Book review 

    (60)トーキョーゲーム


 青山広美といえば、 平成12年度のコミック大賞を受賞した名作「バード」の作者。その青山氏が、平成5年だったか6年に近代麻雀(だったかな?)に連載したのが、この「トーキョーゲーム」。実はバードに負けず劣らずの傑作。

         

 近未来の東京にゴルゴダ・タワーと呼ばれるビルがあって、全階、麻雀バクチ場となっている。その最上階には椅子の男と呼ばれる男がいて、最上階で不老不死のクスリ「ハレルヤ」を製造している。

 青い☆(星)と呼ばれる主人公が、各階でフロアマスターを倒しながら最上階にたどり着き、ついには椅子の男を倒すというストーリー。

 最上階にたどりつくまで、ボス・キリスト、ゴッドウルフ、サイバネテック・ローザ、パパ・エデン、サムライなどのフロアマスターと麻雀バトル。フロアマスターはいずれも個性的なキャラクターだが、キャラクターそのものはボス・キリストサイバネテック・ローザが好み。

  ボス・キリスト                サイバネテック・ローザ
      

 もちろん二人のうちどちらといえばサイバネテック・ローザ。なんと云っても必然性がないのにヌードなのがいい。(^-^; 脳がコンピュータと連結されており、あらゆるデータを分析して勝ち進む。しかし最後には、青い星の感性の前に敗北する。

 フロアマスター最後の大物、サムライ編は、青天井麻雀青い星がケガのために、同行者が代打ちする。しかしサムライに大物手を決められ、ラス前を迎えたところで60億点のビハインド。
     

    これがその手
     

そこへ青い星が戻る。サムライが、「もう大勢は決まっている」と告げる。すると「60億だろうが600億だろうが、人は点棒によって敗れるのではない」。おおかっこいい。

 しかしそんなこと云ったって60億の差、たった1局でどうするのか。するとそこで青い☆がアガったのが、リーチ・牌底・小三元・混一・混老・対々・三暗刻・三槓子・南・ドラ323,783,023,686,900,000,000点。これでは分かりにくいので日本語に直すと378京3千23兆6869億点。

 きっと青天井でも、これが最高点なんだろな(役満貫は、1千万点で打ち切りというルール)。プラスするとしたらダブリーの一翻くらいか(リーチしてから3回、槓する)

 そんな面白いコミックだったが、なぜかあまり売れなかった(ようだ)。そこで発行部数も少なかった(ようだ)。理由はまったく知らないけれど、少々内容がおどろおどろしかったせいかもしれない。

 実はこの不老不死薬「ハレルヤ」、原料は人間の内蔵。バードの最初の方で、ヘビが2流のイカサマ師を殺したあげく、畑の肥料にしてしまう場面がある。これがおどろおどろしいというので、掲載紙が回収されたとかなんとかいう話を聞いた。

 しかし「トーキョーゲーム」のハレルヤ製造現場は、そのバードの肥料場面がかわいくみえるほど。傑作と思ったが、発行部数が少なかったのは、そんなことが原因かも知れない(なにせ巻末で、作者自身が「かくも無謀な漫画を許してくれた編集のetc」と述べているくらい)

トーキョーゲームをはじめて読んだとき、池上遼一星雲児を思い出した。

       

 星雲児も不老不死薬「ダナピア」がテーマの一つにになっている。ただ「ダナピアは人間の死に際しての生命エネルギーが原料。そこでトーキョ−ゲームほどのおどろおどろしい場面は出てこない。

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