メーカーであれば品目別の損益資料は、多くの会社で作成されている。 メーカーに勤めていれば 製造部長でなくとも一度や二度は目にしたことのある資料であろう。 この種のデータを読む時には、 何を知りたいのかということをはっきりさせなければならない。 ここでは、販売費、一般管理費は全て固定費ということにしてある。 従って、工場段階での粗利益が最も大きくなるように生産計画を立てれば良い。 これだけのことをしっかりと把握し、それから行動の道筋に検討を加える。 余裕時間を使って製品Aを作るか、製品Bにするか、それとも製品Cを選ぶか。 少なくとも3つの道筋が比較の対象になるだろう。 比較の対象とする行動を列挙できたら、いよいよ資料の数字を料理する。 要領のいい数字の扱いが浮かんでこなかったら、 全てを再計算してみるのがひとつの方法である。 現行の計画のままでいった場合と、余裕時間を使って各製品を作った場合に、 それぞれの粗利益がどれだけになるか。計算を最初からやり直してみる。 このやり方を総額法という。
損得の判断の拠り所は何か。 ここでは工場段階での粗利益の大小である。 上の表から分かるように、 製品Bを作るのが最も有益であると判断しなければならない。 ところでこの表を見ると、 行動の道筋の比較に関連のない要素が入り込んでいる。 例えば、固定加工費の42万円は計算から除外しても 製品Bを作るのが最も有益だという結論に変わりはない。 どの道筋を採っても、同じ金額が共通に発生する要因だからである。 こういった要因を取り除き、違いが生じる要因だけを拾い上げて 利益の増し分を把握するのが差額法である。 現行の生産計画と比べた時の粗利益の増し分を差額法で求めれば、 下表のように計算がぐっと簡単になる。 計算が簡単になるほど間違いも起こりにくくなる。 損得の比較をする際には、 どの道筋を選んでも共通している部分は考慮から外して構わない。 違いが生じるところだけに着目するのである。
差額法の考え方を発展させると、もっと要領のいい方法が見つかる。 製品を1個追加生産して売った時に得られる利益の増し分を、 製品1個当たりの付加価値と呼ぶ。 付加価値は売上高から変動費(この場合は原材料費)を差し引いて求める。 製品を1個作るのに要する時間がそれぞれ異なるため、 1個当たりの付加価値を単純にそのまま比較することはできない。 共通の基盤に立って比較するには、 例えば、設備を1分間動かした時の付加価値に直してみればよい。 それが最も大きい製品Bを選ぶのが最も有益だ、というわけである。 このような計算法を採れば短い時間で正しい判断ができる。
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