紅天女の贈り物
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「…そうだな、お前がいるしな……」



(ここは『ただ物を送るだけの男』よりも、『周囲にも気を使える男』と言う点をアピールすべきか)



「………?」

意味深な言葉を吐きつつ何度も頷く男に、両肩を鷲掴まれた朝倉は胡乱気な瞳を向ける。

そのタイミングを計ったかのように伊達は肩から手を離すと、満面の笑みと共に親指を立てた。

「よし、朝倉、特別サービスだ! お前も外から戻って疲れただろうし、息抜きに叶さんと一緒にこの苺を食べて良いぞ」

「はぁっ?」

「あくまで『叶さんと一緒に』だぞ? ちゃんと叶さんにも食べて貰うんだぞ?」

「……………」

念押しを忘れない伊達の抜かりの無さに、朝倉は二の句を口にする気にもならず手の中の紙袋へと視線を落とした。

自分にとって恐ろしい相手への付け届け、それの何処が特別サービスなのかと思案する。

最早『特別』と言う辺りが嫌がらせなのではないのかと、心中に暗雲を立ち込めさせる。

「後は託したからな、朝倉!」

自身の案に満足感を覚え、CM俳優も顔負けな笑顔を浮かべると、伊達は止まったままだったエレベーターへ乗り込むとその場を去った。

それは朝倉の暗雲など吹き飛ばすほど、むしろ何も知らぬ者特有の清々しい笑みだった。

「……………」

伊達は何も知らない、朝倉の陰鬱な気持ちなど微塵も知らない。

「………ああ……死にたい……」

心底脱力仕切った声で、朝倉は手の中の袋へと愚痴を零した。

その中では朝倉の呟きも伊達の思惑も嘲笑うかのように、紅い乙女が妖艶な光沢を放っていた。




【END】


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マエ / アトガキ
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ショコ / イリグチ