雨と霊と男と女
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「うっわ、冷てっ!」

自身が店番を務める骨董屋に飛び込んだ類家は、開口一番そう叫んだ。

反射的にそんな言葉が口を突いて出たが、実際に店の中が冷たい訳ではない。

降水確率20%と言う天気予報を『降らない』と高を括って外出し、見事豪雨に直撃して。

本当ならば外で叫ぶ筈の台詞を、降り注ぐ雨に口が開けなかったので今叫んだだけである。

「最悪だよ…パンツまでずぶ濡れだ…」

類家はピタリと肌に張り付いたポロシャツを脱ぐと床へと落とした。

ベチャリと音を立てたシャツから即座に水が滲み出し、店の真ん中へと水溜りを作り出す。

その場に佇んでいる類家の足元からも波紋は広がり、床から湧き出しているかのようにそれは大きさを増していく。

冷える身体と後の掃除に対する憂鬱さに、類家は小さく溜息を吐きながら宙を仰いだ。

視線の先には、悠々とマントルピースの上に腰を下ろしている斎原の姿が見える。

キッチリと着込まれた制服、よれの見当たらない制帽、まるでプレスが効いているかのような襟元のシャツ。

それらの服には水滴を受ける事で出来上がるシミなど微塵も無い。

彼は霊体だからあらゆる物質を透過する事が出来るので、当然と言えば当然なのだが。

常ならば雨に濡れる事もない彼を、人との差異に物足りなさを感じたりしないのだろうかと懸念するのだが。

雨に濡れた様子の全くない相棒に比べ、濡れ鼠どころか未だに髪から雫を滴らせている自分。

同じように外に出ていたにも係わらず、あまりの落差に今日は理不尽な怒りが類家の頭を占める事となった。


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ツギ
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ショコ / イリグチ