Book review 

    (14)麻雀放浪記


 麻雀小説といえば、阿佐田哲也。短編集も1冊として勘定して、生前、35冊ほどの麻雀小説を著した。阿佐田哲也以外の作家としては、剣豪小説で有名な五味康介が4作品(暗い金曜日の麻雀雨の日の両筒不知火隼人武辺帖麻雀一刀斉野村敏雄が6作品(麻雀無頼伝麻雀極道伝麻雀水滸伝麻雀太平記賭博放浪記復讐の雀鬼藤村正太が4作品(九連宝灯殺人事件緑一色は殺しのサイン死の四暗刻大三元殺人事件)など、すべて 5,6冊前後。それに比して阿佐田哲也は質量ともに圧倒的。

 その圧倒的な作品群の中でも、なんといっても代表作は「麻雀放浪記」。阿佐田哲也の名を世に知らしめると同時に、麻雀小説というジャンルを確立した記念碑的な作品である。

 この「麻雀放浪記」は、昭和44年1月から6月にかけて週刊大衆(双葉社)に連載された。連載が始まってしばらくすると爆発的人気となり、週刊大衆は売れに売れた(一説によると、双葉社はその収益で新社屋を建てたという(ホントカイナ?...(@_@) )。

 連載が始まった時点では、続編を書く予定はなかった。しかしあまりの人気に、翌昭和45年、「風雲編(昭和45年1月〜6月)が、続いて激闘編(昭和46年1月〜6月)番外編(昭和47年1月〜6月)と続々執筆された。そしてこのあとも「ギャンブル党狼派」や「スイギン松ちゃん」などの短編、あるいは「ドサ健ばくち地獄(昭和53年4月〜昭和54年2月)などの名作が次々と週刊大衆誌上で発表された。

 で話は、「麻雀放浪記」や「ドサ健ばくち地獄」などのことではない。問題は、これらの作品が掲載されている「週刊大衆」そのもの。週刊誌は月に4冊は出版されるから、放浪記の1シリーズ6カ月で24,5冊。全シリーズでは100冊前後。これに短編やら、「ドサ健ばくち地獄」を加えると軽く200冊はゆく。もともと週刊誌は売り捨てのもの。そこで麻雀放浪記に限った100冊としても、全冊を揃えるのは不可能に近い。

 もちろん作品を読むだけであれば、後で出版された単行本などを読めばいい。しかしここでの話は、古書としての「麻雀放浪記」の話。

 単行本では初版が珍重されるのは、世の常識。そこで同じ「麻雀放浪記」でも、双葉社の初版本(新書版)となると、古書界では値が張る。初出週刊誌となるとなおさらである。しかしいかに古書界でも、週刊誌までは手が回らない。しかし「麻雀放浪記」が連載されている週刊大衆が全100冊揃いであれば、すごい値打ちとなる。

 値段は見当もつかないが、すくなくとも10万円は下らないだろう。意外に安いと思われるかも知れない。しかし普通の週刊誌であれば、それが数年分揃っていても、ヘタするとチリ紙交換の対象にしかならない。それが10万円はくだらないというのだから、すごい値打ち。ましてやマニアにとっては、10万/20万には変えられない宝である。

 う〜ん、麻雀放浪記は毎週リアルアイムで興奮しながら読んでいた。しかしその頃は単行本しか眼中になかった。そこで週刊大衆をとっておくところまでは思いつかなかった。それが今となっては残念でたまらない。。。。(~0~;

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