第10項 五輪ルール
昭和39年、東京オリンピックを記念して昭和38年10月、日本牌棋院(代表、天野大三*)から「五輪ルール」が発表された。
*戦後、普及の途次にあった立直麻雀を体系化。昭和27年、報知新聞紙上 に日本最初の立直ルールである「報知ルール」を発表。以後その普及に多大な貢献をした。著書も多数あるが、特に「リーチ麻雀シリーズ」全10巻(S43・日東書院)は総合書ベスト1である。また段位審査ルール(S37)は、中国においてバクチとして誕生した麻雀が競技性豊かなゲームへ変貌する可能性を示唆したルールとして名を残す。点数計算においてもその煩雑さがネックになっている事を見抜き、この五輪ルールを考案した。
五輪ルールにはいろいろな特徴が存在するが、もっとも重要なことは点数ラインが50符に固定されていることである。すなわち五輪はオリンピックを意味すると同時に五◯をあらわしている(0は中国語で零(リン)。輪も輪(リン))。
符底を50に固定することにより、面倒な小符計算はなくなり、点数も50符ラインだけを覚えればいいことになる。いうならば30符固定式(後述)の先駆けとなる方式であった。
この五輪ルール、点数ラインを1本にしたのは妙案であったが、二翻〜五翻の中堅どころの得点が現行より大幅に低く設定され、逆に七翻以上になると異常に高得点となる点などがウイークポイントとなったのか、普及はしなかった。しかし小符を廃止したり、飛び翻(六・七翻で満貫、八・九翻で跳ね満など)を無くしたりするなど、その先駆的な内容は高く評価される。
表14 五輪ルール
* |
子 (親) |
子 (親) |
一翻 |
100×4(6) |
400( 600) |
二翻 |
二翻 200×4(6) |
800( 1200) |
三翻 |
三翻 400×4(6) |
1600( 2400) |
四翻 |
四翻 800×4(6) |
3200( 4800) |
五翻 |
五翻 1600×4(6) |
6400( 9600) |
六翻 |
3200×4(6) |
12800( 19200) |
七翻 |
6400×4(6) |
25600( 38400) |
八翻 |
10000×4(6) |
40000( 60000)(数満) |
九翻 |
20000×4(6) |
80000(120000)(跳満) |
10翻 |
30000×4(6) |
120000(180000)(倍満) |
11以上 |
50000×4(6) |
200000(300000)(超満) |
※八翻以上は指定得点。
第11項 30符ベース式
昭和50年頃から、初級者の間において連底を30符ライン1本にして計算する方式が採用されだした。連底を30符ライン1本とすれば小符計算をしなくてよい上に得点も一定となり、習得が非常に楽である。
子供の和了 |
一翻 |
親の和了 |
ロン |
ツモ |
二翻 |
ロン |
ツモ |
1000 |
300/500 |
三翻 |
1500 |
500all |
2000 |
500/1000 |
四翻 |
3000 |
1000all |
3900 |
1000/2000 |
五翻 |
5800 |
2000all |
7700 |
2000/4000 |
六翻 |
11600 |
4000all |
8000 |
2000/4000 |
七翻(満貫) |
12000 |
4000all |
12000 |
3000/6000 |
8-9翻(跳満) |
18000 |
6000all |
16000 |
4000/8000 |
10-12(倍満) |
24000 |
8000all |
24000 |
6000/12000 |
13-14(三倍) |
36000 |
12000all |
36000 |
9000/18000 |
15以上(役満) |
48000 |
16000all |
※暗槓は牌種に関係なく、無条件に一翻増し。
※五翻を4000/6000、六翻を8000/12000とするルールもある。
この30符ベース式はいかにも初級者用のようであるが、点数簡便化の流れにも沿い非常に合理的なものである。そこで近年、かなり普及しつつある。
この30符ベース式には、一部に「点跳ねの魅力がなく、妙味に掛ける」という論もある。しかし現行のダブル切り上げ式にしても、精算法からみればドンブリ勘定同様である。たとえばダブル切り上げ式では連底42符と50符の五翻は同じ9600点であるが(親の場合)、精算法では8064点と9600点となり、約1500点の得点差が生じている。
表16 精算法(親の場合)
42符五翻 |
50符五翻 |
42符×32×6=8064 |
50符×32×6=9600 |
そのような大まかな計算法式を採用しながら「点跳ねの魅力うんぬん」は説得力も希薄である。また麻雀成立当初、精算法で行われてきた得点計算は、四捨六入法・切り上げ法などを経て、現在のダブル切り上げ法に移行してきた。それも多くのセオリストの尽力によったものではなく、自然にそうなってきたものである。従ってこの30符ベース式がこれからの一般麻雀の主流になって可能性はかなり高いと思われる。
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