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10 自己啓発書を読むポイント

 ビジネス書の中でも、個々の自己実現をテーマにしたものが、自己啓発書と呼ばれるジャンルです。仕事のうえでの成長や、人生設計に対するアドバイスが、自己啓発書の主要なテーマになります。人間くさい内容が特長といえます。
 ビジネス書のもう一つの流れが、ビジネス実務書と呼ばれるジャンルです。経理や人事などの実務的ノウハウを、わかりやすく解説した本です。情緒的な面を抑えて、スキルの習得にウエイトが置かれています。
 それに比べて、自己啓発書は、個人の心の問題に、鋭く踏み込んだ内容の本です。心理的側面からアプローチしたり、感情的な共感を目的としたり、人生論の要素が強いジャンルです。24時間が、すべてテーマになるといえるでしょう。
 会社という組織が個人に求めるものは、技能や能力の切り売りではなく、全人格的な関わりの意識です。実際に、組織の幹部に登用されるには、実績を残すより、人格を認められることのほうが重要なのです。人間の器量や魅力が話題にのぼります。
 そうした要請を受けて、いかに生きるのかを、具体的に説いているのが自己啓発書です。独立開業やベンチャービジネスを含めると、職業人の人生論と位置付けられるかも知れません。組織の内外での人間関係がキーポイントです。
 自分の未来像をイメージして、人生のヒントになる本を探しましょう。上司や先輩から話を聞くスタンスで、心をラクにして読めば良いのです。その道のエキスパートの考え方を、自分のペースで学べるのですから、自己啓発書は読まなければ損です。

・ 問題意識を絞り込もう
 自己啓発書のテーマは幅広いので、方向性をセグメントしなければ、自分が読むべき本と出会えません。何がやりたいのか、どこへ行きたいのか、よく考えましょう。真剣に悩んでいるときほど、道を開くヒントが得られます。1行の文章に心が震えます。

・ 著者との距離を測ろう
 メッセージの送り手の知識や経験を、自分というフィルターを通して、きちんと受けとめることが大切です。すべてを正しいと鵜呑みにすることも、批判的に斜に構えて向かい合うことも、自分を成長させる態度ではありません。謙虚な姿勢で読みましょう。

・ 想像する感性を磨こう
 描かれている情景を、自分の現実に置き換えて、イメージしましょう。左遷や降格の悲哀や、抜擢や成功の興奮は、シチュエーションは違っても、理解できる性質のものです。そうした想像力を働かせなければ、自己啓発書のテーマはわかりません。

・ 人生の奥行きを知ろう
 さまざまな人生があり、それぞれの喜びや悲しみがあります。1冊の本を書いた著者には、心の葛藤と伝えたい真実があります。真正面からぶつかれば、人生の一端を垣間見ることができます。自分自身を深化させる意識で読むことが大切です。

 自己啓発書は、自分を高めるための本です。今より一歩でも遠くへ進もうとする気持ちが、読書を人生の財産にして成功へ導く鍵となるのです。

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