初 級 編
5 読書カードをつけてみよう

 1冊の本を読み終えたら、そのままにしておかないで、記録することが大切です。途中であきらめた本も、メモを残しておけば、貴重なデータベースになります。大学ノートを使うより、ルーズリーフかカードで記録したほうが、ファイリングしやすくなります。
 書名・著者名・出版社名を最初に書いて、内容や感想のポイントを添えましょう。論文やエッセイを発表するわけではないのですから、形式や表現にとらわれずに、思いのまま自由に書けば良いのです。再読することもありますから、余白は残しておきましょう。
 読み始めた日と読み終わった日を記録しておくと、1冊の本を読むのにどれだけ時間がかかるのか、自分のペースを把握して読書計画も立てられます。四六時中、机に向かっているわけでないのは、どんな状況のときでも変わらないでしょう。
 読み切れなかった本は、その理由を書いておきましょう。次の本を選ぶときに役立つばかりでなく、自分の追いかけるテーマの幅を、具体的に絞り込んでいけます。あまり詳しく書かなくとも、要点をチェックしておけば、記憶がよみがえってくるものです。
 読み通した本についても、最初のうちは「おもしろかった」とか、「よくわからなかった」とか、簡単な感想で構わないのです。読書カードのファイルをめくっているうちに、「どこがおもしろかったのだろう?」と、自然に疑問が湧いてくるから心配無用です。
 そうすると、読み方が変わってきます。読みながら考えるようになり、メッセージを深く読み込めるようになります。それぞれの本のオリジナリティを識別して、自分なりの判断基準で消化吸収できる日も遠くないでしょう。読書がますます楽しくなります。

・ 時系列でファイリング
 本を読み終わった順に並べておくと、ものの見方考え方の移り変わりが、手に取るようにわかります。自分の置かれた状況で、選定基準が異なるのです。仕事の内容によっても違いますし、追い風のときと向かい風のときでも、読みたい本は変わってきます。

・ テーマ別にファイリング
 読んだ本のテーマを、自分の判断基準で分類して、並べ替えてみましょう。本屋さんの棚分類に従うのではなく、仕事とか趣味とか、ライフスタイルに沿って分けたほうが、人生のビジョンを描くときに役立ちます。年代によっても、テーマは変化するものです。

・ 再読して感想を比べよう
 同じ本を読んでも、1度目と2度目では受け取り方が異なります。ときとしては180度違う印象を持ち、驚かされることも珍しくありません。成長であるのか、退行であるのか、自分自身の胸に手を当て、考えるチャンスと喜べば良いのです。

・ 自分の言葉で記録しよう
 読書カードは、純粋に自分のためのものです。他の人にわからせようとか、よく思われようとか、よけいなことを考える必要はありません。ツマラないと感じたら、「くだらない」と書いても差し支えありません。素直な気持ちをストレートにぶつけましょう。

 本を読むことは、自己完結化した目的ではなく、あくまで自分を成長させる手段です。読書というプロセスを、血肉化することが肝心なのです。

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