「学芸員資格を生かすには」

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学芸員資格を取れば、学芸員になれるの?

資格さえ取れば必ず学芸員になれるわけではありません。

学芸員は、弁護士や税理士のような自営業ではありません。
学芸員の仕事は、ほとんどの場合、博物館や美術館の業務として行われます。
つまり、学芸員は必ずどこかの博物館、美術館に採用されて学芸員となるのです。
多くの場合、採用試験を受け、合格してから学芸員として採用されることになります。

また、学芸員はそれぞれの博物館の専門的職員ですから、要求される知識や能力は、館によって違います。
それぞれの分野に関する豊かな専門的知識が必要になります。
学芸員資格は、全体に共通する一般的な最低限の条件にすぎません。

さらに、博物館の学芸員は学校の教師と違って一つの館に何十人もいるということはありません。
毎年たくさんの退職者が出るわけではないので、採用試験も教員採用試験のように定期的に大規模に行われることはありません。一つの試験にたくさんの応募者が殺到することもあります。

とくに最近は自治体も企業も財政的に苦しくなり、予算カットや人減らしが行われています。
高齢化社会のなかで博物館や美術館の役割はますます重要になっていますが、反対に博物館を取り巻く状況は厳しさを増しています。

このような時期には、どこの館でも即戦力となる有能な学芸員を求めます。

募集にあたって
専門分野を制限したり(例:「ドイツ近代絵画史」「近世の木工芸」など)、
外国語を重視したり(例:「英語のほか1カ国語以上に堪能なこと」など)、
経験者に限定したり(例:「国内外の博物館で5年以上の実務経験者」など)、
学歴を指定したり(例:「大学院修士課程以上」など)…。

これらのことからわかるように、大学院程度の高度な専門知識と能力がないと実際に採用されるのはむずかしいのが現状です。

学芸員資格なんて、役に立たないのでは?

そんなことはありません。資格を生かす条件と方法があります。

学芸員資格を、あなた個人が学芸員になるための資格と考えれば、この資格を生かす機会は確かに多くありませんが、社会全体が博物館の役割をもっと認めてその活動を応援していくために、いま、学芸員資格をもった人たちの力が求められています。

最近では多くの博物館・美術館にボランティアが生まれています。
文化庁も「文化ボランティア」の育成に力を入れています。

文化庁 「ボランティア通信」

学芸員課程で学ぶ内容や経験は、こうした活動に必ず生かすことができます。


また、博物館や美術館の活動は、決して館単独でできるものではありません。

展覧会の開催には、研究者、芸術家、修復家、写真家、画商、輸送業者、印刷業者、ディスプレイ業者、造園業者、広告業者、放送局、新聞社、通信社、ホテル、そして行政職員といったあらゆる分野の人たちの協力が必要です。

これらの職種の仕事のなかにも、学芸員課程で学んだことが十分に生かされる場があるのです。

事実、新聞社や放送局の企画部門には、美術館の学芸員と変わらない仕事をする人がたくさんいます。大きな画廊や額縁屋さんにも「学芸員」の肩書を持つ人がいることがあります。

さらに国宝・重要文化財などの美術品を専門に扱う大手輸送業者の美術部門や、ディスプレイ(展示)業者の企画制作部門などにも、女性を含む学芸員資格を持った職員が配置されています。

そして、地方自治体の文化・芸術部門や教育委員会の文化財部門など、行政職員のなかにも学芸員資格に相当する知識や経験を必要とする職場があります。

学芸員課程で得られる知識と体験は、いまや博物館・美術館だけでなく、ひろく文化芸術分野で活動する人たちにとって必要不可欠なものとなりつつあるのです。

学芸アウル
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