5/14 三重県
安濃川
※釣行記兼自主放流調査のため、写真多数でやや重いです※


発眼卵放流の下見を兼ねて、安濃川へ釣りに行ってきました。主な目的は放流場所のピックアップと水温調査。

県庁所在地である津市から車で30分、貧相な流れだけど、町の中心部からこんな近くでアマゴが釣れる場所があるってのは、都会の人から見れば実は結構幸せな環境かもしれない。


ついでに、発眼卵放流用のバイバートボックスの製作も着々と進んでいます。前回3個作りましたが、さらに2個追加されました。


五重の塔〜(笑)

インターネットに掲載されているバイバートボックスの情報を片っ端から検索し、PDFファイル等で多く発表されてるアマゴ・ヤマメの水産資源研究・各種論文の卵・稚魚の情報(特に大きさ・習性)を調べ上げ、それなりの自信作に仕上がっております。
一番苦労したのは、卵から孵って下段スペースに落ちる際の穴の大きさと、最終的に川へ泳ぎ出る穴の大きさです。

直径もさることながら、稚魚が通り抜ける可能性がある穴は、全てターボジェットライターでバリ(ささくれ)を溶かし、稚魚が傷付かないように・・とかやってたら、1個作るのに2時間は掛かる、とんでもない代物になってました(汗)
調べた限り、15分で作れる手作りボックスを紹介してるとこもあります。うん。誰が見ても完敗。

ちなみに、養魚場のは見せてもらいましたがダメですね。木枠と網戸(?)のネットで極めて簡単に作ってありますが、卵から孵して一旦閉じ込めておく構造で、そのままの物では放流には使えません。穴の大きさを工夫すれば別でしょうが。

バイパードボックスに関する詳しい内容は、実際に結果を見て、来年以降に発表ということで・・・。



ところで、ボックスに卵を入れる量なのですが、ティムコから市販されてるボックスの場合、卵が重なった状態で500粒程度入るらしいのです。
で、上の写真の自作ボックスの場合、卵入れるスペースは約12.5cm×12.5cm(面積)で高さ5cm程度。
アマゴの卵の直径は平均5mmぐらいらしいので、単純計算25粒×25粒=625粒。全く重ならず、一面に敷き詰めた状態です。
2重に重なった状態だと、単純に1200粒以上入る計算です。そんなに詰め込んで大丈夫なのか?なるべく密度は下げたほうが良いと何かで読んだのですが、知ってる方メールでご教示頂けたら幸いです。
当方、わりと真剣に悩んでおります。最近抜け毛が増えた気がするのと同じぐらい真剣に悩んでおります。お礼は感謝の気持ち以外、何も差し上げられませんが。




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まず手始めに、ダム上流のアマゴが釣れる最下流ポイントから調査開始。

めっきりと姿を見なかったカワムツ様が復活され、丸々と太って群れていました。アマゴが放流されなくなった影響か、20cm近いグッドサイズもゆらゆら。こいつら本当に逞しいですな。

川へ降りて水温計測。17℃・・って、5月にしては高すぎちゃうか?大丈夫かよ安濃川。
え?「何だこの変な水温計は」ですって?
実は管理人、ちゃんとした釣り用の水温計(アルミチューブで補強されたやつとか)を持ってません。以前熱帯魚飼ってたので、その時の細軸水温計をボールペンの軸に突っ込んで使ってます(←ここ、同情するところです)
見やすいように軸の半分を削り取ってますが、ほとんど水温なんか計らないのでこれで十分。

流芯・巻き返し・日なた・日陰と計って見るが、温度大差なし。当たり前?

少し上流へ移動。16℃。
200mの移動で1度下がるってのもどうかと。ここで重大な事が発覚。
わざわざ温度計を写真で撮らなくても、ボイスメモ機能使えばええやん>俺(汗)

ここからは、以前夏でもアマゴが結構釣れた区間なので、ロッドをセットして釣りながら、50mごとに温度計測。


『あーあーあー。15.8℃なり』

「昔は12〜3pぐらいのがパシャパシャ飛び出したけどなー」
なんとなく若かりし頃の思い出がよみがえってくる。
車の免許取りたてで遠出する勇気もカーナビも無く、大学の午後の講義をサボっては、近場のこの川でフライをキャストしていた。

あれからもう10年近く経ったのか。20世紀末のあの当時、この川の漁協が無くなり、三重県随一の清流・宮川が土砂で埋まり、そして自主放流活動を始めるなんて想像さえしていなかった。

フライに”ピッ”と何かが飛び出した。ファーストヒットはオイカワ君。さらに釣り続けるが、分かっちゃいるが本当に反応が少ない。

続けてもう一度”ピッ”と反応があった。
釣れてきたのは嬉しい事にチビアマゴ。しかし、今までこの川で釣れたアマゴとは少し違う感じがした。朱点がオレンジ系で滲んだように薄い。

アマゴの朱点は成長過程・捕食物・魚の体調・個体差があって、これだけで遺伝的な判断をするのは軽率だが、念のためサンプル撮影。

ところで、旧漁協の事務局があった役場の人の話によると、何と安濃川では平成12〜3年以降は放流が全くされていなかった可能性があるとの事。
担当の人も詳しくは分からなかったらしいが、少なくともここ2〜3年は放流がされていないのは間違いないらしい(それで游漁証買わすのもどうかと思うが)。で、アマゴの寿命は3〜4年のはず。じゃあこのチビは一体・・・?

自然繁殖?有志の放流??
放流の稚魚特有の、ヒレの先端の黒ずみもないので、去年の冬に産まれたアマゴである事は間違いない。謎は深まる。

とりあえず調査続行。

『あーあーあー。15.5℃なり』

『あーあー。15℃』

『14.8℃』
・・・。






スゲーつまらん。



自主放流活動に関しては、県水産課や町役場とのやり取り、情報収集、養魚場との打ち合わせ、バイバートボックス作成と色々やってきたが、水温調査って超つまんねー。俺こんな地味な作業向いてねー。メンドクセー。(←子供か)

さらに上流へ進むと、水温は14℃まで低下。ついでにボイスメモのほうが聞き直す分、手間が掛かる事に気付く。
水量の少ない小規模河川では、1km程度でもかなりの温度差があるようだ。同じ川で同じ日なのに3℃違うとは思わなかった。

途中で超小さいのをもう一匹追加。これも薄くて滲んだオレンジの朱点のアマゴだった。君は一体どこから来たの?

ちょっと脱線。
上の写真は2002年に護岸が崩れて改修工事をしていた場所。左と右の護岸が違うの分かりますか?右側の新しい護岸部分からは植物が生えてますよね。

写真左側の護岸。よく見かけるタイプです。いわゆる3面護岸の典型。

右側の護岸。円柱型のコンクリートを組み合わせて”隙間”があるタイプの護岸。草木の種がうまく隙間にはいり、植物が成長している。もう少し時間が経てば、この部分はかなり植物に覆われるでしょう。

水中部分の隙間は小魚の隠れ家にもなりそうなので、コンクリートでガチガチに固める工法に比べて、幾分自然に配慮されている。1990年代後半から、こういった工法が増えてきている気がする。この護岸は他県の川でも見た気がする。

さらに上流へ。
毎回反応があるポイントなので、慎重にフライをキャストしていく。

1m四方の小さなプールで、横からすっ飛んできてフライをひったくっていた魚は、安濃川ではLサイズの綺麗なアマゴ。

オレンジ色で割りとハッキリした朱点。このタイプは平成10年以降に増え始め、おそらく今の安濃川に一番多く残っているタイプのアマゴだと思う。

少し上流でもう一匹。これまた”L”サイズ。

2つ上の写真、ハッキリしたオレンジの朱点をもったアマゴと違い、チビアマゴと同じく滲んだ薄いオレンジの朱点。腹部に黒点が多い事からも、”ハッキリしたオレンジの朱点”タイプのアマゴとは遺伝的特性が異なるように感じる。

この付近の水温は13.5℃。
2キロほど下流との水温差は何と3.5℃。途中いくつかある支流の温度も計ったが、本流との水温差は0.5℃以内。夏場の高水温対策のため、支流のほうが発眼卵放流に向いているかと予想していたが、実際はそうでもなかった。

次は8月頃、水温が最も高まる時期に調査に来たいと思う。しかし今日釣れたチビアマゴは一体・・・。

自然繁殖が行われているなら、本当に喜ばしいことだ。それ以外で自主放流が行われているなら、思いを同じくする人がいるという事だろう。ネットで検索した限り、有志が安濃川にアマゴを放流したという情報は見当たらない。

何か知ってる方、ご連絡頂ければありがたいです。


土砂と流木とゴミで出来た天然ダム。これが決壊すると鉄砲水になる。

昨年の豪雨の影響はあまり見られない安濃川。それどころか、1990年代の台風の被害から少しだけ立ち直ったようにさえ感じる。
なるべくその川本来の天然アマゴを残したいのは山々だが、町から近く、川の規模もそう大きくない川ではそうも言っていられないだろう。漁協・自主を関わらず放流という行為は、思った以上に複雑な問題である。

”天然アマゴの稚魚、発眼卵の確保が難しい川での放流”について、近いうちにアンケートを実施したいと思いますので、その際はご協力をお願い致します。


以下、アマゴの朱点に限定して、管理人が覚えている安濃川で釣れたアマゴの特徴についてまとめます。

【A】 管理人がフライフィッシングを始めた、平成7年頃に安濃川で釣れていたアマゴの朱点。ひし形1マス=ウロコ1枚で見てください。かなり上流部もこのタイプのアマゴがいたと思う。

朱点は非常に控えめで、ウロコ1〜3枚程度の大きさしかない。色は濃い赤(やや黒っぽい赤)で、数もそれほど多くなかったように記憶している。

当時はそれほど気にしてなかったが、初めて釣ったアマゴのイメージというのは強烈で、管理人は今でもこのタイプの、控えめで濃い赤の朱点を持つアマゴが好きだ。
写真も結構残してあるのだが、使い捨てカメラの写真なので画質が悪く、ウロコまでは細かく判別不能なのが残念。
【B】平成9年頃から突然釣れ始めた、オレンジのやや大きい朱点のアマゴ。
今でもこのタイプのアマゴが釣れるので、恐らく多度町の養魚場のアマゴではないかと思う。

それまでのAタイプのアマゴとは全くイメージが異なっていたので、当時は「なんじゃこのアマゴ?」という感じだった。

平成11年頃まで上記Aタイプのアマゴと混生していたが、Aタイプのアマゴは徐々に見かけなくなった。
【C】平成11〜15年の範囲で、詳しく覚えていないが一時突然釣れ始めたアマゴ。血のように真っ赤で、かなり大き目の朱点が魚体一面に散りばめられていて、かなりグロテスクな印象だったのを覚えている。

雲出川や櫛田川の成魚放流魚によく見られる濃い色の朱点だが、身をサーモンピンクにするために飼料に含まれる、甲殻類(オキアミか?)が原因であろう。

1〜2年釣れていたが、気が付いたらBタイプのアマゴしか釣れなくなっていた。
【D】今年初めて見たタイプ。薄いオレンジの朱点で、滲んでいる。
成長による個体差で、Bタイプと同じ魚かもしれないが、今日釣ったLサイズアマゴ2匹を見比べる限り、別種の可能性がある。

腹部の黒点は成長するにつれて大きくなるという話も聞くので、今日釣った1匹目と2匹目のチビアマゴも、薄いオレンジで腹部に黒点が多い新たな種類の可能性がある。
指サイズも15cmサイズも同じ特徴を示しているので、昨年の冬に誰かが稚魚放流したアマゴかもしれない。


簡単にまとめてもこんな感じです。「天然魚を守る」というのは口で言うのは簡単ですが、とてつもなく難解な問題です。何をもって天然というのか。

仮に源流部で天然アマゴを釣ってきて、それを育ててから卵と精子を採取し、稚魚を孵らせても受精の段階で人間の手が入ってたら、これはもう厳密にはその川の天然魚ではない気がします。

逆に長良川上流で生まれたアマゴが海に出て、成長して川を遡る際、間違えて三重県の宮川を遡り、宮川天然アマゴと交配して子孫が産まれた場合は、これは100%天然魚でしょう。
人間に出来る天然魚の保護は、産卵に適した区域を完全に禁漁にし、徹底的に周囲の自然環境を保護し、後は”何もしない”という以外には無いのではないかと思います。

人間がいくら金や技術を注いで魚のh・・・・・・・


よし、書いてるとキリがない(泣)

とりあえず、放流や安濃川産のアマゴについて何か知ってる方、メール待ってます☆(←強引に中途半端に終了しました)


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