YSエンジンの健康診断


YSエンジンって、
「プシュッ!」
って言いますよね〜!(^^)


飛行後、タンクの内圧を抜くために
シリコンチューブのフタを抜いたら
プシュッ!って。

この音が有る無しで
タンクに内圧がかかっているかどうかを判断するわけですが、
タンクの中に一体、
どれくらいの気圧がかかっているか?

皆さん、ご存知でしょうか?



実は好調なYSエンジンと不調な物とでは、
タンクの内圧が全く違うのです!


そして、
このタンクの内圧気圧計で測る事によって、
エンジンの健康度
(?、いや、やっぱりコンディションと言うべきか?(^^;) )
オーバーホールの時期か否か、
不調の原因
などナドが
かなりはっきり判るのです!


この方法、実は
須磨模型さんに教えて頂いた方法なのですが、
目の前でやって見せて頂いたらカトちゃん、
一発で納得しました!

で、

今回、ULTIMATE F.Airにヒッサビサ〜に
YS63(カトちゃんの2号機、好調な方です!(^^) )
を使いました。
エンジンのコンディションチェックを兼ねて
タンクの内圧を測ってみましたので
その方法をご紹介します!


今回使用した気圧計です。
近所のカー用品屋さんに売ってた(3000円ぐらいと記憶)
タイヤの気圧計に、ごくごく普通のシリコンチューブと
両端にシリコンチューブを付けられるニップルを付けただけ!
元々はシリコンチューブのかわりに外径1センチくらいの
耐圧ゴムホースが付いていましたが...外してビックリ、
シリコンチューブがピッタンコ!(^^)
0.1〜5気圧まで測れるメーター
(ハッキリ言って安物の部類、デス!)なので、
1気圧以下での数値の精度は

です、が
MYエンジン&MYメーターで使うならば問題無いでしょう!
要は針がしっかり動いてくれて、目盛りが読めれば
「調子が良い時はこのメーターでナンボ、」
という事がチェック出来るのでそれで充分なワケです!
1万円以上出して精密気圧計を買う必要はありません。
圧力計をタンクにつないだ所です。
カトちゃんのULTIMATEのタンクが
YSエンジンなのに3本出しの配管になっていたのは
実はこのためだったのです...(^^;)
メーターをつないでいるアルミパイプは、
タンクの中に真っ直ぐ1センチぐらい入ってるだけです。
エア抜きの配管(プシュ!って言わせる方、ですね)に
つないでも測定はOKですが、
こうしておくとタンクの口金が緩んで
エアが少〜しずつ口金から抜けている場合も
圧力計で判定出来るのです!(^^)V

当然、燃料は半分以下しか入れずに使う事になります。
エア抜きの配管から測定する場合でも燃料が少なければ
同様にチェック可能です。

...?
アレ?
と言う事はアレ?あれ?アッレ〜?
つまり、...
作ってから3本目はヤッパリ不要だった事に気が付きました!
胴体の中にタンクを納める機体ならあってもイイかも (^^;) 

ウ・ン・チ・ク
「上向くと止まる謎のYS」
始動して地上でのテストではスロー、全開共OKなのに
離陸ポイントに機体を運ぼうとして機首を上に向けたり、
離陸して上向いたら「パスッ!(>_<)」と止まるYSは
タンクの口金の気密がアヤシイ事が多いのです。
口金の周囲の緩み等による小さな穴から漏れている場合、
口金の裏側が燃料に触れていると一気には漏れないので
圧力が保てて燃料を圧送出来るのですが...
機種が上向いて口金の裏がエアーになったら一気に
「プシュ!」と内圧が抜けて
瞬間的に燃料を圧送出来なくなって止まっちゃうのデス!
実際に計ってみると...

このエンジンはカトちゃんのYS63の2号機、
エスティマさんが驚いた好調ぶりのエンジンです!

この写真、もうエンジンが回ってますが、
実は始動準備の段階、つまり
スロットルを開けてスターターで空回しする段階で、
既に0.1少々までタンクの内圧が上がります。
始動直後のアイドリングではスロットルを開けるまで
タンクの内圧は0.2程度までしか上がりません。
運転中のタンクの内圧

スロットルをゆっくり全開にすると、
タンクの内圧は見る見る上がって行きます!
全開、10700rpmでは0.7気圧まで跳ね上がりました。
アイドリングに回転を落とすと
0.5気圧少々に下がります。
その後は空ぶかしをするたびに
アイドリングで0.5少々、全開で0.7気圧の間を
律儀に往復していました。
エンジンを止めてから計ってもダメです!

この写真はエンジン停止直後に撮った物ですが、
メーターをつないでしばらく放っておいたら
0.4気圧以下に下がっちゃいました。
でも、どこかから漏れているワケではありません。
エンジンからタンクに送り込まれる空気は
温度が上がった「熱い空気」です。
エンジンを止めて時間が経つと
暖められて膨張していた空気が冷めて収縮してしまうので
タンクの内圧はドンドン下がっちゃいます。
そのためエンジンを止めてから計っても
正確なタンクの内圧は計れません!
どなたかに手伝って頂いて
運転中のタンク内圧を測って下さい。

ウ・ン・チ・ク
「バッテリーをタンクに固定する場合の注意」
(ブッサイクなので...
あまりやる方はいらっしゃらないと思いますが(^^;) )
0.5気圧もかかると
タンクはパンパンに膨れちゃいます!
指で押しても全くへこまないくらい、スゴイ硬さになってます!
バッテリーをタンクに止める場合、
タイラップで強く縛ったら
バッテリーがタンクに変形させられて壊れちゃいそうです!
かならず厚めの柔らかい両面テープを使い、
縛り付けるタイラップはゆるめにしておく必要があります。



好調なYSの他に少しスローが不調なYS63、
飛行をあきらめなくてはならないほど不調になってしまったYS53も
タンク内圧を測らせて頂きました。
下記のポイントでのタンク内圧値を表にまとめてみます

POINT 1.エンジン始動準備
 スターターで空回しして燃料をエンジンに吸わせた時のタンク内圧です。
POINT 2.始動直後のアイドリング
 始動した直後、スロットルを開けて回転を上げる前のタンク内圧です。
POINT 3.全開時
 始動後スロットルを全開にして最も上がったタンク内圧です。
POINT 4.加圧後のアイドリング
 始動〜全開を経て、タンクに内圧がかかった状態でのアイドリングでのタンク内圧です。


タンク内圧測定結果一覧表

POINT 1 POINT 2 POINT 3 POINT 4 エンジンのコンディション
YS63
好調機
(カトちゃん2号機)
0.2弱 0.2 0.7弱 0.5強 夏期でも晴天ならばRAM13x6を
ピークで11000rpm少々回す
(燃料:NASA 30%)
スロー〜全開まで全域で好調
YS63
スローやや不安定
上がらず
(0.1以下)
上がらず
(0.1以下)
0.4弱 0.3 中〜高回転は好調だが
スローがやや不安定、
回転が少し不規則に上下する。
吹け上がりも少々おとなしい。
YS53
不調機
上がらず
(0.1以下)
上がらず
(0.1以下)
0.2少々 測定不可 高回転が全く吹け上がらない。
この測定中、スロットルを開けると
高回転に至るまでにノッキングを
起こしてエンジン停止。

カトちゃん注記
この測定を行った日は梅雨のいつ雨が降ってもおかしくない、
薄い霞がかかったかのような高温多湿な日でした。
後日、気温は高いが湿度はややマシな日に測定した所
カトちゃんのYS63でPOINT 3が0.62程度と
少し低めの数値が出ました。(エンジンの調子は全く衰えていません)
タンク内にはクランクケースで加圧及び加熱された空気が送り込まれるので
多湿な日は少々高めの内圧を示す様です。

カトちゃんのYSエンジンに関する考察


YSというエンジンは実に魅力的なハイパワーエンジンである反面、
ゴネ始めたら手が付けられないヘソ曲がりでもあります。
SAITOやOSのNAエンジンでは考えられないような、
謎のエンジン不調を突然起こしてしまいます。

NAの4ストエンジンならば

・キャブレターのセッティングの適、不適、及び燃料の適、不適
・バルブクリアランス
・バルブとバルブシールの当たり面のシール性
・ピストン、ピストンリング、シリンダーの当たり
・ベアリングのコンディション
・プラグのコンディション
・マフラープレッシャーの確実な供給

ナドナド...と言った
「エンジンとしてコンディションを問われる部分」
さえシッカリしていれば
不調になる事はまずありません。

しかし、YSの4ストエンジンは
上記の
「エンジンとしてコンディションを問われる部分」
に加えて、
「キャブレター内に燃料を噴射する動力源」
であるタンク内圧をシッカリ上げるために

・エンジン各部のパッキングのシール性
・クランクシャフトで駆動されている
 「ロータリーディスクバルブ部」のシール性
・逆止弁の確実な動作とシール性

と言った、言うなれば
「燃料タンク内にエアを送り込むためのポンプ」
そして
「タンク内に圧力を貯め込む蓄圧装置」
としても完調で無ければならないワケです。

この
「ポンプとして」
「蓄圧装置として」
どこかに異常をきたしてしまうと
突然、ヘソを曲げて不調になってしまいます。
簡単な例を一つあげると
エンジンとタンクをつなぐ配管やタンクの口金部分、
エンジンに多数設けられているパッキング、
どこか1カ所にでも穴が開いてしまうと...


と、言う事は...
どこかに穴が開いて漏れている等の異常がある場合、
タンクの内圧は正常時に比べて低くなってしまうので
タンクの内圧をメーターを使って確認する事で、
「燃料タンク内にエアを送り込むためのポンプ」
及び
「タンク内に圧力を貯め込む蓄圧装置」
としての機能に異常やヘタリが無いかを
ハッキリ確認することが出来るワケです。

これはYSが不調になった場合、
皆さんもタンクのフタを抜く時に
「プシュッ!」
と音がするか否かで確認されているワケですが、
単に音だけで判断するだけでなく、
数値として把握しておけば
「燃料タンク内にエアを送り込むためのポンプ」
としてヘタリが来ているか否か、
メーカーにオーバーホールに出すタイミングが来ているか否か
より簡単確実に判断する事が出来るワケです!

そして更に...
ズバリ言ってしまえば...

どこかのパッキングが1カ所、
僅かに漏れている場合でも
エンジンの回転を上げてしまえば
勢いだけでもタンクの内圧は上がります!

しかし、
低い回転、
すなわちエンジンを始動する時にスターターを使って行う空回し、
この時ばかりはパッキングが漏れていたり
ロータリーディスクバルブが圧力を保てない様なエンジンでは
タンク内の圧力を上げる事が出来ない様です!

すなわち、
実はカトちゃんが注目しているのはこの
始動準備と最初のアイドリング状態でのタンクの内圧なのです!

これは上の表を見て頂くと判ると思いますが
好調なカトちゃんのYS63は始動準備の段階で既に
0.2気圧弱まで圧力が上がり
始動直後のアイドリング(カトちゃんの場合2500rpm程度)で
0.2気圧に達しています。

しかし、アイドリング不安定程度の
「やや不調」なYS63でも0.1気圧以下となっています。
いわばYSエンジンが「ポンプ」として
へたり始めている状態です!
このまま使い続ければ、
タンクの内圧がますます低くなって
エンジンが本格的に不調になってしまうのではないでしょうか?
(ちなみにオーナーさんはこの結果を見て
メンテナンスに出すつもりになっておられました。)



謝辞

このノウハウの元となる
「気圧計でタンクの内圧をチェックする」
という方法をカトちゃんに教えて下さったのは
いつもお世話になっている
「須磨模型」
さんです。
いつも飛行場で、お客さんのエンジンが不調を訴えた時には
真っ正面から向き合って面倒を見て下さる
「須磨模型」さんだからこそ、
簡単確実にチェックできるこの方法を考えつかれたのでしょう。
カトちゃんもお世話になったのは1度や2度では済みません。
貴重なノウハウの公開を快諾して頂いた事に加え
日頃から常に真摯なおつき合いをして頂ける須磨模型さんに
この場をかりて感謝します。
m(_ _)m












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オチ、もあったりして(^^;)