カトちゃん流
エンジンの慣らし運転(ブレーク・イン)
先に2003 1 23に追加した内容をお読み下さい
このページの下の方に有ります。



この方法はカトちゃんのスタントとエンジンの師匠、
K氏に習った方法です。
エンジンの仕上がり具合を
カンに頼った判断ではなく
スロットルレスポンスで確認しながら行う
とても実戦的なブレークインです。

手間のかかる方法ではありますが、
時間的には短時間でエンジンを完璧に仕上げる事も可能です。

ただし、
エンジンを途中で焼いてしまわないよう、
充分注意しながら行うか、
またはノンビリと時間をかけるつもりで行う必要があります。

何フライトも甘めで飛ばしているうちに
いつの間にか絶好調に仕上がっている普通の慣らしよりも
エンジンにとってはハードな方法です。
早く仕上げようとしてニードルを急に絞ると
エンジンを焼いてしまいますので充分に注意して下さい。


また、この慣らし方法はカトちゃんの経験上
2サイクルも調子良く仕上がるのですが、
4サイクルで特に効果的です。
 



 さて、
ブレークインの具体的な方法です。
別に難しい事はやりません。方法は簡単、
甘いニードルセットで開始して
少しずつ絞り込みながら
出来るだけ大きな宙返り
滑らかなスロットルワーク
何回も何回も連続して描いて
引きとレスポンスを観察する
のです。
 
同じ場所同じ大きさの宙返り
繰り返し行う事で
エンジンの調子の変化が手に取るようにわかります
甘〜いニードルセットでも2〜3分も繰り返してやると
中速からの吹き上がりと全開でのパワー、
最スローの回転数が変わってくるのが
飛びと手応えでわかります。
 
宙返りを繰り返している内に
調子が出て安定したら、
そのニードルセットの運転温度と負荷では
充分当たりが出た事になるので
着陸させてニードルを絞ります。
 
そしてまた離陸したらひたすら宙返りを繰り返す、
調子が良ければ降ろして絞る、
また宙返りを繰り返す。
延々とこれの繰り返しです。
 
途中で少しでも焼け気味になったら
即、
中スローで水平飛行してエンジンを冷まし
てから

焼けなくなるまで連続宙返り水平飛行での冷却を繰り返します。

ただし、ニードルの再セット直後
5回程度の宙返りで即焼ける様ならば
絞りすぎなので着陸させて少し戻します。
これをピーク付近の少し辛めのニードルセットまで繰り返します。
 
甘めのニードルでも
宙返りの連続はエンジンに負担がかかるので
意外と良く焼けます。

油断せず慎重に行って下さい。
それとかなり甘い内は当たりが取れると
逆にかぶることもありますので、
甘すぎてレスポンス不良になることもあります。
焼けたか、かぶったかは降ろしてエンジンの温度とニオイを体で確認して下さい。
 
 

なぜ、この方法でエンジンが
短時間に完璧に仕上がるか
と言うと、
エンジンにあらゆる温度と負荷のかかった全ての状態を
連続的に経験させる事が出来るからなのです。
 

連続宙返り中の機体の位置を時計の時刻でたとえながら
(右から左に飛んでいる状態では6時、9時、12時、3時の順になります)
スロットルワークを説明すると、
 
・6時から8時半
中スローから全開へ
 
・8時半から11時
全開をキープ
 
・11時から2時
全開から最スローへ
 
・2時から4時
最スローをキープ
 
・4時から6時
最スローから中スローへ
 
 
おおよそこのようになりますが、
上昇中はパワーを使うので
エンジンには負荷がかかり、
どんどん温度が上がります。

そして
下りではどんどん温度が下がります
連続して宙返りする事で
次の宙返りは温度が少し上がった状態になります。
 
つまり
大きな宙返りを繰り返す事で
温度を上げ下げしながら連続してエンジンに負荷をかけ、
序序に高温にすることで
低温から高温まで、あらゆる温度と負荷での
「当たり」
を付ける事が出来るわけです。
そしてその当たりの付き具合
同じ大きさの宙返りを繰り返す事で
スロットルレスポンスと
機体の引き具合の違いで確認することが出来るのです。
 


よく
「ブレーク・インは地上でいくら回しても意味が無い」
と言う人がいますが
カトちゃんも経験的にその意見に賛成です。
 
地上で同じ回転数で長時間回しても、
その回転、その温度、その負荷での当たりしか付いてくれません。
温度と負荷が変わるとエンジンは形が歪んで
どんどん摩擦の具合が変わってしまうので
あらゆる温度、負荷、回転での当たりが付かない事には
完璧に仕上がったとは言えないのです。
 
例えば
地上でスローと全開の調子が良いから「慣らし終了」
と判断しても
中スローの運転で摩擦が強い状態が残っていたり、
スロットル全閉で下っているときに摩擦が特に強かったり
(通常、エンジンはプロペラを回してペラに引っ張られていますが、
スロットル全閉の下りでは逆にプロペラに回されてペラに押されていますので
普通に飛んでいるときとは摩擦の具合が異なります)
と言う事があります。
エンジンがこういうコンディションのまま
高いところから一気にスロットルを絞り、
タップリ下る垂直降下などをやると
低温での当たりが取れていないので
良くエンストします。
 
その点、
カトちゃん流のブレークイン
ニードルを少しずつ絞って温度を少しずつ上げながら
宙返りを連続して行う事によって
有りとあらゆる状態をエンジンに経験させます。
そして当たりが付いたか否かを
引きとスロットルのレスポンスで判断出来るので
有りとあらゆる温度と負荷のコンディションで
全く隙のない仕上がりにエンジンを仕上げる事が出来るのです。
 



ブレーク・インを開始するニードルセット位置
離陸してそこそこの宙返りが行える程度の
思いっきり甘い状態から行います。

ここで「低温の慣らし」が出来ますので
やったエンジンとやらないエンジンでは
飛行中の長時間のスローの信頼性に差が付きます。
 
着陸するたびのニードルの絞り方
SAITO 56Fの場合
甘いうちはやや大きめ、1/6回転程度で行いましたが
ピークに近づくに従って少なくして下さい。
甘い内はスグにあたりが付くので
割とセッセと降ろして絞り、降ろして絞りの繰り返しになります
 
しかし調子良いからと言って
油断して一気に絞ると
一気に焼けてストン、とエンスト
したりします。
(1台目の56Fで一回やっちゃいました(^^;) )
特にピーク近くでは1コマずつの絞り込みで!
決してエンジンを焼いてしまわないようにご注意を!


エンジンが焼けぎみになってくると6時から9時に至る
スロットルを開けていく時のレスポンスが変わりますので
即、水平飛行に入れてエンジンを冷まして下さい。

当たりが付くに従ってスローも変わってきますので
スロー調整ネジもまめに触って下さい
 
ただし、
スローで止まってしまうようでは危なくて飛ばせません
ので
硬いエンジンでは有る程度、
地上で慣らしをしてから始める事になります。
 
 
でも、本来は負荷と温度変化が加わるたびに
熱応力とパワーによる応力が加わって
エンジンブロックは加工硬化して丈夫になり、
どんどん歪みにくくなっていきます。
そのため初めから地上で高回転慣らしをしてしまうと
低温でマイナス負荷となる下り状態での当たりが付きにくくなります。
ですから地上でいきなり高回転慣らしをしてしまうと
特に4サイクルではストールターンで止まりやすい
クセ持ちのエンジンになってしまうことが多いようです。
 


エンジン別のブレークインに関するインプレとしては
SAITO56F
AAC構造ですから、
熱によるシリンダーの歪みグセの影響が大きい様に感じます。
じっくりと時間を掛けて慣らしをするつもりで
ゆっくりペースで絞り込んで行く事をお勧めします。
(カトちゃんの56Fは慣らし中に1度だけ焼いてしまった1台目よりも
ゆっくり仕上げた2台目の方が明らかに良く回るのです)
 
ハイパワーのYS
パワーによる歪み変形の影響が大きいようで
新品状態で一気に、地上で高回転の慣らしをしてしまうと
大きめに歪んでしまい、後に悪影響が多いようです
スローペースでじっくりと
低温、低負荷から慣らしを始めたエンジンの方が
トラブルが少なくてしかも力持ちの
「良い子」
に仕上がってくれる様です。
 

以上、カトちゃんの経験の範囲ではありますが
SAITOとYSは慣らしの良し悪しで差が出やすいように感じています。

OS52
精度が良く丈夫な構造でそこそこのパワーですから
ほとんど新品状態から調子よく回ってしまうので
慣らしによる差があまり感じられません。
しかし、充分にあたりが付くまでは
特にスタント的なストールターンをやると
エンストしやすい様です。
その他にも急激に
高温から低温に温度変化させる事になる演目で
止まりやすい様ですから
恐らく高温のあたりを取る事よりも
低温のあたりが取れる慣らしを行う方が
効果的なのではないかと考えています。


カトちゃんはYS63を2台持ってますが、
1台目は大した慣らしもせずにいきなりブン回したため
色々なトラブルが頻発しました。
クランクケースを交換する大修理をやってから
やっと調子が落ち着いてくれましたが
カトちゃんのエンジンの中では2軍扱いです。

それに対してK氏に慣らしを教えてもらって仕上げた2台目は
慣らし途中から今に至るまで素晴らしく好調で
気温が安定している限りほとんど調整不要、
いつも同じように回ってくれますし
1台目よりも明らかにパワーが上回っています。

ちなみにK氏はYS63は30フライト程は慣らしのつもりで回すそうなのですが、
カトちゃんは10フライトくらい飛ばした所で充分と感じたので
タペット調整してガンガン回しちゃいました。
これでも充分に皆さんに調子良いと言って頂く事の多い
なかなかの仕上がりなんですが
K氏のYS63は明らかにカトちゃんの物より
一枚上の仕上がりを見せています。
カトちゃんのYS63の1台目と2台目、そしてK氏のYS63は
慣らしの上手い下手でエンジンの仕上がりに差が出るという
好例だと思います。
 



*******************



2003 01 22 追加
カトちゃんのエンジンの師匠、K氏から
追加指導のメールを頂きました!

カトちゃんが山勘
「まあ、こんなもんデショ〜」
と思いながらやっていた初飛行前の
初めてエンジンに火を入れる時に行う
地上でのブレークインについて
しっかりした手順を解説して頂けました。
K氏に快諾頂けたので
メールの内容をUPさせて頂きます。

K師匠、有り難うございました〜
m(_ _)m


以下、K氏からのメールです。

*******************


私がブレークインするときの手順は次の通りです。 


まず ひとタンク地上で回します。
このとき、
スロットルは全開でニードルは可能な限り濃くします。 
これは ご存じの様に 
できるだけ低温であたりを取るためです。



ピストンは単振動するので変位Xは 

X=Asin(2πnt) 
n:回転数 
t:時間 
A:振幅 

これを時間tで微分して速度を求めると

v=Aωcosωt  

ピストンスピードの最大値は
cosωtが1の時 最大線速度となるので 

v=Aω 

角速度ωは 

ω=2πn

 なので 
この2つの式から 

v=2πAn


12000rpmで回転している32エンジンを例に取ると 
ピストンスピードは
クランクシャフトのピストンピンの変位は9oで
12000rpmは1秒に200回転なので
 
v=2π18×200÷1000=22.6m/s 


これは
時速80キロで鉄板の上を走っている車から 
アルミのピストンをこすりつけていることと同じ事

エンジン内部で起こっている事になります。
 
こんなことをすると
摩擦熱で

アルミでできているピストンなどすぐ解けてしまうことは
容易に想像できると思います。

エンジン内部の摩擦熱は非常に強烈であることが理解できたと思いますが 
エンジン内のピストンが解けずにいるのは 
燃料内のオイル分で潤滑と冷却しているためです。 

こう考えると 
最初にエンジンを運転するとき
できる限り低温でオイルをたっぷり与えて回してやり
エンジン内部の摩擦熱がでる部分を
早く取り去ってしまう事が大切ということになります。

 

それなら エンジンをかけずに外からクランクシャフトを
スターター等で回しつつ燃料を与えれば良いようなものですが
それではエンジンの実際の運転している状態とかけ離れてしまいます。
エンジンをいためつけてはいけませんが同時に甘やかしてもいけません。 
できるだけ早く壊れない範囲で本来の運転状態に近づける事も必要です。
 


つまり
最初にエンジンがかかったら

スロットルを全開
にして 
ニードルをできる限り開けて
低速で運転
します。
ピストンとスリーブの当たりやベアリング固さ、
ロータリーバルブにオイルをなじませるためでもあります。




スロットルを絞ってスローで長時間回しても 
オイル分の潤滑と冷却が不十分なので 
エンジンの固い部分の摩擦熱を取り、
その部分を滑らかにすることが出来ずに

下手をすると 
エンジンをいためてしまいます。







次に2タンク目以降で 

エンジンがかかってゆるいニードルの低速で
なんとか止まらずにまわるようでしたら 
今度は10秒以上かけてゆっくり絞っていきます。

すぐにピークまで絞ってはいけません。 
少し絞って3秒くらいで戻し、 
また濃い状態でしばらく回し

またゆっくり絞って3秒程度絞った状態で回して
また濃い状態に戻します。
 
これを
10回以上かけて 
濃い状態から徐々に薄い状態に
行ったり来たりさせます。


この間スロットルはずっと全開のままですので
受信機の電源は切って置くことが出来ます。

これは
ニードルを絞ったり戻したりすることで
エンジンに
温度変化を与えつつ
摩擦で
温度が高くなった部分
濃い燃料で冷やしつつ洗い流し
徐々に高温でも焼きつかずに回るようにするため
です。



この後、
ピークを初めて出して見ます。



このエンジンの
初めてのピークのニードルの位置を覚えて置きます
そして低温つまりニードルを濃い状態で30秒以上回してから

また10回程度かけて濃くしたり薄くしたりを繰り返しながら
20回目にもう一度ピークを出します。

この時 
前回のピークより絞れているようでしたら
ブレークインの効果が出てきています。

摩擦に依る発熱量が減って
より少ない燃料でも焼けずに回ることができるようになってきているのです。

ここまで来ると受信機に電気を入れて
ピークから戻した位置にニードルをセットしてスロットルを絞りスローを確認します。
エンジンが止まらずに
30秒以上
スローが安定してまわり

スロットルを開けた時に止まったりしないように 
スローの空燃比の調整をして 
正常にエンジンが吹き上がるようなら次にフライトです





この後はカトちゃんが書いている通り
できるだけ大きな宙返りをしてエンジンに温度変化を与えつつ
徐々に絞って行けばブレークインは終了です。

つまり地上でもある程度エンジンに温度変化を与えて
ブレークインを進めて置くことで
空中でエンストの恐怖にさらされる危険性を
減らす事が出来ます。




もう2つ程
初心者向け
注意点があります。

1.ブレークイン中のプロペラの巻き上げる
  
砂に十分注意する事


一発でエンジンが潰れて使い物にならなくなります。

2.プロペラのバランスは 見て置くこと
 
APCなどは比較的合っているが たまに違うこともある。
特に木製のペラは合っていない事の方が多い。
木製のペラの重量バランスを取ると 
空力バランスが崩れて使えないこともある 
エンジンマウントの揺れを見て判断すること。 
たまに プロペラに価格のシールが付いたまま回っているのを見かけるが 
前述のエンジン内部の摩擦熱が
エンジンを簡単の破壊することが解っていれば
フロントベアリングがだめになり
その後のシャフトと軸受の摩擦が増えてだめになり 
飛べばレスポンスも無くなる。
そのまま飛んでいると2Cは1次圧縮が無くなって
エンジン死亡に至る


あと昔話 2つほど
昔のエンジンは テストベンチに固定して キャブからオイルを入
れながら ドリルで外からエンジンを回すと こすれて黒くなった
オイルが排気口から出てくるので ある程度この黒いオイルがでな
くなったら 一度エンジンをバラして燃料で洗浄後に組んでそれか
ら火をいれた 今は加工精度が上がってそんな面倒な事をしなくて
も十分なパワーがでるようだ。

昔のエンジンは テストベンチに固定してプロペラはロードの低い
ものを選んでブレークインしていたが サンデーフライヤーにブレ
ークイン用のプロペラを買うのも辛い気持ちもわかる そこで 高
低繰り返しのニードル調整で エンジンをだましつつ調子出してい
る。本来は ロードの低いプロペラを使うのが本当ということを知
っておくほうが良い。

                   

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