スプーン一杯分の黄色と甘露と
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「ぶぇっくしょい!」
自営業な為悠々と時計の針が真上を向くまで惰眠を貪っていた類家小五郎は、ベッドから起きる上がると同時に湧き上がって来た衝動に任せ、大きく背を反らせるとクシャミをした。
一連の動作は何処ぞのコントかと思うほどのオーバーリアクションで、そこまでされると端から見る側としてはいっそ清々しい。
と思ったかどうかは定かでないが、相棒のそんな姿に外を眺めていた斎原邦彦は寄り掛っていた窓辺から離れると、彼の人が蹲るベッドへと近付いた。
類家は小さく鼻を啜ると、自身の咽喉や額を訝しげに手で擦る。
そんな類家の顔を興味深げに覗き込んで来る斎原に、よく分からないながらも返事をしようとそちらを向けば。
「ぶぇっくしょい!!」
また一つ、大きな声と共に数多の飛沫が周囲へと飛び散った。
顔を向けた所で吹き出せば、当然それらは真正面にいた斎原へと降り掛かる。
斎原は実体を持たないので、幸い(?)にも飛沫は素通りして床へと落ちて行く。
だが被害が無いからと言って、やられた側の気分が良いかと言えば、そんな事もなく。
暫し斎原は覗き込んだ体勢のまま微動だにしなかったが、不意にその身体がユラリと傾ぐと何時も漂っている高さ以上へと浮かび上がる。
上限があるとは言え高みから見下ろしてくるその威圧感は、正に、死神。
不可抗力の言い訳を考えるよりも先に背筋に悪寒が走り、類家はビクリと身を竦ませると反射的に両手を上げた。
降伏を示す身体はカタカタと震え、その姿は目の前の存在に恐れ戦いている様に見える。
しかし。
「…?」
恐怖にしては尋常でない震え方に違和感を覚え、斎原が別の意味で首を傾げた時。
ホールドアップをしていた類家の身体が、本当に撃たれたかのように後方へと倒れ込んだ。
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ツギ
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ショコ / イリグチ