いまから約三千年前、シナに一人の帝王がいた。帝王はたいへんタイクツしておった。
「チンは退屈じゃ。なにかオモチロイことはないか」
「ござりまする」と側近の1人が申し出た。
「ほう、あるか。して、それはどのようなことじゃ」
と帝王は膝を乗り出す。
「おそれながら、人殺しでござりまする」
「ふむ、なるほど面白そうじゃな」
「面白いを通りこして、テンホーのカイカイ的でござりまする」
「ほう、そちはやったことがあるのか」
「はい、それはもう....」
「どういう風に殺すのか」
「それは....」
と側近が耳打ちした方法は、何百という囚人を広場に整列させ、帝王があてずっぽうに六角棒を倒し、その棒の先端に当たった囚人が殺されるというものであった。
しかし殺されるほうにしてみれば、いくら囚人だってタマったものではない。いまアタるか、こんどは俺の番かと血の気も失せて蒼白になっている。が、そんなことはおかまいなしに首はポンとはねられ、鮮血がチッ!と飛び、広場は真っ赤となった。
こうして死人の数は一万、二万、三万と増えて九万に達したとき、いかに囚人とはいえひどすぎると全国民はカンカンに怒り、反乱が勃発した。そして暴虐な帝王はうち倒された。
やがてふたたび平和の時代が来た。しかし平和が続くと、新しい帝王も退屈してくる....。これではまた殺人時代に戻りそうだというところに、1人の賢者があらわれた。
「ええい、しょうもない人間どもじゃ。とはいえ争いごとは人間の本能でもある。とにかく殺人ゲームはイカンことじゃから、それに代わるべきゲームでも」と首をひねった。そして考案したのが、このマージャンにほかならない。
しかし殺人帝王の故事にちなんで考案したため、当時の出来事を思わせる遊戯法となっている。たとえば「ポン」の掛け声は首をはねる音からきたものであり、「カン」は国民がカンカンに怒ったこと、ピンヅは人間の首がごろごろころがった有様を表したもの、マンヅはその首の数、ソーヅは竹片に記した墓標を表すとなど、それぞれもっともなインネンに基づいていた。
このようにマージャンは、平和を愛する賢人によって考案され、国民によって愛されてきたゲームである。戦争なんか考えるよりどれだけマシか分からない。大いにやんなさい。
ロンッ!
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