2012年9月29日 三重県
安濃川釣行記&その後の台風被害


 2012年のシーズンも終了となる9月末、管理人は家から最も近く、発眼卵放流を行っている地元の安濃川をゆっくり釣り上がっていた。

 発眼卵放流の効果か、1998年の台風被害からようやく川の環境が回復してきたのか、ここ数年はかなりの魚影が確認出来るようにまでなった。
もっとも、発眼卵放流の効果(生存率)を調査すればするほど、野生魚(天然魚)がその川の個体数維持に、どれ程貢献しているかが見えてくる。


 この理由は、まず最初に誰でも思いつく通り、その川で再生産された魚は当然その川の環境に順応した個体が選抜されており、生物として強いという点。これは、天然魚(人の手が全く入ってない、純血魚とでも言うべきか)だろうと、野生魚(祖先は放流された魚かもしれないが、その川で産卵・成長を繰り返してきた魚。野良魚とでも言おう)だろうと差はないようである。

 一方で、やはり放流魚(養殖魚)は弱い。これは、体力が弱いとか泳ぐ速さが遅いという観点からではなく、警戒心が低い故に外敵(人間含む)に襲われやすいからである。
 説明するまでもなく、放流魚は@早く大きくなる事 A飼いやすい事 が重要である。イノシシと豚の関係を見るまでもなく、まずは人間を警戒せず、餌をパクパク食べてスクスク成長する個体こそが養魚場では”生き残れる”重要な資質だ。

 養魚場でも警戒心が強い魚はいるだろうが、そのような魚は大きくなれないし卵や精子を採取する親魚になりえない。

要するに、放流魚と野生魚では生き残るために必要となる資質が真逆となっており、結果、卵から孵って自然の川へ泳ぎ出し、優先的に(?)駆逐されるのは放流魚という図式になる。
”放流魚が野生魚の身代わりになっている”という見方もできるかもしれないが、放流数を増やせば単純に川に魚が増えるという考え方は、改める段階にあるだろう。これは、漁協にも同じことが言える。

確かに、ごく短期的なスパンでは増えると言えるが、私も含め、自主放流されている方はそれが最終目標ではないのではないか。

2年程前から、大学研究室とのメールのやり取りで「一度放流を止めて、その後のアマゴの棲息数変動を見るべきか」との意見があったが、比較的長期的な放流・調査活動となっているのも事実であり、前年と同様の放流という形で続けていた。

今年もそうなるはずであった。


2012年9月30日、台風17号が襲来。三重県は、ほぼ直撃のコースで暴風雨に晒された。

強く降り始めた時より、川の防災情報や気象庁HPで安濃川上流の降水量を確認していたところ、1時間の雨量は最大で71mm、6時間の累積雨量は224mmと、相当な雨が降ったようだ。

2004年の宮川豪雨災害(1時間最大130mm、24時間累積500mm)と比べればマシかもしれないが、元々大雨が多い大台ケ原と異なり、規模の小さい安濃川付近の山でこの雨量は脅威。
幸いにも台風が速度を速めて通り過ぎたため、強く雨が降った時間は数時間に留まったが、津市市街地にいても恐怖を感じる降り方だった。



台風から1週間後の10月6日、安濃川の様子を確認しにやってきた。


淵や岩が全て砂で埋まり、まるで運動場のようになった区間


川から水が溢れ、アスファルトを剥ぎ取った


大岩が流され、川底の浸食を防止するブロックも流失


大量の流木が散乱。根元から流された木もあるが、大半は放置された間伐材

下流部はかなりの惨状。
数本ある小さな支流から大量の土砂が流れ出て、山の斜面に放置されていた間伐材が大量に流されてきたようだ。ちなみに、特に道路から見えない区間では邪魔になった木が伐り倒され、2〜3分割してそのまま放置されている場所があった。
材木は育てる手間と同等以上に、山から切り出して運ぶ費用が高いとは聞くが、何とかならないものか・・・。


さらに上流へ進むと、荒れてはいるがなんとか魚が棲めそうな環境が残っていた。


小さな橋より下流


同じく上流側


上流にある支流との合流地点と、支流

後日行われたアマゴ生息数調査では、数が10分の1程度まで減っていることが判明(予想以上に残っている、という印象だが)

ここでアマゴを放流すれば、数をある程度戻すことは出来るだろうが、しばらく土砂の流出や法面の崩落が起きる事は明白で、アマゴにとって棲みやすい環境ではないだろう。

そこで、今年は発眼卵放流を中止し、「豪雨災害後のアマゴ生存状況」の調査に切り替え、来年10月に再度アマゴ発眼卵を放流するかどうかを検討する事になった。
さすがに7年も続けてると、「こういう年もあるか」という気分になる。焦ってはいけません。

ちなみに、2007年のアマゴ発眼卵放流から一緒に活動していた大学研究室の関係者からは、「相当荒れてしまったようで・・・」と心配する声があったが、個人的には結構楽観視している。
1998年頃、豪雨で荒れ果てた状態を「1」、2012年9月29日の状態を「10」とするなら、今の状況は6から7と言った感じ。
あの時は本当に酷かったが、3年ぐらいである程度回復するのではないかと思っている。


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