読み方の技術

上 級 編
28 政治や経済の動きを読もう

 ひと昔前ならば、アメリカがくしゃみをすれば、日本が風邪をひきました。1960年に結ばれた日米安全保障条約により、日本は経済大国への道を邁進すると同時に、アメリカの極東戦略の前線基地と位置付けられました。泣いた人も笑った人もいます。
 日米安全保障条約をどのように評価するのか、置かれた立場や状況によって一言では語れないでしょう。しかし、こうした政治的決断が、日常生活に影響を及ぼしていることには、誰も異論を唱えないでしょう。私たち日本人の問題であることは確かです。
 TVニュースや新聞報道で、国会での質疑応答の記事に接しても、自分に関わりのある問題と思えず、他人事として見過ごしてしまいがちです。力の論理だけで離合集散を繰り返す政党政治や、私利私欲にまみれた政財界の癒着に、嫌気がさすのも事実です。
 それでもなお、私たちは政治を見つめていかなければなりません。国政レベルだけでなく、県政や市政の政治的判断に、YesなのかNoなのか、旗幟鮮明に掲げることが必要です。日本という国に住む当事者として、政治の動きに関心を持ちましょう。
 政治の流れを追うことは、経済の流れを掴むことです。公共事業の大幅な修正予算が組まれたら、建築や土木関連企業の株価が一挙に上がり、景気が上向きに推移するかも知れません。焼け石に水で終わる可能性もあります。どう読むのかがポイントです。
 東西冷戦の時代は終わり、バランス・コントロールの難しい国際情勢の中で、政治と経済の動きを把握するには、ますます複雑な要素が絡み合っています。自分のポジションをどこに移せば最適か、さまざまなシミュレーションを展開してみましょう。

・ 日本の政治を読む
 イニシアティブを握る政党と官僚の意思をチェックして、どのようなビジョンを描いているのか確かめましょう。地方政治でも、知事や大都市の市長たちの構想が、自分たちの生活とどう関わるのか考えましょう。自分にとって暮らしやすい国をつくりましょう。

・ 日本の経済を読む
 産業構造や市場の変化をデータで捉え、財界のリーダーたちが向かう針路を、こまめに情報収集することが前提です。新商品の開発や企業グループの再編成の動きも、シッカリと頭の中に入れておきましょう。自分の仕事との関わりの中で捉えましょう。

・ 世界の政治を読む
 歴史的、民族的、宗教的な背景を理解して、それぞれの国のパワー・バランスを計算することです。ユーロー圏とアセアン諸国のように、グループ化する方法もありますが、独立した国家には固有な価値観があり、総体として捉えるには無理があります。

・ 世界の経済を読む
 多国籍企業の戦略とアジア・アフリカ諸国の革新が、世界経済の流れを決める重要なポイントでしょう。有限の資源をどのように活かすのか、通信や情報のシステムをどう整えるか、エコロジーをどう捉えるのか、いくつかのキーワードを掘り下げましょう。

 政治や経済の動向を読むことは、仕事でイニシアティブを握るために、必要不可欠なテーマと考えましょう。他人事と考えていたら、取り残されてしまいます。

  
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