障害のあるひとの芸術活動に関するアンケート報告 

かながわ障害者芸術ネットワーク準備委員会

 昨今障害のあるひとたちの芸術活動の成果があちこちで発表されるようになり、福祉の内部、外部を問わず、話題になっています。しかし、まだ、多くの福祉施設などでは、芸術活動の実践にあたり、その方法を模索していたり、人手が足りなかったりなど、問題を抱えています。実際、現在取り上げられている、それらの作家や作品の陰には、自分自身にも創造の経験のある、指導者や支援者の存在があることが多いのです。

 このように、芸術に限らず、今後いかに福祉の世界に外部のひとたちが主体的に関われるかが、障害者だけでなく、わたしたちの未来の可能性につながるのではないかと考え、アンケート調査を行いました。このアンケート調査は2000年の3月に行われたトヨタ エイブルアートフォーラム神奈川における委員会の独自の企画によるものです。

 アンケート概略 

調査対象 

 * 芸術に興味のある方

調査内容

* どの程度障害者芸術や福祉への関心をもっているのか。

* 実際に障害のある人たちと関わる上で、どのような不安や期待をもっているのか。

調査目的

* すでに障害者芸術を実践している団体/個人やこれから取り組もうとしてい る施設などが、どうすれば、多くのひとたちの協力が得られるのか、共にそ の活動を展開してゆける可能性はあるのか、を検討するための資料として、参考にする。


 アンケート回答者  358名

* 美術専攻の大学生・ 大学院生 62%

* 美術以外専攻の大学生・ 大学院生 26%

* アーティスト 3% * フリーター 3%

* 会社員 2% * 主婦 1%

* その他 3%


 障害のあるひとの芸術作品やパフォーマンスを見たことのある人  55%

* 福祉施設のバザーや施設内で 27%

* 展覧会で 21%

* TVやビデオで 19%

* コンサートなどの舞台で 7%

* 商品として 11%

* 本で 7%

* その他 8%

 福祉施設のバザーや施設内で直接みたひとの感想  53名

良かった点

* 障害のあるひとが描く絵は独特の暖かみがあり、大人には描けないのでは?というのがある。

* ろう学校で見学したのだけれど皆前向きで、楽しいという事が見ていて伝わった.

* 作品を説明してくれている時のその人の表情が生き生きとしていて、自信を持っていること手にとるようにわかった。

* 偏見(芸術・身障者に対する)が軽減した。

悪かった点

* 特別扱いする点。

* その人個人の作品かどうか疑問を持つ部分もあった。

* 並べ方がごちゃごちゃだった。

* 周りのスタッフの対応が悪かった。

* 見に来る人の範囲が限られた人だけだった。

* 「障害者が制作した」という固定観念が働いてしまい作品がある種特別な物に見えてしまった  

 障害のある人の作品を福祉施設で見たという人が一番多かった。 作品と本人が制作する現場の両方を見ることができるので、作品自体に対する評価と、制作する姿勢などに対する感想や意見がでていた。また、作品の見せ方に工夫を求める声があった。

 展覧会をみたひとの感想  43名

良かった点

* 面白いものかくな、と思った。

* 見ていて楽しい作品が多かった。

* 障害の有無を感じなかった。  

* 作品を通して障害者のことを考える機会を与えてもらった。   

* 個性がよく出ていて、何か迫ってくるものがあり、絵が、言葉になっているような感じ。

* 一般の人達以上の素直な表現方法が上手だと思う。  

悪かった点

* 芸術に障害の有無は関係ない。

* 情報が少なかった。

* 額装がきちんとされていなかった。

* 障害者の作品を通常の芸術作品を鑑賞する視点で評してはいけないのでは?

  本人の顔や制作現場が見えない展覧会は、作品自体に対する意見や感想がほとんどで 、制作する姿勢などについては、ほとんどふれていない。

 TVでみたひとの感想  38名

良かった点

 障害の有無に関係なく芸術としての完成度だけが評価の対象になっていたのが良かった。

*  一生懸命さがスゴイ良く伝わってきた。

* 障害があるのに頑張っていてすばらしいと思った。パフォーマンスもとても良かった。自分 にはないものを持っていると思った。

* インタビュ−のシーン等もあり、実際の生活している姿と舞台上での様子が交錯して感動した。

* 体にマヒがなくても、絵を描くというのは、難しいのに口に絵筆をくわえて一生懸命描いている姿を見て心を打たれた。奥さんと一緒に協力しているところが印象に残った。

悪かった点

 TVの場合どうしても障害にスポットをあてすぎる。

 パンダにされている。

 障害のある人の作品ということを前もってしらされることで、一般の芸術作品と条件がことなってしまうところ。

* 障害者が作った、描いたということを強調しすぎるのは逆差別の気がする。

 TVはストレートに伝わりやすい。 直接本人や作品に接していない分、プロデュ−スの仕方によって出てくる意見がかわってくる。

 コンサートなどの舞台をみたひとの感想  14名

良かった点

* 障害者として何か感じるものがある演奏ではなく、「アーティスト」ととしての演奏だった。

* 障害のある人とない人が一緒になってやっていた。

* 自己表現意欲の高さに驚き、健常者の感情教育のあり方について考え直す契機となった。

* 片腕にもかかわらず素晴らしいパフォーマンスを披露してくれたのが予想外というか、 期待以上のものだった。

* 不思議な雰囲気の舞台だった。

* 聴覚に不自由があるひとも楽しんでいた。

悪かった点

* あるイベントコンサートの優勝者は視覚障害者のチームだったが、同情票ではなく本当の実力なのかなと思った。

* 手話があまり目立たなかった。(手話の歌手グループ)

 コンサートなどの舞台は、芸術を通して直接、本人に触れる事が出来る為、障害の あるひとに、一人の人間として、またアーティストとして、共感したというような 意見が多く見られた。


 今までに障害のあるひとと交流したことのある人  61%  

* 自分の身近な人として 42%

* 一般的なボランティアとして 24%

* 芸術系のボランティアとして 7%

* 芸術系(学校の)教員として 2%

* 芸術系(学校以外の)講師として 1%

* その他 25%

(具体的に)小学校の時のクラスメート。 ・小学校の頃特殊学級に遊びにいった。 ・特殊学級の子と登校班が一緒だった。 ・保育園が障害のある子の保育園と交流を持っていた。 ・学校で施設と交流する機会をもうけていた。 ・中学の部活が一緒。 ・高校の課外授業 。・バイトの仕事仲間、お客として。 ・社内に一緒に在勤。 ・演劇をみてもらった。 ・教育免許の実習。

など、学校を通じての交流がとても多い。 また、自分の身近な人に小学校の同級生をあげる人もいた。

 交流する上で難しいこと  

* 経験があまりないので交流に不安を感じる 30%

* 忙しくてその時間を持てない 21%

* 施設以外で出会うきっかけがない 18%

* どこでボランティアや講師を募集しているのか分からない 11%

* 施設が遠い 6%

* 職業としてかかわりたいが求人がない/職がない 1%

* その他 3%

(具体的に)意思疎通の難しさと、本人が望む以上に過保護になりそう。 * 資格を持っていない。 * 中学の時いたずら電話が毎日あった。 * コミュニケ−ションでの不安。 * 知識が不足な為、失礼をするのでは、という心配。 * 関わり方がわからず相手を傷つけるのでは、、、。 * 自分が障害を理解できるのか不安。 * 無責任にならないで、続けるとすれば難しい。(正面から向き合うとなると、忙しくてできるかどうか、、、) * 子供に障害があり時間を取られる.時間が合えばやりたい。 * 自分の気持ちにゆとりがないと正面から向き合えない. * 中途半端な気持ちで交流するわけにはいかない。

コミュニケーションでの不安を訴えるひとがとても多かった。


 今後、機会があれば障害のある人と交流を持ちたい人  61%  

* 芸術系のボランティアとして 20%

* 一般的なボランティアとして 18%

* 自分の身近な人として 17%

* 同じアーティスト同士として 14%

* 芸術系の講師として 6%

* 芸術系の教員として 3%

* 福祉の職員として 1%

* その他 3%

 


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