研究紹介

  漢詩解読(七言絶句)(楓橋夜泊)ふうきょうやはく

【白文関防印  解読】

淡 如 雲

淡きこと雲の如し
(あわきこと くもの ごとし)
【漢詩解読】 七言絶句】

月落烏啼霜満天
(月落ち鳥啼きて霜天に満つ
(つきおち カラスなきて しも てんに みつ)
江楓漁火對愁眠
(江楓漁火愁眠に對す)
(こうふう ぎょか しゅうみんに たいす)
姑蘇城外寒山寺
(姑蘇城外の寒山寺
(こそ じょうがいの かんざんじ)
夜半鐘聲到客船
(夜半の鐘聲客船に到る)
(やはんの しょうせい かくせんに いたる)
【漢詩解釈】
月が西に傾き夜も更けたころ、カラスが鳴き、霜の降りる気配が天に満ち溢れています。
そして運河のほとりに繁るカエデや点々と光る漁火が、旅愁のために船中で眠れずに
うつらうつらしている私の目に写ってきました。
丁度そんな時に、姑蘇の町はずれにある寒山寺から、夜半を告げる鐘の音が、私の乗っている
客船にまで聞こえてきたのでした。
【大意】
都落ちした旅人が、蘇州西郊の楓江にかけられた楓橋の辺りで船中に泊まった際に、
旅愁のために眠れぬまま寒山寺の鐘の音を聞いたという様子を詠ったものである。
【語釈】
楓橋(ふうきょう):蘇州(今の江蘇省蘇州市)の西郊にある橋
当時は南北往来の要路であった
江楓(こうふう):揚子江のほとりにあるカエデの木
漁火(ぎょか):魚をおびき寄せるためにたく火。「いさり火」と言う
愁眠(しゅうみん):旅の疲れでうつらうつらすること
姑蘇(こそ):春秋戦国時代の呉の国の都。現在の江蘇省呉県
        寒山寺(かんざんじ):蘇州の西郊 楓橋の近くにある寺で中国江蘇省
        蘇州市楓橋鎮にある臨済宗の仏教寺院。
        蘇州の旧市街から西に約5キロメートル、蘇州駅南南西
        3キロメートルの土地にあり、寒山拾得の故事で名高い。
【漢詩作者)
張 継(ちょうけい)  生没不詳      
中唐の詩人。字は懿孫(いそん)、湖北省襄州(じょうしゅう)の生まれ、
天宝12年(753)に進士に合格する。 地方官より中央の検校(けんこう)
祠部(しぶ)郎中(ろうちゅう)を歴任する。
寒山寺には、張 継(ちょうけい)の詠んだ「楓橋夜泊」を刻んだ石碑がある。
解読文責:尾臺成大


【落款解読】

襄 水 道 人 書
    (じょうすい どうじん しょ)