Monolog 独白 

   (29)糸屋の娘


 先日、もうそろそろ寝ようとベッドにもぐりこんだところへ、3男がのそっと入ってきた。なんだと思ったら、「お父さん、起承転結の承ってなに?」。いきなりなんだと思ったが、とりあえず「承は承(うけたまわ)るだから、起(き)の話の続き。そいで 転で全然違った話を出して、結でオチをつけるんだ」と返事した。すると「ふ〜ん」とは云ったが、あまりピンと来ない様子。

 そいで「あのな、こういう昔の戯れ唄がある。“京都四条の糸屋の娘、姉は十六、妹(おとと)は十五、諸国の武者は弓矢で殺す、糸屋の娘は目で殺す”。これが起承転結だ」と云ったら、「よ〜く分かった」と喜んで部屋を出て行った。

 久しぶりにオヤジの面目を保ったが、じつはこの戯(ざ)れ唄には思い出がある。
 σ(-_-)は中学、高校とは男子校だった。とうぜん女っ気ゼロ。そんな高校時代、ある外部サークルには女の子がうじゃうじゃいると聞いた。それなら入れ食いだろうと思って即入会。
 しかし下心ミエミエなせいか、箸にもにも棒にもひっかからん。そんな頃、ある女子高生と雑談していたとき、なにかの拍子に起承転結の話になった。なんでそんな話になったのかさっぱり覚えていないが、たぶん漢詩の話でもしていたんだろう。そいで それを説明するために、冒頭の戯れ唄を例に出した。

 そしたら やはりいたく感心され、あこがれのまなざし....これはひょっとしたら脈があるかと思ったが、それっきりだった。(ノд`) しかし同じ戯れ唄が50年近く経って役に立つとは思わなんだ。(^-^)

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