君がいるからここがラクエンそれが常識
私たちは会ってはいけなかった。
お互いそれを知っていたのにどうしても会わずには居られなかった。
出会いは偶然だった。誰からも咎められる要素はない。
けれどもあの人と別れた後で私はその喪失感に愕然とした。
あの人なしでは生きて行けない。
今までどうして生活して来れたのだろう。歩くことも儘ならないような錯覚に陥った。
次の日、同じ時間に私はあの場所へ行った。
あの人は私を待っていた。
それから毎日のように会った。どうしても会わずにはいられなかった。
あの人は私の目の前でバニラと言う名の紅茶を飲んでいた。なんだか騙された気分になるから私は匂いだけが甘いその紅茶が嫌いだ。臙脂のネクタイを緩めて一番上の釦を外した喉を見つめた。あの人の灰色のブレザーと私の濃紺の制服と、確かにありふれた制服だけど、もしも誰かがそれに気付いたら。
どうしてこんなにも会いたくてしょうがないのだろう。そう訊くとあの人は、少し黙った。
分からないの?
分からない。
それは私が私で君が君だからだ。
ああ、なるほど。
それに、禁じられているから余計に興奮するのかもしれない。
確かに。
私たちは声を出して笑った。
私たちは会ってはいけなかった。比喩でもなんでもない。
私たちが接触することは法で禁じられていた。
せめてもの救いは私たちが未成年で、実刑を受けることがないと言うことだ。
そうだよハニィ。捕まったって死にゃあしない。悩んでないで楽しもう。
セクシィヴォイスに耳くすぐられピンクの脳味噌機能停止。
おっけえダアリン愛してる。
――それは本当に救いか?
終