カウリーってどんな木? 


世界の巨樹・巨木といえば、多くの人はセコイヤを想い浮かべるだろう。
確かにセコイヤ・センペルピレンス(セコイヤ雌杉:俗称レッドウッド)には、
1960年代になんと樹高124mもの“ロックフェラー・ツリー”が見つかっている。

しかし、巨樹・巨木の定義は高さだけではない。

日本の林野庁では胸の高さの幹周り、つまり太さを基準にしている。
また、屋久島の縄文杉が当初樹齢7200年と言われて話題になったように
(現在では、2500〜3000年くらいだろうと言われている)、
古さ(樹齢)も大いに気になるところだ。

ではカウリーはどうか?

樹高でも、幹周りでも、樹齢でも世界一のものはない。
しかし、樹肌の美しさとともに、円筒型の特異な形状によって
材積量(木の体積)は世界一ではないかと言われているのだ。

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《カウリーとはこんな木だ》
よ〜く見ると、木の根元に白いタオルを首に巻いた人間がいる!



ニュージーランドの先住民族マオリ族が、昔からカウリー(kauri)と呼んでいた木は、
マツと同じ裸子植物でアラウカリヤ科のアガティス属に入る。

幹は円筒状に直立し、クリーン・ボウル(第一枝までの幹)が非常に大きいのが特徴だ。

樹脂が多いことと、絶えず樹皮が脱落することにより、
着生植物やツル植物は付着できず、鳥、虫、カビ、バクテリヤも寄り付かない。
これにより、瘤や穴が少ないすべすべして美しい形状を保っている。

また白っぽい灰色又は鉛色の樹皮には、
樹齢がかさむとラセン状の神秘的な模様が浮かびあがってくる。

材質も非常に堅固で、かつては建築材だけでなく船材や船のマストにも使われていた。

つまりカウリーとは、円筒形にズボっと伸びた堅くて美しい木なのだ。


しかし、それゆえに乱伐された悲劇の木でもある。

18世紀末にイギリスから入植者が押し寄せ、
19世紀初頭から1951年に伐採禁止になるまでにおびただしい数のカウリーが伐採された。
この200年で、ニュージーランドの森は25%に減り、カウリーは4%まで減少したという。

なんだか絶滅してしまった巨鳥モアを思い出させてしまう。


セコイヤだけでなく世界に名だたる巨木は、上に伸びるほど幹は細くなっていく。
(マダカスカルのバオバブは例外かもしれないが…)
また、日本の巨木は極端だが、樹齢がかさむにつれ瘤などが目立ちボコボコしてくる。
(良く言えば、神秘的ということだろう)

カウリーは、その形状、材積量、材質、美しさから考えると、やはり特別な木なのだ。



《カウリー・ベスト5》
名 称 幹周り クリーンボウル 樹高 材積量 備 考
1 Tane Mafuta 13.77m 17.68m 51.5m 244.5u “樹々の神”
推定樹齢2000年以上
2 Te Matua Ngahere 16.41m 10.21m 29.9m 208.1u “森の父”
推定樹齢2000年
3 McGregor Kauri 13.69m 12.25m 40.8m 170.6u “幻のカウリー”
4 Te Tangi o te Tui 12.38m 13.10m 50.9m 155.1u -
5 Ward Kauri 11.21m 20.03m 49.0m 149.0u -

《過去の記録》
・ 18世紀に帆柱として使われた最長のカウリー:クリーンボウル45.7m
 (クリーンボウル35〜40mのカウリーがどんどん伐採され、帆柱として使われた)
・1800年末に倒れたツタモエ林のカウリー:幹周り20.1m、クリーンボウル30.5m、材積量約700u
 (“大カイラル”と呼ばれた公式記録では最大のカウリー、材積量はセコイヤのシャーマン将軍の2倍以上)
・1870年頃にコマンダー山脈で切り倒されたカウリー:幹周り21.9m、クリーンボウル24.4m
・同じ時代にタラル川上流で切り倒されたカウリー:幹周り26.8m


100%PURE NEW ZEALAND COMより

 タネ・マフタ − 天と地を隔てた者

夜のタネ・マフタマオリの創世記では、この世は何もない虚空「テ・コレ」から始まりました。テ・コレはやがて「テ・ポウ」に変わりました。テ・ポウは永遠に続く闇夜でした。ランギヌイ(空の父)とパパトゥアヌク(大地の母)の2人の神から生まれた子どもたちは2人の間に挟まれ、闇の中で身動きもままならない状態でした。

ランギヌイとパパトゥアヌクは深い愛情で結ばれており、硬く抱き合ったまま片時も離れることができませんでした。2人の間に挟まれた6人の子どもたちは、暗闇の中に横たわっているよりほかなかったのです。

ある日、ランギヌイがパパトゥアヌクの上で動いたところ、パパトゥアヌクの脇から子どもたちの上に一筋の光が差し込んできました。子どもたちはその輝きに驚き、この暗闇を脱し、光の世界へ出て行きたいという欲望を持つようになりました。

子どもたちは、この世をずっと闇に包んできた2人の神である両親の抱擁を解き放とうとしますが、2人の愛情は非常に強く、どの試みも全て失敗に終わりました。

皆があきらめかけたそのとき、巨大な森の神タネ・マフタが仰向けに寝そべり、自分の肩を母なる大地の中へ深く押し込み、両足で空の父を押し上げました。タネはこの世に光をもたらそうと奮闘しました。

タネは母親がやめるように泣くのも聞かず、さらに強く父親を押し上げました。硬く抱き合っていた2人の神もついに離れるときがきました。タネは最後に残っていた力を振り絞り、力強い足を精一杯伸ばし、ランギヌイを天上へ押しやり、世界にあふれんばかりの明るい光をもたらしました。

今日ではランギヌイの涙が空から雨となって愛するパパトゥアヌクに降り注ぎます。それはランギヌイの悲しみとパパトゥアヌクを恋しく思う気持ちの表れなのです。パパトゥアヌクの痛みは赤い土を見れば分かります。2人が離れたときに流れた血で今も染まっているのです。

しかしこの伝説の主役は間違いなく子どもの一人タネ・マフタでしょう。タネ・マフタは今もワイポウアの森で誇らしげに立っており、肩は母親である大地に深々と埋まり、両足は父親である大空に向かって伸びています。



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