アリモリソウ。涼しくなった亜熱帯の森に足を踏み入れると、ただの下草だと思っていた背の低い小さな植物に花がついていた。小さな小さな白い花だ。スズランのように俯いたその花の中を覗いてみる。奥は薄紅色をしていて、とっても淡い感じがする花だった。
ヤエヤマシキミ。悪しき実だから、シキミだとか。とんでもない。非常に可憐で美しい花。低い木だから、ちょっと見上げれば、梢にいくつもの花がついているのが分かる。匂いはない。20枚もの花弁が癒着して出来ている花で、落ちる時には花ごと落ちてしまう。その後につく実が変わっている。イメージとしては花がそのまま実になった感じ。扁平な多角形で、それぞれの縁が鈎状に尖っている。この実が猛毒であるとか。樹皮は止血にも利用される。
コンロンカ。崑崙花の名の通り、夏前に不思議な形の花をつける。星型をした黄色いものが花で、白く大きな花弁のようなものはガク。5枚のガク裂片のうち、一枚だけがこのようになるようだ。しかし、実際には黄色い花のガクが大きくなっている訳ではなく、蕾の状態の時にこの白いガクが生まれ、花が咲くと散るのかもしれない。この星型の花と白いガクが地上に落ちているのを見つけるのは嬉しい。ついつい見えない木の梢を見上げて探してしまう。根元はしっかりした幹を作るが、上の方では蔓性を擁し、他の木々に巻きついて延びる。
オオムラサキシキブ。日本にも多くあるムラサキシキブと同じ仲間。薄紫色をした花が終わった後、非常に鮮やかな紫色の果実を集合させて作る。森の中でこの実を見つけた時は、どきっとする。かなり遠くからでも良く目立つ。花と実の色がよく似ているというのも珍しいが、学名Callicarpa japonica var.luxurians のCallicarpaとはギリシャ語で「美しい果実」の意味であるとか。
ギョクシンカ。どの花でも大体そうなのだが、普段いつも使う山道では何気ない木として見落としていると、花が咲いた時にはっとさせられる。所謂「ただの木」というものはなにのだなあとその度に感慨深い。ギョクシンカという不思議なネーミングもこの花の形状に関係あるのだろうか。ギョクは「玉」であろうが、シンはどういう字を充てるのが正しいのか。「心、芯、真、清・・・」どれも意味がありそうで面白い。
夏前に枝の先端に鞠のように白く繊細な花弁の花を集合させて咲かせる。この写真は、少し花の落ちた後。
エゴノキ。比較的背が高くなる木なので、開花したことは、林床にその花が落ちて知る。サクランボの柄のように細く長い柄の先に花がつく為、重さで花は下向きに開く。その5枚の花弁はその根元で癒着し、落ちる時もそのままの花の姿で落ちている。落ちた花は刺激のある微かな芳香を放つ。エゴノキの種子は魚毒として利用されたという。
日本各地でも見られる花だが、なるほど、亜熱帯というのは温帯の気候の一部であるのだなと思わされる。
コウトウシュウカイドウ。シュウカイドウはベゴニヤの野生種。確かにその花の形、葉の形もそっくりである。比較的暗く湿ったところに咲くが、季節には至る所でその存在感のある咲きっぷりを見つけられる。観賞種のシュウカイドウなどよりは花の大きさは小さいが、気高い姿ゆえ、こちらの方が印象がいい。島のオバアなどは、昔山道で咽が渇いたら、この葉の柄の部分をしがんで汁を吸い、咽を潤したと言う。確かめてみると、水分が豊富でまた爽やかな酸味があった。この酸味が胃薬にもあるらしく、昔は塩漬けにして保存したものが各家庭にあったらしい。
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マルヤマシュウカイドウ。上のコウトウシュウカイドウと並ぶようにして生えている。花期は長く、こちらの方が若干遅いようだが、そのすぐ後にはまた前種が咲くので、早い遅いを論じる事自体が間違いかも。歪んだハート型をした前種の葉と比べ、丸っこく、縁が鋸状になっているのが特徴。花も一回り大きく花枝は多数分岐し、花の数も多い。また、色も薄紅色がかっており、派手な気がする。このシュウカイドウの仲間は雄花、雌花を分けるようで、左写真、下の大きいものが雌花。その他が雄花となる。花の内部が異なり、また花托に花弁と同じ色の団扇型をした突起がある。これが受粉後、種子になるようだ。雌花は少ない。
カラコンテリギ。一見してガクアジサイの仲間だと分かる。夏前、湿った林内や沢沿いで花を咲かせる。勿論、この白い花弁状のものはガク裂片の変化したもの。色は白色からやや緑味を帯びる。特に緑がかったものは美しい。かっては島にも多く生えていたらしいが、いざ探してみれば非常に少ない。道路沿いで見れる場所がないのが残念。