主人と二人で登山用の靴とリュックで装備し、くるまで中腹の駐車場をめざした。しかし、道は途中で雪に消え、道の先端部には縦列で数台の車が止まっていた。「他にも来てる人がいるんだな」とおもいつつ、苦労して車を方向転換し(道幅が狭い)、道の先端に縦列で止めた。
そうしているうちに、人が降りてきて、あいさつを交わす。上のほうも雪がだいぶ残っているらしい。 |
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さあ、と雪の上に歩き出す。雪はシャーベットを固めたような雪で、雪の上に青森椴松やヒバの芽のさやが点点と敷き詰められている。日陰で雪がまだ硬く、ほとんど沈まない。しかし、一歩ごとにズルっとし、踏ん張りがいまいち。
駐車場までくると、まだまだ残雪多く、たとえ道が登ってこられてもとても止められない状態だった。
ここで木の枝を拾い、杖の代わりにして雪の上をざく、ざくと歩き出した。 |
道はずっと雪。途中、日当たりの良いところではすっかり土がかおを出してはいるが、ほとんど雪に覆われている。大きな赤松が根元から裂け、道に横倒しになっている。道はあちこちで倒木や裂けた大枝にふさがれ、今年の積雪の多さを痛感した。
木々はほとんどがまだ茶色の立ち枯れ色のままだが、なかには鮮やかな輝緑色に芽吹いてるものもあり、見晴らしいのいいところでは、ちかくの低い山がうっすらと黄緑に色付き、所々で桜のピンクがにじんでいるのが見えた。空気もほのかに霞んでいる。 |
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中間の見晴台で昼食を取った後、どうしようか迷っていたのだが、頂上を目指すことにした。この先にかたくりやエンゴサク、キクザキイチゲなどの群生地がある。
数年前の落盤ですっかりさまを変えた、小さな湿原地帯は雪解け水で水かさも増し、せせらぎをあちこちで作っている。まだ雪が傘のように水に覆い被さっているところもあり、空気もひんやりと冷たい。
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そこを抜けると、もう雪で道がすっかりなくなり、山の斜面を前に行った人の足跡と、自分たちの方向感覚で登っていく。ぶなの樹に、赤いシルシがあり、そこが多分遊歩道だったところの側。しかし、道はもともと狭く、そのうえ雪の斜面となっているので、登りにくい。雪下にはぶなの落葉があり、ぬれてすべる。 |
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お花畑のあるところへつくと、日当たりの良い斜面なので、所々雪が消え、ぽつり、ぽつり、とキクザキイチゲ、えんごさくが咲き出していた。かたくりもまだ硬いつぼみを持ち上げている。
お花畑も息をのむ美しさだが、枯葉の間からそっと芽吹いて咲いている花も風情があっていい。
目の前をひらひらと、枯葉かと思ったら、ヒメギフチョウだった。あげは蝶を小さくしたような色合いで、かたくりやみつばさいしんの蜜を吸う、期間限定、1年でもほんの限れたときにしか会えない蝶だ。
出会ったのは何年振りだろうか。綺麗だ。まさに早春の妖精。
写真を撮っている男性にあい、話をする。今日は頂上までいける、との事。実はこの山、みんなが良く行く遊歩道の最終地点は、電波反射版のあるところで本当のピークではない。本当のピークは歩きやすい頃になると笹薮に覆われ、道もなく、残雪の上を歩けるじきでなくてはいけないのだ。 |
だいぶきつい斜面を、木の枝にすがり、手も足も使って登っていく。ようやく尾根に出、まずは反射版のところで一服、コーヒータイムを取った。ここからはとても眺めが良く、青森市内が一望できる。いつもは高いと思う反射版がすぐ近くにあり、まだ積雪量は2メーター近い。ゆるい斜面なので、滑らないように気をつけて腰を下ろした。
さて、あとは尾根伝いに、いったんわずかに登って、下って、山をひとつ越えたところが本当の山頂だ。 |
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林間から差す光を浴びてざくざくと進む。小さい樹はまだ雪ノ下にてっぺんのこずえが埋まっているので、Uの字をさかさまにしたように立ってる。そのせいで見晴らしが良いところがあった。耐え切れずにこずえがばっさり裂けて落ちているものも多い。
ぶなの樹の根元は深い穴になっていて、樹の周りから雪が解けていくのが判る。動物(うさぎ?)の糞があちこちに見られる。
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小さな高低を越すと、ピークに到達。本当はこの雪下に、祠があるらしい。
すぐ側の樹にきつつきの開けたと思われる穴を見つけた。夏の間はここには人もこないので、子育てには良いのだろう。もっと暖かくなって登ると、きつつきが樹をつつく音が響いていたが、確かにいるんだなぁ、とうれしくなった。東岳の山は東にずっと山塊が続くので、野生動物も多いだろうと思う。くまだっていそうだ。山頂のそばでとても大きい樹のうろを見つけた。ナにかが削った後があり、足跡らしいものもあったが、獣の毛は見つけられなかった。最初は熊の穴かと思って、どきどきした。この西斜面は一面の笹薮だから、熊には良い場所だと思う。 |
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きつつきの穴? |
ついに念願の山頂にも立ち、日も傾き出し、下山することにした。
雪で登るとき以上に滑り、なかば滑るようにして降りていったが、途中でパパがバランスを崩し、足を下にして滑ってしまった。ちょうど、5メートルくらい下にあった、ぶなの樹の根元にすっぽりはいり、滑落はとまり、難を逃れた。同じところを注意して降りていったが、浅い雪ノ下に濡れた落ち葉があり、やはり、ちょっと滑ってしまった。多分、もっと早い時間なら、雪が凍っていて大丈夫だったんだろう。
ゆっくり、気を付けながらこの先を下っていった。 |