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9 ビジネス書を読むポイント

 ビジネス書という分類は、『日本十進分類法』の中にはなく、元々は法律書と経済書をあわせた法経書というジャンルで、書店に陳列されていたものです。その当時は専門書の色彩が濃く、大学の教科書や官公庁のテキストとして読まれていました。
 高度経済成長の時代背景を受けて、一般大衆がビジネスの当事者になり、それぞれの立場で深化することが求められ、このジャンルに入門書や解説書が数多く登場しました。この入門書や解説書が周辺の書籍を巻き込み、ビジネス書として成長してきたのです。
 そうしたプロセスを踏まえ、法経書と呼ばれる専門書と、ビジネス書と呼ばれる一般書は、同じテーマを扱いながら一定の距離を保っています。学術的な立場で貫かれた法経書に対して、ビジネス書が立脚するのは、あくまで実務的なビジネス現場です。
 このことは、書店でビジネス書売場を覗けば、すぐにわかります。そこに陳列されている本の共通点は、サラリーマンの仕事に関わるテーマです。会社の視点で書かれたものも、社員の視点で書かれたものも、サラリーマンの仕事にアプローチしています。
 それぞれの業界に固有なテーマも、全般に共有できるテーマも、ビジネス書の棚に揃えられていますが、何らかの形で仕事に役立つ本が、ビジネス書と位置付けられるでしょう。逆な言い方をすれば、仕事に役立たない本は、ビジネス書として価値がないのです。
 自分の置かれた立場や状況に応じて、具体的でわかりやすい本を選びましょう。タイトルや目次からターゲットを判断して、自分のレベルにあわせて読めば、ビジネス書には仕事のヒントが溢れています。年代や肩書で背伸びをしないことが肝心です。

・ テーマの方向性を読む
 キーワードが同じであっても、組織論として書かれたのか、個人の対応策を説いたのか、それとも業務の解説書なのか、内容はまったく違ってきます。自分は何を知りたいのか、問題意識をセグメントしてから、本を選定しないと期待外れになりかねません。

・ 読者階層を誤読しない
 リーダシップを説いた本でも、経営者に向けた本と、現場の部課長のために書かれた本では、展開もシチュエーションも異なります。二〇代と四十代のサラリーマンでは、肩書は同じでも課題は違うのです。どの読者層に向けられた本か見極めましょう。

・ 仕事との関連を考える
 経理の立場で読む経理の本と、営業の立場で読む経理の本は、同じ本ではありません。入門編から応用編まで、それぞれのレベルにあわせて、さまざまな本が刊行されています。無理をしないで、わかりやすい本を選んだほうが賢明でしょう。

・ 執筆者の立脚点を知る
 奥付の著者略歴に目を通して、守備範囲を推測することが肝心です。官僚出身の著者と経営者の著者では、仕事に対する認識が違います。どの業界の人なのかも、微妙に影響を及ぼします。すべての産業を知り尽くしている著者は、いないものと考えましょう。

 自分の関わっている仕事についてのビジネス書から読み始め、だんだんとエリアを広げていけば良いでしょう。わかりやすさを判断基準にしましょう。

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