このコラムは1本のメールから始まった。差出人は「どんな麻将も研究対象」の我打麻将さん。それは純麻雀のルールに関してであった。
東家が配牌でアガった場合、一般麻雀では天和となる。天和となれば、それが平和(ピンフ)であろうとなかろうと関係ない。しかし天和は偶然役なので純麻雀では採用していない。もちろんアガリは認められるが、最後に何をツモったか分からないので、ピンフ役は認められない。ルールにもそう明記してあった。
しかしWMさんのメールは、「22334455667788という形は、どの牌でアガったとしてもピンフと取ることができる」という内容であった。もちろんメンチン ツモ、タンヤオ Wイーペーコーとなれば、役満と云わなくても純麻雀では役満と同点のアガリ。また現実に そんな手が来る可能性も考えにくい。しかしこれは理論的な問題。
「な〜るへそ」というので、さっそく天和状態でもピンフを認めるように純麻雀ルールを改訂した。と同時に、「このような形は、まだあるのでは?」と思った。そこから とか など、いくつかのパターンを見つけた。
面白いので そのうち幾つかを牌謎として出題しようと思っていた。そんな折り、某所でeseトーライ管理人 ヒロタシさんのコラムを見つけた。それは2種数牌による絶対平和の牌謎だった。σ(-_-)は清一形しか念頭になかったので、まさに目ウロコ(@-@)。それにこの形なら、配牌でもあり得る。ルールを改訂しておいてヨカッタ(^-^;。そこでヒロタシさんにメールを出し、そのコラムを牌謎に出題する了承をいただいた。
しかしこの時点では「絶対平和に対する考察」なんて気はない、せいぜい「牌謎のネタが増えたぞ」くらいの感覚だった。しかしヒロタシさんとのメールの中で清一パターンの話を持ちだしたところ、σ(-_-)とは異なる視点からいろいろ考証してくれた。そこで初めて絶対平和を考察としてまとめる気になった。
清一色といっても、絶対平和は特殊な形。そこで最初は手作業でチェックできるレベルと思っていた。しかしやっているうちに次から次へといろんなパターンが出てきて頭がクラクラ。またチェックを完了したつもりになっても、それが完全かどうか分からない。(^-^;
そこで知人の中島哲也さんにお願いして、パソコンで全パターンをチェックしてもらった。
するとさすがはパソコン、一瞬のうちに完全データがでてきた。それを文章的に組み直して完成したのがこの論考。したがってこのコラムはヒロタシさんと中島哲也さん、そしてσ(-_-)の共同著作である。
総論
まず「絶対平和(ぜったいピンフ)」とは、「手牌14枚、どの牌をアガリ牌としてもピンフ上がり(順搭マチの上がり)と取ることが可能な1雀頭4順子形」をいう。その基本形は のように、数字が一目上がりの順子セット。これが絶対平和の基本である。
※数字が一目上がりの2順子を丘二順(おかにじゅん)、3順子を丘三順(おかさんじゅん)、4順子を丘四順(おかよんじゅん)と称する。
という丘二順であれば、 という構成牌すべてがピンフ上がりとして取ることができる。同じ丘二順でも という形ではが嵌張あるいは辺張となってしまうが、 というメンツを加えて の丘三順とすれば、 もピンフ上がり牌として取ることができる。
さらに を加えて の丘四順とすれば、 から まで、すべてピンフ上がりとして取ることができる。そこでこの丘四順に構成牌で3枚以上使われていない牌を雀頭とすれば、絶対平和が完成する( で云えば、 が雀頭候補)。
丘四順は の丘二順に丘メンツをヨコに伸ばして加えた形であるが、この丘メンツをタテに加えても絶対平和となる。
A + =
あるいは
B + =
あとは、構成牌で3枚以上使われていない牌を雀頭にするだけ(Aでは,Bでは か)。
ということで、絶対平和の前提条件は
<1>雀頭は順子との連数牌、または順子構成牌であること
<2>構成順子の基本は丘X順、あるいは丘X順に同X順(複数の同順子)を加えた形。※Xは、2〜4までの数字
<3>(または)を構成順子に含むとき、必ず(または)という順子も含まなければならない。
ということになる。
以上を前提として算出したところ、なんと清一色における絶対平和の全100牌姿であった。99でも101でも、あるいは111でも なんとなく意味ありげな数字で面白いが、100ピッタシというのは一段と面白い。(^-^)V
以上 絶対平和の基本についてグダグダと述べたが、実はヒロタシさんの明解な論証がある。(^-^;
清一の絶対平和の上がり形 (ヒロタシ)
麻雀の上がり形に含まれる雀頭やメンツに対して論じるとき、それらが固定していない場合(例: の雀頭は とも とも取れる)についても考える必要がある(*1)。以下、絶対平和の全ての上がり形を、そのうち雀頭になり得る対子の個数別に考える。
(1)3組の対子が雀頭になり得る手
・
この1種のみ存在する(1種)。
(2)2組の対子が雀頭になり得る手
基本となる8枚形として を持つ。この8枚形を「基本八枚」と呼ぶ。 この形もしくはこれを並行移動(*2)したものに順子2組を加え、絶対平和となり得るものを数える。
・
を持つので順子 が必要。残る1順子は からまでのいずれか(4種)。
・
を持つので順子 を加えられる。以下加える最小ランクの順子別に数えると、
+ 123 → + 123〜456 (4種)
+ 234 → + 234〜456 (3種)
+ 345 → + 345〜456 (2種)
+ 456 → + 456〜567 (3種)
+ 567 → + 678 (1種)
・
+ 123 → + 234 (1種)
+ 234 → + 234〜567 (4種)
+ 345 → + 345〜567 (3種)
+ 456 → + 456〜567 (2種)
+ 567 → + 567〜678 (2種)
ここまでで28種。残りはこれらの折り返し(*3)なので、これを2倍して56種。
(3)雀頭となり得る対子が1種しかない手
このとき雀頭である牌は、雀頭を除いた12枚のどれかと同じ牌から成る(*4)。逆にいえば4順子12枚だけで絶対平和の形をすべて挙げ、そこに雀頭を加える作業を全て行えばよい。 このとき(1)や(2)で数えた形を再び挙げないよう注意する。
では4順子の形を、重複する順子ごとに組分けして考える。例えば123 123 234 345 は[ 2-1-1] と表記する。
・[ 4]型
雀頭を加えられないので不成立。
・[ 3-1]型
加えられる雀頭は のみであるが、これは と合わせて基本八枚 となり、(2)で一度数えられた形である。よってこれも不成立。
・[ 2-2]型
加えられる雀頭は11か44であるが、これも基本八枚ができるので不成立。
・[ 2-1-1]型
一盃口が端か中央かで2種に分けられる。つまり2-1-1と1-2-1である。前者は で、雀頭は か のいずれか( では基本八枚ができる)。全体の並行移動で5通り、また折り返しで2通り取れるので、2×5×2で20通り(20種)。 後者は で加えられる雀頭は か であるが、いずれも基本八枚ができるので不成立。
・[ 1-1-1-1]型
ランクが一つずつずれた と、前半二つと後半二つとで別れる(*5)形について考える。
前者は雀頭が の4通り。並行移動で4通りあるので形16通り(16種)。 後者は とその並行移動を合わせて重複順子を持たないので、 の1通りしかない。雀頭はから までのいずれか(7種)。合わせて43種。
以上、(1)(2)(3)を合わせ、1+56+43=100種となる。
※1:雀頭になり得る対子が複数あるとき、それらは同じスジである。つまりランクの差は3または6である。このことから雀頭候補となる対子は最大3組であることがわかる。証明は以下の通り。
証明:上がり手14枚それぞれをスジ別に分類することを考える。雀頭になり得る対子を一つ選び、その2枚を除くと残る12枚は順子4組であるため、3種のスジを持つ牌を4枚ずつ持ち、雀頭が持つスジを2枚持つ。つまりあるスジを6枚、それ以外のスジを4枚ずつ持つため、雀頭を別のものと取り換えてもそのスジを変えることはできない。
※2:すべての牌のランクを同じ数だけ増やすまたは減らす変形操作。
例: →
※3: と を、 と を、 と を、 と を交換する変形操作。つまり を軸とする対称移動。
※4:Aから雀頭xxを引いた12枚にxが含まれなければ、xでの上がりはタンキ待ちにしか取れず、絶対平和である前提と矛盾する。もしxでの上がりが両面待ちにも取れるのであれば、他に雀頭候補がないため、xを含む順子がAに含まれることになる。
※5:順子2組6枚からなる絶対平和は234 345の形のみ。これをもう一つ合わせて作る12枚は必ず絶対平和となる。
以下、上の文を作るに助けとなった定理(証明略)
・任意の絶対平和に対し、これに含まれる牌と同じ2枚を順子として加えたものも絶対平和である
・任意の絶対平和に対し、これに含まれる順子と同じものを加えたものも絶対平和である
・任意の絶対平和に対し、これに含まれる順子とランク差1の順子を加えたものも絶対平和である
・絶対平和に絶対平和を加えたものも絶対平和である
・8枚からなる絶対平和Aと、2組の順子X、Yに対し、 A+X+Yの14枚が絶対平和で、A+X、A+Yの11枚がどちらも絶対平和でないとき、X+Yの6枚は絶対平和である。
以上
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すべてはこの論証で言い尽くされているので何も付け加えることはないが、別の切り口からも(^-^;
□4連数
まずもっとも少ない牌での絶対平和は、雀頭を含んだ4連数。※“連数,,は、雀頭を含んだ連数の意。
(1)丘二順 シンメトリータイプ
4AS1 (034430000)
という丘二順に メンツを2組加えた形であるが、雀頭をとすれば、 という丘二順に メンツを2組加えた形と云うことになる。
もちろん数字繰り上げ型、及び逆型も絶対平和となる(具体形 略、以下同)。しかし4連数の場合、一九牌を含むと絶対平和にならないのは前述した通り。
4ASx (344300000)
4ASy (000003443)
(2)W丘二順タイプ
4B#1 (024440000)
同四順であるが、雀頭をとすると と の丘二順二組となる。
同四順は から まで7種類できるが、雀頭を連数とすると6種類。そして4連数の場合はシンメトリータイプと同様、一九牌を含んだ場合は絶対平和にならない。したがって具体形は4パターン、およびその逆型の4パターンとなる(具体形 略)。
※同四順は1順子+三暗刻とも取れるが、一般的には平和+両般高とした方が高得点となる(ところによっては役満だし(^-^; )。
□5連数
(1)丘三順タイプ
の丘三順に、構成順子を1つを加えた形。
5A#1 (234230000) +
5B#1 (134330000) +
5C#1 (124340000) +
構成順子に端牌(1または9)を含んだ場合、丘二順では絶対平和にならない。しかし丘三順であれば端牌が入っても絶対平和となる。
(2)W一般高 重複タイプ
5D#1 (224420000)
この5D#1は、ちと面白い形。 という振り分けでは がピンフアガリにとれない。しかし と分け直せばのアガリが出てくる。牌謎に絶対平和パート4として出題しようかな(^-^;
□6連数
(1)丘三順タイプ
6A#1 (124322000)
雀頭をで取れば、 の丘三順に を加えた形で のピンフアガリ。雀頭を で取れば、 の丘二順に の一般高を加えた形で がピンフアガリとなる。
(2)丘四順タイプ
6B#1 (123323000)
すべてが丘メンツなので、並べ変える必要はない。(^-^)V
*雀頭は3枚以上使用してない牌なら、何牌でも可。
(3)シンメトリータイプ
6AS1 (133331000)
これも並び変えが必要なタイプ。
で、 でがピンフアガリとなる。
□7連数
(1)大車輪タイプ
7AS1 (012222220)
我打麻将さんからのメールにあった型で、このコラムのきっかけになった型。雀頭を、すなわち3通りに並べ替えることによって、すべての牌がピンフアガリとなる。大車輪は他に2型あるが(〜、〜)、いずれもメンツに、またはを含むのに他メンツに、または のメンツが無いので絶対平和にならない。
(2)大車輪変形タイプ
7BS1 (012242210)
美しさでは大車輪に負けるが、こっちはメンツの振り替えをする必要はない。(^-^;
シンメトリー型そのものはまだ3型あるが、大車輪タイプと同じ理由で絶対平和にならない。
(3)丘二順+双頭一般高タイプ
7C#0 (01223222) の丘二順に、の二股一般高を加えた形。雀頭を でとればが、 でとれば がピンフアガリとなる。
(4)W(ダブル)丘二順タイプ
7D#0 (012222230)
と のW丘二順。もちろん雀頭は でも可。
− 了 −
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