監督コメンタリー
US版DVDの監督コメンタリーも面白い情報でいっぱいですが、おそらく皆さんは兄弟の全裸シーンがある Special Features ばかり見てしまって、コメンタリーなぞ聞いている場合ではないと思います。(^^;) コメンタリーも全部聞いていたら膨大な量になりますので、ここではめぼしい所をピックアップして掲載しています。「ここは何て言ってるの?」というご質問があれば、随時お答えしていきますのでリクエストよろしくお願いいたします。 ■どんどんアドリブやってくれ アダルトショップに 3人で処刑に向かい、店の通用口の前で目出し帽を被る時に、ロッコの手作り目出し帽がおかしくて、兄弟はロッコの事を Fat Albert の Mush Mouth(後述)みたいだとからかいます。拗ねて帽子を脱ごうとするロッコをコナーがぺしっと叩いて、(いいなー叩かれてみたい…) 「いいから被れよ。You look f**king scary, man (すげー恐く見えるからさ)」 と慰め(?)て、また被らせます。ここで監督はぷはっと吹き出し、「今のはアドリブだよ。実は現場ではアドリブがたくさん出たんだ。役者達はみんな自分の役をすごくよくつかんでいて、自然にセリフが飛び出すんだ。最初の頃は俺に許可を取ってたけど、そのうち、(アドリブを)やりたかったら、どんどんやってくれ、って言ったんだ。だってみんな本当に役になりきってるからね」 ということで、役者達のアイディアが色々あちこちで取り入れられたようです(直後にデフォーがストリッパーの紫の羽根飾りを玩ぶシーンとか)。ちなみにコナーのこのセリフが何故おかしいのかと訊かれると、とにかくコナーの言い方がオカシイとしか言いようがないのですが… (全然説明になってませんな ←他人事) さて監督は、この映画の脚本を書いて、監督をしたのは自分だけど、役者達ほど役を理解してる者はいないということを現場で学んだ、とも語っています。「役者達、特にロッコ、デフォー、ショーン、ノームの4人は、実に役にはまっていて、自分が夢にも思わないようなセリフやアイディアを持ちこんでくれて本当に完璧だった」そうです。 さて、前述の Fat Albert の Mush Mouth ですが、Fat Albert というのは70年代にアメリカで放映された子供向けアニメ番組のタイトルであり主人公の名前です。下の絵の1番左の太った男の人がたぶん Fat Albert だと思います。 Mush Mouth は登場キャラの1人で、潰れたような喋り方をするからこの名がついたとか。右から4番目の目穴を空けたピンクのスキー帽(ランプの傘ではナイ)を被っているのが Mush Mouth ではないかと思うのですが、これは Dumb Donald という別のキャラで、私が見た Fat Albert の記事によると、この2つのキャラはそのおバカぶりでよく間違えて覚えられているとか。もしかしたら、監督は Mush Mouth でなく Dumb Donald と書くべきだったのではないかと思いますが、そんな間違いを他の誰も気がつかないなんてありえないし、たぶん私の気のせいでしょう…(たぶん)。でも、詳しくご存知の方がいたら教えてください。 しかし、このピンクのスキー帽クン、ロッコにほんとによく似てますね(^^;) 眉毛(?)がそっくり。(そしておそらく馬鹿さ加減もそっくりなのであろう…) ■便器シーンのアイディアは弟テイラー 監督は便器シーンの脚本を書いている時、アイディアに詰まって、弟のテイラーと話し合ったことを明かしてくれてます。コナーが便器に繋がれてる間に、マーフは下の路地で殺されてしまう、さてどうやってこの事態から逃れるか。手首を外して手錠をとるとか、山ほど色んな方法を考えたそうですが、 テイラーが、「ヘイ、いっそのこと便器を床から引っこ抜いちまったらどうだい?」と言ったので、監督は「ヘイ、そいつぁークールだ。後でもっと面白い伏線になるしなー」 という感じで、あの名シーンが生まれたそうです。ダフィー・ブラザーズらしい軽ーいノリで何でも出来上っちゃうんですね。でも、弟さんの貢献がどの程度かわかりませんが、続編の脚本も監督とテイラーさんの2人で書いたみたいですし、クレジットには監督/脚本:トロイ・ダフィーの名前しか出てこない事について、テイラー弟は別に文句もないんでしょうかね? 頭使うこと、めんどくさそうなことは全てお兄ちゃんにおまかせなんでしょうか。 何となくマーフィー弟もそんな感じで、兄弟ゲンカはするけど、結局お兄ちゃんに絶対服従のようなところがありますしね。しかし監督って、やたら弟を愛してる、と力説するんですけど、男同士の兄弟であんなに Love を連発するもんなんでしょうか? ショーン&ノーマンだと美しい兄弟愛なんですが、トロイ&テイラーだと何と言うか…いや、その… (むにゃらむにゃら…) ■ショーンとノーマンどっちがお気に入り? 全裸シーンでのやや偏愛的なショーンの映し方から、監督はショーンを愛しているに違いないと思われますが、コメンタリーを聞くと、ノーマンのことも随分ひいきにしているという印象を受けます。刑務所で啓示を受けた翌朝ショーンと見つめ合って、ノーマンお得意の上目使い光線炸裂!のシーンのコメンタリーで監督は、 「ノームにはある種の資質がある。役者たちの出演作が全部送られてくるんでノーマンのも見たけど、彼をスクリーンで見るたびに思うんだ、この青年は一体何を考えているんだろうってね。彼にはジェームズ・ディーン的な才能がある。彼は何も言わずにただ座っているだけでも、カメラに愛されてしまうんだ」 ショーンに関しては「一方、彼はもっと訓練された役者だ。彼に 1度聞いてみたんだけど、もし母親が死んだと聞かされても、彼はまず撮影を済ませてからトレイラーに行って泣く、というタイプで、まさにプロだ。彼を動揺させることは出来ないよ。俺の意見だけど、彼はハリウッドで最も輝かしく才能ある俳優の1人だ。彼ともっとこういう仕事をしたいよ。彼の芸の幅や能力を見せるためにね」なんて言ってます。 ノーマンについては生まれついての存在感、ショーンについてはプロとして訓練された能力を高く評価しているんでしょうか。ちょっとショーンの美点については取ってつけたような説明のように聞こえるんですが、私に先入観があるせいかもしれません。思いっきり私見ですが、監督は カ・ラ・ダ はショーン(!)、役者としての才能はノーマンを愛しているような気がします (^^;) ■ロッコの苦労話 今回はおそらく誰も気にしないであろう、ロッコのお話です。 アダルト・ショップにヴィンチェンゾを殺しに行くシーンのコメンタリーで、監督はロッコの下積み生活の苦労話をしてくれています。私個人としては面白かったので、紹介させていただきます。興味のない方にはゴメンナサイ。 「ロッコはこの街(LA)に 1979年くらいにやって来て、役者になるためがむしゃらに頑張った。10年か15年くらいかな。俺が知ってるだけでも、こんな奴は山ほどいる。皆ほんとうに才能あるのにね。見てみろよ、こいつを(ロッコのこと)。こんなに才能あるのに、1度もチャンスを手にできなかった。 「でも、今回は彼もチャンスを手にした。今では顔が知られて、行く先で声をかけられるようになったし、少しは胸を張って歩けるようになった。これは俺にとって、この映画の貴重な点の1つだ。彼のように、その資格がある奴、時間と努力を注ぎ込み、そして諦めていた人間に報いたんだから。 「さっき言ったように、彼はここに来て27年くらいたつ。最初の15年は、死に物狂いで頑張ったけどナンにもならなかった。後の10年か12年は、あきらめてバーテンダーになっていた。でも今、こうして彼のカリスマ性やすばらしい素質、彼が言うバカなセリフの数々が見られる。本当にすっごく面白いんだぜ。彼にチャンスをあげることができて嬉しい。ロッコも俺もこの映画を観てとても誇りに思ってる。だって、2人で初めて一緒にやり遂げたことだからね。」 …ということで、おバカなロッコも色々苦労していたんですね。ところで、ここに来て27年くらいって、一体ロッコは何歳なんでしょうね? 監督サイトにはロッコのバイオグラフィーは出ていませんし、出ても年齢は公開しないような気がします。仮に15歳から役者を目指していたとすると、今(202年現在)42歳以上 ??? ダフィー・ブラザーズよりかなり年上のような気がするのですが…(いえ、別に友情に年齢は関係ないですけどね) 『処刑人』がロッコにとって映画初出演だったと思いますが、そうとは思えない演技力には確かに驚かされました。他にも映画にどんどん出ていただきたいですが、他作品出演の話は聞きませんねぇ… 『処刑人』一発で終わりにならないといいのですが… ■ダフィーの成功話 ロッコの苦労話の後は、監督の成功話です。 「フィルム・スクール(UCLA、USC、ボストン大学、etc.)で学生達と何度か話したことがあるけど、みんな同じ質問をしてくるんだ。『(映画を作るには)一体どうやればいいのか? 誰か(業界に)コネがないとダメなのか?」ってね。俺は、何のコネもなくてもできる、という生きた証拠だ。俺の親友クリス・ブリンカーは、この映画のプロデューサーで、すばらしい人間だ。でも、彼はプロデューサーじゃなかった。アシスタントとして映画関係の仕事をしていただけだ。もちろん若いアシスタントはみんな、自分のプロジェクトを始めたいと思っているけど、彼らには何の力もない。アシスタントの友達を持つよりバーテンダーの友達を持ったほうがいいくらいだ。少なくとも、タダ酒が飲める(笑)。 「CB(クリス・ブリンカー)と疎遠になって2〜3年たった頃、俺が働いていたバーに彼がやって来たんで、近況とかいろいろ話をしていた。『俺、脚本書いたんだぜ』 なんて言ったけど、彼が映画業界にいたとは知らなかった。そもそも映画業界にいたとは言えないけどね。だって、ただのアシスタントだし。彼は脚本を読んで、『僕がこれ扱ってもいいかい?』って聞くから、『好きにしろよ。どうせ見せる当てもないし』って言った。 「それから彼は色々と脚本を売りこむために頑張ってくれた。それと、今は俺も山ほど脚本を読んでるからわかるけど、この世界でオリジナルなものはほとんど見つからない。そのなかで、『処刑人』は抜きん出ていたんだ。 「後は、ほとんど一夜にして成る、って感じだ。数日のうちに、(業界の)大物たちがバーにやってきて、数百万ドルの予算について話しながら、俺にバドライト(ビール)を注文した。そして、『この映画を作るのに 500万ドルでどうだい?』なんて聞くんだ。俺は、『すごいね。ところでビール代は、2ドル50だ』って言った。全く、途方もない話だよ。 「ゼロからヒーローになる、とはこのことだ。それからは、新聞社やエージェントやらが次々やって来た。こうなったのは、俺にコネがあったからじゃない。さっき言った通り、コネなんかなかった。そして、CB に力があったからでもない。彼は何の力も持ってなかった。これは、友達同士の男が2人、一緒にスゴイことを成し遂げた、っていうことなんだ。俺は彼に独創的な脚本をあげて、彼はちゃんとした人たちと会えるように手配してくれた。嘘ついたりごまかしたり、できることは何でもやってね(笑)。だって、彼は(脚本のすばらしさを)信じてくれていたから。スタジオのエライさんを知っているより、誰か頭が良くて心から君のことを考えてくれる人、そう君の大事な友達を信じるのが1番だ」 ということで、ロッコといい CB といい、監督は良いお友達を持ってますね。「なんだ、結局ギョーカイに友達がいたからじゃない」なんて言わないで、素直に監督のサクセス・ストーリーを喜んであげましょう。CB さんが頑張ってくれたとはいえ、やはり監督のオリジナルな脚本がなければこの映画はあり得なかったわけですし。それにしても、バーテンダーをやっていた人が、スラッと映画の脚本を書いて、監督までやって、その映画はカルト的ヒットを飛ばすなんて、尋常じゃないですよね。やはりハリウッドは夢がつまったおとぎの国なんですねぇ…(と、メルヘン調に締めてみました → オトメ)。 ■小指に関する日米の反応の違い スメッカーさんがロッコの吹っ飛んだ指を拾うシーンのコメンタリーで、監督がなかなか興味深い話を披露してくれています。 「俺は(処刑人の)映画を劇場公開するために日本に行ったんだ。日本はアメリカみたいな政治的見解を持ってないからね(管理人注: アメリカでは、銃乱射事件の影響で限定公開になったことを指しています)。たくさんの国で(処刑人を)劇場公開したけど、日本はその中でも大掛かりなものだった。俺たちも日本に行って、(ロッコの)指が地面に落ちているのが映った時、日本の観客は笑ったんだけど、アメリカの観客はすごいショックを受けて 『オーマイガッ』 なんて言ってた。これで、文化の違い、受け止め方の違いがわかるよね」 ということです。確かに日本人はヤクザ映画などで指切るのは見なれてますけど、アメリカ人は指を切るシーンを見て映画館で失神する人が出たりするそうですから、このシーンはあちらではかなりのバイオレンス・シーンとみなされるのかもしれませんね。 ■ショーンのガールフレンド 隠れ兄派も多い今日この頃、この話題には触れたくなかったんですが、やはり語らずにはいられないでしょう…(ま、監督もちょっとだけしか話してくれてませんけど)。という訳で、今回は兄のカノジョ話です。 監督は、ショーンとノーマンがとっても付き合いやすいイイ奴だ、という話をしています。 「いちど週末に、ショーンやノーム、クルーの皆と一緒に、ペイントボール(塗料弾を用いる模擬戦闘サバイバル・ゲーム)をしに行った。俺たち軍隊みたいな人数でだぜ。俺とショーンが(戦闘ゲームの両チームの)リーダーになってゲームをやって、家に帰った時は、青アザや砂まみれ、酒も入って、サイコーにおもしろかったよ。ショーンはほんと、つきあって楽しい奴だ」 そしてですね、監督はいきなり、 「それに、(ショーンには)すっげーホットなガールフレンドがいるんだ」 とポロリ。ついでに、 「ほんっとに羨ましいぜ(誰が? ショーンが? 彼女が?)。すっごいショックだ(何が?)。彼女とは映画の撮影で会ったんだ。ワ〜ンダフルな娘だよ」 ということです…(しーん)。しかし、監督はこの後いきなり話題を変えてしまうので、これ以上は分かりません。たぶん、言ってしまって「ヤバイ」と思ったんでしょうかね。ショーンの私生活についてはほとんど情報が入ってきませんので、これを耳にした時には、信じられませんでした。 それにしても、ショーンのカノジョ…。映画が撮影されたのは 1998年だったと思いますが、その時ガールフレンドがいたわけで、今回のDVDのコメンタリーが収録されたのが今年だとして、現在形で「ガールフレンドがいるんだ」といっていることから、4年もそのオンナと続いている、ということでしょうか??(まあ、余計なお世話ですけどね) ところで、監督の「ほんっとに羨ましいぜ(Really jealous)」や「すっごくショックだ」発言では、主語や目的語が省略されていて、誰が誰に何についてジェラシーを感じたのか、別の解釈をしようと思えば、できないこともありません(いや、ほとんど無理なんですけどね…笑)。初めて聞いた時は、監督がカノジョに嫉妬していて、(ショーンに女がいることに)ショック受けた、と聞こえてしまいました(妄想耳)。 ということで、まだまだ希望を捨ててはいけません(はぁ?)。処刑人続編の撮影の時には、舅のようにガールフレンドいびりをしてくれるのではないでしょうか(ウキウキvv)。 ■ロッコのナンパ作戦 またも誰も気にしないであろう(^^;)ロッコのお話です。 撮影中、みんなで毎晩のように、ホテルの近くのバーに通っていたそうですが、そこのウェイトレスの1人が気に入ったロッコ。でも、彼女は全然相手にしてくれません。そこでロッコは、「俺、ここで映画を撮影してるんだ。デフォーを相手にだぜー」とかなんとか自慢して彼女を口説いたそうです。 たまたま彼女はウィレム・デフォーのファンだったのですが、もちろんロッコの言うことなんか信じるはずもなく、「ふん、そうでしょうとも。この負け犬。とっとと帰ってよ」とけんもほろろ。 当然このことは、撮影クルーみんなの知るところとなっていますので、監督達はデフォーに話して一緒にそのバーに行ってもらったところ、この気の毒なウェイトレスは、厨房から出てくるなりデフォーを見て驚いて、持っていたドリンクを全部落っことしてしまったそうです。 彼女はぶるぶる震える手でペンとナプキンかなんかを持ってきて、デフォーにサインをお願いし、デフォーは受けとってサインしようとしてから、ふと手を止め、ロッコにこうお伺いを立てました: 「サインさせてもらうよ。ロッコがいいって言ったらね」 そこで、ロッコは、「ああ、いいよ。してやってくれ」 (←えらそー) と、まるでマフィアのドンみたいな言い方で、デフォーに許可を与えたらしいです。このことで、監督達は何週間も笑ったとか。 いやはや、意地の悪いイタズラですね(そのウェイトレスがちょっと気の毒)。でも、デフォーもなかなか良いノリしてますね。キャスト・撮影スタッフのなかで1人だけあまりにも格が違うので、サインだの記念撮影だのと煩わしいことも色々あったと思うのですが、大物らしく そつなく捌いていたんでしょう。 さて、その問題の彼女とロッコがどうなったかは、監督は語ってくれてないみたいです。 (たぶんダメだったのであろう… →当たり前) |
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