読み方の技術

裏ワザ編
32 サブカルチャーを読むヒント

 サブカルチャーとは、社会全体の総体的な文化に対して、副次的な文化を指します。ある年代や集団に固有な文化であり、一般的な文化とは交わらずに、独自の成長と発展を遂げるものと、考えれば良いでしょう。下位文化と訳されることもあります。
 1960年代のアメリカでは、社会からドロップアウトした若者たちが、LSDやマリファナなどのドラッグに溺れ、禅に代表される東洋の神秘思想に傾倒し、愛と自由を声高らかに歌い上げました。映画『イージー・ライダー』の世界です。
 既成の社会の枠組みに疑問を抱き、倫理に対する反逆を試みました。国策として推進されるヴェトナム戦争への反戦運動(従軍拒否)や、キリスト教のモラルである一夫一妻制に対するアンチ・テーゼとしてのフリー・セックスなど、まさしく一つの文化でした。
 それが片隅に咲いたままであれば、サブカルチャーは注目されなかったでしょう。音楽や芸術の世界を中心に、60年代のアメリカの若者が提唱した文化は、世界全体で従来の価値観に風穴を開け、新しい文化を形成する土壌を耕したのです。
 価値観の多様化が急速に進展する時代状況で、すべてのサブカルチャーは、ポストカルチャーの可能性を秘めています。既成の価値観が有効性を失っていくなかで、従来タブーとされていたものが、フラットな視点から捉え直されようとしています。
 サブカルチャーを読むには、現象に惑わされることなく、本質に迫ることが肝心なのです。同性愛に眉をヒソめるのでなく、愛の根源を問うことが大事です。暴力を道徳的に排除するのではなく、なぜ強さに魅かれるのか、洞察することが必要とされるのです。

・ 未知の世界を覗いてみよう
 世間から認知されていないエリアには、危険な匂いがするだけでなく、ワクワクするような新しい発見もあり、人生観が根本から覆されます。先入観を持たずに接すれば、本当の自分と出会えるかも知れません。素直な気持ちで飛び込んでみましょう。

・ アウトローの魅力とは何か
 一般社会では受け入れられない人たちが、舞台の中央でスポットライトを浴びるのも、サブカルチャーの特長の一つです。犯罪者や脱落者と烙印を押されながら、なぜキラキラ輝いて見えるのでしょうか。自分の心と共鳴する部分に、深くこだわることです。

・ メッセージは届いているか
 耳に聞こえる音楽より、その奥に秘められている魂の叫びに、ジックリ耳を傾けることです。世の中の基準から外れていても、心で感じることができるから、文化として向かい合えるのです。自分とサブカルチャーを繋ぐ絆を、自分自身の中で確かめましょう。

・ 異端の系譜を追ってみよう
 私たちの心の奥深いところには、暗く陰湿なものが隠されています。人間は、同族を殺せる生きものなのです。罪深い存在です。昼間の世界から追放された真実を見据えて、悲しさや切なさもわかったうえで、ポジティブに人間を信じることが大切です。

 自分が置かれた状況から世界を見るだけでは、逆境に追い込まれたら一歩も進めないでしょう。イマジネーションを最大限に働かせて、世界の果てまで探検してみましょう。

  
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