法 華 寺
(ほっけじ)
法華寺南大門
Contents

1.所在地

        奈良市法華寺882

2.宗   派  

光明宗    本尊  十一面観音像(国宝)

3.草創・開基

(1)草創
平城京における大寺の位置現在の法華寺が建つところには、右図のとおり、藤原京、平城京と続く時代の稀代の政治家、藤原不比等の屋敷があった。その不比等が720年に没したとき、この屋敷を娘である光明皇后が相続する。相続後は皇后宮として使用されていたが、天平2年(730)4月 に光明皇后は、当時深く帰依していた仏教の教えに従い、この皇后宮の一角に貧窮者の病人を治療し薬を与えるための施設として施薬院を設ける。そして天平17年(745)には皇后宮全体を宮寺とする(注1)。これが法華寺の草創である。

(2)総国分尼寺として造営された法華寺
 天平13年(741年)2月14日「国分寺建立の詔」(聖武天皇)によって、各国に七重塔を建立することが国家事業として開始された。そして、時期不詳ながら、それら国分寺の総国分寺を東大寺、国分尼寺の総国分尼寺を当法華寺とされた。これ以降、法華寺は大和国分尼寺すなわち法華寺滅罪之寺と呼称されることとなった。
 大和国分尼寺とは国家の寺である。造法華寺司が任命され広大な土地に金堂、中門、廻廊、東西両塔、南大門の他食堂など壮大な伽藍が築かれた。そして完成したのは、造法華寺司が延暦元年(782)まで置かれていたというから、その頃までであろうといわれている。なお光明皇后は、造立中の天平宝字4年(760)に没している。
 (注1)続日本紀 天平17年5月11日の条    「(前略)この日、天皇(聖武)は恭仁宮から平城宮に行幸し、中宮院を御在所とした。もとの皇后宮を宮寺とした。」

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4.創建時の伽藍配置

  • 当寺院は、創建時の伽藍配置等を明らかにするために、過去境内の諸設備の改修などの機会を捉えて、断続的ではあるが熱心に発掘調査が実施されてきている。その結果、現在では法華寺創建時の伽藍は、現在の寺域より南側に大きく広がり、伽藍配置としては東大寺式伽藍配置に近いものであったであろうと推定されている。
  •  即ち、東西両塔、金堂、講堂などの堂宇を備えた大伽藍であったと考えられている。

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5.その後の変遷

  • 長岡京、平安京へと遷都されてからは南都の各大寺と同様に法華寺も衰退した。
  • これに加えて平重衡(たいらのしげひら)による南都焼き討ち (治承4年(1180))が法華時にも及び、さらに荒廃の一途をたどった。
  • だが鎌倉時代に入って、西大寺を復興した真言律宗の僧叡尊 が復興の手を差し伸べ、さらに下って桃山時代の慶長6~7年に豊臣秀頼と淀君が現在の姿に再建した。
  • しかしこの再建された現在の法華寺は、創建当時の規模の三分の一程度に縮小している。

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6.特記事項

  •   天平宝字5年(761)、光明皇后一周忌が、下記の通り本寺院で営まれています。
     (続日本紀 天平宝字5年6月7日の条 )
    「光明皇太后の一周忌の斎会を阿弥陀浄土院で設けた。その院は法華寺内の西南隅にあり、皇太后の斎会を行うために造営したものである。」(この時の天皇は淳仁天皇)

  • 光明皇后関連寺院       新薬師寺 

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7.現在の境内

赤門 南大門
法華寺赤門   法華寺南大門
 この門が法華寺の通用門となっている。参拝者もここから入る。左の立て看板には光明皇后1250年大遠起法要と書かれている。     この門が当寺院の正式な門である。慶長6年(1601)、本堂再建と同時に豊臣秀頼、淀君により再建された。
     
本堂   正面からの見た本堂
法華寺本堂   法華寺本堂
 慶長6年豊臣秀頼の寄進により再建された。間口7間ある。(重要文化財)    この本堂には本尊である十一面観音像が安置されている。この像は光明皇后の姿を写したといわれる。但し法華寺創立当時の本尊ではない。再建後に本尊となったと伝わっている。
     
鐘楼   から風呂
法華寺鐘楼   法華寺から風呂
  鬼瓦の刻銘に記載から慶長7年(1602)建築されたものとされている。(重要文化財)     光明皇后の「千人施浴」の伝説で知られる「から風呂」である。但し現存の建物は江戸時代の明和3年(1766)に建築されたものであるという。なお、から風呂おは蒸し風呂を意味する。(重要有形民俗文化財)
     
横笛堂
  客殿
法華寺横笛堂   法華寺客殿
 高山樗牛の「滝口入道」という小説に登場する滝口入道との悲恋の主人公 横笛が、尼になった後に住したといわれる。なお、この「滝口入道」は平家物語に題材を得たもの。     本堂の後方に位置する書院造りの客殿と庭園。なおこの庭園は国の名勝に指定されている。
     
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8.古寺巡訪MENU
<更新履歴> 2012/9補記改訂 2016/1補記改訂 2020/11補記改訂
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