中 級 編
17 速読の技術に頼らない

 本を読むという行動は、視覚で捉えた情報を、脳で判断して理解します。知識や情報を記憶として蓄積することも大事ですが、目で情報を認識しなければ、読むという行動は始まりません。このスピードが速くなれば、たくさんの本が読めるということになります。
 目で情報を捉える原理は、カメラでピントを合わせるのと同じです。網膜の中央部に映し出された文字群を、意味のある文章として認識します。このとき記憶のメカニズムにより、生理的に捉えていない文章でも、脳の内部で理解されていることがあります。
 目が文章を追っているとき、自動車が高速道路を走っているように、滑らかに進んでいるのではありません。文章を捉える「停留」の時間と、次の文章に進む「移動」の時間が、瞬時に繰り返さるのですが、停留の時間が95%を占めているといわれます。
 一般書を読むときの速さは、毎分300字から800字ということです。
速読の技術を身に付けると、毎分1,000字以上は読めるそうです。眼球運動をトレーニングして、情報を捉える量を拡大させれば、読む速度は訓練されていくでしょう。
 私どもの仕事では、本を読むことは不可欠ですから、普通の人よりは速く読んでいます。このようなビジネス書であれば、2時間もあれば読み終わります。しかし、速読の技術を身に付けているとは考えません。読書量に比例して、自然に速く読めるようになります。
 大切なのは、速く読むことではなく、深く読むことです。知識量を競うよりも、そこから何を学び、どう活かしたかが重要です。100冊の本を読んで頭でっかちになるより、1冊の本に感動し人生を変えるほうが、はるかに素晴らしいと思いませんか!?

・ 自覚して本を読む
 読む目的を明らかにして、ページを開きましょう。推理小説を読むときなら、事件の謎を解き明かそうと読むでしょう。それだけでキーワードが目に飛び込み、全体の輪郭が鮮明に浮かび上がってくるのです。漫然と読むだけでは、文章が頭に入りません。

・ 集中して本を読む
 気になることがあるときは、本の内容が理解できません。意識が拡散して、文字を目で追うだけになります。デートの待ち合わせが気になって、上司の叱声を上の空で聞いている状態です。気合いを入れて精神を集中させることが、本を読むときには求められるのです。

・ 整理して本を読む
 ドストエフスキーの作品を読んでいると、登場するロシア人の名が覚えられず、肝心要のストーリーがわからなくなります。自分の記憶が怪しいと感じたら、紙にフローチャートなど書いて、内容を整理することが肝心です。勢いで読み進まないほうが賢明でしょう。

・ 本を読んで考える
 次々と新しい本を読むより、適当にインターバルを開けて、考える時間をつくりましょう。小説や詩歌であれば、余韻に浸る時間が欲しいのです。本を読むことは、自分の人生に付加価値をつけることであり、豊かに実らせることです。主客転倒しないことです。

 「人生は短く、読む本は多い」と、嘆きたくなる気持ちはわかりますが、せっかく1冊の本と出会ったのですから、その縁を大切に育てたいものです。

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