Pillers tone 柱石 

    (13)ノータイム



 ノータイムとは、(何を切ろうか)などと手をとめてシンキングせず、ツモ動作に連続して澄みやかに打牌することをいう。雑誌に掲載されたタイトル戦などに、よく「○○プロは、ここでノータイムで△△を切った」などという解説があるが、そのことである。

 もっともプロならどんなときでもノータイムで打って当たり前。そこであらためてそんな風に書かれると、(プロって、普段はノータイムで打っていないのかしらん)と勘違いしてしまう....

 それはともかく、純麻雀では、この「ノータイムで打つ」ことを標準としている。しかしノータイムとは、「0.1秒でも早く摸打する」を意味しているのではない。ノータイムとは、「手を止めてシンキングするのをやめましょう」という意味であって、「いかに速くツモるか」、「いかに速く打牌するか」のスピードを競うものではない。すなわちノータイムとは、早切り競争を意味するものではない。

 もちろんツモスピードや打牌スピードを競うものではないといっても、ヨッコラショッと山なりに手を伸ばしたり、下家の顔をかすめるような弓なりツモなどは問題外に決まっている。摸打の動作をシャープに行うのは当たり前のことである。そのうえでノータイムで打つのであるから、摸打タイムは一般麻雀よりそれなりに短くなる。しかしそれはあくまで結果であって目的ではない。

 ある統計によれば、一般麻雀での摸打タイムは、平均3秒半くらいだという。じっさいフリー雀荘などで見ていると、そんな感じである。しかし摸打の動作をシャープに行い、かつノータイムで打てば、平均2秒前後の摸打タイムとなる。

そしてもっとも大きなポイントは、この平均2秒前後の摸打タイムを常に維持できるかというところにある。誰でも不要牌がワンサカの配牌段階や、テンパイして待ちが確定したりした段階では、苦もなくノータイムで打てる。

しかし局面が難しくなったり、メンチンの手になったりすれば、なかなかノータイムを維持することは出来ない。そんな局面でもノータイムで打つ。それができるかどうかである。

 一般麻雀での摸打タイムは、平均3秒半くらい。しかしノータイムのポイントは、常に同じリズムで打ち続けることができかどうかということ。そこで平均が3秒半だとしても、それを常に維持できるのであれば、それもノータイムで打っていると言えないことはない。しかし現実には、平均タイム3秒半くらいの普通のプレーヤーがそれを実行できる事は、まずない。

 一般麻雀での平均である3秒半というのは、「3秒半というクオリティを保つ」とか、「同じリズムで打ち続ける」という意識がないプレーヤーの、何事もない状態における平均タイムである。

 そこで何ごともない場況であれば、問題なく平均タイムで摸打する。しかしメンチン状態になったり3人リーチ状態になったりしたときは、自然に手が止まる。そこで3秒半どころか、10秒かかったりする。

 同級生麻雀なら、「ちょっとタンマ」、「麻雀にマッタはないぞ」、「やかましい、いま大事なとこだ」、「おーい、新聞もってこい」などの声が飛びかう。(笑)

 また仮りに平均3秒半くらいをキープしてるプレーヤーがいるとしても、シャープに打てば2秒半くらいで打てるものを1秒も余分に時間を掛けているとしたら、これは手を動かしながら毎回シンキングタイムを捻出しているのと同じである。

 ではどうして純麻雀ではノータイムで打つことを実践しているのか。次回は、そんな話。

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