雨と霊と男と女
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斎原が持っていた服がバサリと床へ落ち、慌てて類家は濡れないうちに着替えを拾おうとする。

しかしその背後から。

「うわっ!! い、今タオルと洋服が宙を飛んで来た!」

と言う志賀の情けない悲鳴が聞こえて来た。

類家としてはその言葉に対するフォローが見付からない、事実だけに否定が出来ない。

「何言ってるのよ、そんな事ある訳ないでしょ!」

先程までうろたえていた森が、関心の無い話題を口にされて苛立った様に志賀を叱咤する。

「本当ですって! コレは本当です!」

だが恐怖心からか志賀もむきになって反論する為、会話は堂々巡り続けてしまう。

「ちょっと類家、何とか言ってよ!」

「類家さんも見ましたよね!?」

凄い剣幕で振り返った二人の視線の先にあるのは、腰にタオルを巻いたまま呆然とその場に立ち尽くしている類家。

「……………」

「……………」

そんな類家の姿に空気の温度差を感じ、毒気を抜かれたように二人は口を噤むと顔を俯かせた。

「…類家………とりあえず、……服着てよ…」

「あ、はい…済みません…」

溜息混じりの森の言葉に、とりあえず何に対してか分からない謝罪を口にしながら類家は二人に背を向ける。

なんとなく部屋の奥へと隠れるのも今更な気がし、その場でモソモソと服を着始める。

そんな一連のやり取りを、斎原は棚の上から目を細めながら見下ろしていた。


【END】


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マエ / アトガキ
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ショコ / イリグチ