History 歴史

    (7)白發中の話


 白 發 中 を三元牌という。どうしてそう呼ぶのかいろいろな説はあるけど、一応もっとも有力なのは、中国の科挙における各段階のトップ合格者の称号、解元・会元・状元から来ているという説。なぜこれがもっとも有力かというと、麻雀と遠い親戚にあたる中国カードの「科挙骨牌」に、解元・会元・状元という牌種があるからである。

 その他の説としては、中国の社会風習である上元・中元・下元三元から来ているという説。このうち中元は、その季節にお世話になった人に贈り物をするという習慣となって今でも日本で行われている。またその他には三元元日(1年、1月、1日の三つの元)を表すなんてのがある。

 そこで「三元」は一応 解元・会元・状元の意味として、なぜそれが白發中という字になっているのか。これには、「射された矢が(あた)る」という説がある。また或る中国書には「国が展するという意味」というのもあった。まだあったような気がするけれど、いま思い出せない。ま、いっか......

 色の意味としては、白 は白粉(おしろい)發 は緑なす黒髪、中 は口紅を表すなんてのがあったが、さすがにこれはコジツケだろう。

 やはり白 は麻雀のルーツである古典中国カードの1種の空湯(コンタン)、あるいは空堂(コンタン)というカードから空堂は“空っぽの家”という意)發發財(ファツァイ=財産ができる)という意味で、それが緑色なのは緑に物事が成長する意味があるからだと思われる。

 そして中 。中国の国家試験「科挙」では、合格者氏名が記された発表用紙の真ん中に「」と言う字が朱筆で大書してあった。この“”は大当たりという意味。朱筆で書いてあるのは、中国では慶事は赤で表すからだ(中国のお年玉にしても赤い袋に入ってる)。で麻雀の“”もここから来ている可能性が高い。いや「財産が出来て人生大当たり」なんて、いかにも麻雀にふさわしい。。。。

 そこまではいいとして、どうして白發中の順で呼称するのか。別に發中白でも發白でもいいじゃないか。そりはたしかにその通り。しかし実はこんな話しがある。

 国鉄(いまはJR.)の特急電車には指定席と自由席とある。今はそういう区別であるが、昔は1等車、2等車、3等車という区別であった(もちろん1等車が一番の高級車両)。3等車のお客が1等車に乗ってはいけないので検札がある。

 このとき、何等車でも切符の色が同じだと車掌がチェックしにくい。そこで車種によって切符の色が異なっていた。すなわち1等車が、2等車が、3等車がであった。そこで「白切符」といえば1等車、「青切符」といえば2等車という意味となったという。

 で、麻雀が日本へ入ってきて三元牌を東南西北のように呼称する必要が生じたとき、自然に白發中という順で呼称されるようになった、という(当時の生き証人に聞いた話)。でも今は「生き証人」じゃなくなってしまった....

 もちろん当時はドラなんてものはなかったが、第2次大戦後、ドラが登場した。このドラも最初は現物が対象であったが、やがて現在のネッキストとなった。このときになって、呼称順が自然にドラの巡り順として定着したという。


我打麻将 投稿日:2009/01/28(Wed)

 三元牌の順序は、日本では白発中が一般的ですが、中国ではどうやら中発白のようです。中国のネット麻雀「QQ麻将」でそうなっていたので、最近メールいただいた Overnitary Lee 氏にお尋ねしたところ、以下のような話をいただきました:

(原文)
Considering the history of dragon tiles, two of the rumors are, they came from the Chinese saying 百発百中(shoot 100 arrows(or bullets..?) and all of them hit the target), or they came from describing the growing of an officer: 白身(to start as a common civilian), 中拳(to get good result in the exam and become an officer), and 発財(to get lot of money being an officer). (Personally, I think the second explanation is more believable)

However, according to these two rumors, the order of the dragon tiles should either be 白発中 or 白中発. And I didn't find any reference with acceptable explanation of order 中発白.

To my personal idea, in traditional Chinese Mahjong, since there is not rules about dora or 百搭, the order of dragon tiles has no actual use. So I think it may be only an order which is easy to pronounce. (Btw, in mainland China we often call 紅中 青発 白板 instead of 中発白 in Taiwan maybe 紅中 青發 白皮? I'm not sure...) Though in some local rules with 百搭 the order of dragons does matter, I think these local rules appear after the order 中発白 is popularly accepted.


(WM訳)
三元牌の歴史を考えるに、その由来に関する2つの説は、四字熟語「百発百中」または、官僚の出世: 白身 → 中挙 → 発財 (市民が科挙に合格して官僚となりお金を稼ぐ) というものです。(個人的には、後者の方が信憑性が高いと思います)

しかし、これらの説に従うならば三元牌の順番は白発中または白中発になるはずで、中発白という順番に満足のいく説明を与えるような文献は見つかりませんでした。

私の個人的な考えですが、ドラや百搭 (*) のない伝統的な中国麻雀で、三元牌の順序は問われません。したがって中発白はただ発音しやすいからその順番で呼ばれているのではないかと考えます。(ところで、中国大陸部では三元牌をしばしば紅中・発財・白板と呼びます。台湾ではおそらく紅中・青発・白皮でしょうか? 定かではありませんが…) ローカルルールが百搭を含んでいれば三元牌の順序は重要ですが、これらは中発白の順序が一般に定着してから現れたのだと思います。

* オールマイティーとして扱うことのできる牌。その牌自体として使うとボーナスポイントとなる。(その後のメールより補った)

関連する浅見先生の記事は主に、この2つでしょうか。
his7.html「白發中の話」
rekisi17.html「三元牌の順番」

あさみ 投稿日:2009/01/28(Wed)

 ども 我打麻将 さん、貴重な情報をありがとう〜(^-^)/

 30年ほど前、台湾で麻雀書を購入したとき、ある入門書の著者が「中発白」となっていました。もちろんペンネームですが、日本であれば「白發中」となるところ。それで当時 呼称順に興味を持って いろいろ調べました。
 結論から云えば、このメールにもあるように、“中発白”でなければならないような歴史的必然性や文献的資料は見あたりませんでした。そこでσ(-_-)もこれは中国語の語呂に由来するのだろうと結論づけた覚えがあります。

 これが日本で「白發中」となった事情も、日本語の語呂に加え 上記の切符の色エピソードが関係していると思います。

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