家 族 達


「さくら」にまつわる話
1999年6月、「さくら」は、生後5〜6ヶ月になっていた。
が、いまだ「さくら」には、犬の友達がいない。
近所には、・・・さすがに北海道である・・・ピレネーとか、ハスキーとか、黒ラブとか・・・大きな犬ばかりで、「さくら」はおびえるばかり。
おそらく、小型犬も居るには居るのだろうが、外であまり見ることはなかった。
帯広の遅い春。
花々が咲き始めた公園に行った時のことである。
向こうから、シーズーが近寄って来た。
これは、もしかして、「さくら」にとっては、初めての小型犬との、直接な出会いかも知れない。
その犬は、ノーリードであり、やや早足でやって来ながらも、幼い「さくら」が驚かないように気を使っているのがわかる。
「さくら」は、案の定、体を丸めて、少々怖がった。
シーズーの接し方は、大変紳士的な優しい挨拶であった。
けれども、「さくら」は、私の足の間に体を隠し、上目遣いに私に訴えた。
そんな「さくら」を、私は励ました。
すると「さくら」は目をそらすやいなや、なんと、シーズーに遅れてやってきた、その飼い主さんに、すがって飛びつき、そして、もはや、リードがとどかないほど引っ張り、その人によじ登った。
私は、「さくら」の細くて赤いリードの、その端を持ち、しばらくぼんやり立ちすくみ、自分の立場がないのを、強く感じた。
それから、当分の間、私は「さくら」と会話したくなかった。
そんな私の心を知ってか知らずか、「さくら」は今でも、よその人、大好きである。
「さ く ら」
1999年1月6日生まれ 7歳
4sくらい
「ドル&ゆり」「モカ」の母。
「ミル」の祖母

「あおい」にまつわる話
「あおい」は・・・最近は、だいぶんそうではなくなったが、・・・兎に角、何かを口にくわえていたがった。
それは、赤ちゃんがおしゃぶりをくわえていると安心すると同様、精神的な要素も大きかったのかも知れない。
「あおい」は、子供の頃、我家に迎え入れたのだが、我家では既に犬集団が出来上がっていて、後から、たった1匹で入って来た子である。
その習慣からか、「あおい」は我家で唯一ボール遊びができる子である。
おもちゃやボールを投げると、教えもしないのに、野越え山越え拾ってくるようになっていた。
今では、オモチャを、ちゃんと人間の手の中に入れるまでになった。
ことのほか無芸な我家の犬のやからにあっては、ひときわ目立ち、天才の様である。
天才「あおい」は、また・・・比類なき、野次馬でもある。
他の犬達が、ガーガーと唸りながらふざけていると、「キュッ、キュッ!」と鳴るおもちゃを選んでくわえてきては、周りを回りながら、やたら鳴らす。
「ヤイノ♪ヤイノ♪」と言った調子だ。
ガーガー、バタバタ、キュッキュッ!
それにしても、にぎやかである。
特に息子「ミル」が誰かとふざけていると、かなりのテンションで鳴らす。
よもや、応援のつもりでもあるまいに・・・。
しかし、もしそうだとしたら、やはり、天才なのかも知れない・・・。
いや、この場合は、「天才」ではなくて、天才的な野次犬と言うべきかもしれない・・・。
「あ お い」
2003年12月4日生まれ 2歳
2.9sくらい
「ドル」のお嫁さん。
「ミル」の母。

「モカ」にまつわる話
白河に引越して、しばらく犬達を洗ってやれなかった。
何故なら、引越しの片づけで忙しいのも理由だが、室内が寒いと言うのも理由だった。
私たちは4月にこちらにやって来たが、その時、その寒さに震えた。
エアコンの工事も、すぐにはできず、持って来たストーブやファンヒーターは、ガスなので、ガス栓が室内に来ていないこの家では使えない。
止む得ず、石油ファンヒーターを購入しようとしたが、もう時期ではなく、売っていなかった。
暖をとっていたのは、こたつとホットカーペットだけだった。
しかも、犬達は、こたつには入れていないので、ホットカーペットだけと言う事になる。
今年の春は、どこも日照不足だったらしい。
天気もすぐれず、雨上がりの庭で遊ぶ犬達の汚れは、いつも以上に気になる。
ああ、しかし、もう我慢の限界!
それで、とうとう犬達を洗うことにした。
窓を閉め切って、湯船にお湯を溜めて、少しでも暖かくして、犬をシャンプーすることにした。
6匹の犬を1度に洗うのだから、どうしても待機時間が長くなる。
大急ぎでシャンプーしているつもりだったが、・・・とうとう待ちくたびれて湯船に飛び込んだ子がいた。
それが、「モカ」である。
すすぐ前に入ってしまったので、もはや、この湯船のお湯は、すすぎには使えない。
それで、方針をかえ、他の子も、シャンプー剤がついたまま、湯船に入れた。
泡だらけの中に、縁に手をかけた、可愛い6つの頭が並ぶ。
この日のお風呂は、さながら外国映画のシーンの様であった。
「モ カ」
2004年3月9日生まれ 1歳
2.9sくらい
「さくら」最後の娘。
「ドル&ゆり」とは、異父兄妹

「ミル」にまつわる話
「ミル」は、私の父が亡くなる1週間前に産まれた。
この子は、父の生まれ変わり・・・なのかも知れない。
だから、ずっと、私のそばに居たいのだろうか?と、思っていた。
ところで、父は生前、しがないサラリーマンで、漁師ではなかった。
趣味は、もっぱら室内での読書であり、お天道様の下で働くあの逞しい漁師とは、程遠い。
が、「ミル」は、もしかしたら、父ではなくて、案外、どこかの漁師の生まれ変わりではないのか?とも、思った出来事がある。
生後4ヶ月ちょっとの頃、それまでも、時々行っていた川辺で、遊んでいた。
すると、「ミル」が何かを咥えてきた。
「ミル」は、いつもは、あまり、物を咥えて持って来たりはしない。
よく見ると、シシャモほどの大きさの、川魚だった。
今の今まで生きていたように、つややかで目も美しい。
どうやって捕ったのかは定かではないが、生きているのを取ったに違いない。
それで、「ミル」は、その魚を自慢げに手渡すのかと思いきや、「こんなの捕るの、わけないよ!」と、言いたげに、ポイ!と私に手渡して、また、川に駆けて行ってしまった。
さすがに漁師の血は、これくらいの小物では、感激しないんだな。
ところで、「ミル」は、今は「ドル」にとても可愛がられている。
まるで、父息子と言うのが、わかっているかのようだ。
しかし、オス同士、将来もこのまま仲良くやっていけるのだろうか?
里親さんが見つかったら、その方にお願いするつもりであるから、私は「我家の子供だと思っちゃいけない!」と、心をセーブしている。
それは、将来は嫁に出さねばならないと覚悟し、慈しみ育てている愛娘を持つ、親の心境かもしれない。
「ミ ル」
2005年10月18日生まれ 8ヶ月
男の子 2.8sくらい
「あおい」の初めての子。父は「ドル」
我家の全ての犬と、血縁関係


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