Library 書斎

    (25)香港・台湾の文献


 香港においては民国10(1921)年に「雀戦指南(永發祥麻雀荘)」、および「竹談規章(同)」という書籍が出版されたと伝えられるがはっきりしない。

 香港の麻雀書の特徴は戦術論に重きを置いた書籍が多いことである。これは香港では麻雀が盛んなのでルールは人づてで自然に覚えること、そして麻雀が純粋に賭けとして楽しまれている事が理由である。

 1985年に出版された「麻将之王(雀王編・創基出版社)」、あるいは同時期の「麻将争雄(高健・大美出版社)」、「雀局奇兵(陳勝)」、「麻雀牌譜(陳志明・陳湘記書局)」、「方城必勝技巧(楊正華・宏業書局)」などは、全て戦術論で埋め尽くされている。そこで入門書といえば「麻雀入門(陳志明・新生出版社・1985)」が目に付くくらいである。
陳湘記書局より「麻雀牌大全」というタイトルでも出版されている。

 このような中で、簡而清の書籍が目を引く。1985年2月に出版された麻将法庭(博益出版集団有限公司・159P)、また1991年出版された「麻将秘笈(聚賢館文化有限公司・220p)」は、文庫版ながら香港麻雀の好解説書である。
麻雀の研究者であり、香港麻雀界の中心的人物。

また1984年1月に出版された「鵲楽大典(簡而清・安立実業有限公司・1983・01)」は、入門書というよりルール書と言った方がいいようなスッキリした内容の書籍である。
鵲楽(ウーロー)とは「鵲(かけす)の楽しみ」という意。中国には七夕(たなばた)の夜、織女星が鵲に橋を架けさせ、牛星(彦星)に会いに行くとの民話伝承がある。そこで中国麻雀には鵲橋会(ウーチャオホエ=1索の刻子、および七万・7索・7筒の内の2種を刻子とした組合せ)など、その民話に因んだ役が幾つかある。

 また無有の「論尽麻雀(大文図書公司・1985?)」は、馬弔牌を多数掲示するなど、麻雀の歴史などにも言及した特色ある書籍である。
 しかし最も目を引くのは、手牌7枚における三門聴以上の聴牌すべての検証を試みた「麻雀錦嚢(方平・南方出版社・1987/07・118P)」であろう。検証そのもは完璧ではないが、このような純粋に学究的な書籍が出版される事は麻雀文化の成長を示すものである。
四門聴(64型)、五門聴(11型)は完璧であるが、三門聴(248型)は146型のみの検証。

 台湾においては多少事情が異なる。
 いつの頃から発祥したのか判然としないが、台湾は手牌16枚の麻雀が全盛である。とうぜん麻雀書も16枚麻雀のものが中心となる。しかし台湾書籍は翻案ものの類が非常に多い。

 たとえば「麻雀必勝戦略(白中發・新風文化事業公司・1980)」、「麻将必贏(白中發・綺音出版社・1980)」、「麻将必贏絶招(白中發・文豪出版社1980)」、「16牌麻雀必勝戦法(白中發・栄文出版社・1983)」、「麻雀必勝戦法(白中發・文国書局・1983)」は、タイトルこそ違え、内容はすべて同一である。他にも同様のケースが幾つもある。

 これらの書籍は内容も安直で、評価の対象にはなり難い。その中で張無忌の「台湾麻将必勝法(金波羅文化出版事業1995/01・231p)」は内容もしっかりした好著である。また林星輝の「麻雀高段進階(幼華出版社・1995/07・72p)」、「台湾麻雀必勝必笈(幼華出版社・1996/02・72p)」の2部作はB5版の全頁カラ−刷りという、入門書として完成度が高い書籍である。

 台湾では香港麻雀用の書籍も出版されている。入門書として「麻将・基本常識與致勝秘訣(鍾曜堅・新風文化事業公司1982・196p)」、戦術書として「麻将戦術秘笈(張發編・真善美出版社1982/01・120p)」、「麻雀戦術研究(胎香堂主人・文国書局・1982/06・80p)」などがあるが、「麻将致勝法宝(顔志昇編・壽山出版社・1982/02・214p)」が好著である。

 また地政学的に日本と関係が深いことを反映して、「麻将輸贏技巧(金必多・壽山出版社1982/03・205p)」とか、「麻将求勝進段篇(丁吉塔・大坤書局・1994/03・176p)」などの日本麻雀の紹介書も出版されている。

1992年9月、「麻将必勝的技巧(丁吉塔・大坤書局・205p)」と改題されて出版されている。

以前へ  以降へ  目次へ