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 なぜ、建設業の許可か?

■ 次の建設工事を請負うには、建設業の許可を受けなければなりません。


  • 建築一式工事
    • 1件の請負金額が 1,500万円 以上の工事
    • 木造住宅工事の場合は、請負金額が 1,500万円 以上
      かつ延面積 150m2 以上の工事

    建築一式工事以外の建設工事
    • 1件の請負金額が 500万円 以上の工事
 ※ 請負金額は消費税込みの額

 これに違反すると、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられますので注意が必要です。

 なお、上記に満たない軽微な建設工事のみを請け負う場合には、建設業の許可は必要ありません。

 また、不動産業者が建売住宅を販売するため自ら施工する場合などは、 「業として建設工事の完成を請け負う」 ことにはなりませんから、許可は不要です。



■ 従いまして、下請けとして事業を行う多くの中小企業では許可は取らずとも営業できることになります。

 でも、建設業者の皆様は許可がどうしても欲しい。

 なぜでしょうか?
 それには、次の理由があるからです。


  • 大規模工事も請け負うことができる

    • 許可を取得することの第1のメリットは、上述のように、500万 以上(建築一式工事については 1,500万 以上)の工事が請負施工できることです。

      この 500万、1,500万 という金額は、材工含めた総額なので、ちょっとした設備の設置工事でもオーバーしてしまいます。

      元請がまとまった工事を発注してくれるばずだったが、建設業の許可がないので別の業者に流れてしまい、仕事の機会を失った。

      ・・・・これが当事務所に相談に来られる業者の一番多い理由です。


  • 公共工事を請け負うことができる

    • 公共工事の入札に参加する場合、許可を受けていることが前提となります。(別途経営事項審査を受けておく必要もあります。)

      市町村では、建設業の許可がなくても入札参加資格を得られるところもありますが、やはり建設業の許可が有ると無いとでは、入札ランクが違ってきます。

    • また、公共工事を発注する官公署では、元請業者に対して下請・孫請まで許可業者を使用するように指導しており、元請業者は新規の下請・孫請業者に対して、まず許可を取得しているか確認することが多いようです。
      生き残りをかけた事業展開のためには、許可を得ていることは必須でしょう。


  • 対外的な信用力が向上する

    • 建設業の許可を取得するためには、技術的要件、財務的要件等をクリアしないと取得できません。

      そして、許可を受けた建設業者の許可申請書、財務書類などは一般に公開されるため、会社の内容が透明になり、注文者も事前調査を行なえるなど、結果として信用をもって接することができます。


  • 資金調達が容易になる

    • 建設工事の施工には多くの資金が必要になります。

      許可を得ていることで、銀行や保証協会などの公的融資を受ける際に資金調達が容易になります。

      許可を取得した業者は一定の財産的基礎を有することになりますので、銀行等の与信審査も許可を受けていない場合に比べ、格段に違ってきます。


  • 予防法務になる

    • 労災・工事を起因とする災害等、工事施工に係わる数々の紛争問題において、適法に許可を取得していないと、調停あるいは裁判のときに不利になることがあります。



 建設業の許可はどうやったらとれるのか?

■ 建設業の許可は、建設業者が従事する次の種類ごとに取得しなければなりません。

建設工事の種類 建設工事の内容
土木一式工事 総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事(補修、改造又は解体する工事を含む。)
建築一式工事 総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事(補修、改造又は解体する工事を含む。)
大工工事 木材の加工又は取付けにより工作物を築造し、又は工作物に木製設備を取付ける工事
左官工事 工作物に壁土、モルタル、漆くい、プラスター、繊維等をこて塗り、吹付け、又ははり付ける工事
とび・土工・コンクリート工事 足場の組立て、機械器具・建設資材等の重量物の運搬配置、鉄骨等の組立て、工作物の解体等を行う工事
くい打ち、くい抜き及び場所打ぐいを行う工事
土砂等の掘削、盛上げ、締固め等を行う工事
コンクリートにより工作物を築造する工事 その他基礎的ないしは準備的工事
石工事 石材(石材に類似のコンクリートブロック及び擬石を含む。)の加工又は積方により工作物を築造し、又は工作物に石材を取付ける工事
屋根工事 瓦、スレート、金属薄板等により屋根をふく工事
電気工事 発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備等を設置する工事
管工事 冷暖房、空気調和、給排水、衛生等のための設備を設置し、又は金属製等の管を使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配するための設備を設置する工事
タイル・れんが・ブロック工事 れんが、コンクリートブロック等により工作物を築造し、又は工作物にれんが、コンクリートブロック、タイル等を取付け、又ははり付ける工事
鋼構造物工事 形鋼、鋼板等の鋼材の加工又は組立てにより工作物を築造する工事
鉄筋工事 棒鋼等の鋼材を加工し、接合し、又は組立てる工事
ほ装工事 道路等の地盤面をアスファルト、コンクリート、砂、砂利、砕石等によりほ装する工事
しゆんせつ工事 河川、港湾等の水底をしゅんせつする工事
板金工事 金属薄板等を加工して工作物に取付け、又は工作物に金属製等の付属物を取付ける工事
ガラス工事 工作物にガラスを加工して取付ける工事
塗装工事 塗料、塗材等を工作物に吹付け、塗付け、又ははり付ける工事
防水工事 アスファルト、モルタル、シーリング材等によって防水を行う工事
内装仕上工事 木材、石膏ボード、吸音板、壁紙、たたみ、ビニール床タイル、カーペット、ふすま等を用いて建築物の内装仕上げを行う工事
機械器具設置工事 機械器具の組立て等により工作物を建設し、又は工作物に機械器具を取付ける工事
熱絶縁工事 工作物又は工作物の設備を熱絶縁する工事
電気通信工事 有線電気通信設備、無線電気通信設備、放送機械設備、データ通信設備等の電気通信設備を設置する工事
造園工事業 整地、樹木の植栽、景石のすえ付け等により庭園、公園、緑地等の苑地を築造する工事
さく井工事 さく井機械等を用いてさく孔、さく井を行う工事又はこれらの工事に伴う揚水設備等を行う工事
建具工事 工作物に木製又は金属製の建具等を取付ける工事
水道施設工事 上水道、工業用水道等のための取水、浄水、配水等の施設を築造する工事又は公共下水道若しくは流域下水道の処理設備を設置する工事
消防施設工事 火災警報設備、消化設備、避難設備若しくは消化活動に必要な設備を設置し、又は工作物に取付ける工事
清掃施設工事 し尿処理施設又はごみ処理施設を設置する工事

 そして、許可の区分として 大臣許可 (2つ以上の都道府県で営業をする場合) と、 知事許可 (1つの都道府県内のみで営業) があります。

 さらに、規模により 特定建設業 (発注者からの直接の請負金額が建築一式工事では4,500万以上、その他の工事では3,000万以上) と、一般建設業 (特定建設業以外) に別れ、それぞれ許可の要件が違ってきます。

ほとんどの許可を受けようとする業者は、「知事許可の一般建設業」 ですので、以下これに絞って説明します。


■ 建設業の許可を受けるためには、次の5つの要件を満たしている必要があります。


  1. 経営業務の管理責任者がいること

  2. 専任技術者が営業所ごとにいること

  3. 請負契約を履行するに足る財産的基礎、または金銭的信用を有していること

  4. 請負契約に関して誠実性があること

  5. 欠格要件に該当していないこと 


1.経営業務の管理責任者


  • 法人であれば常勤の役員(支店や営業所の場合は、支店長や営業所長など)
    個人であれば事業主本人。

  • 法人の場合で役員に次ぐ地位(例えば建設部長など)の者も、7年以上の経営業務を補佐した実績があれば要件を満たします。

  • 許可を受けようとする建設業の種類について5年以上の経営に携わっていた実績があること。
    ただし、許可を受けようとする建設業の種類以外について7年以上の経営実績があればよい。
 ポイントアドバイス
  • 申請者が1番つまづくところです。
  • 建設業を行っていたことの立証が必要です。
    過去の決算書、工事に関する見積書・注文書・請書・契約書等をきちんと整備しておきます。
  • 規定されている年以上の立証書類を準備します。
  • 現状で要件を満たさなければ、要件を充当する人を役員に招聘します。
  • 法人の場合、健康保険(政府掌管)に加入します。

2.専任技術者


  • 許可を受けようとする業種に関して、一定の国家資格等を有するもの

  • 実務経験を有する者
    (所定学科の大学を卒業後3年以上、高卒では5年以上、その他は10年以上)
 ポイントアドバイス
  • 申請者が2番目につまづくところです。
  • 実務経験で申請する場合、過去の工事に関する見積書・注文書・請書・契約書等をきちんと整備します。
  • 規定されている年以上の立証書類を準備します。
  • 実務経験証明書の記載内容と立証書類は一致させます。
  • 国家資格者等を雇用します。

3.財産的基礎、または金銭的信用


  • 自己資本の額(貸借対照表の資本の合計)が500万以上あること

  • または、500万以上の資金調達能力があること
 ポイントアドバイス
  • 自己資本がない場合、借り入れしてでも資金をかき集めます。

4.請負契約に関する誠実性


  • 請負契約に関して詐欺、脅迫、横領、工事内容について違反する恐れがないこと。

    (過去に不正を行ったことにより許可の停止,営業停止などの処分を受け、5年を経過していないなど)

5.欠格要件


  • 許可申請にあたり虚偽の記載をした、
    過去不正手段で許可を取りその許可が取り消されて5年を経っていない、
    禁固以上の実景に課せられ執行が終わってから5年経っていない、
    過去の建設工事が不適切であったため公衆に危害を及ぼしたなど。


■ 建設業の許可申請は、概ね下記の書類を作成・収集し、都道府県の建設業担当機関に提出します。

提 出 書 類
建設業許可申請書
別表
経営業務管理者証明書
専任技術者証明書
国家資格等・管理技術者一覧表
工事経歴書
直前3年各営業年度の工事施行金額
使用人数
誓約書
申請者の略歴書
株主調書 (法人)
貸借対照表、損益計算書
完成工事原価報告書、変動利益計算書 (法人)
付属明細書 (特例有限会社を除く株式会社)
定款、商業登記簿謄本 (法人)
営業の沿革
所属建設業団体
納税証明書
 
なお、上記以外に必要となる書類が要求される場合があります。

また、許可要件が充当しているかを立証する必要がありますので、それら書類を提示する必要もあります。


弊事務所では、会社設立・建設業許可に関する相談、書類作成、並びに提出を代理して行います。



 建設業の許可をとったあとは?

■ 建設業許可の有効期限は5年間です。引き続いて建設業を営む場合には許可の満了する日の30日前までに許可の更新手続をする必要があります。
うっかりこれを忘れていた場合などは、あらためて新規許可を取得しなければなりませんので、注意が必要です。

 なお、初回を除き、更新許可申請では要件の財産的基礎(資本の額 500万)は立証する必要はありません。

 許可更新の際には新規許可申請で提出した書類とほぼ同じものが要求されますが、工事経歴書,直前3年各営業年度の工事施行金額,使用人数などといった一定の書類は省略可能です。

 また、許可の更新申請は、各営業年度の終了後4ヶ月以内に変更届けが提出されていることが前提となります。この変更届が提出されていない場合、更新の際に省略可能とされていた書類は認められず、また経審が受けられないなど、いろいろなトラブルが発生しますので、きちんと毎年度の変更届けは提出しておく必要があります。



【 変更届(決算報告) 】
営業年度終了4ヶ月以内に次の書類を提出しなければなりません。
提 出 書 類
変更届書
工事経歴書
直前3年各営業年度の工事施工金額
財務諸表
納税証明書
営業報告書 (株式会社)

○なお、次の書類は変更があった場合に添付しなければなりません。
提 出 書 類
使用人数
令第3条(支店や営業所などの長)に規定する使用人の一覧表
定款




■ 建設業の許可を受けた業者は、上記の毎年度の(決算)変更届のほかに次の変更があった場合、一定期間内に必要な書類を届出なければなりません。

○変更が生じたときから2週間以内
提 出 書 類
変更届書
令第3条(支店や営業所などの長)に規定する使用人
経営業務の管理責任者
専任技術者

○変更が生じたときから30日以内
提 出 書 類
変更届書
商号・名称
営業所の名称・所在地
営業所の新設・廃止
営業所の業種追加・廃止
資本金額
役員の新任・退任
役員、事業者の氏名

これらの毎年度、都度の変更届けを怠ると、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられますので注意が必要です。



 建設業許可で知っておきたいこと

■ 建設業者は、許可を取得した後、その本店・支店、営業所、各現場の公共の見やすいところに標識を提示しなければなりません。


  • 「店舗に揚げる標識」 建設業の許可票という、俗にいう金看板です。業者自ら調製しなければなりません。商号・名称、代表者の氏名、許可を受けた業種、許可番号、許可年月日などが記載されていなければなりません。

  • 「建設工事の現場に揚げる標識」 上記の記載事項に加えて、主任技術者の氏名、資格者証交付番号等が記載されていなければなりません。


■ 工事の記録に関しては、毎年の変更届で「工事経歴書」、「直前3年各営業年度の工事施行金額」 として提出が義務付けられています。日々の記録、書類の整理・保存はきちんと配慮しておかねばなりません。

また、「経営事項審査」 を行うためには、消費税抜きの財務諸表で提出する必要がありますから、変更届を税込みで提出した場合など、改めて税抜きで作成しなければなりません。

参考までに、提出する建設業の財務諸表 (会計) は一般の会計と異なり、建設業会計に準拠する必要があります。科目で言えば「完成工事未収入金」、「未成工事支出金」、「工事未払金」、「未成工事受入金」 (以上、貸借対照表)、「完成工事高」、「兼業事業売上高」、「完成工事原価」、「兼業事業売上原価」 (以上、損益計算書) といった、独自の会計(=建設業会計)を行う必要があります。


■ 既に取得済みの許可に加えて新たな業種を取得する際には「一本化」 という制度があります。一本化とは、別々の許可年月日となっている業種を一つの許可年月日にまとめ、申請者の事務負担量ならびに行政庁の事務手続きを簡素化するもので、新たな業種の許可取得の際、申請書に一本化の記載をすることで取得済みの業種の許可を更新することができます。


■ 個人から、有限会社、株式会社等へ法人化した場合には、あらためて許可を新規取得する必要があります。また、法人化する際には事業の継承,事業展開を十分に検討して適切な役員の配置、業種の選択、組織の配備を周到に準備しましょう。


■ 次の場合、取得済みの許可は取り消されます。

特に「不利益処分」 により許可の取り消しは5年間許可申請ができなくなりますので注意が必要です。


  • 不利益処分
    • 不正の手段により新規・更新の許可を受けた
    • 行政庁の指示処分に対して情状の重い指示処分違反をした
    • 行政庁の営業停止に違反した
    • 営業所の所在地、業者の所在が明らかでなく、公告後30日を経過しても申出がない(この場合は5年間の許可申請不可はありません)

  • 手続き上の許可の取り消し
    • 許可された条件に違反した
    • 経営業務管理責任者、専任技術者、管理技術者の要件を欠い
    • 許可換えで一般または特定の建設業許可を受けない
    • 欠格要件に該当
    • 許可を受けてから1年以内に営業を開始せず、または1年以上営業を休止した
 ポイントアドバイス
  • 経営業務の管理責任者、専任技術者、管理技術者の解職・離職は、後任の要件該当者を探してから行います。




弊事務所では、建設業許可の更新・変更届に関する相談、書類作成、並びに提出を代行します。

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