Free talk 雑談

    (99
)誤用御用


 誤用されている言葉はいくつでもある。といっても「盛り下がり」なんてのは意図的なもので、誤用とはちと異なる。何が誤用No1.かは分からないけど、最近の雰囲気では「全然」かも知れない。いまや正しい用法となりかねない勢いだ。

 「助長」、「情けは人の為ならず」なんてのも、まずベストテンには入るだろう。そんなベストテン間違いなしの中でも上位に食い込みそうなのが「役不足」

「君も大部屋暮らしが長いねえ。そこで今度の舞台で準主役に抜擢したいと考えているが....

「いえ、せっかくのお話ですが私では役不足です。その役は私より先輩の○○さんにお譲りします」

 なんて云おうものなら、普通は「なにおうッ、この野郎!図に乗りおってっ!」という反応が来る。そりゃあ来ても不思議はない。せっかく準主役に抜擢しようとしているのに「(私は)その役は不足(物足りない)」と云ってるのだから。

 続いて「先輩の○○さんに....」では、言葉の流れから云って「そんな程度の役なら、先輩の○○さんに」という意味となる。これでは本人は謙遜 and 先輩に恩を売ったつもりでも、準主役どころか永久追放は間違いない。(笑)

 ではどうしてこんな誤用をやってしまうかとというと、「役者不足」という似たような表現があるせいだと思ふ。この場合の「役者」は「自分」という意味になる。そこで「私では役者不足です」と云うのであれば、「私は役者として未熟なので、その役はつとまりません」というまともな意味になる。

 しかしひょっとして相手も混同していて、「役者不足」と云ったにも拘わらず、「なにおうッ、図に乗りおって!」なんてことになったら堪らない。そこでどうしてもかっこよく謙遜したい場合は、「私では力不足です」と云った方が意図が通じやすいと思う次第だ。

以前へ  以降へ  目次へ