2007 5/3・5/5 三重県
安濃川


5/3

ゴールデンウィーク初日、嫁さんは仕事の関係で会議があるため、昼まで家にいない。必然的に娘と二人で時間を潰す事となった。

 ウチの娘は現在、母親にべったりの超甘えん坊状態で、少しでもママの姿が見えなくなると家中を泣き喚きながら探す少々困った状態。便器の中まで探そうとするので目が離せない(さすがにそこにはいないと思うよ?

 娘が生まれて何度か父娘の二人で過ごしたことはあるが、感情豊かになってきた1歳半、正直、平穏に半日過ごす自信はなかった。
最悪の場合は、普段面倒を見てくれているお義母さんに預けに行くという切り札を用意し、二人でママに「いってらっしゃい」。
さて、どうなることかと冷や冷やしたが、なんなんだこれ?ってぐらい普通にお茶飲んでお菓子食って積み木で遊んで、何故か俺はケラケラ笑われながらバシバシ叩かれ(なんで・・?泣)、テレビ見ながらダンスを踊って・・・俺もいなくてもいいんじゃなのって感じ。

結局、母親が近くにいると分かっていると寂しがるが、いないと分かってる場合はどうでもいいらしい
このまま家にいても暇なので、自分の実家に行って時間を潰し、原っぱで遊ばせて時間を潰し、本屋で立ち読みして時間を潰す。


嫁さんから仕事が終わったとの電話があったので、迎えに行く。会場に行くと、遠くに嫁さんを発見。

「ほ〜ら、あそこにママおるで!」


母娘、感動の再会。

タッタッタッタ・・・走り出す娘(歩きと速さ殆ど変わらんけど)。

「こっち・こっち。おいで〜!」

「マンマンマー!」


タッタッタッタ・・・そのまま嫁さんの横を華麗にスルー引きつった表情で固まる嫁

「あれ?あれ?? ちょ・・ちょっと!あんた気付いてないの!?私!ママでしょ!?」

”あ!ママに似た人がいる!”  しかし、じっと見つめたまま警戒して近付かない娘。

結局、2mの距離まで近付いてようやく母親と分かったらしく、胸にダイブしていました。嫁さんは結構ショックだったらしい。

昼食後、家に戻ってゴロゴロ。中途半端な時間になってしまった。
「どっか行く?釣り行かんでいいの?」「こんな時間やしなー。」「釣りじゃなくて山菜採りは?今日の夕飯は天ぷらとか。」「それ、いいかも」
思い立ったら行動は早い。ついでにロッドも車に放り込み、出発。

途中のコンビニで見つけたヒゲナガ。こんなでかいフライは用意してないぞ(汗)。

安濃川のとある支流に到着。
流木が散乱し、川岸があちこち崩れ、水もほとんど無い貧相な流れ。しかし、少し歩くとタラの木が数本林立している秘密の場所がある(時々採られてるけど)
少々時期は遅かったが、あまり開いていない芽を選んでもぎ取る。周囲に生えていたアケビの新芽もついでにポキポキ。

二人で食べる量の山菜は確保した。次は釣りの番だ。
「1・・・・2時間くれ!」
嫁さんは錫杖湖(しゃくじょうと読む。要するに安濃ダム湖。「尺上」を連想させる良い名前ではあるのだが)の公園へ行くとの事。

ようやくロッドが振れる。
発眼卵放流ポイントの2km程下流に入ることにした。

ロッドを繋ぎ、ふと道を見るとモンカゲロウのダンが数匹。
安濃川では時々大型のメイフライがハッチするが、まとまった数のモンカゲを見た記憶はあまり無い。砂が大量に積もったこともあり、大繁殖したのだろうか。

フライを流すと、時々ヒットするカワムツ。丸々と肥えていて、結構良い引きで楽しませてくれる。

午後5時前ぐらいだろうか、山間に太陽が沈みかけた頃から、今まで体験したことの無い状況が始まった。


ロッドを振っていると、パシパシと何かがロッドに当たる。最初は「木の枝?」と思っていた。しかし、どうやらそうではないらしい。

 

空を覆うモンカゲロウのスーパーハッチ。ロッドを振っていると、こいつらに衝突してしまうのだ。

ヒュンヒュン! パシパシ・・・。無益な殺生は好まないのだが、キャスティングしてるとロッドに当たった虫がヒラヒラ落ちてくる。つまんで下流へ流すと、カワムツ達が取り合い状態。

その光景を見ていて、ふと思った。

発眼卵放流後の調査で、妙に大きい魚がポツポツ釣れると時々ご報告しているのは皆様ご承知のとおり。
常々疑問だった「これほどの大きさに成長しているとは思えない」という点だが、この日のハッチを見る限りでは、1年後に12〜15cmぐらいまでならデカくなりそうな気がしてきた。

水の富栄養化と土砂の流入が、川の規模以上の水生昆虫を育んでいるのだろうか。



しばらく釣り上がり、小さなプールに到着した。手前から流すと、最初に指サイズのアマゴがヒット。昨年放流の卵から孵った稚魚と信じたい。

2投目、流れ込みにフライを落とす。


1・・2・・ゆっくりな流れ始めたフライに”何か”が食いついた。

すぐさまロッドを立てるが、自分でハッキリ分かるほどタイミングが早すぎた。フライは宙を舞う。

「デカッ!何だ今の!?」思わず川原で一人叫ぶ。

まだフックには当たっていない。気付かれていないはずだ。
ティペットを新品に交換し、フライの水気を切って結び直す。もう一度トライ。

ゆっくりフライをキャストし、先程と同じようなポイントにフライは落ちた。ゆっくり流れ始めるフライ。

ザバッ。フライが消えた。魚の背中が見えた。
一瞬のググッとした手応え、水面下でギラリと鈍く光る魚影。軽くなるテンション。思わず、その場に座り込んだ。「デカかった・・・。」
「この川にしては」とか「さっきの魚と比べて」という但し書きは付かない。純粋にデカかった。釣ってもいない魚のサイズを推測するなど、アホにも程があるが、それでも軽く30cmは超えていた。・・・・と思う。


デカかった。デカかった。デカかった。デカかった。本当にデカかった・・・・。
念仏のように繰り返す。逃がした魚はデカイ。くそったれが、昔の人は本当にうまい事を言ったもんだ。

そして、同じプールで釣れた一匹。この川の場合、普通なら大喜びするサイズだが、先程のバラシで霞んでしまった。
不意に、川沿いの道路に車が停まった。嫁さんが迎えに来たらしい。時刻は既に6時(汗)。

ウィンドウが開くと、娘がニコニコしながら顔を出した。「ぱっぱ〜!」私のことを「パパ」と認識して呼んでいるのか怪しい時もあるが・・・。

その後、もう少しだけ釣り続けたところ、良いサイズが頻繁にフライに飛び出す。娘の声、嫁さんのプレッシャー、あと1時間延長をお願いしたかったが、この日は諦めて帰る事にした。

「本当にデカかったんやって!小さい鯉かと思った。2回も出たのにフッキングできやんて、夢に出そう!」

「あーもう、わかったわかった!」

ひたすら愚痴をこぼす自分。
釣れなかったのは正直に悔しかったが、この川で一丁前のフライフィッシングが楽しめた事が、純粋に嬉しかった。


5/5
前日は雲出川、今日は安濃川に再度出撃。しかし、前回とは違ってこの日は午前中の釣り。
昼まで時間を確保し、朝の9時半に安濃川に到着。

あまり時間が無いので、一昨日に大物をばらしたポイントすぐ下から入渓。モンカゲロウが少し飛んでいたが、風もなく、汗ばむ陽気のためか、陸生昆虫が多数見られた。

なんでこんなものが捨ててあるんだ? 道路から投げ込まれたと思われるマットレス。
地元民か町の人間か分からないが、ここまで運んでくる行動力があるならゴミ集積場へ持っていけよ・・・。

そしてふと足元を見ると、捨てられた刺し網が散乱。やりたい放題かこの川は。


さて、目の前には小さなプール。
アレコレ小技は不要。手前から探っていくのがセオリーかもしれないが、無駄なキャストは魚を散らすだけと考え、とりあえずプールの真ん中に1投。

反応なし。

静かにフライをピックアップし、1・2回フォルスキャスト、フライを一気に核心部に落とす。ティペットが上流側になるよう、「J」の文字を逆さまにした形でフライ先行で流し込む。

反応なし。

少しレーンを変えてもう一度。


・・・やはり、そんなうまい話はないようだ。潔く諦め、逃がした大物への再挑戦は終了とした。



さてさて、まだ10時半。時間が少し残っている。
ゴールデンウィークの影響も考え、発眼卵放流したポイント付近で、川が道路から離れている場所に入渓。
メイフライよりカディスや陸生昆虫が多かったので、#16クイルボディパラシュートのテイルをカットして使うことにした。

最初のポイント、護岸沿いの少し水深のある流れ。手前にフライを落とすと、丸々と太ったカワムツがワラワラと寄ってくる。こんなポイントの場合、アマゴは流速の早い場所にいることが多い。

フライをカワムツポイントから3m上流へキャスト。着水と同時に小さなカワムツが集まってきたと思った瞬間、横から飛び出してきた魚がフライをひったくった。

ヒットした瞬間アマゴと分かる機敏なファイト。川底付近の護岸には隙間があり、何度もそこへ逃げ込もうとする。
1〜2回潜られかけてティペットが擦れる嫌な感触が伝わってきたが、なんとかランディング。

ヒレが綺麗な21cm。大きさの割にやたら強い引きだった。

すぐ上流に見えるのは小型の砂防堰堤。
水が落ちてくる白泡より2m下流へフライをキャストすると、定位していた15〜6cmのアマゴが何度も見にくる。しかしフライを食おうとしない。

しびれを切らし、フライを白泡真横に叩き込む。すると、少々大きいのが隠れていた。

20cmあるかないか。しかし、この魚もヒレが綺麗で、天然魚に近い状態で育った魚と推認できる。

 そういえば、前回から計ったように20cm前後の魚が何度もヒットしている。2年前の発眼卵放流の魚か、自然産卵から育った魚かは定かではないが、今回の釣りで発眼卵放流への意欲が益々湧いてきた。


梅雨明け以降、昨年11月放流の魚が確認できるといいなと心底思う。


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