はつこひ
博物館で出会ったんだ。
「博物館?」
うん。小学生の頃。目が覚めたら真っ暗で、慌てて家に帰ろうと――
「ちょっと待て、あんたなんで博物館なんかで寝てんの?」
まあいいから聞けよ。すっげー静かでさ。廊下には誰もいなくて風が吹いたんだ。
「風?」
そう。そんでね。白い服の、多分ワンピースの、裾がふわっと膨らんで持ち上がったんだ。
「誰のだよ」
だからその人の。それでね。ふくらはぎ位まで露わになってね。
「状況が見えないよ全然」
うん。良く覚えていないんだよ。展示物も、壁の色も。
ただね、足だけ。裸足で、爪先立ちになってた。

それは

綺麗に並んだ爪と

青白く、ひっそりとした

ああ、踝だ。
「くるぶし?」
うん。踝と、足首全体。それが一発目。なんかすごく、来たんだよ。ズドーン!てさ。もう心臓大暴走。
「…二発目は?」
二発目、はねえあれ、膕。
「ヒガカ?」
ひかがみ。膝の裏側の窪んだところ。横から風が吹いてスカートがそこまで捲れたんだ。
それ見た時にはもうすっごい好きになってた。触りたくてたまんなかった。
「それが?」
うん。それが初恋。
「なんて言うか、可愛らしくも肉体的だね」
ははは。

あんたにとって『触りたい』=『好き』なのかっ?という疑問は置いといて、今日から膝の裏とくるぶしとうなじと親指の付け根と膝と手首と背中と臍と肘とふくらはぎとかかとを磨きたてよう!と決意したその日。


NOVEL