中 級 編
15 思想哲学を読むポイント

 思想というと「東洋思想」をイメージし、哲学というと「西洋哲学」を思い浮かべます。何れにしても頭の痛くなるような難しい文章で綴られ、仕事にも人生にも関わらない種類の本と考えられています。大学の研究室だけで読まれている印象です。
 実際に、書店でコーナーを覗くと、四字熟語のオンパレードです。『純粋理性批判』『存在と時間』『存在と無』『論語』『中庸』『孫子』など、手に取る前に万歳したくなるタイトルです。ページを開くと、漢字の隙間にひらがなが、わずかに残されています。
 翻訳や用語の問題もあるのでしょうが、確かに思想書や哲学書は、馴染みにくいジャンルです。難しければ難しいほど値打ちがあるような雰囲気を、送り手も意識しているようなところがあります。選び抜かれた読者だけが手にする本と、割り切っているのでしょうか。
 哲学書や思想書の基本的なコンセプトは、自分の存在と世界を明らかにすることです。思考する人の立脚点や価値観によっても違いますし、世界を捉える方法論や視座によっても異なります。内部で体系化されていることが、千差万別に表されているのです。
 そのうえ、思想や哲学を支えるものは、思考に対する絶対的信頼です。自分自身の世界を形づくるために、誰も聞いたことのない言葉を生み出し、独自の論法で定義付けようと試みます。双方向のコミュニケーションに慣れた私たちには、強靱な壁に思えます。
 しかし、こうした思考のパラダイムが、さまざまな発想に影響を及ぼし、私たちの意識を決定しているのも確かです。思想書や哲学書を噛み砕き、平易に説かれたものに、私たちは感動しているのです。ときには原典に触れ、自分の感性で確かめましょう。

・ ゆっくり時間をかけよう

 言葉づかいが難しいのは、それだけ悪戦苦闘している証です。一つの言葉にたどり着くにも、さまざまな角度からアプローチして、厳密に意味を絞り込もうとします。抽象的な概念であるほど、表意文字である漢字を使うと、意味が重複してわからなくなります。

・ 理解できるまで読み直そう
 文章は著者の意思を伝えるとともに、時代の価値観を表します。西洋哲学を理解しようとするなら、キリスト教の神の概念を、欧米の知識人がどう受けとめていたか、踏まえなければ先には進めません。そうしたことも学びながら、何度でもジックリ読み直しましょう。

・ 入門書や解説書を使おう
 翻訳書でも明治初期のものと現代のものを比べると、はるかに読みやすくなっているのは事実です。難しいテーマであれば、最初に入門書や解説書を読んで、レールを敷くという方法もあります。難しい内容を平易に書ける人が、コンセプトを理解しているのです。
 
・ 思考のパラダイムを学ぼう
 著者それぞれの世界観や人生観を体系化する思考のパラダイム(枠組み)を理解して、自分自身のものの見方考え方に応用してみましょう。合理的に問題解決しようとするときに、ヘーゲルやマルクスの弁証法は未だ有効です。そうした技術を身に付けることです。

 思想や哲学の本は、実に含蓄のある言葉に溢れています。その意味は深く、人生や仕事について考えさせられます。とくに中国の古典は、読んでおいたほうが良いでしょう。

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