創成期のTOEIC

以下の記事は私が20数年前にTOEICを申し込んだときに同封されてきた朝日新聞のコピーです。私はこの記事を読んで,TOEICは「英検」=旺文社,「国連英検」=講談社と同じ関係にあると思っていました。今でも朝日新聞系のアエラがTOEICを盛んに取り上げたり,公開模試の日程が朝日新聞に載るのを見ると,そういう関係が存在していると思いますが…

この当時の受験生にはTOEICを何回も受験するとか,TOEICの対策を立てるという意識はなく。ただ,素朴に自分の英語力を測ろうと思っていただけのように思えます。数年に1度受験するとか,ましてや1年に何回も受験するなんて思いもよらなかったでしょう。TOEICの運営委員会もそういった「REPEATER」の生まれるなんて想像していなかったと思います。現在ではそのREPEATERによってTOEICが隆盛しているようです。それから,当時の公開受験はかなり英語学習意識の高い人たちによって支えられたと思います。なんだかわからない英語検定試験に挑戦するんですから,ほとんど「オタク」だったと思います。(私を含めて)

1980年(昭和55年)3月3日 朝日新聞より

700点なら「通用する英語」TOEICの初テスト


高得点の「海外経験」組 実用能力はかる尺度に


あなたの英語は外国人と話した時にどのくらい通用するか---というテストが、米国の権威あるテスト機関によって、日本で初めて行われ、その結果がこのほどまとまった。テストの名は国際コミュニケーション英語テスト(TOEIC=トーイック)といい、留学生用テストとして有名なTOEFL(トエフル)と並んで、こちらは実用英語能力をはかる世界的な尺度として今後急速に受験生がふえそうな情勢だ。日本での試行を皮切りに、トーイックは近く世界各国で行われる予定。

 日本での第一回テストは昨年12月2日、東京2会場、札幌、名古屋、大阪、福岡各1会場の計6カ所で行われた。出願は3150人、このうち2773人が受験した.

 テストは留学生用トエフルを行っているETSという機関がつくった.テーブに吹き込んだ会話や語りを全会揚で一斉に放送するのを聞きとってマークシートに記入していく「聞きとり」が45分、問題用紙の英文を読んで解答する「読みとり」が75分の計2時間。成績は平均点578・O点、最高950点、最低45点、標準偏差167・01点だった.

 受験生のうち学生生徒は512人。内訳は大学生369人、高校生と外語学校生各45人、大学院生26人、短大生22人その他。

 この得点成績は2月初めに各受験生に送られたが、次にはこれをABCDEの評価に直して送られる。Aは「ほとんどすべての話題について一正確に話し合える」、Bは「多くの話題についてかなり正確に」、Cは「限られた範囲の話題なら話し合える」、Dは「極めて限られた範囲だけ」、Eは「まだムリ」という表示になる。これを機械的に点数で区切るのではない。裏づけ調査として、受験生の中から500人に「トエフル」の試験、350に英文書かせ、250人に面接して英語で答えさせる。それらを関連させながら、どの点数ならどのランクに当たるかをこれからはじき出す。

「まだその作業中ですが、大ざっばな感じでは、700点あたりが通用する英語という線になるんじゃないかと思います。800点なら黒帯という感じ」日本のトーイック運営委員会事務局長、伊東顕氏はそういう.

 合格ラインの人を1人選んでもらった。日大国際関係学部2年、春原祐子さん。聞きとりが370点、読解が330点で計700点ちょうど。パーセンタイル順位は74.6%.つまり受験生の74.6%が祐子さんより下の成績になる。「高校三年生の一年間を米国の高校に留学、そこを卒業しました。友人との日常会話ならできるが、本を読む時、まだ語いが不足でした」

英会話学校でマネージメントの仕事をしている村越秋男さんは外人教師休講の時は代講を務めるくらいだが、この人が865点.

「個人的な興味から受験してみた。校内にもテストの案内書を置いておいたら、短大とかけもち通学している子が一人受けて600点くらいだったといっていた。その子は英検二級の力は十分あり、クラスでは『中の上』か『上』といったところです」

全体の得点を性.別、職業別、会社内での仕事別、学生生徒は学校種別、さらに「海外滞在六力月以上の経験の有無」別などで分類した表もできている.

例えは商社マンで「海外経験あり」は平均704点、「経験なし」は572点、学生生徒で「海外経験あり」は740点・「経験なし」が533点、外国語学校の先生は「経験」組が778点、「なし」は650点。

いろいろな企業を横断的に職場の種類でわけると海外(平均628)経営(605)などの部門が高い。

団体受験をしたところは企業が35社、外国語学校などが六校。企業の場合は海外へ.派遣して仕事ができるかどうかの一つの目安に今後このテストを使いたい気持ちが強く、外国語学校の場合は自校の生徒の水準を測り、今後の教授法の参考にしたい意味で試験的に受けさせたこころもあるようだ。

事務局では受験生の増加を見込んで近い将来、仙台、横浜、広島にも試験場を及けたい意向。

1981年(昭和56年)4月17日(金曜日)

TOEICに挑め

シリをたたく会社

「世界企画」で腕試し

 英語塾に二年余通っている小学六年の娘が、町で外人を見かけて「ひょっとして話しかけられたら恥ずかしい」と小走りに逃げた。日本人の多くが似たような気持ちだろう.学校ではいい成績でも、話すのはからっきしダメ。グローバリゼーションとか国際化といっても、通訳つきでは、ぎこちない。そこで、企業の多くが会話を重視した世界共通規格のテストを社員に受験させているところが多い。その名をTOEIC(トーイッ久)という.(山本昭男記者〕

 

 高知城に展示されている歴史資料の中に、ジョン万次郎直筆のアルファベットがある。それには「エー、ビー、シー、リー……」とのふり仮名。のちに開成学校教授となった万次郎も長い間、米人がそう発音していると信じていたのだろう。英語の方も、きっと土佐なまりで話していたに違いない。

 中近東や東南アジアの人たちもお国なまりの英語で、堂々と演説し、会話をする。恥ずかしがり屋の日本人はただ微笑しているだけ。「これでは国際化に立ち遅れる」と経団連、経済同友会、日本貿易振興会などと通産省がバリクアップしてビジネスマンの実胴英語の力を、トーイックで高めることにした。企業が一括して申し込み、社内の語学研修の成果を問うところがふえてきた。ことしは新入社員全員に受けさせて能力を掌握しようと、電通、佳友信託銀行、大成建設、ミノルタなどが全国テストとは別にトーイックのテストを試みた。また,キヤノン、野村証券、関西電力など百数社が五月のテストに申し込んでいる。

 

日本語抜きの試験

 

 このテストは、「聞く」「読む」の二つに分かれている。いずれも日本語は一切使わない.「聞く」方は、テープから流れる米人の会話やナレーションから、四十五分間に百問もの質問に答え、マークシートに印をつけなければならない。日本人にはかなり早いスピードで質問をあびせられるから、海外生活の経験のない人はとまどうことが多い.

「読む」方は、七十五分間に百問と、こちらもかなりのボリューム。不完全な文章に必要な単語または語句を選んで完成させる問題や、いろんな資料、短文を提示して設間に答えるなど、時間的には到底読み返す余裕がないほど。

千点満点860点以上がAレベルと評価され、「ほとんどすべての話題について英冷え人と正確に話せる」

 

**********中略******

 

B以上の人で希望すれば米人と1時間にわたって個人面接試験が受けられる。あくまでその人の英語力を評価するだけで、合格、不合格とはならない。「トーイックで600点取った」と勤務先に告げれぱ、海外駐在薯員や外国担当に向けられるという例がふえている。

 過去四回のテストで9033人が受け、平均点は538点。海外駐在経験者ばかりの大手商社員23人の平均は652点。某電力会社は274人受験して平均395点。やはり日ごろ英語を使う仕事でないと良い点はとれない。

 

大学の先生でもC

 

 全受験者のうち2割弱の1687人が6ケ月以上の海外生活経験者だた,その平均点は671点。そうでない人たちは508点。また,学生で海外経験6ケ月以上の平均は737点と好成績を残した。大学の英語の先生は平均641点に対し高校の英語の先生は698点で,「大学教授は実用英語に弱い」ともいえる.

 仕事で英語を使っているビジネスマンのうしち,役員の平均は611点,部長637点,課長594点,係長550点,平社員564点,部長、役員の奮闘が目立つが、これは「部長は英語に強い人か多く受験したためでヒラはみんなが受けさせられたから」とTOEIC運営委。

 合格点をもらい、個人面接を受けに来た人たちの話---キヤノン勤務の鹿内周子さん(24)は高校2年から大学を卒業するまでニューヨークにいた.「いまは英語ば接する構会がないので、自分の力がどの程度か試してみたかった」。成績がよかったので英語が使える部門に配転を希望してみたいそうだ。

 

机の勉強ではダメ

 

米大使館勤務の稲垣好子さん(26)も通算八年力ナダとアメリカに在住。「現在の仕事には英語は必要ないが、アメリカの大学卒の英語が日本人の中でどの辺にランクされるかと輿味があって受験した」という。「このテストは、にわか勉強したって点数はあがらない。英語を話す環境の中にいなければ…」

 外国銀行マン(53)は外国に佳んだことも勤めたこともない。勤め先でも英語はあまり話さない、「どんな内容の試験か知らなくて意表を突かれた」。また地方公務員氏(26)は「独学で勉強しているが客観テストで力がついたかどうか評価してもらいたかった」。でも、多くの人が自信を持ったようだ。