中 級 編
18 著者の系統で追いかける

 どのような本にも、それを書いた著者がいます。組織や団体の名であっても、内部で意見が調整され、執筆者が実際に文章を綴り、一人の著者と同じように機能します。連続した表現の主体であり、情報発信のベースとして、捉えられるという点では同じです。
 提示するテーマやジャンルが異なっても、著者は独自の視点とノウハウを持ち、自己表現のスタイルも確立されています。主張する意見に筋が通っているのは、同じ価値観からものを見たり考えたりしているからです。読者の著者に対する信頼が生まれる背景です。
 著者の人生に衝撃が走れば、価値観が180度転換することも、決して珍しくはありません。私たちの人生でも、会社に雇われていたときと、独立して会社を経営したときでは、仕事に対する考え方は、まったく違ったものになります。同じ人の考え方と思えません。
 だからといって、どちらかがウソというわけでもありません。それぞれに、そのときは真実だったのです。どのように評価するのかは第三者の問題と、割り切らなければ生きていくことはできません。著者と著作物の関係も、同じように理解することです。
 ものの見方考え方や文体が気になる著者は、しばらく追いかけてみるのも良いでしょう。文学者や芸術家の実人生と作品は、微妙に揺れながら影響を及ぼされ、お互いに深く関わり合っています。実際に付き合うような感覚で、著者を追えば理解できるでしょう。
 中途半端に追いかけるなら、著者に対する判断は下さないほうが賢明です。50冊の著作のうち、たまたま読んだ数冊で著者全体を捉えるのは、情報不足で危険と考えましょう。基本的には1冊の著作物として判断し、追いかけるなら徹底的に読み尽くすことです。

・ 著者の論理を追いかける
 本に表れている価値観を背景にして、ものの見方や考え方を体系的に捉えましょう。自己啓発書のようなジャンルでも、仕事や人生に対する考え方は、鮮明に浮かび上がってくるものです。まして思想や文学であれば、論理を認識することで理解は一層深まります。

・ 著者の感性を追いかける
 シチュエーションに対して、著者がどのように感じ行動するか、系統立って読んでいくとわかります。著者に対する共感は、自分自身の感性の発見にもなります。感情移入して読むほど、喜怒哀楽のパターンは増えます。繊細な神経が養われます。

・ 著者の文体を追いかける
 文章のスタイルは、著者の人格に似ています。疲れたときにページを開くと、心身が癒される著者を見つけましょう。仕事で落ち込んでいるときに、読めば元気が湧いてくる著者もいます。文章や内容ではなく、自分に心地よい著者と出会えた人は幸福です。

・ 著者の人生を追いかける
 一人の著者を徹底的に追いかけていると、著作物だけに関心はとどまらず、どんな人生を送ったのか気になります。他の著者が書いた評論やエッセイを手がかりに、トータルに著者の人生を捉えても、おもしろいでしょう。自分自身の人生のヒントが潜んでいます。

 ジャンルによっては、講演会やセミナーなど、著者の肉声に触れるチャンスもあります。マナーをきちんと守ったうえでアクセスすれば、学べることは決して少なくないでしょう。

NDEX TOP