【書簡解読】 拝啓 先夜 御依拠の 拙筆は 直接 東京へ郵送 附箋有に付 御承知 被下度候 別冊土居清良公にも楠 公にも劣らざる真に立派なる 兵家に有光 御處 ○里 方 面の戦記多く 而 同姓 櫻井武蔵は また 智勇 無双の軍師と見受候 次第 修養書として 同好 の士に頒たむる 先般 金 鶏学院より 数部取 寄 候に付 御未見に候はば 御一 読被下度 一本御送付 申し上候 御暇の節は 御来遊相成度候 敬具 二月二十五日 山本五十六 櫻井忠成 殿 |
【読み】 はいけい せんや、ごいきょの、せっぴつは、ちょくせつ、 とうきょうへゆうそう、ふせんありにつき、 ごしょうち、くだされたくそうろう、 べっさつ、どいせいりょうこうにも、くすのき こう、にも、おとらざる、まことにりっぱなる、 へいけに ひかりある おんところ 「 ○り 」ほう めんの せんき、おおく して、 どうせい、 さくらいむさしは、また、ちゆう むそうの、ぐんし、と、みうけそうろう、 しだい、しゅうようしょとして、どうこう の、し、に、わかち たむる、せんぱん、きん けいがくいん、より、すうぶ、とり よせそうろう につき、おみけんに そうらわば、ごいち どくくだされたく、いっぽん、ごそうふ、もうしあげそうろう、 おんかのせつは、ごらいゆう、あいなりたくそうろう、 けいぐ 二月二十五日 やまもと いそろく さくらい ただなり どの |
【口語解釈】 拝啓 先日夜に、ご依頼の書面を拙筆ではありますが、 直接、東京へ郵送しました。附箋をつけていますので、 ご承知くださるようお願いします。 別冊には、土居清良公にも楠公にも劣らない立派な 軍人の家に光が有ります。場所は「○里」方面の 戦記が多く、そして、貴殿と同姓の櫻井武蔵は、これまた 智勇無双の軍師とお見受けします。 だんだんと、修養書として、同好の士に分ちあうように なりました。先般、金鶏学院から数部取り寄せましたので まだ、見ていなければ、一度読まれてはいかがでしょう。 一冊、本をお送りします。 またお時間があれば遊びにお越しください。 敬具 二月二十五日 山本五十六 櫻井忠成 殿 |
[ 参考 ] 依拠:依頼すること 拙筆:自分の文章や文字が拙いと謙遜していうこと 土居清良:(どい せいりょう / - きよよし、天文15年(1546年) - 寛永6年3月24日(1629 年5月16日))は、戦国時代から江戸時代初期にかけての武将。伊予国の国人。西園寺 十五将の1人 ○里:地名であるが解読不能 櫻井武蔵:剣士で鍛冶師。 修養書:人格や品性を高めるための書物 金鶏学院:(きんけいがくいん)は、陽明学者の安岡正篤が1926年(大正15年)4月に開いた私塾である。 正しくは「金?学院」(「?」は「鶏」の異体字)。右翼団体、愛国団体に分類される。学院の方針は、近衛文麿、結城豊太郎ら政財界の重要人物から広い支持を得た。吉田茂 (内務官僚)は同学院の顧問であった。事業は順調に進み、そのあまりの順調ぶりに実行団体からは貴族的だとの非難も発せられた。 |