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   (23)麻雀の起源


 雑誌「りべらる」麻雀増刊号に載っていたコラム。面白いけれど、少々不穏当な表現が.... しかしまぁ、40年以上むかしのことでもあるので、“ま、いっか”....とはいえ例によって抜粋なので、あしからず。


 
いまから約三千年前、シナに一人の帝王がいた。帝王はたいへんタイクツしておった。

 「チンは退屈じゃ。なにかオモチロイことはないか」
 「ござりまする」と側近の1人が申し出た。
 「ほう、あるか。して、それはどのようなことじゃ」

 と帝王は膝を乗り出す。

 「おそれながら、人殺しでござりまする」
 「ふむ、なるほど面白そうじゃな」
 「面白いを通りこして、テンホーのカイカイ的でござりまする」
 「ほう、そちはやったことがあるのか」
 「はい、それはもう....」
 「どういう風に殺すのか」
 「それは....」

 と側近が耳打ちした方法は、何百という囚人を広場に整列させ、帝王があてずっぽうに六角棒を倒し、その棒の先端に当たった囚人が殺されるというものであった。

 しかし殺されるほうにしてみれば、いくら囚人だってタマったものではない。いまアタるか、こんどは俺の番かと血の気も失せて蒼白になっている。が、そんなことはおかまいなしに首はポンとはねられ、鮮血がチッ!と飛び、広場は真っ赤となった。

 こうして死人の数は一万、二万、三万と増えて九万に達したとき、いかに囚人とはいえひどすぎると全国民はカンカンに怒り、反乱が勃発した。そして暴虐な帝王はうち倒された。

 やがてふたたび平和の時代が来た。しかし平和が続くと、新しい帝王も退屈してくる....。これではまた殺人時代に戻りそうだというところに、1人の賢者があらわれた。

 「ええい、しょうもない人間どもじゃ。とはいえ争いごとは人間の本能でもある。とにかく殺人ゲームはイカンことじゃから、それに代わるべきゲームでも」と首をひねった。そして考案したのが、このマージャンにほかならない。

 しかし殺人帝王の故事にちなんで考案したため、当時の出来事を思わせる遊戯法となっている。たとえば「ポン」の掛け声は首をはねる音からきたものであり、「カン」は国民がカンカンに怒ったこと、ピンヅは人間の首がごろごろころがった有様を表したもの、マンヅはその首の数、ソーヅは竹片に記した墓標を表すとなど、それぞれもっともなインネンに基づいていた。

 このようにマージャンは、平和を愛する賢人によって考案され、国民によって愛されてきたゲームである。戦争なんか考えるよりどれだけマシか分からない。大いにやんなさい。
ロンッ!

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