荒城の月
作詞 土井 晩翠
作曲 滝 廉太郎
春高楼の 花の宴(えん)
めぐる盃(さかずき) かげさして
千代の松が枝(え) わけいでし
むかしの光 いまいずこ
秋陣営の 霜の色
鳴き行く雁(かり)の 数見せて
植うる剣(つるぎ)に 照りそいし
むかしの光 いまいずこ
今荒城の 夜半(よわ)の月
かわらぬ光 たがためぞ
垣(かき)にのこるは ただ葛(かずら)
松に歌うは ただ嵐
天井影は かわらねど
栄枯(えいこ)は移る 世の姿
写さんとてか 今もなお
嗚呼(ああ)荒城の夜半の月
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「歌詞の意味」
春には、もともとここにあった城の中で、にぎやかな花見の宴がはられた
にちがいない。はずむ声。笑い、そして酒を酌み交わすさかずき・・・。
そして、城壁の大きな松の枝あいからは、月の光がさしこんでいたに違いない。
そんな、昔の面影は、どこへいったのだろうか。
秋は秋で、戦いに備えて、陣営の中は、ぴーんと張りつめたふんいきであろう。
その空には、渡る雁の姿も見えていて・・・。
よろいに身をかためた武士たちの、槍や刀をそっと照らしていた、あの昔の
光は、どこにいってしまったのだろうか。
いま、月は昔と変わらぬ光を投げかけているが、荒れ果てた城跡には、人の
気配もない。
石垣には、ただツルが生い茂っているだけで、松の枝を鳴らしているのは、
寂しい風の音だけだ。
大自然の移りゆきは少しも変わらないのに、人の世は、栄えたり、亡びたり
をくりかえしている。
その人間のはかなさを告げようとでもいうのだろうか。荒れ果てた城に、い
ま、月の光は、こうこうと降りそそいでいる。。
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