政策提言という観点からは、課題ごとの各種シンポジウムを開催していきたい。




2014年度活動報告

2015年7月25日総会にて承認

 

 この一年は、障害者権利条約にもとづく障害者施策のさらなる進展が期待されたが、実際には自民党政権下の中、社会保障政策全体にとって厳しい冬の時代の再訪を実感させられる一年となってしまった。

 まず障害連に関しては、事務局を担う若い仲間たちが積極的に運動に参画し、JDDPIなど様々な場面で重要な役割を担えるようになりつつある。また、新たに障害連の活動に参画する若い仲間も増え、さらなる活動の広がりも期待されるところである。

 一方で障害連の財政問題は深刻さを増している。活動の活発化に比例して増大している支出に対し、加盟団体の減少や寄付金収入の減少、助成金獲得の困難化など収入面においてきわめて脆弱かつ不安定な状況が大きな課題となっている。

2015年度は、従来の障害者運動への積極的な取り組みを維持しながら、おから事業など活動資金を確保するための取り組みも具体的に進めていきたい。

 

 障害者運動全体については、冒頭でもふれたとおり、障害者権利条約が批准された一方で、財政難を理由に社会保障費を削減しようとする国全体の動きがあり、障害者施策についても少なからずその影響が出てきている。

 特に、障害者総合支援法3年後見直しのための検討過程においては、障害者権利条約や骨格提言とかけ離れた議論が行われている。危機感を持って運動に取り組む必要があるが、社保審障害者部会や障害者政策委員会など各種審議会への当事者の傍聴参加は少なく、危機感の共有化を図りつつ、様々な場面で仲間に働きかけていく必要がある。とりわけ介護保険と障害者施策との関係では、ユニバーサルな制度への改革と称して、介護保険への統合をねらう厚労省の動きがあり、注視が必要である。

 他方、障害者差別解消法は障害者政策委員会やパブリックコメントへの多くの当事者の意見提起により、十分とは言えないが、一定程度当事者の意見も踏まえた基本方針が策定された。今後は、対応要領や対応指針作りが進められることになるが、各分野において当事者による監視と意見提起が重要となってくる。

 

 さて2014年度の始まりは、障害連シンポジウム2014「みんなで学ぼう!障害者権利条約」からだった。DPI日本会議の尾上浩二氏やJDF東京の今村登氏、ILみなみTamaの塚田芳昭氏を招いて、障害者権利条約や障害者差別解消法について障害のある人もない人もともに学び、その意義を共有する機会となった。また、各地で上乗せ横出しの条例づくりが進んでおり、その策定過程なども踏まえた東京都における差別禁止条例づくりの取り組みの重要性についても確認されるものであった。

 

 秋のフォーラムは、今年度も障害連の若手も参画した障害当事者の有志たちによって開催された。次年度以降は、社会保障全体が危機的状況にあることからも、より大きな枠組みで多くの障害当事者・団体参画ができるような形での開催が望まれる。

 

 11月には、障害連の独自の取り組みとして、東京都と話し合いをもった。これまでに比べると課題の現状認識については進んだ印象が見受けられた。しかし、大きなテーマである「差別禁止条例の制定」について、「国の動向を見ていきたい」として、昨年度に引き続き独自の判断を避けた。また「谷間の障害問題」についても、国の政省令に従っていきたいとするなど、個別具体的な課題の解消に関しては国まかせの回答が目立った。

 4月には久しぶりに厚労省と意見交換の場をもった。前向きな回答は得られなかったが、率直な意見交換の機会となり、今後も話し合いを継続していく必要性が確認された。

 

 この他、JD政策委員会では太田参与が政策委員長を務め、何人かの障害連の仲間が当事者の立場で発言していった。この他、JDFの院内集会などに参加した。また交通行動へも参加した。教育分野では親の付き添いなくそうキャンペーンへも参加した。

 

 また、DPIでは難病当事者が常任委員として積極的に参加し、難病の問題について提起している。また、地域生活部会のメンバーとして12月に行われた政策討論集会や5月の全国集会では司会を務めるなど、DPIの活動にも積極的に関わっている。

 全国大行動にも障害連として参加し、厚労省交渉にも参加をした。

 

 その他、メーデーなど労働組合の活動や市民団体の活動にも参加した。

 

 FAXレターは、おおよそ月に2回ぐらいの割合で発行し、障害者部会や障害者政策委員会、難病関係の審議会メモを中心に流していった。早くて分かりやすい内容を心がけて、障害連と多くの障害者をつなぐツールとなっている。今年度発行したFAXレターの見出しは、下記に列記した。

 2014年度は役員会を再び療護施設で開催するようになり、施設に生活する仲間とつながりながら実態把握と政策提言を行うことができた。障害連の活動に参加する新たな若手の仲間も増え、さらなる活動の広がりに期待したい。

 また、赤い羽根共同募金の配分金により、シンポジウムの様子をおさめたDVDをシンポジウム報告書に添付し、都内の障害福祉課を中心に障害者権利条約の普及啓発活動にも力を入れることができた。

 2015年度は、障害連独自の取り組みを充実させつつ、一層の連帯を求め、障害者運動全体の要の役割を果たし、さらには若い人たちが中心となるための原動力となっていきたい。一方で、活動を継続するための財源確保にも力を入れていく必要がある。


2014年度重点課題

2014年8月2日総会にて採択

 

1.東京都における障害者差別禁止条例策定に向けた取り組み

DPI東京実行委員会やJDF東京等と連携し、東京都の差別禁止条例づくりへの働きかけを行う。今年度のシンポジウム開催とその報告書配布を通じて、東京都における条例の必要性を広く社会に訴えていく。

 

2.障害者総合支援法の見直しに向けた取り組み

障害者総合支援法附則第3条の検討規定にもとづく見直しについて、障害者権利条約や総合福祉部会がまとめた骨格提言が反映された内容にすべく、政策動向の把握および適宜政策提言を行っていく。

 

3.尊厳死の法制化を阻止するための取り組み

 通常国会での尊厳死法案提出は見送られたが、なお法制化に向けた動きは続いている。尊厳死に反対している関係団体とも連携し、障害者の生きる権利の否定のみならず、命そのものへの軽視につながりかねない政策に対して反対し、生きる権利がきちんと保障される社会を目指す観点で取り組んでいく。

 

4.障害者の地域移行に向けた取り組み

「施設から地域へ」というスローガンが聞かれて久しいが、現在も多くの障害をもつ仲間たちが施設で暮らすことを余儀なくされている実態が続いている。骨格提言に基づく地域移行のための政策を行うよう国に対して働きかけていく。また、現在ある施設の居住条件を改善していくことも重要であるし、住宅問題という切り口からの働きかけや政策提言活動も重要である。

一方で、地域移行とは名ばかりの精神科病棟転換型居住系施設に関する検討が進められている。病院は地域ではないという当たり前の主張を広く社会と共有しながら訴えていく。

 

5.社会的支援の谷間におかれた人たちの問題

いわゆる「制度の谷間」と呼ばれる問題は、これまでの施策が障害名や病名に着目し、その対象を規定し続けていることによって生じている。障害名や病名ではなく、支援の必要性にもとづく施策への転換を図っていくことを通じて、必要な人が必要とする社会的支援を受けられるよう取り組む。

 

 その他、重要性や緊急度の高い課題については、状況に応じて適宜取り組んでいく。

2013年度活動報告

2014年8月2日総会にて採択

 

 この一年は、障害連にとっても、また障害者運動全体にとっても、次のステップに向かうきっかけとなった一年である。

 まず障害連に関しては、事務局メンバーが若い力で補強されていき、すこしずつ代替わりしてきている。難病や重度の障害を持つ仲間たちが、定期的に通い事務局で働く体制が定着してきている。更にJD政策委員会にも、この若い仲間たちが参加し、政策提言活動に取り組んだ。2014年度は更にそれを充実させたい。

 

 障害者運動全体については、なんといっても「障害者権利条約」の批准である。障害者権利条約は国内法の整備がされた上で批准されるべきであるとする、障害者団体の統一した主張により、拙速な批准が見送られた経緯がある。一連の障害者制度改革が進められ、昨年の障害者差別解消法が成立し、不十分ながらも一定程度の国内法の整備が果たされたことを受けて、与野党の壁を越えて満場一致の元で批准された。

しかし、障害者権利条約の批准はゴールではなく、障害者制度改革の第2ラウンドのスタートに他ならない。権利条約が発効された今でも施設や病院での生活を余儀なくされている仲間がいる。また、尊厳死の法制化に向けた動きも出てきている。尊厳死の法制化は優生思想と密接にかかわっており、障害者の生命を脅かすものである。言うまでもなく、日本に先駆けて権利条約の批准に至った福祉先進国とされている国においても尊厳死や安楽死が認められている国もあり、そうした諸外国の動向を把握しながら、尊厳死法制化への反対運動に取り組んでいく必要がある。

 

 さて2013年度の始まりは、障害連シンポジウム2013「どうする!障害者差別解消法」からだった。作家の大野更紗氏や欠格条項をなくす会の臼井久美子氏を招いてしゃべり場風に参加者と双方向での活発な議論が交わされた。それぞれが受けてきた差別経験の語りは、差別解消法が施行されてもなお継続的な粘り強い運動の必要性が確認されるものであった。

 

 昨年は諸般の事情から見送られた秋のフォーラムは、障害連の若手も参画した障害当事者の有志たちによって開催された。次年度以降はより大きな枠組みで多くの障害当事者・団体参画のもとでの開催が望まれる。

 

 11月には、障害連の独自の取り組みとして、東京都と話し合いをもった。大きなテーマである「差別禁止条例の制定」について、「国の動向を見ていきたい」として、昨年度に引き続き独自の判断を避けた。また「谷間の障害問題」についても、国の政省令に従っていきたいとする、国まかせの回答が目立った。

 

 この他、JD政策委員会では太田参与が政策委員長に就任した。何人かの障害連の仲間が当事者の立場で発言していった。障害連の若手が積極的に参加し、難病政策に関する声明文をJDとして発表することができた。この他自立支援法訴訟団の院内集会、JDFの院内集会などに参加した。また交通行動へも参加した。

 

 また、DPIでは機関誌の編集委員会への参加や機関誌への寄稿などを行った。昨年末の政策討論集会では、雇用分科会で障害連の仲間が難病の立場で登壇し、問題提起を行った。そして障害者運動の次世代リーダー養成を目的としたエンパワメントスクールにも障害連の仲間が参加している。他にDPIの常任委員改選に伴い、障害連からは新しく難病の当事者が就任することとなった。

 

 その他、メーデーなど労働組合の活動や市民団体の活動にも参加した。

 

 FAXレターは、おおよそ月に2回ぐらいの割合で発行し、障害者部会や障害者政策委員会、難病対策委員会などの審議会メモを中心に流していった。早くて分かりやすい内容を心がけて、障害連と多くの障害者をつなぐツールとなっている。今年度発行したFAXレターの見出しは、下記に列記した。

 特筆すべきは、前年度に引き続き2013年度も若手の仲間が精力的に障害連の活動に参画し、仲間同士で役割分担をしながら、時に助け合いながら活動を進めていけるような体制がとれつつあることである。事務局メンバーが1名欠けてしまったが、引き続き若い仲間を集めることにも注力していく必要がある。

 

 2014年度は、障害連独自の取り組みを増やしていくとともに、一層の連帯を求め、障害者運動全体の要の役割を果たし、さらには若い人たちが中心となるための、原動力となっていきたい。

 

FAXレター見出し

障害連事務局FAXレター No.310  2014.7.15(火)

「私たちの生活に関わる9項目を要望!」

 

 

障害連事務局FAXレター No.309  2014.7.2(金)

「病棟転換居住施設、検討会認める」

 

 

障害連事務局FAXレター No.308 2014.6.26(木)

「3200名参加 6.26緊急集会「病院より、地域で暮らしたい」」

 

 

障害連事務局FAXレター No.307 2014.6.17()

「結論持ち越す―病院内の居住施設、疑問の意見続出(検討会)―」

 

 

障害連事務局FAXレター No.306 2014.6.10(火)

「6.26日比谷野音緊急集会に集まってください―STOP!精神科病棟転換型居住系施設―」

 

 

障害連事務局FAXレター No.305 2014.6.5()

 「“精神科病院の構造改革”とは?―介護サービスも重要、との意見出る(検討会)―」

「多様性を尊重した組織体制と議論の積み重ねが大切!―JD総会と政策会議2014の開催―」

 

障害連事務局FAXレター No.304 2014 5.29(木)

「障害当事者の生活をまず第一に―精神障害者地域移行検討会作業チーム(第4回)―」

「指定難病検討委員会(仮称)の設置が了承される―平成26年度第1回疾病対策部会―」

 

障害連事務局FAXレター No.303 2014.5.26()

「医学モデルはもうやめよう!〜難病法案成立〜」

 

 

障害連事務局FAXレター No.302 2014.5.20(火)

「病院は決して地域ではない「STOP!精神科病棟転換型居住系施設!!」院内集会,思いが熱く…」

 

 

障害連事務局FAXレター No.301 2014.5.8(木)

「条約と障害者政策委員会の役割―第12回障害者政策委員会―」

 

 

障害連事務局FAXレター No.300 2014 4.14()

「「難病」法案で、要望書を提出」

 

 

障害連事務局FAXレター No.299 2014.3.13()

「条約批准は新たなスタートライン―権利条約批准記念フォーラム-」

 

 

障害連事務局FAXレター No.298 2014.3.4(火)

「春!でも冷える」

 

 

障害連事務局FAXレター No.297 2014.2.17(月)

「難病政策の法制化についての見解」

 

 

障害連事務局FAXレター No.296 2014.2.10()

「病床転換型施設への批判相次ぐ―障害者政策委員会(11)―」

 

 

障害連事務局FAXレターNo.295 2014.1.20(月)

「尊厳死・出生前診断で、議論白熱-障害者政策委員会(第10回)、障害者団体からのヒアリング-」

 

 

障害連事務局FAXレター No.294 2013.12.13(金)

「「病棟転換型居住施設の動きに監視を!」―差別解消法基本方針議論進む―」

 

 

障害連事務局FAXレターNo.293 2013.12.5(木)

「障害者権利条約批准にあたっての声明」

 

 

障害連事務局FAXレターNo.292 2013.11.26(火)

「差別解消法の議論始まる―基本方針策定に向けて、雇用分野をどう扱うか?―」

 

 

障害連事務局FAXレター NO.291 2013.11.21()

65歳以上の問題、平行線―厚労省との第4回定期協議―」

 

 

障害連事務局FAXレター NO.290 2013.11.7(木)

「「骨格提言」の完全実現を求める10.31大フォーラム~約300人が参加し、アピール文を採択~」

 

 

障害連事務局FAXレターNo.289 2013.10.28()

「来年4月施行に向けた議論が進められる―第52回障害者部会―」

「高齢者の高額療養費制度を参考とする患者負担案が提示される―第33回難病対策委員会―」

 

 

障害連事務局FAXレターNo.288 2013.10.17(木)

「JD代表 勝又和夫氏逝く」

「法制化に向けた基本的な考え方が示される―第32回難病対策委員会―」

 

 

障害連事務局FAXレターNo.287 2013.10.1(火)

「悲報相次ぐ」

「障害者基本計画(第三次)閣議決定!」

「原点に立ち戻って―内容が求められる障害者部会―」

 

 

障害連事務局FAXレターNo.286 2013.9.24(火)

「「専門性」とは何か?―第6回障害者の地域生活の推進に関する検討会―」

 

 

障害連事務局FAXレター No.285 2013.9.17(火)

「厚労省事務局案が提示される5回障害者の地域生活の推進に関する検討会

 

 

障害連事務局FAXレターNo.284  2013.9.5()

「基本合意の実現求め、600名をこえる興奮」

「難病対策の法制化議論が再開される―第30回難病対策委員会―」

 

 

障害連事務局FAXレターNo.283 2013.9.2()

「私の専門家は、私!4回障害者の地域生活の推進に関する検討会

 

 

障害連事務局FAXレター No.282  2013.8.29()

「当事者の声が尊重されるGH施策を―第3回障害者の地域生活の推進に関する検討会―」

 

 

障害連事務局FAXレター No.281 2013.8.13(火)

「やっぱり大切!当事者の声7回障害者政策委員会

 

 

障害連事務局FAXレター No.280 2013 8.6()

「関係団体ヒアリング、はじまる。―第2回障害者の地域生活の推進に関する検討会―」


2012年度 障害連活動報告

 2013年7月27日総会にて採択

 この一年は、障害連にとっても、また障害者運動全体にとっても、大きな分岐点となった一年である。

 まず障害連に関しては、事務局メンバーが若い力で補強されていき、すこしずつ代替わりしてきている。難病や重度の障害を持つ仲間たちが、定期的に通い事務局で働くようになってきた。更にJD政策委員会にも、この若い仲間たちが参加している。2013年度は更にそれを充実させたい。

 

 障害者運動全体については、なんといっても「障害者差別解消法」の成立である。差別禁止法制は、障害連が発足した当初の1980年代後半から訴え続けてきたことである。ようやく長年の念願が叶ったのである。民主党政権下の障害者制度改革の一つの柱としての差別禁止法制であったため、政権交代によって、一時どうなるか全く見えない状況もあったが、障害者問題に理解がある与野党議員の強い働きかけによって、成立という今回のこととなった。

 障害連は、いち早く、政権交代の時に、自民党・公明党など与党の党首や関係議員に、障害者権利条約の批准をめざす法整備を強く訴えてまわった。どういう政権であろうが、訴えるべきは訴え続けるという精神が重要である。今回公明党の尽力は大きかったが、私たちの叫びに近い強い気持ちが、議員の方々を突き動かしたのかもしれない。

 

 さて2012年度の始まりは、障害連シンポジウム2012「障害者制度改革は、何だったのだろうか」からだった。尾上DPI日本会議事務局長を招いてのそれは、やはり残された差別禁止法が重要課題であることが、共有されたものとなった。また、総合福祉部会がとりまとめた骨格提言のほとんどを反故にする形で成立した障害者総合支援法についても、多くの課題が残されており、継続的な粘り強い運動の必要性が確認された。

 

 太田事務局長が委員を務めた内閣府の差別禁止部会は8月に部会意見をまとめた。部会意見の多くは成立した障害者差別解消法そのものには含まれず残された課題も多いが、一方で、衆参の付帯決議においては障害女性の問題にも触れられており、差別禁止部会で交わされた議論の重要性が再認識されるところであろう。

 

 毎年秋にフォーラムが開催されていたが、2012年は、韓国の国際会議と重なったことや、一方、焦点が差別禁止法となったことなど色々な事情が重なり、見送られた。

 

 今年に入り、障害連の独自の取り組みとして、東京都と話し合いをもった。大きなテーマである「差別禁止条例の制定」について、「国の動向を見ていきたい」として、独自の判断を避けた。また「谷間の障害問題」についても、国の政省令に従っていきたいとする、国まかせの回答が目立った。

 

 この他、JD政策委員会「生活の場のありかたワーキンググループ」に多くの役員が参加し、当事者の立場で発言していった。この他自立支援法訴訟団の院内集会、JDFの院内集会などに参加した。また交通行動へも参加した。さらにはメーデーや、連合の政策討論集会へも参加し、差別禁止法の必要性を訴え、介護保険の問題点を指摘した。

 

 FAXレターは、おおよそ月に2回ぐらいの割合で発行し、差別禁止部会のメモなどを中心に流していった。早くて分かりやすい内容を心がけて、障害連と多くの障害者をつなぐツールとなっている。おおよそのFAXレターの見出しは、下記に列記した。

 特筆すべきは、2012年度にあらたに若手の仲間が精力的に障害連の活動に参画するようになったことから、活動の幅やそれに連動してFAXレターの内容の幅に広がりがでてきたことである。若手の仲間がそれぞれのフィールドで取り組んでいることが障害連の活動にも還元され、良い循環が生まれつつある。

 

 2013年度は、障害連独自の取り組みを増やしていくとともに、一層の連帯を求め、障害者運動全体の要の役割を果たし、さらには若い人たちが中心となるための、原動力となっていきたい。

 

2012年度 障害連の活動(FAXレターより抜粋)

2012

7月 

ž   障害連シンポジウム2012「障害者制度改革は、何だったのだろうか」開催

ž   政策委員会のもと第1回差別禁止部会開催される。JDの協力でFAXレターを配信

ž   事業者交渉、東京都都市整備局

 

8月 第2回、第3回差別禁止部会開催される。JDの協力でFAXレターを配信

9月 差別禁止部会意見書まとまる。JDの協力でFAXレターを配信

10月 事業者交渉、東京バス協会加盟13社局、日本民営鉄道協会加盟大手民鉄8社、関東鉄道協会加盟4社

 

11月 

ž   国連障害者特別報告官 シェアイブさん来日

ž   JDF東京主催 差別禁止法の制定を求めるシンポジウム参加

ž   日本産婦人科学会主催 出生前診断シンポジウム参加

ž   ネットカフェ障害者入店拒否裁判 報告集会参加

ž   東京都交渉(差別禁止条例の制定、障害者自立支援 障害者の範囲の拡大、生活施設問題の解消、住宅施策の充実を要望)

ž   事業者交渉、東京都交通局電車部

12月 政権交代

ž   障害者権利条約批准をめざした国内法の整備について 与党へ要望書提出

ž   4回障害者政策委員会開催 当事者へ傍聴の呼びかけ

 

2013

1月 事業者交渉、JR東日本

3月 自民・公明与党 障害者の差別禁止に関する立法措置を検討するWTが設立される

4月 

ž   障害者差別禁止法を求める国会ロビー活動

ž   成年被後見人の選挙権裁判判決の政府控訴についての声明

5

ž   JDF緊急院内集会

ž   JD「『障害者差別禁止法制』はどこへ向かうのか」パネルディスカッション

ž   アクセス関東ネットワーク設立集会

6月 障害者差別解消法 成立

ž   生活保護法改正案参議院採決に反対する緊急声明


2011年度活動報告

2012年7月28日 総会にて採択 

昨年は、東日本大震災が起き、福島第一原発の大災害が引き起こされ、東北地方の一般市民はもとより、障害者も避難を強いられ、とても厳しい1年だった。東日本大震災の死亡者についても、障害者の比率が高く、障害者にとってのまちづくりのあり方が問われている。

 さて、障がい者制度改革も大詰めを迎え、8月に差別禁止条項が盛り込まれた障害者基本法が改正された。団体として求めていた理念規定は残念ながら盛り込まれず、消化不良ぎみのものとなった。

 また、総合福祉部会の骨格提言も55名の構成員全会一致によって8月に出され、大いに期待されたが、厚労省や民主党内での検討を経る中、昨年改正された障害者自立支援法改正の延長線上のものとなってしまい、長妻厚労大臣が訴訟団に約束した「障害者自立支援法の廃止と新法の制定」は、実質上反故にされてしまった、訴訟団は、国会前で、慎重審議を強く訴えたが、残念ながら620日参議院を可決し、成立してしまった。3年間の見直し期間があるので、その期間を通じて骨格提言をどれだけ反映させることができるのか、これからの勝負である。

 さらに優生思想と絡んでくる尊厳死法案が国会に上程され、障害者団体の間では緊張が走っている。

 制度改革に話がもどるが、差別禁止部会の議論も秋に向けて、骨格提言を出すために、山場を迎えている。最近部会三役から骨格提言のおおもとになる文書が出されているが、JDFなどの障害者運動の主張をだいたいとりあげている、骨格提言はある程度期待できそうだが、与党民主党の支持率が大幅に落ち込む中、法制定に至れるかどうか、極めてハードルが高い状況である。

 

 さて、障害連であるが、昨年10月のJDF全国大フォーラム(日比谷公園)への参加や、太田事務局長の差別禁止部会への参加、そして伊藤代表や関根副代表による交通行動への参加などがあった。さらに連合東京ボランティアサポートチームによる取組みもあった。4月には連合主催によるメーデーに参加し、おからケーキの販売活動を行った。

特に交通行動関係では、航空機問題が新たに浮上した。格安航空機の中で、電動車いす利用者に対して、「搭乗拒否」あるいは「搭乗の際はバッテリーを自らの責任で外すこと」を求めた。

 

 東京都交渉は、29日にもち、差別禁止条例の制定などを求めたが、「国の動向を見ながら」という消極的な態度に終始し平行線に終わった。

 

 なお総合福祉法問題に関しては、民主党に対し「障害者総合福祉法に関わる基本的な考え方(ご要請)」という意見書を出している。

 また6月段階の総合支援法参議院厚生労働委員会通過に対しては、「障害者総合支援法案、参議院厚生労働委員会採択に関して」という声明を出している。

 5月には有名タレントの家族の生活保護受給をめぐって、マスコミをはじめとする世論から生活保護バッシングが盛んとなり、529日緊急声明として「“個”や“尊厳”が原点 緊急声明―生活保護をめぐる世論に問題あり―」を出した。

 

 障害連内に目を移せば、世代交代は緊急的課題であることは今も続いている。しかし月に1回役員会を開催しているが、そこには少しずつ若手スタッフの参加が増えてきている。この流れで次年度も取り組んでいかなければならず、女性スタッフの育成には相当な大きな力を割いていく必要がある。

 

 2011年度の障害連シンポジウムと2012年度のシンポジウムは、日本理学療法士協会から助成金を受けることができた。しかし財政状況が毎年少しずつ減ってしまい、厳しい状況には変わりはなく、新たな収入源を確立する努力をしなければならない。

 

 障害者運動の全体状況を見る時に、総合支援法に対する考え方について、残念ながら、JDとろうあ連盟の「基本合意を無視することは許さない」ことを強調する立場と、DPIなどの「三年間をかけて改革していく必要がある」ことを重視する立場が出てきてしまい、少し足並みが崩れたことが否めない。

 今この国を動かしているのは、政党ではなく、官僚である、闘う相手を見極め、きちんとした戦略と、巧みな戦術が私たちには求められている。

 

2010年度活動報告

                                         2011年7月30日 総会にて採択

 

2011311日、東日本大震災が発生し、未曾有の被害をもたらした。大震災は福島第一原発の大事故をも引き起こし、原発は未だに収束の見通しがたっていない。地震・津波による被害もとてつもなく大きなもので、障害のある人たちの安否確認作業は未だに続いている状況である。

最も弱い立場にある障害者・高齢者等にしわ寄せがいき、せっかく避難所にいっても、「みんなの迷惑になるから」ということで、自宅に帰る人も少なくない。日本障害フォーラム(JDF)を中心に障害のある人に対する支援活動は続けられているが、多くの課題が浮き彫りにされ、その活動を多くの困難にたたされている。

さて、2年前の総選挙で政権交代をし、それを機に「障害者自立支援法訴訟」が、基本合意に基づいて和解となり、さらには障害者権利条約の批准をめざし、昨年1月「障がい者制度改革推進会議」が、障害当事者がおよそ過半数の中でスタートした。

熱心な議論が重ねられ、第1次意見、第2次意見が出されていった。第1次報告は閣議決定もされた。障害者基本法の抜本改正に向けてである。しかし法案が出される段階で骨抜きにされていき、随所に「可能な限り」という修飾詞を入れるなどした。

総合福祉部会も、自立支援法に代わる新法制定のための議論が続けられた。この夏にそのための骨格提言が出される予定である。

差別禁止部会も動き出した。構成員には、JDF差別禁止法小委員長の立場で、太田事務局長も参加し、当事者の立場から積極的な発言をしている。2年後の法案提出をめざしている。

 

自立支援法「改正」案は、昨年10月私たちの反対の声をよそに、国会での十分な議論をされぬまま厚労省の強硬姿勢に与党に民主党と、自民党・公明党が相乗りした形で、成立してしまった。総合福祉部会での議論を封じこみ、既成事実を先行させ、自立支援法を根付かせてしまおうというのが、厚労省の狙いである、その背景には、厳しい財政状況などがある。

 

こうした自立支援法を取り巻く情勢の中、昨年も10月フォーラムを行った「今こそ進めよう!障害者制度改革 自立支援法廃止と新法づくりを確かなものに 10.29全国大フォーラム」をテーマに、全国1万人の当事者・関係者が集まった。障害連からも多くの仲間たちが参加した。

 

さて、障害連は昨年7月31日(土)に障害連シンポジウムPart7障害者政策大転換の中、私たち全身性障害者の今を語る」を行った。施設で暮らす障害者からの発言や、入院時におけるヘルパー問題を明らかにする発言が多かった。

月、日野療護園を中心に、役員会を開催した。

東京都と1月18日(火)単独で話し合いをもった。しかし具体的な話は残念ながら進展をみなかった。内容は“差別禁止条例の制定”、“入院時のヘルパー保障”や、住宅問題であった。

制度改革推進会議で議論が交わされている中、「都としてはその状況を見守りたい」ということであった。

5月26日(木)、「人権白書東京実行委員会」として、東日本大震災時における受け入れ問題、特に精神障害者を中心に、評議の場を持ち、障害連から太田が参加した。

 

日本障害者協議会(JD)の理事会は月1度開催され、太田が理事として出席している。

DPI(障害者インターナショナル)日本会議の常任委員会は、およそ2カ月に1度開催されており、関根が常任委員として出席している。

 

連合主催の中央メーデーには毎年参加し、「おからケーキ」の販売活動を行ってでているが、今年は東日本大震災があり、販売活動は自粛とおなり行えなかった。

 

また「誰もが利用できる交通機関を求める東京行動委員会」には、伊藤が代表として出席し、昨年から今年にかけて、交通各社との交渉を行っている。争点は、「ハンドル型車イス」など、普通型ではない形の車イスの乗車問題となっている。

 

DPI東京行動委員会にも、太田や関根が参加をしてきた。

 

2009年度活動報告

                                            2010年7月31日 総会にて採択 

 

20098月の総選挙で、民主党が大幅に躍進し、麻生政権に替わり、鳩山首相による新政権が誕生した。障害者政策についても新しい展開があり、長妻厚生労働大臣は就任直後のインタビューで「障害者自立支援法を任期4年の間で廃止し、制度の谷間をつくらない新法をつくっていく」と答えた。これは、大行動、JD、ろうあ連盟などによる「10月全国大フォーラム」や、障害者自立支援法訴訟の成果だった。

1030日に1万人が参加した「さよなら!障害者自立支援法 つくろう!私たちの新法を!10.30全国大フォーラム」に長妻厚労相が参加、その場で改めて上記の発言を行い、参加者から拍手喝采を受けた。

障害者自立支援法訴訟についても、この考え方に基づいて、厚労省は原告団に和解を提案し、原告団はこれを受け入れ、基本合意を交わし、20104月すべての訴訟が和解に至った。

さらに今年1月には、障がい者制度改革推進本部のもとに、障害当事者が多数を占める「障がい者制度改革推進会議」が発足し、自立支援法に代わる新法の制定をはじめ、障害者権利条約の批准に向けた、障害者基本法の改正、障害者差別禁止法の制定など、障害に関わる法制度の検討作業がスタートした。今年20106月に第1次意見書をまとめ、推進本部長である管首相に提出、それを受けた形で閣議決定を行った。

このように障害者政策をめぐる環境は大きく好転した1年であったといえる。

しかし、喜んでばかりではいられない。今年2010年に、前年自民・公明両党によって出された障害者自立支援法一部「改正」案に民主党が同調する形で、国会に再提出されたが、「10月全国大フォーラム」の関係者を中心に猛烈な反対運動を展開し、鳩山前首相の辞任という予期せぬことにも助けられ、それは何とか廃案にすることができた。だが厚労省の意向は強く、改正案がまた出されてくることは間違いないといえる。

 

このような全体的な状況の中で、昨年200981日、障害連は定期総会を開き、新しい役員を選出、運動方針を確かめあった。代表には太田に代わり、伊藤が選ばれ、事務局長に太田がついた。規約改正も行われ、役員改選も2年に1度にし、同一役職は3期までとした。世代交代や、多くの人が活動に参加するということの具体的な第一歩である。

 また、同じ日に恒例のシンポジウム「全身性障害者にとって社会的自立とは何か」part6

全身性障害者の生活の場のあり方を、改めて検証する―「どうなる地域生活、どうする生活施設」を行い、施設利用者から、施設での障害者の生活が、夏場でも昼に風呂に入り、9時にはベッドに寝かせられるという、多くの人々の生活とはかけ離れたものである、などという指摘がなされていった。施設のあり方について、当事者の立場から問題提起してきたのが障害連の運動であり、今制度改革推進会議で議論がすすめられているが、施設利用者の立場からという視点が薄く、今後障害連として何らかの対応が必要とされる。

326日には東京都交渉を行った。主に通所訓練事業の継続などを中心に要望した。「2年間は継続する予定であるが、その後は未定」との回答であった。施設利用者の自治会からは「職員をこれ以上減らさないでほしい」という切実な声が出された。

障害者自立支援法に関しては、昨年20091222日付けで、「障害者政策に関する緊急要望」を長妻厚生労働大臣あてに出したが、残念ながら交渉を行うことが出来なかった。要望事項は「.障害者の介護サービスは年齢に関係なく障害者施策で」「2. 障害の重い人が地域で生活できるような仕組みを早急に」「3.障害の重い人の日中活動の場を安定したものに」の3項目であった。

今年2010年も連合東京ボランティアサポートチーム主催のバーベキュー大会に多くの会員が参加し、親睦を深めた。

また、メーデーにも参加し、「おからケーキ・おからクッキー」の販売活動を行った。

さらに昨年も例年通り、交通行動に参加をし、特にシニアカーの乗車の権利などについて要望をしていったが、具体的な前進はなかった。

なお、役員会は月に1度をペースに開催し、日野療護園で行うことが多かった。

ところで、以下は交通行動の記録である。

2009年度障害連より交通行動への参加活動記録

 

東京都福祉保健局福祉のまちづくり係交渉  93

東京バス協会加盟各社交渉         917

日本民営鉄道協会加盟各社交渉       924

関東鉄道協会加盟各社交渉         101

東京都交通局鉄道部交渉          108

交通統一行動シンポジウム         118

JR東日本交渉              1224

松屋フーズ                129

京王バス                 1216

京王電鉄                 217

 

毎月  交通行動実行委員会

    同 事務局会議

 


会計報告・予算