Book review 

     
 (32)麻雀通


 昭和初期、四六書院という出版社から「通叢書(つうそうしょ)」というシリーズが刊行された。この「通叢書」は、たとえば歌舞伎・新劇・ダンス・料理・酒・洋服・旅行など、各界の第一人者が、その道に関してうんちくを傾けたもの。

 そして麻雀からは、当時、プレーヤーとして第一人者と云われた川崎備寛(かわさきびかん)が、麻雀の遊び方について執筆している。


              

 入門書であるから、全体150ページほどのうち100ページほどが遊び方・ルールについての解説となっている。つまり後に川崎氏のベストセラーとなる「麻雀の打ち方」や「麻雀の勝ち方」のような戦術書ではない。

 後半の50ページほどは、「感想と主張」というタイトルで、麻雀のルール(国士無双や立直)やら、雀技についての考えが述べてある。しかしこれについても、川崎備寛個人の感想というレベルのもの。そこでこれだけの話であれば、単なる「戦前の麻雀古書」ということになってしまう。しかし実はそうではない。

 入門書でルールや遊び方、戦術書で雀技を知ることは出来ても、著者の麻雀に対する考え方を知ることは不可能である。しかし後半掲載の「感想と主張」で、川崎備寛氏の麻雀に対する考え方をよく知ることが出来る。

 前述したように、川崎備寛といえば、当時、プレーヤーとして第一人者と云われた人物。また当時創設された日本麻雀連盟の幹部でもある。

 かわさき びかん【川崎備寛】M24年、大阪府に生まれる。関西大学(政治部)中退後、文筆活動に入り文壇で注目される。大正中期、麻雀が本格的に伝来。日ならずして手を染める。S4年、日本麻雀連盟創立とともに参加。同時に中央委員となる。S5年、当時の最高段位、7段となる。第二次大戦後のS23年、同連盟再建にあたり、関東本部幹事長に就任。S28年理事長。S34年副総裁。S36年、同連盟最初の九段。S38年3月逝去。死後、名人位を追贈される。その著「麻雀の打ち方(S24大泉書店)」は第二次大戦後の戦術書ベスト10中の1冊。

 こういう人物であるから、σ(-_-)のような麻雀研究者にとっては、その人となりを知る重要な資料になる。またこの本には、当時の麻雀界の貴重な写真が何枚も掲載されている。たとえば下記は、当時の麻雀界のお偉方の貴重な対局風景。一番右側が佐藤5段、正面着物姿が川崎7段、正面左側が日本麻雀連盟創立者の空閑緑8段、左端の白い洋服が前島吾郎5段である。

            
            
 ↓これは当時行われた第1回女性麻雀大会の模様。この本には書いてないが、たしかこの第1回大会で優勝したのは、責任者である空閑緑8段の愛娘、空閑智恵子さん(当時18才)だった記憶(ちと記憶モード)。

           

 ↓これは当時のアメリカでの女性対局風景。みんなチャイナドレスを着て、家具も中国調。中国ムードを満喫している。というわけで麻雀古書としては貴重な1冊。

           

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